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外国人を雇用したら、ハローワークで「外国人雇用状況の届出」を行う必要があります。また、離職の際も同様です。これらは日本人の雇用では発生しない手続きなので忘れないようにしましょう。
このコラムでは、外国人雇用状況の届出の提出期限、記入項目を解説。また、ハローワークでの求人の出し方や外国人雇用で受け取れる助成金についても触れています。外国人の受け入れを検討している企業は、内容を把握しておきましょう。
目次
「外国人雇用状況の届出」は、外国人の雇用・離職があった企業に対して、氏名や在留資格などの届出を義務付ける制度です。
外国人を雇用した企業は、事業所の所在地を管轄するハローワークに「外国人雇用状況の届出」を提出しなければなりません。外国人の離職があったときにも同様に届け出が必要です。日本人の雇用では発生しない手続きなので、初めて外国人を雇用する企業は忘れてしまうケースも多いようです。手続きの方法を理解し、正しく届け出を完了させましょう。
雇用時にハローワークへの届け出が必要なのは、「外交」「公用」「特別永住者」以外の在留資格を持つ外国人です。「外交」「公用」は国や政府の仕事に関わる外国人のための在留資格なので、届け出をする必要がありません。「特別永住者」は、入管法とは別の法律のもと運用されている在留資格なので届け出が不要です。
上記以外の在留資格を持つ外国人を雇用したら、必ず外国人雇用状況の届出を行いましょう。就労に制限のない身分に基づく在留資格を持つ外国人や非正規雇用の外国人でも届け出が必要です。
ハローワークへの外国人雇用状況の届出は、外国人ではなく雇用主の義務です。外国人が派遣社員の場合は、派遣元に届出の義務があります。在留資格の手続きは基本的に本人が行いますが、ハローワークへの届け出に関しては違うので注意しましょう。
政府が「外国人雇用状況の届出」を義務付けている理由は、日本で働いている外国人労働者の雇用状況を把握するためです。また、ハローワークは「外国人雇用状況の届出」に基づいて事業主へ助言や指導を行い、外国人労働者の雇用環境の改善を目指します。離職した外国人への再就職支援も、「外国人雇用状況の届出」に基づいて行われるのです。
外国人労働者が安心して働ける社会のために、企業は「外国人雇用状況の届出」をしっかりと行う必要があります。
参照元 厚生労働省「外国人の雇用」
外国人を雇用した際に「外国人雇用状況の届出」を怠ると、30万円以下の罰金が科せられることがあります。虚偽の申告を行った場合も同様に罰金が科せられるので、必ず雇用する外国人の個人情報に誤りがないか確認したうえで届出を行いましょう。
なお、うっかり忘れてしまった場合は気付いた時点ですぐに届け出をすれば、処罰を受けなくても済む可能性があります。
ハローワークに届け出をする前に、外国人の在留資格や在留期間が適切かを確認しましょう。また、アルバイトとして雇用する際は、資格外活動許可を受けているかを調べる必要があります。
外国人を雇用する前に、氏名や住所、在留カードに記載されている在留資格や就労制限の有無などを確認しておきましょう。在留資格や就労制限の有無、在留期間は在留カードの表面に記載されています。
就労不可の在留資格を持つ外国人や在留期限が切れている外国人を雇用すると、事業主は「不法就労助長罪」に問われます。3年以下の懲役または300 万円以下の罰金、もしくはその両方が科されるので、必ず雇用する前に外国人の在留資格や在留期間の確認が必要です。
就労ができない「留学」や「家族滞在」などの在留資格を持つ外国人をアルバイト雇用する場合は、資格外活動許可を得ているかを確認しましょう。資格外活動許可を得ている外国人は、風営法に関わる仕事以外であれば、週に28時間以内のアルバイトが可能です。
資格外活動許可を得ていない外国人をアルバイトとして雇用した場合も、事業主は「不法就労助長罪」に問われます。ハローワークへ届け出る「外国人雇用状況届出書」にも資格外活動許可の有無を記入する項目があるので、必ずチェックしましょう。
