移民とは?難民との違いや定義をわかりやすく解説!日本や各国の政策も紹介

2022年12月12日
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濵川恭一 (監修)
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net

移民とはどのような存在なのか、はっきりと分からない方も多いでしょう。移民の明確な定義は存在しないものの、一般的には生まれ育った国から他国に居住地を変更した人を移民と呼びます。そのため、日本に住んでいる外国人労働者も移民といえるでしょう。
このコラムでは、移民とは何かを解説します。移民について詳しく知り、自社での受け入れに活かしましょう。

目次

  1. 移民とは
  2. 日本の移民受け入れ状況
  3. 各国の移民政策や受け入れ状況
  4. 移民を雇用するメリットとは
  5. 移民の受け入れには懸念される問題もある
  6. まとめ

移民とは

移民とは、生まれ育った国を離れてほかの国に居住した人のことです。ここでは、移民の定義や難民との違いを解説します。

移民の定義

移民には明確な定義は存在しません。しかし、一般的には住む国を変更した人すべてを移民と表すことが多いようです。長期的に住む国を移動した場合は「恒久移住」、3ヶ月から1年以内の移動を「短期的(一時的)移住」と呼ぶ場合もあります。

難民との違い

移民と難民の違いは、他国に移り住むことになった理由です。
「難民」は紛争や迫害、人権侵害などから逃れるために、仕方なく国を逃れることになった人たちを指しています。対して、ある程度自らの意思で住む国を移動した人が「移民」です。
前述したとおり、移民とは住む国を変更したすべての人を指します。そのため、難民も移民の一部といえるでしょう。ただし、緊急度や置かれた環境が異なるため、難民と移民という表現で区別しているのです。

日本の移民受け入れ状況

日本政府の考えでは、移民と外国人労働者は別物です。現在、日本政府としては、人道的配慮が必要な移民を除き、積極的には移民を受け入れないという方針を示しています。一方、外国人労働者は今後も積極的に受け入れるという方針です。

日本は移民政策を取っていない姿勢

日本は移民を受け入れる政策を取ってないスタンスです。2018年に安倍晋三首相(当時)は、経済財政諮問会議にて「いわゆる移民政策は取る考えはない」との姿勢をあらためて明らかにしました。日本政府の考えでは、移民とは外国人が日本国籍を取得し、永続的に居住することを指しています。そのため、期限付きの在留資格を持って日本で暮らしている外国人は、あくまで一時的に日本に在留しているだけであり、移民ではないとしているのです。

外国人労働者は積極的に受け入れている

日本政府は移民政策を取っていないとしている一方で、外国人労働者の受け入れに関する政策は積極的に進めています。その代表的な政策が、2019年4月の在留資格「特定技能」の創設です。特定技能の創設は、今までの就労に関する在留資格では許可されていなかった外国人の単純労働を可能にしました。特定技能の在留資格は1号と2号があります。2号になると在留期限が事実上無期限になり、家族の帯同も可能です。そのため、制度検討時には「事実上の移民政策」として国内で批判が多くありました。

議論を巻き起こしてまで特定技能の在留資格創設が進められたのは、日本の深刻な人手不足が関係しています。日本は、少子高齢化による労働力不足や職業選択肢の多様化により、慢性的な人手不足に陥っている状態です。特に、介護や製造業、飲食業などの一部の職種では、国内だけでは労働力を確保することがむずかしい状況になっています。そこで、日本政府は特定技能の在留資格を作り、海外から労働力を確保できるようにしました。
このように、日本は移民政策を取っていないとしながら、外国人の受け入れは積極的に進めています。そのため、諸外国からは「移民大国」と認識されているのが現状です。

参照元
首相官邸「平成30年2月20日 経済財政諮問会議」
厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和3年10月末現在)

各国の移民政策や受け入れ状況

ここでは、ドイツやフランス、アメリカの移民政策を紹介します。前述した日本の移民政策と比較してみましょう。

ドイツ

ドイツは自国を「移民国家」と位置づけています。2015年、ヨーロッパには中東の紛争から逃れた難民や移民が大量に流入してきました。ドイツのメルケル首相(当時)は、新たな移民政策を打ち出し多くの難民・移民を受け入れています。人道支援はもとより、労働力の確保を視野に入れての判断ともいえるでしょう。ドイツは日本同様、少子高齢化による人口減少が問題になっている国です。そこで、多くの移民の入国を認めることで人口減少を食い止め、国内の生産力を維持しています。

