日本の税金の種類や控除とは?外国人に対する課税について解説

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2023/02/13

日本に在留する外国人のなかには、「税金の種類を知りたい」「どのような控除があるの?」と思う人もいるでしょう。日本の税金は、納税先や納税方法によって「国税・地方税」と「直接税・間接税」に分けられます。このコラムでは、日本の税金の種類や外国人に課せられる税について詳しく解説。税金の負担を軽くするための控除の種類も紹介しているので、参考にして税金の正しい知識を身に付けましょう。

目次

  1. 日本の税金の種類
  2. 外国人が納める主な税金の種類
  3. 税金の負担を軽くするための控除について解説
  4. 外国人が受けられる控除を3種類紹介
  5. まとめ

日本の税金の種類

日本の税金の種類の画像

日本の税金は、「国税・地方税」と「直接税・間接税」に分けられます。「国税・地方税」の違いは納税先で、「直接税・間接税」の相違点は納税方法です。

国税と地方税

国税とは国に納める税金のことです。消費税や贈与税、たばこ税、自動車重量税などが該当します。対して地方税とは、都道府県や市区町村などの地方公共団体に納める税金のことです。主に地方消費税や事業所税、国民健康保険税などがあります。

国税と地方税のうち、使用目的が決まっていない税金は「普通税」、指定されている税金は「目的税」です。普通税には贈与税や自動車税、目的税には事業所税や復興特別所得税などが該当します。

消費税の歴史については、「日本の消費税の歴史とは?導入された背景についても解説」のコラムで紹介しています。ぜひご参考ください。

直接税と間接税

直接税とは、納税の義務がある人と実際に税金を納める人が同じ税金のことです。たとえば、贈与税は財産をもらった人が事業者やほかの人を通さずに、国に税金を納めます。市町村民税や自動車税なども同様です。対して間接税は、納税の義務がある人と実際に納める人が異なります。納税の義務がある人が納めた税金を、実際に納税する役割のある事業所や人が預かって国や地方公共団体に納めるのです。たとえば、たばこ税や酒税は購入した人(納税の義務がある人)が税金を支払い、小売販売業の許可を得た人や製造者が納めます。

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外国人が納める主な税金の種類

外国人が納める主な税金の種類の画像

日本に在留する外国人も、日本人と同様に税金を納めなくてはなりません。ここでは、外国人が納める主な税金の種類を紹介します。

住民税

住民税は1月1日時点で日本に住所を持ち、一定額以上の給与を得て1年以上生活をしている外国人であれば支払う義務があります。前年の1月1日から12月31日までに得た給与で納税額が決まるため、日本に来日した年は住民税を納める必要はありません。

住民税は、都道府県や市区町村に納める税金で地方税の直接税に該当します。納税方法は、給与からの天引きもしくは自分で支払う方法の2つです。日本の企業で働く人は、給与からの天引きが原則のため、自分で住民税を支払いに行く必要はありません。対して、住民税が給与から天引きされない人は、市区町村から届く納付書を持参して金融機関や市区町村役場で支払います。

相続税

相続税とは、亡くなった方から相続によって財産を取得した場合に、その取得した財産に課税されるもので、国籍に関係なく納める必要がある税金です。国税の直接税に該当し、財産を取得した人(相続人)の住所と、財産がある場所によって課税の対象が異なります。外国人が亡くなった場合の課税の対象は、以下のとおりです。

【日本の財産と海外の財産が課税される例】

・亡くなった人と相続人の住所が日本にある

・亡くなった人の住所が日本にあり、相続人の住所が海外にある

・亡くなった人の住所が海外にあり、相続人の住所が日本にある

【日本の財産が課税、海外の財産が非課税となる例】

・亡くなった人と相続人の住所が海外にある

相続税の納税や申告は、亡くなった事実を知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。亡くなった人が外国籍であっても日本国籍であっても、納税・申告期限は同様です。

法人税

法人税は、事業を行い利益を得ている法人に課税されるもので外国人も対象です。課税対象に該当する法人は、普通法人(株式会社や有限会社など)と協同組合等(労働者協同組合や信用金庫など)に分けられます。法人税は国税の直接税で、納税方法は納税者が税額を計算して申告・納税する「申告納税方式」です。法人税の申告・納税期限は、各会社が定める事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内と定められています。申告を怠ったり期限を過ぎたりすると、「加算税」や「延滞税」が課される場合があるので注意が必要です。

