日本で子どもを産み育てようとする方々にとって、子育ての制度や支援などに関する情報はとても重要です。このような支援は住んでいる自治体を通じて行われることが多いので、自治体に直接問い合わせてみるとよいでしょう。
また、日本の厚生労働省や出入国在留管理庁(『生活・就職ガイドブック』)では、そのような方々のために妊娠、出産、子育てに関する情報を、日本語だけでなく外国語にも翻訳、公開されています。この記事では、これらの資料を紹介し、知っておくべきポイントをまとめました。
目次
【参考資料】日本の政府機関が発行した案内資料
厚生労働省『安全な妊娠と出産、子育てをサポートします!』
日本語版:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/guide_JP.pdf 英語版:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/guide_EN.pdf 出入国在留管理庁(法務省)『生活・就職ガイドブック:第4章 出産・育児』 日本語や15の言語に対応:https ://www.moj.go.jp/isa/guidebook_all.html
今回の記事では、上記の2つの資料をもとに、妊娠、出産、子育てについて知っておくべき制度や支援などを紹介します。
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日本での妊娠~出産までの流れで知っておくべきこと
妊娠
妊娠の届け出
妊娠が確定したら、居住地の役所や保健所に「妊娠届」を提出します。そうすることで、母子健康手帳や妊婦検診の受診券(健康診断14回、超音波1回が基本)を受け取ることができます。また、助産師や保健師の家庭訪問(無料)、両親学級(無料)などについての案内ももらえます。
妊婦検診
「妊娠届」の提出後に受け取った受診券を使うと、一部の費用を自治体が負担してくれます。以下の頻度で検診を受けることをお勧めします。
- 妊娠23週までは4週に1回
- 妊娠24週~35週は2週に1回
- 妊娠36週~出産まで週1回
出産
出産育児一時金の申請(出産前)
日本では、出産に40~60万円程度の費用がかかります。健康保険加入者であれば、「出産育児一時金」として42万円が支給されます。出産前に出産予定の病院で手続きをしておきましょう。
出産手当金
出産のために会社を休んだ場合、給与は支給されません。しかし、健康保険加入者であれば、出産(予定)日前の42日~出産日後56日までの期間内で、会社を休む期間を対象に「出産手当金」を受け取ることができます。給与が「出産手当金」以上の場合は該当しませんが、「出産手当金」以下であれば、その差額を受け取ることができます。
[参考]妊娠・出産・育児のための会社制度
妊娠中の女性は、働いている会社に下記の内容を求めることができます。
- 妊娠期間中、軽い業務へ切り替える
- 1週間または1日の労働時間が法定時間を超えないようにする
- 時間外労働、休日勤労、深夜業務をしないようにする
- 本人の希望により、出産予定日の6週間前(多胎児は14週間)には産前休業を、産後8週間までは産後休業を取得できる
- 子どもが満1歳(条件により最長満2歳)まで、父母ともに育児休業を取得できる
出産
出産で入院する際には、母子健康手帳、健康保険証、印鑑、入院する医療機関の診察券などが必要です。
出生届出
出生日を含め14日以内に、居住地の役所へ「出生届」を提出しなければなりません。一般的に出生届(出生証明書は医療機関が発行)、母子健康手帳、夫婦のパスポートが必要です。その他の必要書類は、自治体に問い合わせましょう。
小児医療費の助成
小学校卒業まで、中学校卒業まで、高校卒業まで…と自治体によって対象年齢が異なります。居住地の自治体に申請する際、子どもの健康保険証、子ども医療費受給資格証が必要です。
児童手当の申請
所得制限がありますが、中学校卒業まで(満15歳の誕生日後初めての3月31日までの子ども)保護者に手当が支給されます。出生翌日から15日以内に居住地自治体に申請すると、翌月から受け取ることができます(毎年6、10、2月に前月分まで4ヶ月分を一括受領)。
- 満3歳未満:月1万5千円
- 満3歳以上~満12歳の誕生日後最初の3月31日まで:月1万円(第3子以降は月1万5千円)
- 満12歳の誕生日後最初の3月31日経過~満15歳の誕生日後の最初の3月31日まで:月1万円
大使館・入国管理局の手続き
大使館では、子どもの国籍を取得し、パスポートを申請します。両親とも外国人の場合、子どもが日本で生まれても日本国籍は取得できないので、両親の本国にも出生登録をしましょう。
入国管理局では、出生日を含む30日以内に在留資格を取得し、在留カードを発行してもらいます。(出生日を含む60日以内に在留資格を取得しないと住民票が無効になり、健康保険、児童手当などの行政サービスを受けられない場合があります。)
2022年3月から、マイナンバーカードとICカードリーダーがあればオンラインで在留資格を申請できるようになりました。詳しくは出入国在留管理庁『在留申請のオンライン』をご覧ください。
新生児訪問・乳幼児健康診査及び予防接種・離乳食教室など
新生児訪問(無料)は、誕生日を含む28日以内に助産師が家庭を訪問するもので、赤ちゃんと母親の健康を確認します。
乳幼児健診のスケジュールは自治体によりますが、一般的には1ヶ月、3~5ヶ月、1歳6ヶ月、3歳児ごろに健康診断(無料)があります。3歳までの予防接種(定期接種は無料)などは、小児科医と相談して行います。
参照:『 日本小児科協会が推奨する予防接種スケジュール』 (表のピンク色が定期接種(無料)、水色が任意接種)
また、生後5~6ヶ月頃の離乳食教室も無料です。
[参考]自治体ホームページ、子育て世代包括支援センターを活用する
妊娠、出産、子育てについて質問がある場合は、最寄りの「子育て世代包括支援センター」をご利用ください。自治体のホームページにも案内されています。
ただし、出産および予防接種、病気やけがの治療は医療機関が担当します。
日本での子育て:子どもを保育園に送るには?
