外国人採用のメリットとは?日本企業が人材を雇用する際の注意点も解説

2024年01月12日
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濵川恭一 (監修)
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net

少子高齢化やインバウンド需要の急増、事業の海外展開など、さまざまな理由で外国人採用を検討している企業もあるでしょう。外国人採用は企業の人手不足や多言語対応可能な人材の確保といった課題の解決に役立ちます。一方で、文化の違いによるトラブルや労務管理の煩わしさがあることも事実です。

このコラムでは、外国人採用のメリット・デメリットをくわしく解説。また、採用の流れや注意点もまとめています。

目次

  1. 日本企業が外国人を採用する8つのメリット
  2. 外国人労働者の採用数の現状
  3. 外国人労働者を採用する企業が増えている理由
  4. 外国人労働者の採用にはデメリットもある
  5. 外国人採用で雇用企業に注意してほしい5つのこと
  6. 外国人採用の流れ
  7. 特定技能制度により多くの外国人を採用可能に
  8. まとめ

日本企業が外国人を採用する8つのメリット

日本企業が外国人を採用する8つのメリットの画像

日本企業が外国人労働者を採用するメリットは8つあります。代表的な例ですと、インバウンドや海外展開時の対応や、人手不足を解消することの大きなメリットとなり得ます。

会社毎に、課題や今後の方向性によって、感じるメリットは異なると思いますが参考までにさまざまなパターンを確認いただき、採用を検討するうえでの参考にしてください。


1.企業規模に関わらず優秀な人材を採用しやすい

企業が外国人採用を行うメリットとして、企業規模に関わらず高いスキルを持つ人材を雇用できることが挙げられます。海外から日本に働きに来る外国人労働者は、スキルアップや収入の増加など、明確な理由を持っている場合がほとんど。国籍や個人に依存する可能性もありますが、「目的を達成できれば企業規模や立地は問わない」という外国人労働者もいます。

日本人の場合は将来性を考えて、ネームバリューのある大企業を志望する傾向が強く、中小企業は採用活動で苦戦しがちです。そのような採用活動に苦戦する企業にとって、外国人採用への着手は優秀な人材を雇用するチャンスといえるでしょう。

2.人材不足解消につながる

介護や飲食、製造業などの慢性的な人手不足に悩む業界では、外国人採用が課題解決のカギとされています。外国人採用を積極的に行うことで採用の機会が増え、人手不足の解消につながるでしょう。

なお、需要が高いにも関わらず人手不足が続いている特定の業界では、一定のスキルを持つ外国人を雇用できるよう「特定技能制度」が創設されました。特定産業分野に該当する企業は、在留資格「特定技能」を持つ外国人を雇用するのも一つの手段です。

3.インバウンド需要に対応できる

インバウンド需要に対応できるのも、外国人採用を行うメリットです。外国人旅行客の増加に伴い、外国語での対応を求められる場面は増えています。外国人旅行客と同じ言語を話せる従業員がいると、スムーズに対応できるでしょう。自社で対応する必要が高い言語をまとめて、求人票に「△△語ができる方歓迎」と記載すると必要な人材を採用できる可能性が高まります。

外国人労働者を雇用すると、海外の顧客とのやり取りがスムーズになるのも魅力です。インバウンド需要への対応が必要だったり外国人を対象にビジネスを行ったりする企業は、積極的に外国人採用を行うことで自社のビジネスチャンスを活かせるきっかけになる可能性があります。

4.海外展開への助けになる

事業の海外展開を考えている企業にとって、現地の言葉や文化に精通した外国人の採用は大きなメリットです。日本人だけだとコミュニケーションが上手く取れない可能性がありますが、現地の言葉を話せる人だとやり取りがスムーズになるでしょう。また、現地の土地柄や人の流れなどに詳しければ、海外に支店を立てる際の立地も相談できます。

海外に展開する予定のある企業は、進出先として検討している国の言葉や文化、土地柄に詳しい外国人の採用を検討してみましょう。

5.専門的な知識を有する人材を雇用できる

外国人が日本で働くには就労が許可されている在留資格が必要です。就労に関する在留資格は基本的に専門性を求められるため、在留資格を持っている外国人は一定の技術や知識があるという証明になります。

