日本語能力試験N1の難易度は?外国人採用で求められる日本語レベル

2020年04月22日
島田亮司 (監修)
日本ビザ国際行政書士事務所
ストックホルム大学交換留学を経て、中央大学法学部卒業。東京書籍株式会社に入社、主に英語辞典や教材の編集、異文化理解教育のテキスト製作を担当。その後、PHP研究所にて英文月刊誌の副編集長として国内外の取材、執筆、編集に携わる一方、松下幸之助研究の研究スタッフとして外国人経営者向けの研修セミナーの企画、運営、講演を行う。伊藤忠商事食料カンパニー向けのアナリストを経て独立。1997年設立のNPO国際交流団体SIEN(埼玉県国際交流協会登録)の代表として現在までの22年間、異文化理解、交流促進に関わる社会活動をする他、外国人社員教育、外国人採用コンサルティング、在日外国人向けに生活サポートや賃貸物件のアドバイス等も行う。宅地建物取引士。英語通訳案内士。 http://visa-nihon.com/

日本語能力試験N1の難易度について、日本語を母語とする私たちには理解しづらいのではないでしょうか。この記事では、外国人社員の採用を検討されている企業向けに、日本語能力試験の概要からN1の難易度、在留資格取得のために必要な日本語レベルまで、わかりやすく解説します。

日本語能力試験の概要

日本語能力試験は、日本語を母語としない人に向けて、日本語能力を認定する試験として、1984年に開始されました。主催は国際交流基金と日本国際教育支援協会です。現在では応募者数が136万人(2019年)を超え、世界最大の日本語の試験となっています。

・試験日程と試験会場

試験は7月と12月の年2回行われています。日本国外の試験会場は世界85ヵ国、249都市ありますが、その中には7月、12月のどちらかのみ実施する会場もあります。

・N1~N5の難易度

N5が最もレベルが易しく、N1が最も難しくなっています。受験者は希望する難易度の試験を受験できます。合格するには各区分(言語知識、読解、聴解)の得点が基準点を上回り、且つそれぞれを合計した得点が合格点を上回る必要があります。合格点はレベルにより違いますが、N1の場合100点(180点満点)になります。

N5 基本的な日本語をある程度理解することができる
  読む:ひらがなやカタカナ、日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた定型的な語句や文、文章を読んで理解することができる。
  聞く:教室や、身の回りなど、日常生活の中でもよく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聞き取ることができる。
N4 基本的な日本語を理解することができる
  読む:基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。
  聞く:日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
N3 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
  読む:日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解することができる。新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる。日常的な場面で目にする難易度がやや高い文章は、言い換え表現が与えられれば、要旨を理解することができる。
  聞く:日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる。
N2 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
  読む:幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の記事・解説、平易な評論など、論旨が明快な文章を読んで文章の内容を理解することができる。一般的な話題に関する読み物を読んで、話の流れや表現意図を理解することができる。
  聞く:日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードの、まとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる。
N1 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる
  読む:幅広い話題について書かれた新聞の論説、評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる。さまざまな話題の内容に深みのある読み物を読んで、話の流れや詳細な表現意図を理解することができる。
  聞く:幅広い場面において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる。
参照:日本語能力試験 認定の目安

日本語能力試験N1について

N1は日本語能力試験の中で最も難易度が高く、日本語を母語とする日本人にとっても、全問正解は難しいレベルです。

・試験内容

試験は言語知識(文字・語彙・文法)、読解、聴解の3つ要素から構成されています。試験時間は言語知識と読解で110分、聴解で60分の合計170分です。マークシート方式の試験のため、話したり書いたりする能力を直接測る試験科目はありません。

