※英語の記事を翻訳して作成しています。
「日本といえば東京みたいな大都市を想像しますが、私たちが住んでいる熊本は、自然豊かな美しい町です。中心部はショッピングモールやレストランが多くて住みやすく、郊外の山や海では四季折々のレジャーを楽しめます。故郷のミンダナオと少し雰囲気が似ていてホッとします」
フィリピン出身のジェロースさん(写真左)とジュセルさん(写真右)は、日本の南西部にある熊本県で清掃の仕事をしています。まだフィリピンではほとんど知られていませんが、熊本には約3000人のフィリピン人が暮らしており、とても魅力的で暮らしやすい町です。熊本での仕事や生活について、お二人にインタビューしました。
「熊本は5年住んでも飽きません」――豊かな自然に囲まれて働く
――2人が住んでいる熊本について教えてください。
ジュセルさん:
これらの写真は全て熊本で撮影されたものです。フィリピンの友達に「熊本ってどんなところ?」とよく聞かれるので、私は「来たら分かるよ!すごくいい所!」と答えています。遊ぶ所がたくさんあるので、もう5年住んでいますが全く飽きません。
ジェロースさん:
私たちは2人ともミンダナオ出身で、どちらかというと自然が好きなんです。日本に来る前は満員電車の映像を見て「うげえ」となっていました。そういう意味で熊本は本当に暮らしやすいです。田んぼや草花が多くてホッとします。川もすごくキレイで、ただの水道水がミネラルウォーターみたいに美味しいので驚きました。
ジュセルさん:
要するに熊本は日本の中では田舎の方なんですが、熊本の中央部はほどよく都会で、便利なお店がそろっています。大きなショッピングモールがあって、レストランもたくさんあって、買い物には困りません。フィリピンの食品を売ってるお店もあります。
▲同じくフィリピン出身のお二人と町中で撮影した写真
ジェロースさん:
あとは気温ですね。熊本は日本の南西部にあるので、町中はほとんど雪が降りません。それでいて山の方は雪が積もるのでウィンタースポーツも楽しめるんです。私の家族も熊本に来たがっていて、特に「熊本の冬を経験してみたいな」と言っています。
――具体的にオススメしたい場所はありますか?
ジュセルさん:
私は『ONE PIECE』の銅像です!
▲熊本は『ONE PIECE』の作者である尾田栄一郎さんの出身地。熊本の各地には「麦わらの一味」の等身大の銅像が10体設置されています。
ジュセルさん:
私は高校生の頃から『ONE PIECE』が好きだったので、作者の尾田栄一郎さんが熊本出身だと知ってすごくうれしくなりました。まだ全ての銅像をまわれていないので、フィリピンに帰国する前に全部見に行きたいです。そのためにはあと5年くらいいなきゃいけないかも(笑)
ジェロースさん:
私は上司に連れて行ってもらった「天草」という海沿いのエリアですね。日本のキリスト教布教に大きく貢献した場所です。イルカウォッチングのアクティビティがすごく楽しかったです。
ジュセルさん:
私はグリーンランドという遊園地が好きでした。私たちフィリピン人のスタッフを連れて、女性の上司が車で連れて行ってくれたんです。楽しすぎて閉園ギリギリまで遊んじゃいました。
――うらやましい! 熊本県では上司が部下を観光に連れていくものなんですか?
ジュセルさん:
熊本は優しい人が多いけど、さすがにそんなことはないですよ(笑) 私たちの上司が特別に優しい人なんです。
ジェロースさん:
お母さんみたいな人です。“家族や患者さんのために働くのも素敵なことだけど、若いうちは自分のために生きることも大切だよ”って。仕事以外のことまで気にかけてくれます。
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熊本で叶えたい夢とは?
――お二人はどのような仕事をしているのですか?
ジュセルさん:
私たちは病院で清掃の仕事をしています。2019年から技能実習の制度で3年間働いたあと、特定技能の制度で再び働き始めました。(技能実習と特定技能とは?)
ジェロースさん:
私たちの病院はフィリピン人がとても多くて、清掃以外にも介護や調理の仕事で働いています。ほとんどのフィリピン人は同じ寮で暮らしているので、困ったときに頼れる友だちが多いですね。私たちも日本に住んで長いので、日本に来たばかりの子たちにいろいろアドバイスしています。
――どのような場所を掃除するのでしょうか?
ジュセルさん:
私たちの病院はとても大きいので、日によって様々な場所を担当します。今は慣れましたが、最初は患者様が入院している病室を掃除する時にすごく緊張しました。大切な機械も置かれているので「壊したらどうしよう……!」って。
ジェロースさん:
でも、病室を清掃すると患者様が「綺麗にしてくれてありがとう」と声をかけてくれるので、やりがいも大きいです。
――病院ならではのやりがいですね。他に大変なことはありましたか?
ジュセルさん:
やっぱり日本語ですね。
ジェロースさん:
難しすぎて頭が痛くなりました(笑)
――今はとても日本語がお上手ですが、どのように勉強しましたか?