また、日本に働きに来る外国人労働者は、向上心が高くスキルアップやキャリアアップを目的としている人が多い傾向に。専門性があり、勤勉な人物を雇用できる可能性が高いのは、外国人採用のメリットといえます。

6.労働環境を見直すきっかけになる

外国人の採用を行う際は、労働者の国籍に関わらず働きやすい環境を用意しなければなりません。労働環境を変えずに外国人採用を行った場合、働きにくさから早期離職につながる可能性があります。

外国人の採用に伴う労働環境の見直しは、企業や既存の従業員にもメリットをもたらします。労働環境の見直しによって、無駄なコストの削減につながったり従業員の満足度が上がったりする効果も期待できるでしょう。

7.多様な人材が集まり豊かな発想が生まれる

価値観や出自、生活様式が日本人と異なる外国人は、社内に新たな風をもたらす存在です。個人が持つ特性を活かす採用や人材配置を行うことで、社内の多様性が増し、より発展していくでしょう。業績が伸び悩んでいる企業は、外国人採用を行い、発展を促進させるのも一つの方法です。

8.職場での会話が増えて社内の雰囲気が良くなる

外国人労働者には、日本人特有の暗黙の了解や空気を読むことが通用しにくい傾向にあるようです。そのため、はっきりと言葉で意思を伝えるコミュニケーションが必要になります。必然的に職場での会話が増え、意見交換が活発に行われるようになるでしょう。会話が増えるとお互いへの理解が進み、社内の雰囲気も明るくなります。

外国人労働者を正社員雇用するには?在留資格や就労許可について解説」では、外国人を正社員雇用する方法をまとめているので、雇用を検討している企業は参考にしてください。

外国人労働者の採用数の現状

外国人労働者の採用数の現状の画像

近年、外国人労働者の採用数は増加傾向にあります。特定技能制度や技能実習制度など、企業が外国人労働者を受け入れる制度が整ったことにより、採用に前向きな企業が増えているのが理由でしょう。厚生労働省の「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)」によると、2022年10月末時点で日本で働く外国人労働者数は約182万人でした。

国籍別の割合

日本で働く外国人労働者の国籍で最も多いのはベトナムの462,384人で、外国人労働者全体の25.4%です。次点が、中国の385,848人で、外国人労働者数全体に占める割合は21.2%でした。さらに、フィリピンの206,050人が続き、外国人労働者数全体に占める割合は11.3%という結果になっています。

産業別の割合

外国人労働者を産業別に見ると、最も人数が多いのが「製造業」の485,128人で、全体に占める割合の26.6%でした。次点が、「サービス業(他に分類されないもの)」の295,700人で、外国人労働者全体の16.2%です。続いて、「卸売業、小売業」に従事している外国人は237,928人で、全体に占める割合は13.1%という結果でした。

なお、特に人手が不足しているといわれる「宿泊業、飲食サービス業」は208,981人で、外国人労働者全体の11.5%を占めています。

在留資格別の割合

外国人労働者の在留資格で最も多いのは「身分に基づく在留資格」の595,207人で、外国人労働者全体の32.7%でした。「身分に基づく在留資格」には、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」が含まれています。

次点が、「専門的・技術的分野の在留資格」の479,949人で、全体に占める割合は26.3% です。「専門的・技術的分野の在留資格」には、在留資格「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職1号・2号」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「特定技能」が含まれます。
さらに、「技能実習」の343,254人が続き、外国人労働者全体の18.8%でした。

前年と比べると、「身分に基づく在留資格」は2.6%、「専門的・技術的分野の在留資格」は21.7%増加しています。一方、「技能実習」は前年と比べ、2.4%減少しました。

参照元
厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)

外国人労働者を採用する企業が増えている理由

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外国人労働者を採用する企業が増えている理由に、日本国内だけでは十分な人材確保が難しいという点が挙げられます。

昨今は少子高齢化が進み、多くの業界が人手不足に悩んでいるのが現状です。労働力の確保にはAIの導入やシルバー人材の再雇用などと並んで、外国人採用が問題解決に有効とされています。そのため、多くの企業が外国人採用を検討、もしくは実施しているのです。国を挙げて外国人労働者の受け入れが進められており、企業の外国人労働者採用を後押ししています。

