技能実習制度とは?メリットと問題点を詳しく解説

2020年08月07日
井上通夫 (執筆)
行政書士井上法務事務所
熊本県出身。福岡大学法学部法律学科(憲法・行政法専攻)卒。大学卒業後、日本信販株式会社(現三菱UFJニコス)入社。その後、福岡の大手学習塾勤務(国語・英語担当)。平成18年度行政書士試験合格。平成20年7月に福岡市内で行政書士事務所開業。現在、相続・遺言、民事法務(内容証明、契約書・離婚協議書作成等)から公益法人(財団・社団法人)業務まで幅広く担当。 http://gs-inoue.com/

技能実習制度は、外国人が日本に来て、働きながら日本の技術を学び、本国に帰って、その技術を本国の技術向上に生かすというものです。しかし、受け入れる国のほとんどは開発途上国ということもあり、安い労働力として使っているという批判もあります。ここでは、技能実習制度のメリットと問題点について、詳しくご説明いたします。

技能実習制度とは?

外国人技能実習制度とは、1993年(平成5年)に創設され、2017年(平成29年)11月1日に、新たな技能実習制度が施行された制度です。

この制度の目的は、開発途上国等の外国人を日本の会社等に受け入れ、日本の技能、技術、知識をその外国人に習得させ、習得した機能等を本国に持ち帰ることで、経済発展を支えるための人づくりに協力するというものです。

この制度には、法人等の実習実施機関が外国の法人等の職員を受け入れ、技能実習を実施する「企業単独型」と、商工会等の営利目的でない監理団体が技能実習生を受け入れ、傘下の実習実施機関で実習を実施する「団体監理型」があります。

具体的な方法としては、外国人の研修生が会社、公的機関から派遣され、日本に滞在し、受け入れ機関で研修を受けることになります。なお、研修生の滞在期間は、基本的に1年以内です。

研修は、開発途上国への技術移転が確実に行われるための「研修計画」が作成され、この計画に従って研修が進められます。そして、研修が終了した後、要件を満たしている場合は、同じ機関で実践的な技術を習得するために、雇用関係に従って、さらに2年間滞在することができます。従って、研修と技能実習とを合計した最長3年間滞在することができるのです。

技能実習生には「技能実習」の在留資格が与えられ、1号と2号区分されます。1号は入国した後1年間に技能等を習得する活動、2号は2、3年目に技能を習熟するための活動です。

なお、2号の後に3号に移行を希望する場合、技能検定(3級)、あるいは技能評価試験(専門職)に合格する必要があります。なお、3号に移行する前には、一時(1ヵ月以上1年未満)帰国しなければなりません。

技能実習制度の実態

法務省の統計によると、2017年(平成29年)6月時点で、日本に在留する技能実習生は、251,721人です。先程ご説明したとおり、技能実習制度には、「企業単独型」と「団体監理型」がありますが、実に96.4%が後者の「団体監理型」の受け入れです。また、実習を行っている機関の66%が従業員10人未満の中小・零細の事業所です。

技能実習制度では、1号から2号、2号から3号に移行するという仕組みになっています。この移行の対象となる職種・作業は、主務省令で規定されており、対象職種・作業は77職種あります(2017年時点)。受け入れ人数の多い順から、機械・金属関係、建設関係、食品製造関係となっています。

また、技能実習生の数を国別で見てみると、ベトナム国籍が最も多く、全体の41.6%を占めています。その後が中国国籍の31.8%、そしてフィリピン国籍の10.2%と続きます(いずれも2016年6月時点)。

特に、ベトナム国籍の技能実習生の数は、2011年6月時点で13,789人から2017年6月時点で104,80人と急増しています。対照的なのは、中国国籍の技能実習生の数です。2011年で1番だったのが、その後急速に減少しています。この背景には、近年中国の人件費が増加したことで、わざわざ技能実習生として日本に来る必要がなくなったことが考えられます。