資格外活動許可については「資格外活動許可とは?外国人を雇用する際のポイントを企業へ向けて解説」のコラムで詳しくまとめています。
参照元 出入国在留管理庁「資格外活動許可について」
ここでは、外国人が「雇用保険に加入する場合」と「加入しない場合」に分けて、「外国人雇用状況の届出」の方法を紹介します。
雇用保険の被保険者となる外国人を雇用する場合は、ハローワークへ「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。提出が必要になるのは、雇用保険の被保険者となるすべての外国人です。パートやアルバイトなどの雇用形態でも、雇用保険に加入する場合は「雇用保険被保険者資格取得届」を用います。
「雇用保険被保険者資格取得届」は、ハローワークの窓口や郵送、インターネット上で提出できます。
直接窓口で申請する場合は、事業所を管轄するハローワークへ行きましょう。「雇用保険被保険者資格取得届」が置いてあるので記入し、雇用保険に関する手続きを扱っている窓口に提出します。
郵送する場合は、Webサイト「ハローワークインターネットサービス」で様式をダウンロードしましょう。様式のみダウンロードする方法と、必要事項を記入してからダウンロードする方法が選べます。
「雇用保険被保険者資格取得届」を電子申請で行う場合は、各府省への申請や届出などが行える「e-Govポータル」を利用します。
「雇用保険被保険者資格取得届」の提出期限は、外国人が雇用保険被保険者になった翌月の10日までです。
もし、出し忘れてしまった場合でも、6ヶ月以内であれば追加の書類がなくても手続きできます。しかし、6ヶ月以上遅れた場合は遅延理由書が必要です。遅延理由書が必要となる期間はハローワークによって異なるので、出し忘れに気付いた場合は早急に問い合わせましょう。
記入項目は日本人の場合とほとんど同じですが、外国人労働者の届出の際は以下の項目も記入が必要です。
外国人労働者の在留カードを確認しながら、記入ミスがないようにしましょう。
雇用保険被保険者とならない外国人を雇用する場合は、ハローワークへ「外国人雇用状況届出書」を提出します。主に働く時間が少ないパートや留学生アルバイトが該当するでしょう。雇用保険への加入条件を満たさない派遣社員の場合も、「外国人雇用状況届出書」を提出します。
「外国人雇用状況届出書」は、事業所を管轄するハローワークの窓口かインターネット上で提出できます。窓口で手続きする場合は、ハローワークにある「外国人雇用状況届出書」に記入して提出しましょう。なお、届出書は厚生労働省のWebサイトからでもダウンロード可能です。
インターネット上で電子申請する場合は、厚生労働省の「外国人雇用状況届出システム」を利用します。利用にはIDとパスワードの登録が必要です。ただし、過去にハローワークで「外国人雇用状況届出書」を提出した企業は、外国人雇用状況届出システムからの新規登録ができません。この場合は、以前届け出をしたハローワークへの問い合わせが必要です。
「外国人雇用状況届出書」の提出期限は、外国人を雇用した翌月の末日までです。9月1日に雇用した場合は10月31日までに届出をします。もし、提出期限を過ぎてしまった場合は、早急に事業所を管轄するハローワークに問い合わせましょう。
外国人雇用状況届出書の記入項目は以下のとおりです。
雇い入れの際は、離職年月日の欄は空欄にします。
参照元 厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」
外国人が離職する際も、ハローワークへ「外国人雇用状況の届出」が必要です。手順は基本的に雇用のときと一緒ですが、一部用紙が異なるので注意しましょう。
雇用保険被保険者である外国人が離職する場合は、ハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出することで、「外国人雇用状況の届出」を行ったと見なされます。
「雇用保険被保険者資格喪失届」は、事業所を管轄するハローワークの窓口や郵送、インターネット上で提出可能です。
様式はハローワークインターネットサービスでダウンロードできます。「雇用保険被保険者資格取得届」と同じく、様式のみダウンロードする方法と項目を記入してからダウンロードする方法が選択可能です。
