日本での勤務や留学に興味があっても、在留資格の申請方法が分からないという方もいるでしょう。就職先や留学先が決まっている場合、在留資格の取得申請は人事担当者や学校の職員が代理で行ってくれます。しかし、入国後の在留資格の変更・更新申請は自分で行わなければなりません。このコラムでは、在留資格の各種申請について詳しく解説します。内容を参考にして、来日への第一歩を踏み出しましょう。
目次
在留資格とは
ここでは、在留資格の概要や種類、ビザとの違いを解説します。外国人は在留資格がないと日本で生活できません。まずは在留資格とは何なのかを知り、申請に備えましょう。
日本に在留するための資格のこと
在留資格は、外国人が日本で暮らし、活動するのに必要な資格です。外国人は日本で行う活動や身分に合わせて、何らかの在留資格を持たなければなりません。相応しい在留資格を持っていなかったり期限が切れていたりする外国人は、不法滞在者として厳しく取り締まられます。強制送還や国外追放の対象になるだけではなく、3年以下の懲役もしくは禁錮、または300万円以下の罰金という重い刑罰が課されるでしょう。
在留資格の種類
在留資格は大きく分けると、日本で行う活動に対して付与される「活動資格」と、身分や地位に対して付与される「居住資格」があります。
活動資格
外国人が日本で行う活動に対してされるのが活動資格です。活動資格のなかには、就労できる資格とできない資格があります。
【就労可能な活動資格】
- 外交/公用/教授/芸術/宗教/報道/高度専門職/経営・管理/法律・会計業務/医療/研究/教育/技術・人文知識・国際業務/企業内転勤/介護/興行/技能/特定技能/技能実習
【行う内容によって就労の可否が変わる活動資格】
- 特定活動
【就労ができない活動資格】
- 文化活動/短期滞在/留学/研修/家族滞在
なお、就労が不可の活動資格でも「資格外活動許可」を得れば、アルバイトやパートができる場合があります。
居住資格
外国人の身分や地位に基づいて付与されるのが、居住資格です。
永住者/日本人の配偶者等/永住者の配偶者等/定住者
以上の居住資格には活動内容の制限がありません。そのため、日本人同様に就きたい仕事を選んで自由に働けます。
在留資格とビザ(査証)の違い
在留資格とビザ(査証)は必要になるタイミングが異なります。在留資格は外国人が日本に滞在し活動をするための資格で、日本に在留している間は常に携帯していなくてはなりません。一方、ビザは外国人が日本への入国が許可されたことを証明する書類で、入国時に必要です。空港や港での入国審査を通過したら、使うことはありません。
また、在留資格とビザは発行元も異なります。在留資格に関する各種事務を行う出入国在留管理庁は、法務省の外部部局です。一方、ビザを発給する在外公館は外務省が管轄しています。
在留資格とビザの違いをしっかり理解し、手続きや問い合わせ時に間違えないようにしましょう。
在留資格については、「在留資格29種類まとめ!外国人に知ってほしい基礎知識も紹介」でも詳しく解説しています。併せてご覧ください。
参照元 出入国在留管理庁「在留資格一覧表」
ピックアップ記事
在留資格の申請に必要な書類
在留資格の申請に必要な書類を紹介します。すべての在留資格の申請に必要な書類と、活動内容ごとに必要な書類に分けて紹介するので参考にしてください。なお、初めて在留資格の申請を行う際は、日本に居る就業先の人事担当者や学校関係者などに代理で申請してもらう方法が一般的です。
共通する書類
すべての在留資格の申請に共通する書類は、以下のとおりです。
-
在留資格認定証明書交付申請書:1通
-
写真(縦4cm×横3cm)
-
返信用封筒(定型封筒に宛先を明記のうえ、404円分の簡易書留用切手を貼付したもの)
日本に居る就業先の担当者や学校関係者に申請してもらう際は、郵便で必要書類のやり取りを行います。あらためて郵送し直す余計なやり取りが発生してしまうので、使えない写真や間違った書類を送らないようにしましょう。
写真は申請前3ヶ月以内に撮影し、背景がない鮮明なものを用意します。撮影時に帽子の着用は禁止ですが、ヒジャブやブルカなどは外す必要はありません。ただし、顔の表情が分かるよう調整して撮影しましょう。
活動内容ごとの書類