事業税

事業税は地方税の直接税に該当し、国籍に関係なく事業を行う人が納税するものです。事業税には「個人事業税」と「法人事業税」があります。個人事業税とは、法定業種の事業を行っている所得が290万円以上の個人事業主が支払う事業税のことです。個人事業税が適用される法定業種は、物品販売業や製造業、水産業、医業など合計で70種類あります。事業を行う人は、事業税の納税に該当する業種かどうか必ず確認を行いましょう。

法人事業税とは、法人が行う事業に課される税金のことです。 法人は地方団体の行政サービスを受けて事業を行うため、必要な経費を負担するべきという考えに基づいて課税されています。法人事業税の課税対象の法人は、主に株式会社や財団法人、学校法人などです。

個人事業税も法人事業税も、確定申告書を作成して納税を行います。個人事業税の納税は8月と11月、法人事業税の納税は事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内です。必ず期限内に申告・納税を済ませましょう。

所得税

日本に在留して賃金を得ている外国人は、所得税を支払う義務があります。所得税とは、個人の1年の所得に掛かる税金のことです。会社から給与を得ている人や、個人で商売をして利益を得ている人全員に課税されます。ただし、外国人の場合は日本に住所があるかどうか、どのくらい居住しているのかによって、所得税の範囲が異なる仕組みです。たとえば、日本国籍を持ち、過去10年間に5年以上日本に住所を有していた人は、日本と海外で生じた所得に課税されます。対して、日本国籍がなく居住期間が5年以下の人は、日本で生じた所得に加えて、海外で得た所得のうち日本で支払われた分が課税対象です。日本に住所を持たず居住期間が1年未満の人は、日本で生じた所得のみ課税されます。日本に長く居住している人ほど、納税する所得税の範囲が広くなることを覚えておきましょう。

参照元
総務省「外国人の方の個人住民税について」
国税庁「申告と納税」
東京都主税局「個人事業税

日本の税金の種類について「日本の税金の種類を外国人に向けて解説!海外との比較も紹介」のコラムでも詳しく解説していますので、ぜひご参考ください。

税金の負担を軽くするための控除について解説

税金の負担を軽くするための控除について解説の画像

日本に在留する外国人は、日本人と同様に所得税の控除を受けられます。所得税控除とは、納税者の状況を考慮して税金の負担を減らす仕組みのことです。所得税控除には、所得控除と税額控除の2種類があります。

控除の目的

所得税控除の目的は、控除要件に該当する納税者の所得額から一定額を引いて、税負担を軽くすることです。たとえば、同じ年収の人でも扶養家族の有無で1ヶ月の出費が異なります。そのため、扶養家族がいる人に対して、「扶養控除」として所得から一定額を控除し納税額を減らすのです。所得税控除を行うことで、国民が最低限度の生活を維持するための費用を保持しつつ必要な税を納められます。

所得控除と税額控除

所得税控除には、所得控除と税額控除の2種類があります。この2つの違いは、どの段階で控除をするのかです。基本的に税金は、「所得額×税率=納税額」で計算します。所得控除は所得額から控除するため「(所得額-控除額)×税率=納税額」が正しい計算式です。一方、税額控除は税額から控除するので「(所得額×税率)-控除額=納税額」で計算します。

所得控除・税額控除を行った場合の納税額の例は、以下のとおりです。

【所得額300万円・税率10%・控除額10万円の例】

・所得控除の場合

(300万-10万)×10%=29万

・税額控除の場合

(300万×10%)-10万=20万

所得額が大きければ大きいほど、税率は高くなります。所得控除は、所得額から控除額を引いて税率を掛けるため、控除額のすべてが差し引かれるわけではありません。一方、税額控除は所得額に税率を掛けた金額から控除額が引かれるので、控除額の全額が差し引かれます。よって、税額控除の方が納税額を抑えられるのです。

所得控除と税額控除の種類

所得控除と税額控除の主な種類は、以下のとおりです。

【所得控除】

・医療費控除

・障害者控除

・寡婦控除

・雑損控除

・勤労学生控除

・地震保険料控除

・生命保険料控除

・ふるさと納税(寄附金控除)

・ひとり親控除

・社会保険料控除

・小規模企業共済等掛金控除

 

