外国人エンジニアを採用するメリットは?ノウハウを解説!

2020年11月11日
青砥優伊(あおとゆい) (監修)
AOTO行政書士事務所
上場企業の法務部からベンチャー企業の法務部まで多岐に渡る企業法務を経験を基に、契約法務から外国人ビザまで対応可能な事務所を開業。英文メール、英文チャットにも対応可能なため、雇用予定の外国人との直接のコミュニケーションも対応可。東京大学法学部卒、2児の母。 https://www.shares.ai/site/office-nitta

日本国内の少子高齢化と人口減少による人手不足や、グローバル化の中でのビジネス拡大のために、外国人エンジニアを採用することを検討される企業が増えています。しかし、特別な手続きや異文化の壁のある外国人エンジニアを採用する際にはいくつかの注意が必要です。

外国人エンジニアを採用するメリット

・人手不足の解消

日本国内では少子高齢化と人口減少により、急速に全ての労働者自体が減少することが見込まれます。さらに、機械工学やIT部門など特定の分野において日本国内の理工系人材不足が目立ち、特にITエンジニア人材の不足は日本労働市場の大きな課題です。経済産業省の試算によると、2030年時点でのIT 人材の需要と供給の差(需給ギャップ)は、45万人になると試算されており、日本政府も対策に乗り出しているところです。これらの人手不足は人数、つまり「量」としての人手不足です。さらにこの人手不足に加えて、「質」としての人手不足も出てくる可能性があります。現代の科学の発展は急速であり、その変化に適応し最先端の技術を持つ労働者の数は少なくなります。例えば、現在この傾向が強く現れているのはITエンジニア内におけるAI人材不足です。経済産業省の試算によると、2030年時点で13.1万人から24.3万人の不足が見込まれます。現在はAIという技術のみですが、今後も量子コンピュータのハードウエアやソフトウエア開発技術など次々に必要とされる新しい技術が出てくることになり、「質」としての不足も大きな課題となっています。

これらの「量」及び「質」における人手不足の対策のひとつとして、外国人エンジニアの採用があげられます。国外から幅広く採用することで、必要な知識や技術を持つ人材を確保でき、ビジネスの継続や成長発展につなげることができるという大きなメリットがあります。

参照:総務省統計局「人口推計(令和2年(2020年)3月確定値,令和2年(2020年)8月概算値) (2020年8月20日公表)」
文部科学省 経済産業省「理工系人材育成に関する産学官円卓会議 人材需給ワーキンググループ取りまとめ(報告) 及び本日の議論のポイントについて」p.4
経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要) 平成31年4月」p.2
独立行政法人情報処理推進機構「IT人材白書2019」p.41
文部科学省「量子コンピュータの動向」p.19

・グローバル化

グローバル化とは、通信技術や交通手段の発達により、国内外の移動が増え、人・もの・情報が活発化し大きな利益を生み出す一方で、国家間の相互依存と影響が大きくなる現象です。このグローバル化は、アイディアなどの知識そのものや人材をめぐる国際競争を加速させるとともに、異なる文化との共存や国際協力の必要性を増大させています。そのため、日本国内の企業も常に海外市場を視野に入れビジネスを拡大する必要が出てきています。海外市場を視野に入れビジネスを拡大する際には、外国語に堪能であり、かつ現地の状況をよく知る外国人材が必要になります。この外国人材の採用により、海外市場のニーズを理解し、それに応じた商品開発などができるという大きなメリットが得られます。

参照:文部科学省「グローバル化と教育に関して議論していただきたい論点例」
経済産業省「高度外国人材活躍企業50社」p.2

・組織の多様化による収益性・生産性の向上

組織の多様性を促進することは、人手不足解消だけでなく企業の収益性や生産性を高めると言われています。多様化には年齢・性別・国籍の多様化があり、特に性別や国籍の多様化は収益性・生産性を上げる効果があります。企業が多様性のある人材が活躍できるような取組を行なっている場合は特に良い影響があるとされます(※8)。

様々な価値観を持つ外国人材の意見を取り入れることによるイノベーションの効果、そして同じ組織の外国人材の活躍が、他の日本人の社員に新しいものの見方を与えるなどの効果がある、とされます(※9)。

参照:内閣府「労働市場の多様化が経済に与える影響」p.202
経済産業省「高度外国人材活躍企業50社」p.2

外国人エンジニアの採用ノウハウ

・外国人エンジニアの募集

外国人エンジニアを募集する時には、事前準備が必要です。特に初めて外国人エンジニアを受け入れる場合には実際に募集する前に確認しておくことがあります。

【募集の準備〜募集】

第一に、経営課題の明確化が必要です。事業概要、現在の状況を明確化し、今後の事業の方向性や5年後のビジョンを明らかにしましょう。将来のビジョンを実現するために、国内エンジニアと外国人エンジニアにそれぞれどのような役割を与えるのかについての確認が必要です。

第二に、経営課題を解決するために採用する外国人エンジニアを具体的に決めます。この時、課題解決のためにはどのような知識や技術を持つ外国人エンジニアが必要なのかについてできる限り明確化することが大切です。例えば、どのぐらいの日本語能力が必要であるのか、どのような専門知識や技術が必要なのか、この業務を通じて得られる経験やキャリアはどのようなものかなどです。

第三に、採用方針の明確化があります。採用ルートや採用人数、採用スケジュールが明確になっている必要があります。この時に求人票で外国人の求職者にアピールするためにどのような記載方法にするかなども検討しておくと良いでしょう。外国人エンジニアを雇用する場合の在留資格にはいくつかの種類があります。それぞれの在留資格の要件なども整理しておくことも必要です。

