永住権とは、在留資格「永住者」のことです。永住権を取得すると、在留期限が無期限になったり職種の制限がなくなったりします。将来も日本で暮らす予定の人は、永住権の取得を検討してみても良いでしょう。
このコラムでは、日本で永住権を取得するための条件を解説します。また、永住権を取得するメリット・デメリットも紹介。内容を参考にして、永住申請の準備を始めましょう。
目次
- 永住権とは在留資格「永住者」を取得すること
- 永住者と特別永住者は別物
- 日本の永住権を得るメリット・デメリット
- 日本の永住権を取得するための条件
- 永住権の申請条件が緩和される特例とは
- 日本の永住権を取得する手続きについて
- まとめ
永住権とは在留資格「永住者」を取得すること
永住権とは外国人が日本に永住する権利、つまり在留資格「永住者」を取得することを指します。永住権を取得すると、母国の国籍を持ったまま無期限で日本への在留が可能です。
同じように日本に長期在留する方法に「帰化」があります。帰化とは、日本国籍を取得して日本人になることです。一方、永住権は、外国籍のまま日本に在留することを指します。
将来母国に帰国する可能性がある場合は、帰化よりも永住権を選択したほうがスムーズでしょう。
日本には「永住者」を含めて29種類の在留資格があります。それぞれの特徴は「在留資格29種類まとめ!外国人に知ってほしい基礎知識も紹介」で紹介しています。
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永住者と特別永住者は別物
在留資格「永住者」と「特別永住者」は名称は似ているものの、違う点が多くあります。在留資格「永住者」は、条件を満たせばどのような外国人でも取得可能です。一方、「特別永住者」は取得できる外国人が決まっています。特別永住者として認められるのは、元々日本国籍を持っていたものの、サンフランシスコ平和条約により母国の国籍に戻った外国人およびその子孫のみです。
根拠となる法律も異なり、在留資格「永住者」が「出入国管理及び難民認定法」のもと付与されるのに対し「特別永住者」は「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」により付与されます。異なる法律のもと運用されているため、特別永住者に在留カードは発行されません。代わりに特別永住者証明書が発行されます。
日本の永住権を得るメリット・デメリット
永住権の取得は、日本で暮らす外国人にとって多数のメリットがあります。一方、在留資格「高度専門職」を持つ外国人にとっては、デメリットになる可能性もあるので注意しましょう。
日本の永住権を得るメリット
永住権を得る最大のメリットは、在留期限が無期限になることです。永住権を取得したら、在留資格の更新手続きからは解放され、余程のことがない限り半永久的に日本へ在留できます。
ほかの在留資格でも更新をすれば長期間日本で暮らせますが、数年ごとに煩雑な申請をしなくてはなりません。また、更新が許可されなかったら母国に帰らなくてはならない可能性があります。
職種の制限がなくなるのもメリットといえます。就労に関する在留資格を持つ外国人は、許可された仕事にしか就けません。しかし、在留資格「永住者」を取得すると仕事の制限がなくなり、自由に仕事を選択できます。
日本の永住権を得るデメリット
在留資格「高度専門職」を持つ人に限っては、永住権の取得がデメリットになる可能性があるので注意しましょう。在留資格「高度専門職」には複数の優遇措置があり、そのうちの一つとして親の帯同が許可されています。しかし、在留資格「永住者」では親の帯同が認められていません。親を本国から呼び寄せている場合は、永住権を取得するべきではないといえるでしょう。
もし、日本で両親と暮らしつつ無期限の在留期間を得たい場合は「高度専門職2号」を取得するのをおすすめします。
日本の永住権を取得するための条件
ここでは、永住権を取得するための条件を解説します。自分は永住権を取得できる可能性があるのか、確認してみましょう。
素行に関する条件
素行が悪いとみなされた外国人は、永住権を取得できません。具体的には犯罪行為や風紀を乱す行為をしていないかがチェックされます。ただし、道路交通法違反などの軽犯罪の場合、時間が経っていれば審査に影響がないこともあるようです。
生計に関する条件
公共のサポートに頼らずに暮らしていけることも、永住権を取得する条件の一つです。明確な収入の基準はありませんが、年収300万円程度がボーダーラインだといわれています。なお、世帯年収で判断されるため、もし一緒に暮らす配偶者や親戚の収入で生計が成り立つ場合は無収入でも支障ありません。