【税額控除】

・政党等寄附金特別控除制度

・配当控除

・(特定増改築等)住宅借入金等特別控除

・認定NPO法人等寄附金特別控除

・試験研究を行った場合の所得税額の特別控除

・公益社団法人等寄附金特別控除

・住宅特定改修特別税額控除

・認定住宅新築等特別税額控除

各控除の対象者は、年末調整や確定申告を行うことで控除を受けられます。正しい手続きを行い、必要な控除を受けましょう。

参照元
国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」
国税庁「No.1200 税額控除

外国人が受けられる控除を3種類紹介

外国人が受けられる控除を3種類紹介の画像

外国人が受けられる主な控除は、「基礎控除」「扶養控除」「外国税額控除」の3種類です。日本に住所がなく居住期間が1年未満の外国人は、「雑損控除」「寄附金控除」「基礎控除」のみ受けられます。

基礎控除

基礎控除は、日本人も外国人も一定の所得以下の人であれば受けられます。確定申告や年末調整を行う際に、総所得金額から差し引くことができる控除です。納税者の合計所得額に応じて基礎控除額が異なります。合計所得額別の基礎控除額は、以下のとおりです。

合計所得額

2,400万円以下

2,400万円~2,450万円以下

2,450万円~2,500万円以下

2,500万円以上

控除額

48万円

32万円

16万円

0円

2019年分以前の基礎控除額は、納税者の合計所得額に関係なく一律38万円でした。2020年1月に基礎控除が改正され、合計所得額が2,400万円以下の場合は控除額が48万円になりました。

扶養控除

以下の要件を満たす扶養家族を持つ人は、扶養控除を受けられます。扶養控除とは、扶養親族がいる場合に受けられる所得控除のことです。扶養控除は日本に居住している外国人にも適用されます。扶養対象になる親族は、以下の4つの要件すべてに当てはまらなければなりません。

・配偶者以外の親族(6親等内の血族または3親等内の姻族)もしくは里子、市町村長から養護を委託された老人

・その年の12月31日時点で16歳以上

・年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみの場合は収入が103万円以下)

・納税者の経営する事業に従事して給与を受けていない(年間で一度でも受け取っていたら対象外)または白色申告者の専業従事者ではない

・納税者と生計を一にしている

扶養控除額は、その年の12月31日時点での扶養親族の年齢や同居の有無により異なります。16歳以上の扶養親族の扶養控除額は38万円、19歳以上23歳未満の場合は63万円です。70歳以上の扶養親族がいる場合は、同居をしているかしていないかで金額が変わります。納税者もしくはその配偶者の父母・祖父母と同居をしている場合の扶養控除額は、58万円です。同居をしていない場合は48万円と、同居の有無で10万円の差が生じます。

外国税額控除

外国税額控除とは、外国人が日本と海外の両方に納税した場合に受ける税額控除のことです。日本に住所を持ち1年以上在留している外国人は、海外所得のすべてまたは一部の所得税が掛かります。日本と海外の所得税を二重で納税する事態を防ぐために、外国税額控除が存在するのです。ただし、外国税額控除を認めていない国や、認めていても適用範囲を限定している国があります。もし、外国税額控除が認められない場合は、日本と海外の両方への納税が必要です。

外国税額控除のうち所得税の控除を受けるには、その年に納めた外国所得税を日本に申告しなくてはなりません。申告をすれば、日本で納めるべき税金から外国所得税が差し引かれます。ただし、外国税額控除には限度額があり、外国所得税の全額が控除されるわけではありません。控除限度額は、以下の方法で計算されます。

所得税の控除限度額=その年の所得税額×(その年の外国所得総額÷その年の全所得総額)

もし、外国納税分が限度額を超えて一部控除が適用されない場合、過去の3年間分であれば翌年に繰越すことが可能です。よって、その年に控除されなかった金額はあとから還付されます。

参照元
国税庁「No.1199 基礎控除」
国税庁「No.1180 扶養控除

日本の経済への理解をより深めたい方は「日本の税金の還元率は海外と比べて高い?低い?外国人に向けて解説」のコラムもぜひご覧ください。

まとめ

まとめの画像

日本に在留する外国人が納める税金には、住民税や所得税、法人税、相続税、事業税などがあります。日本人と同様に課税されるため、納税者は給与天引きもしくは市区町村役場で支払わなくてはなりません。

外国人にも、税金の負担を軽くするための控除が適用されます。控除を受けるには、定められている要件を満たす必要があります。条件をよく確認して、適切な控除を受けましょう。

ライター

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