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人手不足に悩む素形材産業の企業は多いでしょう。特定技能「素形材産業」とは、素形材産業分野において即戦力となる外国人労働者を受け入れ、人手不足を改善するための在留資格です。このコラムでは特定技能「素形材産業」の概要や、許可されている業務を紹介します。また、外国人が特定技能「素形材産業」の在留資格を得る方法や、受け入れる企業の要件も解説。内容を参考にして、人手不足解消の足掛かりにしましょう。
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特定技能「素形材産業」とは、機械加工や板金、塗装などの素形成産業分野での人手不足を解消するために創設された在留資格です。「素形材」は、一般になじみの薄い言葉ですが、簡単に説明すると、素材に何等かの加工をして部品等を製造する産業です。工場等で製品の組立だけする場合は、素形材産業に含まれません。ここでは、外国人が特定技能「素形材産業」の在留資格で行える業務や、就労できる期間を解説します。
特定技能「素形材産業」は素形材産業分野の人手不足を解消するために、2019年4月に創設されました。
「特定技能」は、人手不足が深刻化し国内では雇用が賄いきれない14の産業分野(特定産業分野)に限り、外国人の広域的な業務への従事を認める在留資格です。素形材産業も特定産業分野に指定されており、具体的な業種には、鋳造品製造業や金属プレス製品製造業、粉末治金製品製造業などが該当します。
外国人が特定技能「素形材産業」で行えるのは以下の業務です。
また、以上の業務に付随する頻度であれば関連業務も行えます。関連業務とは、同じ業務に従事する日本人が行う、上記以外の業務です。たとえば、鋳造業務では加工品の切削・ばり取り・検査業務などが該当します。ただし、関連業務のみを行わせることはできません。
特定技能「素形材産業」で外国人が就労できるのは、最長で5年です。素形材産業分野では特定技能1号のみ受け入れが許可されています。特定技能2号に移行すれば在留期限は無期限になるものの、2022年1月時点では素形材産業分野は移行の対象外です。今後、特定技能2号への移行が可能になれば、特定技能外国人の長期的な就労が期待できるでしょう。
参照元 経済産業省「素形材産業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針に係る運用要領」
素形材産業分野は、深刻な人手不足に陥っています。ここでは、素形材産業に関連する分野の有効求人倍率や、人材が集まりにくい理由として挙げられるものを紹介するので、参考にしてください。
経済産業省の資料によると、素形材産業に関係する職種の有効求人倍率は2017年時点で2.83倍でした。さらに詳しく見ていくと、鋳物製造工3.82倍、鍛造工4.32倍、金属プレス工2.97倍と職種によっては人手不足が非常に深刻であることが分かります。素形材産業の需要は増加しており、今後も人材不足はさらに加速していくでしょう。
素形材産業に人材が集まりにくいのは、製造業の労働環境にネガティブなイメージがあり、若年層に敬遠されがちなためです。素形材産業に限らず、製造業は「体力を使う」「賃金が低い」などのイメージが根強く残っています。そのため、求人募集をしてもなかなか人材が集まりません。そのうえ、団塊の世代の熟練した技能工の引退や、少子高齢化による労働力の減少が重なり、人材不足が加速しているのだと考えられます。
素形材産業分野の業界や各企業では、人材確保のために適正な賃金水準の確保や、女性や高齢者でも働きやすい現場環境の改善に取り組んでいるようです。しかし、そのような対策を行っても国内だけでは人材不足を賄いきれないのが現状です。
参照元 経済産業省「素形材産業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針に係る運用要領」
外国人が特定技能「素形材産業」の在留資格を得るには、技能試験および日本語能力を測る試験に合格する必要があります。なお、素形材産業に関わる分野で技能実習2号を良好に修了した技能実習生は、無試験で特定技能の在留資格への移行が可能です。
特定技能「素形材産業」の在留資格を得るには、製造分野特定技能1号評価試験への合格が必要です。製造分野特定技能1号評価試験は、行う業務によって内容が異なるので、外国人は従事する予定の作業の試験区分を選んで受験します。「特定技能評価試験の試験日程は?外国人を雇用する企業に向け解説」では、特定技能評価試験の日程を国ごとに紹介しているので、参考にしてみてください。
なお、産業機械製造業および電気・電子情報関連産業で特定技能の在留資格を取得する場合も、製造分野特定技能1号評価試験への合格が必要です。産業機械を製造する企業には、「特定技能「産業機械製造業」とは?従事できる業務や雇用条件を解説」がおすすめです。こちらのコラムでは、産業機械製造業で特定技能外国人が従事できる業務や雇用条件を解説しています。人手不足緩和や事業発展のために外国人雇用を検討している企業は、ぜひチェックしてみましょう。
日本語能力を測る試験では日本語能力試験(JLPT)のN4、もしくは国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)のA2レベルの認定が必要になります。どちらのテストも、基本的な日本語能力があり、コミュニケーションが取れる外国人であれば合格は難しくありません。
JLPTは世界最大規模の日本語能力を測る試験で、年2回実施されています。特定技能の在留資格申請に多く利用されているJFT-Basicは、年6回の実施です。
素形材産業分野に関わる職種で技能実習2号を良好に修了した技能実習生は、試験免除で特定技能への移行ができます。ただし、試験を受けなくても良いのは技能実習で行っていた業務と特定技能で行う技能が同じときのみです。たとえば、技能実習で溶接作業を行っていた技能実習生が、特定技能で鋳造作業を行う場合は、技能評価試験の溶接区分に合格しなくてはなりません。なお、日本語能力を測る試験は免除されます。
素形材分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会に加入する必要があります。なお、加入するだけではなく、同協議会が求める調査への協力要請や指導に従うことも要件です。
特定技能外国人を受け入れる企業は、雇用上のルールも必ず守らなくてはなりません。素形材分野では、特定技能外国人の雇用形態は直接雇用に限られています。また、賃金は同じ仕事をする日本人と同等、もしくはそれ以上に設定するのが決まりです。
特定技能「素形材産業」の在留資格は、素形材産業の加速する人手不足を解消するために創設されました。特定技能の在留資格を持つ外国人は専門的な知識を有しているうえ、最長で5年の就労が可能です。人手不足に悩む素形材産業の企業は、このコラムの内容を参考にして、特定技能外国人の受け入れを検討してみましょう。
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監修:島田亮司 日本ビザ国際行政書士事務所
ストックホルム大学交換留学を経て、中央大学法学部卒業。東京書籍株式会社に入社、主に英語辞典や教材の編集、異文化理解教育のテキスト製作を担当。その後、PHP研究所にて英文月刊誌の副編集長として国内外の取材、執筆、編集に携わる一方、松下幸之助研究の研究スタッフとして外国人経営者向けの研修セミナーの企画、運営、講演を行う。伊藤忠商事食料カンパニー向けのアナリストを経て独立。1997年設立のNPO国際交流団体SIEN(埼玉県国際交流協会登録)の代表として現在までの22年間、異文化理解、交流促進に関わる社会活動をする他、外国人社員教育、外国人採用コンサルティング、在日外国人向けに生活サポートや賃貸物件のアドバイス等も行う。宅地建物取引士。英語通訳案内士。 http://visa-nihon.com/