第四に、外国人エンジニアを雇用する際の法律的な手続きの確認です。外国人エンジニアを雇用する際には、在留資格の手続きや日本政府が指定する報告義務などが求められます。手続きがなされないと不法就労問題になってしまいかねません。この他、採用後のトラブルを防ぐために、外国人エンジニアが理解できる言語で作成された雇用契約書・就業規則の準備も整えておく必要があります。

第五に、外国人エンジニアを受入る社内環境の整備です。人事担当者と、外国人エンジニアと働く現場社員の間で、認識が共有されているか確認しましょう。さらに社内で外国人を受け入れるための異文化理解・異文化コミュニケーションができていなければいけません。社内の教育体制・評価や処遇の体制が整っていることも大事です。

第六に、財務状況の確認です。外国人エンジニアの在留資格申請の際には採用する企業の規模によっては決算書の提出を求められる場合があります。これは外国人を長期間安定して雇用することができる財務状況があるか確認するためです。外国人エンジニアの給料を安定的に支払う能力が無いと判断される場合は、在留資格の許可が下りません。そのため、直前の決算書を確認し、債務超過に陥っていないかなど確認した上で外国人エンジニアの採用を検討しましょう。

参照:JETRO 高度外国人材活躍推進ポータル「採用前後の手続き」

・エンジニアの面接

面接においては、外国人エンジニア側が日本で働くことについてどう捉えているか確認する必要があります。母国から日本に生活拠点を移すことで、日常生活が変わります。実際に働き始めた後の離職を防ぐためにも、満員電車や居住環境、物価などの実態を知っているかどうか確認することをお勧めいたします。

また、外国人エンジニアを採用する際は、「技術」の在留資格で申請するケースが多いのですが、その他の資格で申請するケースもあります。申請する在留資格によって、必要とされている要件が異なります。そのため、外国人をどの在留資格で採用するかを検討した上で、その在留資格を申請する要件を満たしているかを事前に学歴・職歴などを調べる必要があります。この要件を満たしているかの判断は複雑であるため、事前に出入国管理庁や申請取次の資格のある行政書士または弁護士などの専門家に相談することをお勧めいたします。

また、日本在住の外国人が転職する場合かつ在留資格変更を伴う場合は1か月以上、海外から呼び寄せる場合は数か月審査に時間を要する場合があります。そのため、採用予定の日から余裕を持った日程で面接しましょう。

外国人エンジニア採用後の注意点

理想的な外国人エンジニアを採用したとしても、外国人エンジニアが持つ能力を存分に発揮してもらう必要があります。外国人エンジニアが安心して働き続けるには、ボーダレスな職場環境を作り、さらに継続的なフォローが必要です。

・ボーダレスな職場環境

新しく入社する外国人エンジニアと社員の間で円滑なコミュニケーションができるように、ボーダレスな職場環境を作ることが必要です。まずは言語面です。外国人エンジニアの日本語能力の向上だけでなく、社員の外国語能力の向上も同時に行うとより一層コミュニケーションの円滑化につながります。「宗教・文化」の違いについて、外国人エンジニアの母国の宗教・文化について学ぶ機会を設け、異文化理解を高める姿勢も大切です。「能力開発」や「メンタルサポート」など、外国人エンジニアも日本人社員と同じようにサポートが受けられるように配慮が必要です。

この外国人が円滑に社内でコミュニケーションできるかどうかは、在留資格申請の際の一つの指標にもなりますので、事前にコミュニケーションを円滑に遂行できる環境を整えておく必要があります。

参照:厚生労働省「外国人の活用好事例集」p.4

・継続的なフォロー

まず、外国人を雇用した場合、外国人雇用状況の届出をハローワークにする必要があります。

日本では当たり前の慣習でも、外国人エンジニアには理解しにくいことがあります。例えば、給料から保険制度や税金を差し引く「天引き」のシステムを事前に説明しておかなければ、額面と実際にもらう金額の違いに大きなショックを受けてしまい、大きくモチベーションを失ってしまうことがあります。

また、外国人が母国に帰った場合、年金の脱退一時金の手続き等も必要です。

また、年金労務・税務については、外国人エンジニアの母国と日本とで違うことがありますので、採用前から退職後まで継続的なフォローが必要です。

そのため雇用後は、外国人の雇用制度に詳しい税理士・社労士等の専門家に相談することをお勧めいたします。

参照:JETRO「高度外国人材活躍推進ポータル 活躍にむけて」
厚生労働省「外国人の雇用」
日本年金機構「脱退一時金の手続き」

まとめ

日本国内の少子高齢化と人口減少により人手不足が問題になっています。さらにエンジニアの場合は、理工系人材の人手不足や、先端技術の発展が早すぎて人材育成が間に合わないなどを理由とした人手不足の問題もあります。IT分野では特に今後一層のエンジニアの人手不足が予想され、日本政府も対策に乗り出しています。人手不足を解消し、さらにグローバル化の中で事業の継続・拡大をするには外国人エンジニアを積極的に採用するという対策があります。しかしながら、外国人エンジニアを採用する際には、社内環境の整備、募集の事前準備、採用後及び退職後のフォローが必要です。これらの環境整備や準備などには時間がかかります。外国人エンジニア雇用の場合は、時間に余裕を持った事前準備をお勧めいたします。