小学校入学前(満6歳以下)の 子どもを対象とする施設の種類と入所条件
保育所、幼稚園、認定子ども園の3つに大きく分けられます。
保育所(保育園)
仕事で子ども(0歳から満6歳以下)の世話が難しい保護者に代わって「保育」する施設で、自治体で認可されている場合は「認可保育所(認可保育園)」と呼ばれます。一般的には1日8時間で、保育所によっては夜間や休日なども時間外保育を行うこともあります。
保育所の費用は、自治体、世帯所得、子どもの数、年齢などによって異なります。厚生労働省の2018年調査(*)の結果によると、認可保育施設利用料(給食費、延長料金含む)は次の通りでした。
- 0~2歳:平均利用料は月3万円~3万2千円。月3万円~5万円未満の割合が最も高い。
- 3歳~6歳:平均利用料は月2万5千円~2万6千円。月1万円~3万円未満の割合が最も高い 。
参照:『平成30年地域児童福祉事業等調査結果の概況』(pdf) p.10
保育所の入所条件(各自治体で審査)
日本の保育所の運営は、各自治体が責任をもって実施しています。したがって、保育所に子どもを預けるためには、自治体を通じて希望保育所に申請し、仕事で子どもを保育できないことを自治体に認められなければなりません。審査では、勤務状況や毎月の勤務時間などで点数がつけられ、働かない場合でも妊娠・出産、病気・けが、家族の介護、就学、求職活動などの理由が認められれば申請可能です。
短期のパートタイム就業の場合は、「一時保育」が可能な保育所を見つけて利用できます。
[参考]保育ママ
家庭福祉員(家庭的保育者)の家などで保育する「家庭的保育事業」を一般的に「保育ママ」と呼びます。基本的に保育ママは自治体の認可を受けなければならず、開業するには一定の条件を満たさなければなりません。
幼稚園
満3歳~満6歳以下の子どもを対象に、一般的に1日4時間「教育」を提供する施設です。親が仕事をする場合などには、早朝、夕方や夜などの時間帯にも利用できる幼稚園もあります。
ちなみに、2018年文部科学省で実施した子ども学習費調査(*)によると、教育費、給食費、放課後活動費などを含む幼稚園の年間学習費は、次のようになりました。
- 公立幼稚園:年間22万3,647円(約224万ウォン)/月約1万8千円
- 私立幼稚園:年間52万7,916円(約527万ウォン)/月約4万3千円
2019年12月18日発表文部科学省『平成30年度子どもの学習費調査の結果について』
認定子ども園
保育園(保育)と幼稚園(教育)の機能をすべて備えており、親が仕事をしていない場合にも利用できます。認定基準を満たした施設は、都道府県で認定を受けることができます。保育所や幼稚園が認定子ども園として認められる場合もあります。自治体ごとに種類が多様です。
参照:内閣府『認定こども園概要』
小学校以降の教育費
日本の小学生は、「学童保育」と呼ばれる「放課後児童クラブ」や「放課後児童教室」などを利用して、友達と遊んで勉強することができます。
また、公立や私立の小・中・高の教育費、給食費、放課後活動費などを含む「学習費総額」は次のような結果になりました。(*)
- 公立小学校:年間32万1,281円
- 私立小学校:年間159万8,691円
- 公立中学校:年間48万8,397円
- 私立中学校:年間140万6,433円
- 公立高校:年間45万7,380円
- 私立高校:年間96万9,911円
*参照:2019年12月18日発表文部科学省『平成30年度子どもの学習費調査の結果について』
大学の場合は、文部科学省の授業料など推移調査(*)によると、国立/公立/私立大学別の授業料は次のとおりでした(2020年調査時点)。
- 国立大学(国家標準額):授業料535,800円 / 入学料282,000円
- 公立大学(平均):授業料536,382円/入学料392,111円
- 私立大学(平均):授業料927,705円/入学料247,052円
*参照:文部科学省『私立大学等の令和2年度入学者に係る学生納付金等の調査結果について:(参考2)国公私立大学の授業料等の推移』(pdf)
授業料以外の国立/公立/私立大学の違いについては「日本短期大学とは?私立・公立・国立の違いは?日本の大学制度、取得学位を紹介」で解説しています。ぜひ、合わせてご一読ください。
まとめ
外国人の方が日本で子どもを産み育てようとするとき、日本の支援制度の情報収集に不安を感じることもあるでしょう。日本では自治体を通じて様々な支援制度があり、必要に応じて随時相談できるよう窓口が設けられています。多言語の資料も用意されていますので、日本で子どもを育てたい方は積極的に活用していきましょう。
また、妊娠、出産、保育、小学校以降の教育など、成長段階別にかかる費用も把握しておくことで、利用できるサービスを最大限に利用することができます。
「妊娠・出産の前に、まずは結婚」という方は「日本で国際結婚をするのに掛かる費用と内訳は?資金を準備するコツも解説」をチェックしておくのもおすすめ。日本で健康で幸せな生活を送るために、ぜひWeXpats Guideの記事をお役立てください。