技能実習制度のメリット

技能実習制度のメリットとは、どのようなものでしょうか。大別すると、3つあります。

1つ目は、実際に働いている日本人の従業員の意識が向上することです。新たに外国人の技能実習生を会社に受け入れるとなると、社内のルールや各種のマニュアルを見直す必要が出てきます。あるいは、今まで特に規程や作業マニュアルを設けていなかった場合には、作成したり、整備を行ったりする必要に迫られます。

規程、マニュアルを作成、整備すれば、今まで働いている従業員の意識が向上することも期待できますし、何よりも意識の高い技能実習生が会社に入ってくるという環境の変化が、従業員に良い刺激を与える可能性があります。

2つ目は、組織のグローバル化です。今まで、日本人の従業員しかいなかった会社にとっては、身近に外国人が働いているということで、異国の言葉、文化、習慣などに直に触れることになり、直接グローバル化を感じることになります。

今後日本では、生産年齢が減少しますから、自ずと外国人労働者の力を借りることになります。このことは頭で理解していても、身近に外国人が働いていないと、実感できません。しかし、同じ職場に外国人がいれば、今後到来するグローバル化を痛感できることになるのです。

3つ目は、会社の海外進出、外国人採用にきっかけになることです。先程もご説明したように、外国人労働者の受け入れは、年々現実味を帯びてきています。

しかし、いざ外国人労働者を受け入れようとしても、会社にその土壌や海外とのコネクションがなければ、上手くいきません。その点、外国人技能実習生を受け入れていれば、会社にグローバル化の土壌、風土が出来上がり、実際に外国人労働者を採用しようとしても、日本人の従業員はすんなりと受け入れてくれるはずです。

また、定期的に技能実習生を受け入れることで、その国との信頼関係を築くことができ、採用する際にも、有利に働くはずです。

技能実習制度の問題点

技能実習制度の問題点として、3つの方向からご説明します。

まず1つ目は、技能実習生の待遇に関することです。団体監理型の技能実習生は、2ヵ月間の講習を受け、その後は受け入れる会社の従業員になります。

そうなると、労働基準法等の日本の法律が適用されることになり、技能実習生とはいえども、賃金は最低賃金以上が支給され、労働時間は基本的に1日8時間、週40時間までとなります。また、時間外労働、深夜勤務、休日出勤の場合には、割増賃金を支払わなければなりません。

しかし実際には、賃金や労働時間等について、劣悪な環境で働いている技能実習生が少なくありません。このような事態はしばしば問題となり、マスコミが取り上げています。また、会社の上司等が技能実習生に対して、パワーハラスメント、暴行、脅迫等を行うケースも散見されます。

2つ目は、技能実習生の犯罪行為です。警察庁の統計によれば、2017年に刑法犯で検挙された技能実習生は、1,642人で、年々増え続けています。多くの場合、窃盗ですが、これは、低賃金が主な原因と考えられますが、いずれにしても、犯罪行為と日本の生活によく馴染めないことが無関係ではありません。

また、犯罪ではありませんが、失踪する技能実習生の問題も、決して見逃すことはできません。法務省の統計によれば、2017年に失踪した技能実習生は7,089人という数字です。

実際に失踪した技能実習生に対して行った聞き取り調査では、失踪した動機のトップは低賃金、それから指導の厳しさ、暴力と続きます。職場の劣悪な環境が、技能実習生の失踪を招いていることがわかります。

3つ目は、技能実習生を送り出す側、つまりエージェントの問題です。海外には、日本に外国人を送り出すことを目的とする団体(エージェント)が多くあります。

もちろん、多くのエージェントが、自国の国民を親身になってお世話し、日本に送り出してくれる良心的な団体です。しかし、中には日本に行って働きたいと思っている外国人を募集し、高額な報酬をもらって、日本に派遣するような団体もあります。

日本で働きたい人は、エージェントに借金をして報酬を支払って、後で大きなトラブルに発展するケースも発生しています。