「日本の消費税の歴史を知りたい」「税制度はどのように変化しているの?」と思う外国人もいるでしょう。日本で消費税が導入されたのは1989年で、当初の税率は3%でした。このコラムでは、消費税の歴史や導入された理由について詳しく解説します。また、消費税以外の税の歴史も紹介しているので、参考にして日本の税制度に関する知識を増やしましょう。
目次
日本の消費税の歴史を紹介
日本で消費税が導入されたのは、1989年の4月1日です。商品やサービスに対して、3%の消費税を納めるように制定されました。しかし、消費税の導入に納得できなかった国民からは、非難の声が多く寄せられたそうです。当時は消費税の話題で持ち切りになったり、反対運動が行われたりしたといわれています。それでも、1997年には5%、2014年には8%、2019年の10月1日には新聞や飲食料品以外の商品やサービスは10%と、徐々に消費税率が引き上げられました。
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日本で消費税が導入された理由
日本には、消費税を導入しなくてはならない理由がありました。ここでは、消費税を導入した経緯について解説します。
物品税の判断が困難になったため
日本で消費税が導入されたのは、「物品税」の判断ができなくなったためです。物品税とは、贅沢品と判断されるものに課される税のことを指します。たとえば、物品税の対象とされていたのは毛皮製品やコーヒー、ウーロン茶などです。一方で、絹織物や紅茶、緑茶、玉露などは非課税でした。しかし、価値観の変化や所得水準の上昇に伴い、物品税の判断が困難になります。そのため、物品税は廃止され、代わりに消費税が導入されたのです。
国民の税負担をできるだけ平等にするため
消費税が導入された背景には、国民の税負担を平等にする目的もあります。戦後の日本の税制は、シャウプ勧告による所得税や法人税などの直接税を中心としたものでした。シャウプ勧告とは、コロンビア大学の教授であるシャウプ博士の使節団が出した勧告のことです。シャウプ勧告は直接税中心主義でしたが、徐々に納税者の負担が偏り始め国民の不満が高まりました。そのため、消費税を導入して国民の税負担を公平にしようと考えたのです。
高齢化社会により納税者の税負担が大きくなるため
消費税が導入されたのは、高齢化社会の影響もあります。高齢化社会とは、65歳以上の高齢者の割合が人口の7%を超えた社会のことです。日本では高齢化社会が進み、年金や福祉のための財源確保が難しくなりました。しかし、現役世代に頼って財源確保を行おうとすると、税負担が偏り不満が生まれるでしょう。そのため、日本では消費税を導入して、現役世代だけに負担が偏らないようにしました。
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日本の消費税以外の税の歴史
日本の税の歴史は長く、時代の変化とともに税制度も形を変えています。今と昔では、税の納め方や納めるものに違いがあるのです。ここでは、消費税以外の税の歴史を紹介します。
租庸調による税制度
日本の税制度は、701年に制定された大宝律令の「租・庸・調」から始まります。租は田んぼに課される税のことです。収穫した米のうち約3%を納めます。庸は都で10日間働くことによる労役で、労役の代わりに布や米を納めても良いとされていました。調は絹や工芸品などの特産物や布を納める税です。租は男女の農民、庸と調は男性のみに課せられていました。
年貢や労役、公事による税制度
平安時代には貴族の荘園が各地にできたため、農民は荘園の領主に年貢や労役、公事を納め始めます。平安時代の年貢とは、主に収穫した米のことです。労役とは肉体労働のことで、土木工事や農業用水の確保などを行います。公事とは布や糸、野菜などの手工業製品や採取物を納めることです。
鎌倉時代になると、「座」という手工業者や商人の組合ができて、幕府や領主などに手工業製品や労働奉仕といった「座役」を納める税制度も始まりました。
地租や所得税、法人税の導入
江戸時代は、土地に対して課せられる地租が中心でした。大宝律令が制定されてから江戸時代まで、農民は米を納めていましたが、明治時代には現金で納める「地租改正」という制度ができます。地租改正では、地租を地価の3%にして現金で納めるよう制定されました。現金で納めるようになってから、国の財政は安定したといわれています。
所得税や法人税が導入されたのも明治時代です。所得税は個人の所得にかかる税、法人税は事業で得た所得にかかる税を指します。所得税が制定されたのは1887年で、所得金額が300円以上の人に課せられました。法人税が導入されたのは1899年です。当初の法人税は、所得税の一種として制定されました。
源泉徴収制度の導入、納税の義務の制定
1940年には税制改正が行われ、所得税の源泉徴収制度が導入されました。源泉徴収制度とは、給与から税金を引いて納税する制度です。所得税には、事業所得や給与所得など、所得の性質ごとに分けて税率を掛ける分類所得税と、すべての所得額を合計して税率を掛ける総合所得税があります。分類所得税のうち、賞与や給与などが源泉徴収制度の対象となりました。
1946年には、日本国憲法が公布され「納税の義務」が制定されます。国を支えて発展させるためには、国民が平等に税金を納めなくてはなりません。納税の義務は、「勤労の義務」「教育の義務」に並ぶ国民の三大義務です。
日本の税金についてさらに詳しく知りたい方は、「日本の税金の種類を外国人に向けて解説!海外との比較も紹介」のコラムもご覧ください。
まとめ
日本の消費税は、1989年の4月1日に制定されました。当初の税率は3%でしたが、1997年には5%、2014年には8%、2019年の10月1日には10%まで引き上げられています。消費税のほかにも、日本の税制度には長い歴史があり、時代とともに変化を遂げているのです。