「雇用保険被保険者資格喪失届」は、外国人が離職した翌日から10日以内に提出しなければなりません。「雇用保険被保険者資格取得届」の提出期限である翌月の10日までと混同しないようにしましょう。
記入項目は日本人の場合とほとんど同じですが、外国人労働者の届出の際は以下の項目も記入します。
ほかには、事業主の氏名・住所・電話番号といった項目も記入が必要です。雇用保険の資格取得年月日や離職等年月日なども正確に記入しましょう。
雇用保険未加入の外国人が離職する際は、雇用したときと同じく「外国人雇用状況届出書」の提出が必要です。
雇用保険未加入の外国人が離職する場合は、事業所を管轄するハローワークの窓口で「外国人雇用状況届出書」を提出します。
雇用した際と同じように、外国人雇用状況届出システムを利用した電子申請も可能です。ハローワークへの訪問が難しい場合に利用すると良いでしょう。
離職時の「外国人雇用状況届出書」の提出期限は、退職した翌月の末日までです。雇用した際の「外国人雇用状況届出書」の提出期限と同じと覚えておくと良いでしょう
離職する際の「外国人雇用状況届出書」は雇用時と同じ用紙を使います。用紙の一番上に雇入れか離職かを選択する項目があるので、離職に丸を付けましょう。その後、以下の項目に必要事項を記入します。
離職年月日の記入を忘れないようにしましょう。
参照元 厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」
雇用手続きで外国人の在留カードやパスポートを扱う際は注意が必要です。以下では、個人情報の取り扱いについて解説します。
在留カードやパスポートなどの本人確認書類は、原本を預かったままにするのではなく写しを取ると良いでしょう。在留カードやパスポートは個人情報に当たるので、扱いに注意が必要です。なお、個人情報保護法では、個人情報を取得する場合はあらかじめ本人に利用目的を明示しなければならないとあります。そのため、ハローワークへ提出する届出作成のためと外国人に伝えてから、本人確認書類をコピーしましょう。本人確認書類の写しは厳重に管理し、紛失や情報漏洩に注意しなければなりません。
外国人を複数人雇用する場合は、個人情報を管理できるシステムを導入するのがおすすめです。外国人の個人情報を管理するシートを自社で作成すると良いでしょう。氏名や在留資格、在留期間、就労時間の制限などを一覧にしておくと、外国人の労務管理を行いやすくなります。
在留カード確認アプリを利用するのも一つの手です。在留カードを読み取ると、在留資格や在留期間などの情報が自動で登録されるアプリがあります。転記する際の入力ミスや工数を削減できるのがメリットです。
外国人を募集するときも、ぜひハローワークを活用しましょう。ただし、募集の仕方には注意が必要です。
外国人雇用の場合も、ハローワークで求人を出す手続きは変わりません。ハローワークにある端末で事業所と求人の情報を仮登録してから、窓口で本登録を行います。求人申込書を受け取り記入して提出すると、求人票が交付されるという流れです。
初めてハローワークで求人を申し込む事業主は、ハローワークインターネットサービスで事業所と求人の情報の仮登録を行ってから窓口に行くと良いでしょう。
ハローワークに限らず、求人を出す際に国籍を限定することは禁じられています。「日本人のみ」と募集するのはもちろんのこと、「中国人募集」「要ベトナム国籍」などと求人票に記載することもできません。
一定の語学力やスキルを持った外国人を雇用したい場合は、求人に具体的な条件を記載すると良いでしょう。たとえば、「△△語ネイティブレベル」「●●での滞在歴3年以上」といった条件であれば、記載可能です。
参照元 ハローワークインターネットサービス「求人申込み手続きの流れ」
外国人を雇用する際は、ハローワークへ「外国人雇用状況の届出」が必要です。離職するときも同じように届け出が必須で、虚偽申告をしたり提出を怠ったりすると30万円以下の罰金を支払わなければなりません。提出期限が設けられているので、忘れずに行いましょう。