日本の家族制度の歴史や課題をわかりやすく解説!選択的夫婦別氏制度とは

WeXpats
2023/03/29

日本の家族制度の内容や歴史を知りたいと思う方もいるでしょう。日本では、1898年の明治民法で「家制度」という家族制度が制定されました。
このコラムでは、家制度の概要や廃止された理由を解説します。また、家制度が廃止されてからも残っている考え方を紹介。日本での実現が課題になっている「選択的夫婦別氏制度」についてもまとめているので、参考にして日本の家族制度の理解を深めましょう。

目次

  1. 日本の家族制度として制定された「家制度」
  2. 現在も残っている日本の家制度の考え方
  3. 日本での実現が待たれる「選択的夫婦別氏制度」とは
  4. まとめ

日本の家族制度として制定された「家制度」

日本の家族制度として制定された「家制度」の画像

日本では、1898年の明治民法により「家制度」という家族制度が制定されました。ここでは、家制度の目的や概要、廃止された理由を解説します。

日本の家制度の目的と概要

日本の家制度とは、家族を統制する戸主が一家の責任を負い、家族を扶養する制度のことです。家制度は、政治における権力を天皇が持つ「天皇制」を国民に広めるために制定されました。当時は、天皇の存在を認識していない国民がいたようです。天皇が絶対的な存在であることを国民に認識させるために、天皇制と似た「家制度」という家族制度が制定されました。

家制度の特徴は、家族全員が同じ苗字を持つことです。「婚姻によって妻は夫の家に入る」と定められており、婚姻をした場合は女性が男性の苗字に変更します。
家制度では、戸主が戸主権を行使して家族を支配していました。戸主権とは、家族の結婚や養子縁組に対する同意権や、家族の住所を指定する権利のことです。戸主の同意を得ずに結婚したり、住所の指定に従わなかったりした場合、戸主はその夫婦を家族から外すこともできました。

日本の家制度が廃止された理由

日本の家制度は、1947年の民法改正で廃止されました。その理由は、1946年の日本国憲法で以下の法律が定められたからです。

【日本国憲法第24条】
婚姻は両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

家制度では、戸主が権利を乱用して女性や子どもの権利を奪う危険性がありました。家制度を残しておくと、日本国憲法で定められた「夫婦の権利と家族制度の平等」の実現ができません。そのため、家制度を廃止して、日本が理想とする家族制度を目指したのです。

参照元
衆議院「日本国憲法

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現在も残っている日本の家制度の考え方

現在も残っている日本の家制度の考え方の画像

家制度が廃止された現在も、家族全員が同じ苗字を持つ制度や、戸主が家族を支配する「家父長制」の考え方が完全に無くなったとはいえません。ここでは、現在も残っている家制度の考え方を紹介します。

戸主が家族を統制する家父長制

現在も一部の家族間で、戸主である男性が家族を統制する「家父長制」の考え方は残っています。最もイメージをしやすいのは、「男性は働き女性は家事や育児に専念する」という価値観です。明治民法では、妻となった女性は「無能力者」とされ、外で働くには夫の許可を得る必要がありました。また、妻が働いて得た財産は夫に管理されていたのです。現在の日本では、明治民法のように厳密な制度はありませんが、家父長制の影響で「結婚したら女性は家庭に入る」という考え方が残っています。

家族全員が同じ苗字を持つ

日本では家制度が導入された当時から現在まで、家族全員が同じ苗字を持ちます。家制度が廃止されたときに、苗字は個人の呼び名になりました。しかし、現在も婚姻をしたら女性は男性の苗字に変更するのが一般的です。この背景には、戸籍が夫婦関係や親族関係を表すことが関係しているのだと考えられます。家制度が廃止された当時、日本を統率していたGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)は、苗字だけでなく戸籍も個人単位にする提案をしていました。しかし、家制度の廃止と戸籍の個人化を同時に行うと、社会の不安が大きくなると判断されたのです。家族全員が同じ苗字を持つ背景には、戸籍が個人単位でないことが影響しているでしょう。

日本人の名字については「日本人の名前の歴史を解説!名字が誕生した背景や制定された法令を紹介」のコラムでも詳しくまとめています。

日本での実現が待たれる「選択的夫婦別氏制度」とは

日本での実現が待たれる「選択的夫婦別氏制度」とはの画像

日本の家族制度では、選択的夫婦別氏制度が認められていません。選択的夫婦別氏制度とは、夫婦が望む場合、結婚後も苗字を変更せずにお互いが旧姓のままでも良いとする制度のことです。現在の日本では、結婚した際に男性か女性のどちらかが苗字を変更しなくてはなりません。日本で選択的夫婦別氏制度が認められない主な理由は、家族であると判断しづらくなるという意見があるためです。

選択的夫婦別氏制度は、1979年に国際連合が「女子差別撤廃条約」を導入したことで取り上げられました。選択的夫婦別氏制度を認めている国もありますが、日本では実現されていません。女性の社会進出が進む今、「結婚をしても旧姓のままで働きたい」と考える人が多くいます。選択的夫婦別氏制度が認められていないのは、日本の家族制度における課題といえるでしょう。

参照元
法務省「選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について

まとめ

まとめの画像

日本では明治時代に、「家制度」という家族制度が存在していました。家制度とは、戸主が家族を統制して扶養する制度のことです。家制度は1947年に廃止されましたが、現在も家族が同じ苗字を持ったり、戸主が家族を統制する「家父長制」の考え方が残っていたりします。現在の日本では、結婚後に夫婦が苗字を変更せずに旧姓のままでも良いとする「選択的夫婦別氏制度」が認められていません。認められていない背景には、昔の日本にあった家制度が関係していると考えられるでしょう。

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