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難民認定申請中の外国人でも、在留資格「特定活動・6月(就労可)」を持つ人であれば雇用できます。ただし、雇用は難民認定申請の審査期間中のみと制限されているため注意が必要です。
とはいえ、制度を上手に活用すれば、「就労許可に原則制限がない」「日本人と同じ労働時間で雇用できる」といったメリットが期待できます。この記事では、難民認定申請中の外国人雇用について、就労可能期間やメリットを中心に詳しくまとめました。
目次
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難民認定申請とは、本国の迫害から逃れて来日した外国人が日本に保護を求めるためにする申請です。2018年1月14日以前、難民認定申請中の人には、申請から6ヶ月が経過すると就労が許可されていました。
しかし、実際には難民認定制度を利用する多くの外国人が難民に該当せず、あくまでも日本での就労を目的に制度が利用されていたという問題点が次第に浮き彫りになったのです。
これを受けて運用方針が見直された結果、2018年1月15日以降、明らかに難民には該当しないと判断された申請者は、難民認定申請中でも在留・就労が不可能となりました。こうした外国人は、在留期間が経過すると出国のための手続きの対象となります。
外国人雇用を考える企業は「移民とは?外国人雇用を考える企業に移民と難民の違いを解説」のコラムを参考にして、さらに理解を深めましょう。
従来、難民認定申請中の外国人は、申請から6ヶ月経つと就労が許可されました。しかし、現在では運用方針が見直されており、制限が追加されています。
現在は、出入国在留管理庁から難民認定申請を行うに足る正当な理由があると判断された人であれば雇用できます。ここでいう正当な理由とは、「難民条約上の難民である可能性が高いと思われる案件または本国情勢等により人道上の配慮を要する可能性が高いと思われる案件」と同義です(※)。
上記に該当する申請者には在留資格「特定活動・6月(就労可)」が付与され、就労が許可されるという仕組みです。
参照元 法務省 出入国在留管理庁「就労制限の対象となる難民認定申請者について」
雇用可否を見分ける際は、本人の在留カードおよび指定書を確認しましょう。ただし、在留カードには、たとえ「特定活動・6月(就労化)」が付与されていたとしても「特定活動」としか記載されません。
そのため、必ず指定書も確認してください。指定書とは、滞在理由・滞在期間を第三者にわかりやすく示すための書類であり、パスポートに添付されています。
なお、雇用可否を見分ける際は、本人に口頭で尋ねるのではなく、必ず実物の書類を見せてもらい判断しましょう。内容が改ざんされるおそれがあるため、コピーによる判断は避けてください。
難民認定申請中の外国人雇用は、申請に対する処分が下されるまでの期間限定となります。法務省によると、2019年4月~6月時点の難民認定審査の平均処理期間は458日です(※)。また、法務省は難民認定申請の振分け期間を最長2ヶ月程度と見込んでおり、3ヶ月目から就労できると仮定すれば約400日(13.3ヶ月)ほど働いてもらえます。
なお、もしも申請が通れば定住者の在留資格が付与されるため、本人が希望すればそれ以降は期間の制限なく継続的な雇用が可能です。
参照元 法務省「難民認定審査の処理期間の公表について」
2019年に難民認定申請した外国人は10,375人と報告され、前年比で118人(約1%)の減少が見られました。申請者の国籍は76か国にわたり、このうち申請者数の上位5カ国はスリランカ・トルコ・カンボジア・ネパール・パキスタンです。これら5カ国からの申請は、全体の約62%を占めています。
申請者の男女の内訳は、男性8,137人(申請者全体の約78%)・女性2,238人(同約22%)と報告されており、男性の比率が非常に高いです。
また、男女別の年齢構成比は男女ともに20代・30代が多く、20歳から39歳までの申請者が占める割合は男女ともに約76%と報告されています。その一方で、未成年の申請者は少なく、男性は約7%・女性は約15%に留まっているのが特徴的です。
申請の処理数は7,131人と報告されており、前年比で6,371人(約47%)の減少が見られました。処理の内訳は認定者(43人)・不認定者(4,936人)・申請を取り下げた者など(2,152人)となっており、難民と認定されるケースは極めて少ないことがわかります(※)。
参照元 法務省「令和元年における難民認定者数等について」 p1~p7より
難民認定申請中の外国人を雇用すると、以下のようなメリットが得られます。
就労許可に原則制限がない
日本人と同じ労働時間で雇用できる
高学歴や優秀な人材の確保を狙える