サンプル問題

(  )に入れるのに最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。

私の主張は単なる(  )ではなく、確たる証拠に基づいている

1 模索

2 思索

3 推測

4 推移

いかがでしょうか?答えは3番です。漢字の読み方はもちろんのこと、文脈を理解し適切な選択肢を選ぶ能力が求められています。

参照:日本語能力試験 問題例

・合格率

最新の2019年7月実施分のデータによると、N1の合格率は29.3%で、N1からN5の中で最も低くなっています。

在留資格取得のために必要な日本語レベル

在留資格ごとに求められる日本語レベルは異なります。一般的に職種や仕事内容が高度であるほど、必要な日本語レベルも高くなっていきます。

・技能実習と特定技能1号

技能実習制度を使って初めて来日する場合、技能実習1号のビザを取得することになります。日本語能力試験などの試験を受ける必要はありません。送り出し機関において入国前にN4相当の事前講習や、入国後の講習でしっかりと日本語を学ぶ機会があります。一方で特定技能1号の在留資格は、必要な日本語レベルが決まっています。日本語能力試験N4以上、または国際交流基金日本語基礎テストA2以上です。これらに合格しなければ、在留資格を取得できないので注意が必要です。但し、技能実習2号を良好に修了した人は免除されます。

・技術・人文知識・国際業務

外国人留学生の卒業後の受け皿として、よく活用されている在留資格が「技術・人文知識・国際業務」です。在留資格取得のための日本語レベルの条件はありません。しかし、在留資格認定証明書交付申請の場合、N2以上が必要と言われています。日本国内の専門学校や大学を卒業している場合、日本語能力試験をもっていなくても「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得することは可能ですが、不許可となるケースもあります。

・特定活動(本邦大学卒業者向け)

現在低迷している外国人留学生の就職率向上や、就労機会の拡大を目的として、新しく誕生した在留資格が特定活動13(「特定活動46号ビザ」とも呼ばれています)です。「本邦の大学・大学院で習得した知識及び高い日本語能力を活用した業務に従事する場合」に取得申請ができるビザになります。コンビニエンスストアなどでの正社員としての就労も可能となるため、多くの留学生から注目されています。

特定活動13は、日本国内の大学を卒業するだけでなく、必要とされる日本語レベルの条件も高く定められています。日本語能力試験N1もしくはBJTビジネス日本語能力テストにおいて480点以上が必要です。BJT480点以上はN2以上N1以下の難易度と言われています。

外国人採用で求められる日本語レベル

それでは外国人採用で求められる日本語レベルの目安はどのくらいでしょうか?日本語能力試験は、言語知識、読解、聴解力の3つの要素から構成されていますが、ビジネスにおいて求められるのは、会話力や文書作成能力など試験科目以外にあることが多いと思われます。

・職種によりチェックすべき日本語レベルは異なる

たとえば、ホテルにおけるコンシェルジュ業務と、一般企業の広報・宣伝業務を比較してみましょう。コンシェルジュ業務は、お客様との会話がメインとなり、敬語の使い方はもちろん、非言語でのコミュニケーションなど総合的な会話力が重要視されます。

一方で、広報・宣伝業務の場合、社内でのやりとりだけでなく、社外に対してのプレスリリースなど、会話力に加え文書作成能力も重要視されます。

外国人向けの求人案内を見るとN2以上を求めているところが目立ちます。そのため、N2合格を目指している外国人が多いようです。但し、日本語能力試験の資格を持っていなくても、日本での留学生活やアルバイト経験を通して、完璧な日本語を話す留学生もいます。在留資格で必要とされている日本語レベルを満たすことは最低条件ですが、日本語能力試験で測ることのできない部分があるので、実際に本人と面接をして確認することが必要でしょう。

まとめ

日本語能力試験N1の試験内容や難易度、そして在留資格に必要な日本語レベル、外国人採用で求められる大まかな日本語能力について紹介しました。日本に滞在する外国人にとって日本語能力試験はとても身近なものですが、知らなかった方も多いのではないでしょうか。詳細を知りたい方は是非、日本語能力試験のホームページへアクセスしてみてください。

N2レベルを知りたい場合はこちら:日本語能力試験とは?特徴やN2のビジネスレベル

N3レベルを知りたい場合はこちら:日本語能力試験N3スコアのレベルとは

N1~N5のレベルの違いを知りたい場合はこちら:日本語能力試験とは?日本語検定との違い・試験概要やレベルを解説

他の日本語能力試験について知りたい場合はこちら:日本語能力試験(JLPT)、ビジネス日本語能力テスト(BJT)、実用日本語検定 (J.TEST)の違いは?日本語能力のレベルを知りたい!