外国人労働者の採用にはデメリットもある

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メリットの多い外国人採用ですが、一方で「労務管理が難しい」「文化の違いでトラブルが起きる」などのデメリットもあります。外国人採用のデメリットも理解したうえで、実際に雇用を行うかを検討しましょう。

1.人間関係や業務上のトラブルが起きる可能性がある

文化や言葉、価値観の違う国で育った者同士だと、どうしてもトラブルが起きやすくなります。日本人と外国人労働者だけでなく、外国人労働者同士も同様です。

大きなトラブルとまではいかなくても、上手くコミュニケーションを取れない状況もあるでしょう。たとえば、日本では多くの人がその場の空気や流れを読んで行動しますが、海外では指示された業務のみを行うのが一般的です。そのため、外国人労働者に指示を出す際は、具体的に細かく内容を伝える必要があります。

2.外国人採用特有の手続きや申請が多い

外国人の採用では、日本人採用では必要ない在留資格に関する手続きが発生するのもデメリットといえます。海外にいる外国人を雇用する場合は、在留資格の申請は基本的に雇用する企業が代理で行わなくてはなりません。また、採用後に外国人が在留資格を更新する場合も、企業側が用意する書類が複数あります。これらの手続きに工数を取られることは、人手が足りない企業にとっては負担になるでしょう。

さらに、手続きや申請に時間が掛かることも忘れてはいけません。
海外在住の外国人を採用した場合は、在留資格を申請するために必要な「在留資格認定証明書」の申請や査証(ビザ)の発給まで時間を要します。また、日本在住の外国人の場合でも、在留資格変更中は就労できません。

3.外国人を受け入れる準備が必要になる

外国人の採用が決まったら、受け入れるための環境を整備しなくてはなりません。準備をしないまま外国人を雇用すると、職場に適応できずに早期退職やトラブルにつながる可能性があります。外国人の働きやすい職場作りを実現するには、コストや時間が必要です。

なお、企業は外国人労働者の日常生活のフォローも求められます。住居探しや銀行口座の開設など、どのようなフォロー体制が必要になるか、事前に確認しておくことも大切です。

外国人が働きやすい職場作りに掛かる費用は、助成金の対象になる場合があります。詳しくは、「外国人雇用で利用できる助成金の種類は?補助金との違いも解説」をご覧ください。

外国人採用で雇用企業に注意してほしい5つのこと

外国人採用で雇用企業に注意してほしい5つのことの画像

外国人の採用は日本人を雇用するのとは異なる部分が多いため、企業側が注意すべき点がいくつかあります。ここでは外国人採用を行う企業が知るべき注意点を5つ紹介するので、受け入れを検討している場合はチェックしておきましょう。

1.国籍を理由に待遇に差をつけない

「外国人だから」という理由だけで、日本人と給料や待遇に差をつけてはいけません。労働基準法第3条では「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」と定めています。適切に評価をしたうえで、給料や待遇を設定しましょう。

なお、能力や経験の差を理由として賃金を日本人より低く設定するのは、合理的理由として認められます。「日本語での接客をともなう業務は対応できない」「業務の経験年数が浅い」などが、合理的理由に当たる事項です。

2.在留資格や入管法に関する情報収集を行う

外国人を採用する企業は、在留資格や入管法に関する知識をつけておきましょう。
外国人を採用する際は、就労可能な在留資格を所持しているか、今後取得できるかの確認が重要です。外国人が日本で働くには、必ず業務に合った在留資格を得なければなりません。在留資格がない、もしくは就労が認められていない外国人を雇用した場合、企業が不法就労助長罪に問われます。自社だけで外国人の雇用管理をするのが不安な場合は、行政書士をはじめとした専門家に依頼するのも一つの方法です。

3.雇用契約は外国人労働者の理解度を確かめつつ締結する

雇用契約の締結は、外国人が内容を理解しているかを確かめつつ進めましょう。外国人が雇用契約の内容をよく理解しないままサインし、あとでトラブルになるケースは少なくありません。意味が分かっているかをこまめに確認し、分かっていなければより簡単な言葉で説明をし直しましょう。
「外国人の母国語で雇用契約書を作成する」「契約時に通訳を同席させる」なども有効な手段です。

