折り紙は日本の伝統的な遊びの一つで、海外では「Origami」と呼ばれて親しまれています。折り紙の歴史は古く、6世紀に紙の製法が伝来して和紙が生まれ、物を包む際の折り目に着目したのが始まりです。このコラムでは、世界的に人気のある折り紙の歴史や魅力を紹介します。折り紙を使った作品の種類や日本の遊びが知りたい方は、ぜひチェックしてみましょう。
目次
折り紙とは
折り紙は和紙を使ったおもちゃで、日本の伝統文化の一つです。6世紀ごろに高句麗(現在の中国東北部から朝鮮半島北部にかけて存在した国)から紙の製造法が伝えられ、日本独自の改良を加えたものを「和紙」といいます。高級品である和紙の主な用途は仏教の写経や物事の記録でしたが、次第に神様に捧げる供物の包み紙としても使われるようになりました。その際に美しい折り目をつけるようになったのが折り紙の原点です。
正方形でありさえすれば、チラシやノートなどどんな紙でも楽しめるのが折り紙の魅力。一方で、紙の素材や模様にこだわることで、芸術作品に負けない美しさを生み出せるのも折り紙の奥深さと言えます。
日本に折り紙が生まれた理由
折り紙は、資源を有効活用し慎ましさを美徳とする日本人の国民性と、衣服や布団を折りたたむ文化、正方形や長方形といった直線を美とする感性が融合して生まれました。
日本人は遊牧を行わず、家屋を建築して定住し農業や漁業、酪農によって生活を営む民族です。諸外国の民族とは異なり移動を伴わない生活のため、家屋のなかで行える内向的な文化が数多く育まれてきました。和紙さえあればさまざまな形を作れる折り紙は、日本が内向的な文化を持つ国だったから生まれた遊びといえるでしょう。また、使い終わった包み紙や質の悪いちり紙も有効活用しようという考えが一般的だったため、折り紙が普及したともされています。
折り紙の歴史
日本の折り紙が始まったのは室町時代です。室町時代に「儀式折」が盛んになったのと同じタイミングで、「遊戯折り紙」という現代の折り紙の始まりとなる遊びも広まりました。「やっこさん」「鶴」といった作品は遊戯折り紙が広まった室町時代からあり、現代にも折り方が伝えられています。しかし、室町時代は和紙が高級品だったため、遊戯折り紙は庶民には縁がなかったようです。
江戸時代になると和紙が大量生産されるようになり、良質な紙を安価に手に入れられるようになったため、庶民にも遊戯折り紙が広まっていきました。なお、19世紀ごろまではヨーロッパでも日本とは異なる折り紙文化が形成されていたようです。スペインの「Pajarita(パハリータ)」をはじめ数多くの作品が存在し、日本の文化と合わさった結果、現在の折り紙が誕生したとされています。
日本の伝統文化は折り紙だけではありません。日本建築や和食、茶道など数多くの伝統文化が存在します。折り紙以外の日本の伝統文化にも興味がある方は、「日本文化の特徴をまとめて紹介!外国人向けに西洋文化との違いを解説」のコラムもご覧ください。
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日本の折り紙は世界各国でも人気
日本文化である折り紙はアメリカやイギリス、スペイン、中国など世界各国でも親しまれています。折り紙団体は世界各国にあり、折り紙で遊ぶ楽しさを分かち合ったり、作品作りを通じてコミュニケーションを取ったりしているようです。折り紙団体は大会やワークショップも開催しており、世界各国に折り紙の良さを世界に伝えることを目的としてます。折り紙は脳のトレーニング教材としても優秀といわれており、海外の教育現場でも取り入れられているようです。
日本の折り紙の魅力
日本の折り紙は遊びだけにとどまらず、学習教材としても優秀な側面を持っています。また、世代を問わず遊べるうえ、面倒な準備が必要ないのも折り紙の魅力です。ここでは、日本の伝統文化である折り紙の魅力を詳しく解説するので、気になる方はぜひチェックしてみましょう。