ジュセルさん:
毎日10分か15分勉強して、覚えた言葉は積極的に使うようにしました。そうすると日本人のスタッフが「あってるよー」「それはちがいまーす」と教えてくれて。やっぱり日々の積み重ねと実践が大切ですね。でも最近はサボり気味です(笑)
ジェロースさん:
私は上司に「はずかしがらないで。間違ってもいいからたくさん話してみて」とアドバイスされました。本当にその通りだと思います。日本に来ようと考えている人の中には、日本語ができるか不安な人も多いでしょうが、周りの人がゆっくり喋ってくれたり、やさしく教えてくれたりするので、心配しなくても大丈夫です!
――周囲に優しい人が多いんですね。
ジュセルさん:
そうだと思います。熊本の人の県民性もあるかもしれません。病院の上司や同僚だけじゃなくて、地域の方もすごくあたたかいんです。バスを降りるときにドライバーさんが「気を付けてね!」と声をかけてくれたり、アパートの近所のおばあさんが「おかえりなさい」とあいさつしてくれたり。最初は恥ずかしかったけど、わたしも「ありがとうございまーす!」と返事をするようになりました。
ジェロースさん:
仕事が終わるころには夜になっていますが、1人でも安心して帰ることができます。熊本は安全な町だなと実感しますね。私は教会にも通っていて、そこで日本人の友だちができました。友だちの車でキャンプにも行きましたよ。熊本には日本一長い3333段の階段があって、そこをみんなで上ったんです。
――二人はどうして日本で働こうと思ったのですか?
ジュセルさん:
私は妹の学費を稼ぐために日本に来ました。
ジェロースさん:
私も家族に仕送りしています。でも、自分の夢のために貯金もがんばっていますよ。
――ジェロースさんの夢、聞いてみたいです。
ジェロースさん:
子供の頃から先生になることが夢なんです。小学6年生の頃に出会った先生を尊敬していて。子どもたちの教育に専念できるように、経済的な不安を無くしておきたいなと。
――それは素敵ですね! ふたりの家族は熊本について何か言っていますか?
ジュセルさん:
お母さんは「安全でいいね」と言っています。でも、私が「じゃあ熊本にずっと住もうかな」というと「だめよ!帰ってきて!」と言われますね(笑)
ジェロースさん:
私は妹とすごく仲が良くて、よくご飯を食べながら電話をします。「お姉ちゃん何食べてるの!?」とよく聞かれるので、つい自慢しちゃいますね。「熊本のアイスだよ~!おいしいよ~!」「しゃぶしゃぶがおいしかったよ~!辛いスープで肉を一枚一枚ゆでながら食べるんだよ~!」って(笑)
――仲良しで素敵ですね。最後にふたりの今後の目標を教えてください。
ジェロースさん:
私は先生になる夢のためにいつかフィリピンに帰ります。でも、日本の教育も興味があって、病院の近くの学校の生徒さんとも話してみたいんです。最近、この事を職場の人に話したら「せっかく日本にいるんだから訪問しなよ! 学校に聞いてみるよ」と言ってくれて。もしかしたら実現するかもしれません。
ジュセルさん:
私はずっと熊本で働きたいです。ママは「早く帰ってきて~」って言っているけど、それはバケーションかな。仕事は大変なこともあるけど、すごく楽しんでいます!
インタビューが終わった後、二人が教えてくれた“お母さんみたいな上司”の方にも取材しました。
コメントをいただいたので全文を掲載します。これから日本にやってくる方が、上司や同僚に恵まれて幸せな日本生活を送れるよう祈っています。
Q:職場でのお二人について教えてください
A:実習開始から5年目になりますが、いつも、どんな時も一生懸命仕事してくれるので助かっています。現在の仕事ぶりは、他部署や患者様からも褒められるほどです。
この4年間一緒に仕事をして感じるのは、一緒に仕事ができて、出会えて本当によかったということです。ふたりが入職したころは、私たちも海外実習生の受け入れが初めてで不安もありましたが、フィリピンの国民性と根っから明るいみんなのおかげで打ち解けることも早く、毎日楽しく業務を行うことができました。
みんなに感心したのは、言葉が通じない分、目で見て雰囲気を感じ取り、今、自分がどのように動けば役に立つのかを考えて行動する姿勢。数えても数えきれないほど、毎日助けてもらいました。
私が忙しいときに「大丈夫ですか?何か手伝いましょうか?」と声をかけてくれる。拠点立ち上げでハードな仕事の時も「みんなでやれば大変じゃないです。頑張りましょう」と。私たち日本人が励まされ、仕事に対する姿勢を教えてもらっているような気がします。今ではよき仕事の仲間であり、家族のような感覚です。
患者様からもみんな人気で、その場の雰囲気がぱっと明るくなります。
私たちの清掃は、病院で療養生活を送られている患者様のお部屋を掃除する仕事です。「自分の家族が入院していたらどうしてあげたいですか?」という考え方をしっかり理解し、仕事に反映させてくれます。
言葉やカルチャーは違っても、互いを理解しようとつとめ、心から信頼をおける仲間です。
取材協力
桜十字病院(医療法人 桜十字)
Kumamoto Halal Food
九州電設株式会社
SAKURA MACHI Kumamoto
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