4.文化の違いを理解し外国人が働きやすい環境を作る

外国人を採用する際は、外国人が働きやすい職場作りに注力しましょう。具体的には、「多言語対応されたマニュアルの作成」や「就業規則を外国人に対応した内容に改定」などです。「外国人とコミュニケーションが取れる日本人従業員の採用」も効果的といえます。円滑にコミュニケーションがとれると、相手の文化や仕事に対する価値観も理解しやすくなり、齟齬が生じにくくなるでしょう。

5.日本人従業員の理解を得たうえで外国人雇用を進める

外国人の採用が決まったら、既存の日本人従業員への教育や周知を行いましょう。実際に現場で接する人たちの理解がなければ、いくら管理側が外国人採用を進めても人材は定着しません。
外国人と働くうえでの注意点や心構えをレクチャーし、異文化を認めあえる職場作りを進めましょう。

参照元
e-Gov法令検索「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)

外国人採用の流れ

外国人採用の流れの画像

外国人の採用・雇用は以下の流れで進みます。

  1. 募集
    分かりやすい募集要項を作り、外国人応募者にアプローチする

  2. 選考
    採用面接や試験で、外国人の能力や人間性が自社と合っているかを判断する

  3. 内定
    内定者が決まったら、速やかに本人に連絡をする

  4. 労働契約
    外国人の合意のもと、労働契約を結ぶ

  5. 在留資格の申請
    労働契約後、地方出入国在留管理官署で在留資格の手続きを行う(原則として外国人が海外にいる場合は企業、日本にいる場合は本人が申請する)

  6. 環境整備
    在留資格の審査結果を待つ間に、社内マニュアルの整備や就業規則の改定など、外国人を受け入れる準備を整える

  7. 勤務開始
    就業するために必要な在留資格を外国人が得られたら、雇用を開始する

  8. 外国人雇用状況の届出
    事業所のある地域を管轄するハローワークに、「外国人雇用状況の届出」を提出する

募集時に採用したい外国人の国籍を指定するのは禁止です。特定の国での滞在経験を持つ外国人を採用したい場合は、「△△に△年以上滞在経験がある人」といった募集をかけましょう。

在留資格の審査は、申請が混み合う時期は3ヶ月近く掛かる場合もあります。余裕を持って申請しなければ入社に間に合わない可能性もあるので、外国人と連携して速やかに手続きを進めましょう。

「外国人雇用状況の届出」については、「外国人を雇用したらハローワークへの届出が必要!手続きの内容を解説」のコラムをご覧ください。

特定技能制度により多くの外国人を採用可能に

特定技能制度により多くの外国人を採用可能にの画像

前述したとおり、特定技能制度は2019年4月に入管法が改正されて新たに創設された制度です。人手不足が深刻な分野を特定産業分野とし、即戦力となる外国人の受け入れを認めています。特定産業分野に該当するのは、次の12分野です。

特定技能には1号と2号があります。特定技能1号は、特定産業分野のいずれかで一定の知識や経験を持っている外国人が対象です。

一方、特定技能2号は熟練した技能を持つ外国人が当てはまり、これまで建設と造船・舶用工業のみが対象分野とされていました。しかし、2023年6月9日に新たに対象分野の追加が閣議決定され、今後、体制が整い次第運用が開始される見込みです。

参照元
出入国在留管理庁「特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定)
  • 介護

  • ビルクリーニング

  • 建設

  • 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業

  • 造船・舶用工業

  • 自動車整備

  • 航空

  • 宿泊

  • 農業

  • 漁業

  • 飲食料品製造業

  • 外食業

まとめ

外国人採用のメリットとは?日本企業が人材を雇用する際の注意点も解説のまとめの画像

外国人の採用は人材を確保したい企業にとってメリットが大きい反面、受け入れのために必要な準備や手続きが多いのも事実です。メリット・デメリットを比較したうえで、外国人の採用を行うかを考えてみましょう。なお、近年外国人採用を行う企業が増えているため、今後は優秀な人材の採用が難しくなる可能性があります。外国人の採用を考えている場合は、早めの準備がおすすめです。