在留資格の申請書類は、日本で行う活動内容ごとに種類が異なるので注意が必要です。ここでは、活動内容ごとの書類を紹介します。
留学の場合
在留資格「留学」を申請する際の資料は、留学先の「教育機関の種類」および「適性校の認定の有無」によって異なります。適正校とは、過去1年間の入学者の不法残留や在留資格取り消しなどが発生した割合が、5%以下の教育機関のことです。
ここでは、在留資格の取得申請で、大学(短期大学、大学院含む)や専門学校へ留学する場合に必要な書類を紹介します。
【適正校の大学や専門学校などに留学する場合】
-
提出書類一覧表(所属機関が申請を提出する場合は任意)
-
パスポートの身分事項ページや追記欄のコピー
-
履歴書(最終学校を卒業後5年以上経過している場合のみ)
-
今後の進路を説明する資料(最終学校を卒業後5年以上経過している場合のみ)
-
研究内容を証する資料(研究生として留学する場合)
-
履修届けの写しまたは聴講科目および聴講時間を証する文書(研究生として留学する場合)
-
大学の管理体制を説明した文書(大学院の研究科で夜間教育を受ける場合)
-
奨学金の給付に関する証明書(奨学金を受ける場合)
-
認定不交付処分または在留不許可処分について、処分理由を払拭する説明および資料
【非適正校(慎重審査対象校)の大学や専門学校などに留学する場合】
-
提出書類一覧表(所属機関が申請を提出する場合は任意)
-
パスポートの身分事項ページや追記欄のコピー
-
履歴書(入学願書の写しでも可)
-
最終学校の卒業証明書
-
今後の進路を説明する資料(最終学校を卒業後5年以上経過している場合のみ)
-
日本語能力に係る資料(外国の大学、短期大学または大学院を卒業し、その卒業証書等を提出する場合は不要)
-
研究内容を証する資料(研究生として留学する場合)
-
履修届けの写しまたは聴講科目および聴講時間を証する文書(研究生として留学する場合)
-
大学の管理体制を説明した文書(大学院の研究科で夜間教育を受ける場合)
-
経費支弁書
-
経費支弁者と申請人の関係を立証する資料
-
預金残高証明書(原本)
-
過去3年間の資金形成経緯を明らかにする資料
-
経費支弁者の職業を立証する資料
-
過去3年間の経費支弁者の収入を立証する資料
-
奨学金の給付に関する証明書(奨学金を受ける場合)
認定不交付処分または在留不許可処分について、処分理由を払拭する説明および資料
経費支弁者とは、留学生の日本留学中の学費や生活費を支払う人のことです。このように、非適正校に入学する場合は、適正校校と比べ在留資格申請時により多くの書類を提出する必要があります。
就労の場合
就労の場合、どの在留資格を得て就労するかで提出書類が異なります。また、在留資格によっては「企業カテゴリー」の分類により提出書類が変わってくるでしょう。企業カテゴリーとは、日本企業を規模や経営状況によって1~4に分けた指標のことで、数字が小さいほど提出する書類が少なくなります。
以下は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で「カテゴリー3」に分類される企業で働く際に必要な書類です。
-
前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
-
専門学校を卒業し、専門士または高度専門士の称号を付与された者については、専門士または高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書
-
申請人の派遣先での活動内容を明らかにする資料(申請人が被派遣者の場合)
-
申請人の活動の内容等を明らかにする資料
-
申請人の学歴および職歴そのほかの経歴などを証明する文書
-
登記事項証明書
-
事業内容を明らかにする資料
-
直近の年度の決算文書の写し
書類は就業する企業が用意しますが、念のため種類を把握しておきましょう。
在留資格については「外国人留学生が持つ在留資格の区分は?卒業後の変更手続きもあわせて解説」のコラムも参考にしてください。留学生だけではなく、卒業後の就労に係る在留資格についても詳しく解説しています。
参照元 出入国在留管理庁「在留資格認定証明書交付申請」
在留資格を申請して日本に入国する方法
海外に居る外国人が在留資格を申請し、日本に入国するまでの流れを解説します。
