帰化とは、外国人が日本国籍を取得して日本人になることです。帰化には日本で暮らしやすくなるというメリットがあります。ただし、母国の国籍を失うことになるので、慎重に検討しましょう。
このコラムでは、帰化するメリット・デメリットを解説します。また、帰化するための要件も紹介。申請の流れも解説しているので、具体的に帰化について考えてみましょう。
目次
「帰化する」とはどういう意味?
「帰化する」とは、外国人が日本国籍を取得することです。英語の「be naturalized in japan」と同じ意味を持ちます。法務省の発表によると、毎年700~1000人前後の外国人が帰化しており、2022年は861人が日本国籍を取得しました。
外国人が日本に帰化する理由は、子どもや結婚、就職のためなど人によりさまざまです。国籍を変えることは簡単なことではないので、慎重に考えて決めましょう。
参照元 法務省「帰化許可申請者数等の推移」
ピックアップ記事
帰化と永住の違いは日本国籍の有無
帰化と永住の違いは日本国籍の有無です。
永住とは外国人が在留資格「永住者」を取得し、日本に長期間在留することを指します。半永久的に日本に在留できますが、国籍は母国のままです。パスポートは母国のものが発行され、日本人のみに付与される戸籍も作成できません。一方、帰化は先述したとおり日本国籍を取得し、日本人になることを指します。「外国出身の日本人」という扱いになるので、パスポートを申請したら日本のものが発行され、戸籍も取得できるのです。
帰化するメリット・デメリット
日本に長く暮らす外国人は、帰化すると多くのメリットがあります。ただし、いくつかのデメリット
が存在することも知っておきましょう。
帰化するメリット
外国人が日本に帰化すると、格段に暮らしやすくなるというメリットがあります。まず、戸籍が作られるので、戸籍謄本や戸籍抄本といった書類が発行できます。日本人との結婚時に「入籍」ができるほか、各種届出や申請がしやすくなるでしょう。また、日本国籍を得ることで信用度が高まり、ローンや銀行融資の審査に通りやすくなります。
また、日本のパスポートを得られることもメリットといえるでしょう。日本のパスポートは世界的に信用度が高く、短期滞在であればビザ免除で行ける国が190ヶ国近くあります。海外に行く機会が多い人にとってはとても便利です。
このほかにも、日本人と同じ社会保障が受けられたり参政権が得られたりといったメリットがあります。
帰化するデメリット
帰化するデメリットは、母国の国籍を失うことです。日本では二重国籍が法律上禁止されています。そのため、帰化するためには母国の国籍を放棄しなければなりません。一度失った国籍は簡単には取り戻せないので、母国に帰国した際は外国人として暮らすことになります。帰化する際は、将来的なビジョンをよく考えて決めましょう。
日本に帰化するために必要な条件とは
日本に帰化するためには、満たさなくてはならない条件があります。帰化を検討している人は参考にしてください。
素行に問題がないこと
素行に問題があるとみなされると、帰化申請は許可されません。まずチェックされるのは犯罪歴です。犯罪の重さや刑罰を科されてからの年月などによっては影響しない可能性もあります。しかし、軽い交通事故や交通違反などでも、回数があまりに多いと素行に問題があるとみなされるでしょう。
このほかに、税金や年金の未払いがある場合も社会通念上問題があるとみなされ、帰化申請が不許可になる可能性があります。
在留期間の要件を満たしていること
引き続き5年以上日本に在留し、そのうち3年以上は就労に関する在留資格を持って働いていることも帰化条件の一つです。「引き続き」なので、海外へ出国していた期間は合算されません。ただし、この年数は状況によって短縮される可能性があります。たとえば、日本人と結婚して3年未満の場合は在留要件が3年、結婚して3年以上経っている場合は在留要件が1年に短縮されるのです。また、引き続き10年以上日本に在留していれば、就労期間は1年以上でも帰化が許可されます。
成人していること
単独で帰化申請をする場合は、日本と母国の両方で成人している必要があります。日本の成人年齢は18歳です。成人年齢が18歳よりうえの韓国(19歳)やタイ(20歳)、インドネシア(21歳)出身の人は申請時期に注意しましょう。
なお、親と一緒に帰化申請をする場合は未成年でも問題ありません。
独立して日本で生活していけること
日本社会の負担にならないよう、独立して生計を立てられるかもチェックされます。具体的な年収金額の基準は明かされていませんが、年収が250万~300万円以上あることが望ましいようです。ただし、家族単位で判断されるため配偶者や親族に十分な収入があり生活が問題なくできていれば、帰化申請ができます。
母国の国籍を放棄すること
先述したとおり、日本では二重国籍が禁止されているので、帰化するには母国の国籍を放棄しなくてはなりません。ただし、母国の法律によっては自らの意思で国籍を放棄できないことがあります。そのような場合は、例外として母国の国籍を持ったまま帰化が可能です。
憲法の思想条件を守っていること
憲法の思想条件とは、簡単に説明すると「暴力的な思想を持っていない」ということです。暴力的思想を持っていると判断される暴力団や反社会組織、テロ組織に属していると帰化はできません。また、自分は関係なくても、家族や親戚にそのような人がいると審査に影響がでます。
日本語がある程度できること
日本語がある程度できることも、帰化の条件の一つです。一般的には日本の小学校3年生程度、日本語能力試験(JLPT)のN3程度が必要だといわれています。帰化申請の際に審査官との面談があり、そこでうまく日本語で意思疎通ができれば問題ありません。
帰化する際の申請手続きについて
ここでは、帰化申請の流れや必要書類を解説します。帰化申請は非常に複雑で、人によって書類や手続きの流れが異なる可能性も。迷ったら専門家の手を借りるようにしましょう。
申請に必要な書類
帰化申請の必要書類は以下のとおりです。
-
帰化許可申請書(申請者の写真が必要)
-
親族の概要を記載した書類
-
帰化の動機書
-
履歴書
-
生計の概要を記載した書類
-
事業の概要を記載した書類
-
住民票の写し
-
国籍を証明する書類
-
親族関係を証明する書類
-
納税を証明する書類
-
収入を証明する書類
それぞれの状況によって不要な書類、追加で必要な書類があります。申請をする法務局の説明をよく聞き、追加書類を求められたら速やかに用意しましょう。
申請に掛かる時間
帰化の申請を出してから審査を終えるまで、おおよそ1年以上の日数が掛かります。また、申請前の書類の収集や作成に掛かる時間を考えると、2年以上は見ておかなければなりません。結婚や就職などを理由に帰化を検討する人は、時間に余裕を持って手続きを進めましょう。
申請の流れ
帰化は一般的に以下の流れで進みます。
-
住居地を管轄する法務局もしくは地方法務局に相談予約を入れる
-
帰化相談のうえ、必要書類のリストを受け取る
-
必要書類を収集や作成をする
-
帰化申請を行う
-
審査官との面接を受ける
-
官報の公示を確認する
-
帰化許可の通知を受けたら指定日時に法務局に出頭する
-
帰化者の身分証を受け取る
帰化者の身分証を受け取ったら、地方出入国在留管理官署に在留カードを返納しましょう。その後、今後本籍を置く予定の市町村に帰化届を提出します。帰化届を提出したら、戸籍の作成が可能です。
参照元 法務省「帰化Q&A」
まとめ
帰化は手続きに多くの時間や労力が掛かりますが、その分日本で暮らすうえで多くのメリットがあります。国籍を変えるのは非常に重要な決断なので、デメリットも理解したうえでよく考えて決めましょう。