それぞれのメリットについて順番に詳しく解説します。
難民認定申請中の外国人に付与される就労許可には、風俗業を除いて制限がありません。そのため、例えば、工場労働者や工事の現場作業員などとして柔軟に雇用できます。
難民認定申請中の外国人は、労働基準法による制約は受けるものの、日本人と同じ労働時間で雇用できます。これに対して、学生・主婦に資格外活動として認められる労働時間は1週間で28時間のみです(学生は長期休暇時に限り1日8時間まで労働が認められます)(※)。
参照元 厚生労働省 東京労働局「Q4.留学生をアルバイトとして雇うことは可能ですか。」
難民認定申請中の外国人の中には、高学歴や優秀な人材も含まれています。就労内容や就労時間に特別の制限がない中でこうした人材を雇用できるのは魅力的なメリットです。
難民認定申請中の外国人の雇用には、以下のようなデメリットもあるため注意が必要です。
審査期間中しか雇用できない
不認定は現場の人員不足を引き起こす
就労許可のない外国人を雇用すれば不法就労に問われる
それぞれのデメリットについて順番に詳しく解説します。
難民認定申請の審査の結果、難民として認定されなかった場合、「特定活動・6月(就労可)」の在留資格を喪失します。つまり、審査期間が終了すると雇用も終了するのです。なお、申請の結果に不服がある場合、審査請求が可能です。また、再び難民認定申請することも認められています。
先述のとおり難民認定申請が却下された場合、就労許可がなくなります。難民認定申請中の外国人が不認定となれば、現場に人員不足を引き起こすおそれがあるのです。
したがって、雇用者としては難民認定申請中の外国人雇用は期限付きであることを念頭に置きながら、常に現場の人員確保を意識しておくようにしましょう。
就労が認められていない外国人を雇用すれば、不法就労助長罪に問われて、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方が課せられます(※)。在留カードの確認をしていないなどの過失がある場合にも処罰の対象となるため注意が必要です。
外国人を雇用する際には本人の在留カード・パスポート(指定書)を見せてもらい、就労許可の確認を怠らないようにしてください。
参照元 警視庁「外国人の適正雇用について」
難民認定申請は、申請者の住所または現在地を管轄する地方出入国在留管理局(支局・出張所含む)で行います。難民認定申請に期限はないものの、原則として申請者本人が自ら出向いて手続きを行わなければなりません。
申請者本人が「難民認定申請書」に必要事項を記入し、添付書類を用意したうえで窓口に提出します。難民認定申請書は、法務省のWebサイトから各国語版の書類をダウンロード可能です。
必要な添付書類には、以下のものが挙げられます(※)。
申請者が難民であることを証明する資料(または難民であることを主張する陳述書) 1通
写真(提出日前3か月以内に撮影された縦4cm×横3cmの無帽・正面上半身のもので、裏面に氏名が記載されているもの) 2葉 (ただし、在留資格のない者は3葉)
合わせて、以下の書類の提示も必要です(※)。
旅券または在留資格証明書(提示できない場合は理由を記載した書面1通を提出)
在留カード(所持している場合)
仮上陸の許可、乗員上陸の許可、緊急上陸の許可、遭難による上陸の許可、一時庇護のための上陸許可を受けている外国人はその許可書(仮放免中の外国人は仮放免許可書)
その後、法務大臣から難民と認定された場合には難民認定証明書が交付され、定住者の在留資格が付与されます。
参照元 法務省「難民認定申請」
難民認定申請中の外国人のうち、在留資格「特定活動・6月(就労可)」が付与されている人であれば、日本企業での雇用が認められます。ただし、申請が却下されれば、雇用の継続は不可能となるため注意が必要です。
とはいえ、制度を上手に利用すれば、「就労許可に原則制限がない」「日本人と同じ労働時間で雇用できる」といったメリットもあります。現場の人員不足や不法就労のリスクに気を付けながら、雇用を検討しましょう。
監修:古橋洋美 古橋洋美行政書士事務所
平成28年5月行政書士として静岡県にて独立開業。当初から外国人在留資格関連業務、帰化申請業務を数多く手掛けている。主に就労系在留資格関連業務を得意とし、技能実習生の法的保護講習の講師も行っている。また日本で暮らす外国人の支援を行うNPO法人のスタッフとして外国籍の子供たちへの就学支援、若者への職業訓練を行うなど在留資格取得のみならず来日後の外国人とも深く関わっている。Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100012298991755/Twitter:@gyoseihiromi05 https://ameblo.jp/gyosei-hiromi