紙だけでさまざまな形を表現できる
折り紙の最大の魅力は紙1枚でさまざまな形を表現し、遊べることです。折り紙で作品を作る際、のりやハサミを使うことは基本的にありません。そのため、小さい子どもや高齢者でも気軽に折り紙で遊べます。折り紙が何百年も人々に愛されているのは、老若男女問わず紙1枚で遊べる手軽さが理由でしょう。
持ち運びやすく手に入りやすい
簡単に入手できるうえ持ち運びしやすいのも、折り紙の魅力です。折り紙用に色や柄がつけられた紙は、100円ショップや書店、雑貨店、ホームセンターなどさまざまな場所で売られています。単純に折り紙を楽しみたい場合は、チラシや新聞といった使わなくなった紙でも代用可能です。また、折り紙に使う紙は薄く軽いうえ小さいので、持ち運びに苦労することはありません。遊びたいときに気軽に購入できたり持ち運べたりするのは、折り紙の魅力といえます。
遊びを通してコミュニケーションを取れる
日本の折り紙は、コミュニケーションツールとしても優秀です。折り紙のなかには子どもだけで折るには難しい作品もあるため、親子で一緒に遊ぶことがしばしばあります。折り紙で遊びながらコミュニケーションを取れば、親子の仲が深まることもあるでしょう。また、折り紙は日本人が外国人と接するためのコミュニケーションツールにも使われています。折り紙は日本の伝統文化として知られているため、会話のきっかけになりやすく気軽に一緒に遊べるのが理由です。また、外国語が話せなくても折り紙を通じてコミュニケーションを取れます。
創造力や思考力を養える
日本の折り紙は学習教材としても使われており、子どもの教育や認知症の予防にも良いとされています。折り紙は想像力や思考力を要する遊びです。折り紙の折り方を参考にお手本どおりに折る方法を考え、最後まで投げ出さずに作品を作ることで、脳が刺激され発達していきます。また、折り紙で作品を作ることは、一時的な記憶を行うワーキングメモリーの活性化や空間認知能力の向上にも役立つでしょう。折り紙はただの遊びではなく、脳のトレーニングにも有効な教材として学校教育にも取り入れられています。
集中力や手先の器用さが身につく
忍耐力や集中力、手先の器用さを養えるのも折り紙の魅力です。折り紙の作品を作る際に手順を飛ばしたり雑に折ったりすると、お手本通りになりません。美しい折り紙作品を作るには、手先の器用さや集中力が必要です。特に細かい折り目をつける必要がある作品は丁寧に折らないと、仕上がりが悪くなります。簡単な作品から作り始め、徐々に難易度を上げていくうちに自然と忍耐力や集中力が身につき、細かい作業も難なく行えるでしょう。作品を作るための工程の細かさから、折り紙はリハビリや教育に使われることも多々あります。
日本の有名な折り紙作品の種類
ここでは日本の有名な折り紙作品を紹介します。折り紙で作れる作品は動植物や乗り物、季節を表す物などさまざまです。折り紙の折り方は、書籍やWebサイトなどで確認できます。ここで紹介する折り紙を実際に遊んでみたい方は、調べて作ってみると良いでしょう。
鶴(つる)
「鶴」は、室町時代に遊戯折り紙が広まったころからある折り紙作品の一つです。メジャーな作品のため、折り紙の折り方が載っている本で紹介されていることが多々あります。基本的な鶴の折り方のほかにも、2羽の鶴を1枚の折り紙で作る「拾餌(えひろい)」や華やかさを重視した「おりはづる」などが有名です。鶴は日本の昔話にもよく登場しており、日本人になじみ深い鳥のため、折り紙の作品としても親しまれています。
鶴の折り方
くす玉
「くす玉」は折り紙を使った多面体で構成された「ユニット折り紙」の一種です。糸やのりを使わず折り紙を組んで立体として固定できるのが、ユニット折り紙の魅力といえます。折り紙で作るくす玉は球体に近い形です。花や星を模しているくす玉もあります。何枚もの折り紙を組み合わせて作ることもあり難易度が高いですが、完成した作品はインテリアとしても楽しめるでしょう。