フランス

フランスは古くから移民を多く受け入れている国です。1974年のオイルショック時には、移民の受け入れを停止する政策を取ったこともありました。しかし、出生率の減少にともない、現在では積極的な受け入れが進められています。
フランス国内には「移民を排除すべき」との考えと「寛容に受け入れるべき」との考えが両方あるのが現状です。特に、中東から来たイスラム教徒の移民に対しては、国内で起こったイスラム過激派テロの記憶から、嫌悪感を示す国民が少なからずいます。

アメリカ

アメリカは「人種のるつぼ」「人種のサラダボウル」などと表されるほど、多様な人種が共存する国です。建国をしたのもヨーロッパから渡ってきた移民であり、さまざまな民族によって成り立ってきたといえるでしょう。しかし、現在では不法移民が大きな社会問題になっています。国境が接しているメキシコや中米北部三角地帯(ブラジル・ベネズエラ・キューバ)から、多くの人々が不法に入国している状況です。2016年から2020年まで続いたトランプ政権は、移民排除とも取れる強固政策を打ち出していました。続いて2021年に発足したバイデン政権は、移民に対して比較的柔和な姿勢ですが、このまま増え続けると方向が転換される可能性もあります。

移民を雇用するメリットとは

企業は移民を受け入れることで、優秀な人材を確保できるでしょう。また、新しいアイデアがもたらされるメリットもあります。

人手不足の解消に繋がる

企業は移民にまで採用対象を広げることで、優秀な人材を確保できる可能性が高まります。国内の労働者人口は減少し続けているため、採用を日本人に限定したままだと人手不足の状態が慢性的に続いていくでしょう。知名度が低い中小企業であればなおさらです。移民のなかには、高い知識やスキルを持った人材もいます。国籍にこだわらず雇用していくことで、企業の業績アップにも貢献できる優秀な人材を確保できるでしょう。

新しいアイデアが創出される

日本人だけでは出てこない発想がもたらされるのも、移民を雇用するメリットの一つです。海外と日本では、文化・慣習や常識が大きく異なります。異なる価値観から生まれるアイデアは、新たなビジネスのヒントになる場合もあるでしょう。

移民の受け入れには懸念される問題もある

移民の受け入れには、少なからず懸念点があるのも事実です。ここでは、移民受け入れ国で起きている問題を解説します。

不当に入国する移民がいる

ルールを守らず他国に入国しそのまま留まる不法移民は、世界各国で問題になっています。移民の多くは、失業や貧困が理由で母国を離れる決意をした人々です。そのため、在留資格を得る条件を満たせないことが多く、正しい手続きを踏んで他国に入国するのが難しい状況にあります。不法に入国した移民は真っ当な仕事にはなかなか就けません。結果として、犯罪を犯してしまったりトラブルに巻き込まれやすくなったりします。

移民は劣悪な環境での労働を強いられやすい

移民は劣悪な環境での労働を強いられやすい傾向にあります。貧困や求職が理由で移住している移民は、劣悪な雇用条件や低賃金での労働を企業から強いられても、なかなか拒否できません。弱い立場である移民につけ込む企業も少なからず存在します。

移民を排除したい人々との対立がある

移民を受け入れると、反対派と賛成派との間で対立が起こってしまう可能性があります。移民に対し、「治安が悪化する」「仕事が奪われる」などネガティブな考えを持つ人も少なくありません。移民が多くいるアメリカやドイツでさえ、反対デモが定期的に起こっています。このような、移民に反対する国民と寛容な国民の対立は、国内の混乱を招くでしょう。

移民の受け入れには良い点と問題視される点の両方があります。しかし、外国人が移り住んでくることで、日本国内の労働力がある程度確保されるのは事実です。

まとめ

移民とは、ある程度自らの意志で住む国を変えた人々を指します。政府は否定しているものの、日本で就労する外国人労働者も移民に含まれるでしょう。
移民を雇用することで、人材不足を解消できたり新しいアイデアが生まれたりといったメリットがあります。人材不足に悩んでいる企業は移民の受け入れ体制を整え、雇用を検討してみましょう。