国益適合に関する条件
国益適合とは、「対象者の永住が日本にとって利益になるか」という意味です。具体的には、以下の要件を満たしていれば国益に適合しているとみなされます。
- 日本に引き続き10年以上在留していること(このうち5年は就労資格もしくは居住資格を持っての在留していること)
- 罰金刑や懲役刑などを受けておらず、納税や入管への届出といった公的義務を果たしていること
- 現に有している在留資格の最長の在留期間が許可されていること
- 公衆衛生上の観点から有害となる恐れがないこと
注意点として、10年間の在留のうち5年間は就労資格または居住資格をもって在留する必要がありますが、「技能実習」および「特定技能1号」の在留資格は対象外です。
参照元 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和5年12月1日改訂)」
永住権の申請条件が緩和される特例とは
以下の条件に当てはまる人は、「10年以上継続して在留する」といった条件が特例で緩和されます。
- 日本人や永住者、特別永住者の配偶者であり、実態のある婚姻生活を3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留している。その子どもの場合は引き続き1年以上日本に在留している
- 「定住者」の在留資格で引き続き5年以上日本に在留している
- 難民認定または補完的保護対象者の認定を受けてから、引き続き5年以上日本に在留している
- 外交、社会、経済、文化などの分野において日本に貢献したと認められる者で、5年以上日本に在留している
- 地域再生法に基づく公私の機関で日本に貢献する活動をし、引き続き日本に3年以上在留している
- 高度人材ポイント表で70点以上を獲得した状態で、3年以上在留している
- 高度人材ポイント表で80点以上を獲得した状態で、1年以上在留している
- 特別高度人材として1年以上引き続き日本に在留している
スポーツや研究、ビジネス分野で賞を受けたり大きな功績を残したりすると「日本へ貢献した」と認められます。
参照元 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和5年12月1日改訂)」
日本の永住権を取得する手続きについて
ここでは、日本の永住権を取得する手続きについて解説します。
永住権を申請する場所
永住権の申請を行うのは、在留資格の各種申請を行っているのと同じ地方出入国在留管理官署です。基本的には自分で申請を行いますが、難しい場合は法定代理人や申請取次人への依頼も可能です。
永住権の取得に掛かる時間
永住権の取得には、申請から許可が降りるまで半年以上掛かる場合がほとんどのようです。それぞれの状況にもよりますが、永続的に日本に在留する外国人の審査なので、ほかの在留資格よりも時間が掛かります。
永住権の取得に必要な書類
永住権の取得に必要な書類は、持っている在留資格によって異なります。以下で紹介するのは、就労に関する在留資格を持つ人が永住権を取得する際の書類です。
【必要書類】
- 永住許可申請書
- 写真(縦4cm×横3cm)
- 永住理由書
- 申請人を含む家族全員の住民票
- 申請人や申請人を扶養する人の職業を証明する資料(在職証明書や職業に関する説明書など)
- 過去5 年分の申請人や申請人を扶養する人の所得および納税状況を証明する資料(住民税の課税証明書や各種国税の納税証明書、預貯金通帳の写しなど)
- 過去2年間の申請人や申請人を扶養する人の公的年金および公的医療保険の保険料の納付状況を証明する資料(ねんきん定期便や健康保険被保険者証の写しなど)
- 申請人や申請人を扶養する人の資産を証明する資料(預貯金通帳の写しや不動産の登記事項証明書)
- パスポート(提示)
- 在留カード(提示)
- 身元保証書および身元保証人の身分を明らかにする資料
- 日本への貢献に関わる資料(感謝状や表彰状など)※ある場合のみ
- 了解書
書類に不備があると審査に時間が掛かったり申請が不許可になったりします。しっかり確認しつつ準備を進めましょう。
参照元 出入国在留管理庁「永住許可申請」
まとめ
永住権を取得するには、素行や生計、国益適合に関する条件を満たさなくてはなりません。永住権を取得するのは労力が掛かりますが、その分日本で暮らすうえでのメリットが多数あります。日本で長期間暮らす予定の人は検討してみてください。