くす玉の折り方
蛙(カエル)
「蛙」は、鶴と同じくさまざまな折り方が存在する折り紙作品です。最も一般的な蛙の折り紙作品は「ぴょんぴょんカエル」でしょう。折り紙で折ったカエルのお尻の部分を指で押して離すと飛び跳ねることから、ぴょんぴょんカエルといわれています。子どもでも作れる折り紙作品なので、ぜひチャレンジしてみましょう。難易度が高い作品を作ってみたい方は、立体的なカエルの折り紙作品がおすすめです。
カエルの折り方
手裏剣
「手裏剣」は、折り紙を複数枚組み合わせて作る平面的な作品です。4つの角を持つ一般的な手裏剣のほか、8つの角を持つ作品もあります。本物の手裏剣に見立てて作る作品なので、投げて遊ぶ子どもも多いようです。遊べる折り紙は数多くの種類が存在しますが、なかでも手裏剣は高い人気を誇ります。2枚以上の折り紙を使って作るので、好きな色の組み合わせで作れるのも魅力といえるでしょう。
手裏剣の折り方
チューリップ
「チューリップ」は、平面的な折り紙作品のなかでも簡単な部類です。花とはっぱを別々の折り紙で作り、組み合わせて完成となります。直線的な折り方が多く複雑な工程がほとんどないので、初めて折り紙作品を作る方でもチャレンジしやすいでしょう。なお、花の部分を立体的に折って作る折り紙作品もあります。
チューリップの折り方
船
「船」は折り方の種類が多い折り紙作品の一つです。「にそう船」「だまし船」「ボート」などがあります。だまし船は、折り目の関係で帆先になっていた部分が船首になる特殊な折り紙です。折り方自体は複雑ではないので、初めて折り紙を折る人でも作りやすいでしょう。にそう船やボートも難易度が低い作品なので、折り紙を実際に遊んでみたい方はぜひチャレンジしてみてください。
船の折り方
折り紙をはじめ、日本にはお手玉やこま、おはじきなど伝統的な遊びがあります。「日本の伝統的な遊びはどのように楽しむ?外国人向けに解説!」のコラムで伝統的な遊びをまとめているので、ぜひチェックしてみましょう。
折り紙を使った日本の遊び
折り紙は作品を利用して遊ぶこともできる日本の伝統的なおもちゃです。日本文化に興味がある方はここで紹介する作品を参考に、実際に作って遊んでみましょう。
パッチンカメラ
本物のカメラのように、「パシャッ」と音を立てるのが「パッチンカメラ」の特徴です。やや折るのが難しい工程もありますが、簡単な折り紙作品を作れる人であれば作成できるでしょう。パッチンカメラは子どものおもちゃとしても人気がある折り紙作品です。親子のコミュニケーションの一環として、一緒に作ってみるのも良いでしょう。
トントン相撲
力士に見立てた折り紙をティッシュやお菓子の空き箱で作った土俵に乗せ、指でとんとん叩きながら相撲を取らせて遊ぶのが「トントン相撲」です。トントン相撲の力士の折り方はやや複雑なので、簡単な折り紙作品で練習してから作ってみましょう。折り方を工夫すれば、強い力士を作ることも可能です。日本の伝統的な遊びを実際に体験してみたい方は、力士を折ってトントン相撲で遊んでみることをおすすめします。
風船
「風船」は、紙一枚で作れる立体的な折り紙作品です。複数作ってつなげれば、ガーランドやモビールといったインテリアにもなります。折り紙の風船をいくつか作ってお手玉のように遊ぶこともできるでしょう。簡単に折れるうえさまざまな遊び方があるので、初めて折り紙で遊ぶ方にもおすすめです。
まとめ
折り紙は室町時代から続く日本の伝統的な遊びです。コミュニケーションツールや学習教材としても使われており、海外では「Origami」として親しまれています。子どもや高齢者でも簡単に作れる作品が多いので、日本文化を体験してみたい方はぜひ実際に折り紙で遊んでみましょう。