1.日本での就労先や留学先を決める
在留資格を申請し日本に中長期在留するには、就労先や留学先を決めなくてはなりません。昨今、企業や学校との面接はオンラインで行うのが主流です。ZoomやSkypeなどのツールを用いて、採用や入学の選考を受けます。このほかに、在留資格「短期滞在」で日本に来日し、滞在期間中に選考を受ける方法もありますが、時間やお金が掛かるのがデメリットです。
2.在留資格認定証明書交付申請をする
就労先や入学先が決まったら、在留資格認定証明書交付申請を行います。在留資格認定証明書は、外国人が日本で行う活動を証明する書類です。申請先は日本の地方出入国在留管理局で、外国人の就労先の人事担当者や留学先の学校関係者が交付申請を行います。在留資格認定証明書の交付が完了して日本から送られてきたら、ビザ(査証)の発給に移りましょう。
3.ビザ(査証)を取得する
ビザ(査証)を申請するのは、住居地を管轄する日本の大使館や総領事館(在外公館)です。ビザ申請時に在留資格認定証明書を提示すると、手続きが速やかに行われます。ただし、在留資格認定証明書の期限は3ヶ月です(世界情勢によって変更あり)。そのため、日本から在留資格認定証明書が送られてきたら、すぐにビザ発給の手続きをしましょう。
4.日本に入国する
ビザ(査証)が発給されたら、入社や入学に間に合うように来日しましょう。一部の空港(新千歳空港・成田空港・羽田空港・中部空港・関西空港・広島空港・福岡空港)では、入国許可を受けるとその場で在留カードが交付されます。これ以外の空港や港から入国した場合は、住所を置く市町村の役場で転入届を出すと後日在留カードが郵送される仕組みです。
入国後に行う在留資格に関する申請
在留資格は、必要に応じて別の種類に変えたり期間を延長したりしなくてはなりません。ここでは、日本入国後に行う可能性のある在留資格の各種申請について解説します。
在留資格変更許可申請
日本で行う活動の内容が変わるときは「在留資格変更許可申請」を行います。学校卒業後の就職や異業種への転職、日本人との結婚などが該当するでしょう。ただし、希望すれば必ず在留資格を変更できるわけではありません。希望する在留資格を得るに相応しい学歴や経験が必要です。
在留期間更新許可申請
日本に滞在する期間を延長する際は「在留期間更新許可申請」を行います。多くの在留資格には在留期限が設けられており、在留期限後も継続して同じ活動をする場合は、在留期間更新許可申請が必要です。在留資格の取得や変更より難易度は低いものの、在留状況が悪ければ更新が却下されることもあります。
資格外活動許可申請
在留資格外の活動をする際は「資格外活動許可申請」を行います。主に、留学生のアルバイトが該当するでしょう。留学生に付与される在留資格「留学」では、収入を得ることができません。しかし、資格外活動許可を得れば定められた範囲内でのアルバイトが可能です。もし、留学生が資格外活動許可を得ずにアルバイトをすれば、罰金や懲役(禁錮)のほか、在留資格の取り消しなどの厳しい罰則が課されます。
永住許可申請
在留資格「永住者」を取得する際は、「永住許可申請」を行います。永住が許可されれば、在留期限は無期限になり、半永久的に日本に在留可能です。ただし、永住許可申請は簡単には許可されません。日本での居住期間や収入など、さまざまな厳しい要件があります。
在留資格のオンライン申請について
2022年3月から、在留資格の各種申請を外国人本人がオンラインで行えるようになりました。それまでは、在留資格の変更や更新のたびに地方出入在留管理局に直接出向かなくてはならなかったのです。オンライン申請では、自宅に居ながらにして在留資格の各種手続きが行えます。利用を検討する方は、マイナンバーカードの作成や利用者情報の登録などといった事前準備を、あらかじめ済ませておくのがおすすめです。
在留資格のオンライン申請については「在留資格のオンライン申請が利用可能に!外国人向けに詳しい手続きを紹介」のコラムで詳しく解説しているので、参考にしてください。
まとめ
外国人が日本に中長期滞在するためには、在留資格の申請が必要です。また、在留資格を取得するときだけでなく、種類を変えたり変更したりするたびに申請を行います。日本で暮らすうえで在留資格の申請は必ず必要なので、流れや方法をしっかり理解しましょう。