外国人雇用で利用できる助成金の種類は?補助金との違いも解説

2023年09月13日
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中田直子 (監修)
日本ビザ国際行政書士事務所
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2020年に新型コロナウイルスが猛威を振るったことで、厚生労働省が運営する助成金へ注目が集まりました。新型コロナウイルス感染対応休業支援金・助成金は終了しましたが、そのほかの助成金は今後も申請可能です。
このコラムでは、外国人を雇用する企業が受け取れる可能性のある助成金を紹介。また、申請する際の注意点もまとめています。外国人を雇用する企業は内容を参考にして、助成金をスムーズに受給しましょう。

 

目次

  1. 外国人を雇用するだけで得られる助成金はない
  2. 助成金の仕組み
  3. 外国人雇用で申請できる助成金6つ
  4. 企業が助成金を申請する際に気を付けること
  5. 外国人雇用では支援制度や機関を頼るのもおすすめ
  6. まとめ

外国人を雇用するだけで得られる助成金はない

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前提として、外国人を雇用するだけで得られる助成金はありません。ただし、外国人が職場に定着できるような対策を行った企業に対して支給される助成金は存在します。また、多くの雇用に関する助成金は外国人を雇った場合でも申請可能です。自社が受け取れそうな助成金の情報をこまめにチェックして、資金調達に活かしましょう。

助成金の仕組み

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助成金は事業主を対象とし、主に厚生労働省から雇用増加や人材育成のために支給されるものです。貸付ではないため、返済の必要はありません。定められている条件に合えば、対象者が外国人であっても受け取れます。

助成率について

助成率とは、給付対象の経費のうち助成金として支給される割合を指します。助成金は支出をあとから補填するかたちで支給されますが、上限があり全額支給されるわけではありません。基本的には、助成対象の経費に助成率を掛けた金額が支給金額となります。

助成金と補助金の違い

助成金と補助金には、交付を決定する管轄省庁や財源に違いがあります。

雇用関係の助成金の交付を決定するのは厚生労働省で、主な財源は雇用保険料です。雇用安定や人材育成のために設けられている制度で、要件を満たしていれば支給されます。助成金を何に使うかも自由です。

補助金は法人税から支給されており、合否の決定をするのは経済産業省や地方自治体です。補助金は予算が決まっているため、対象者には限りがあり審査結果によっては受け取れない可能性もあります。また、補助金は事前に申請している目的のみにしか使えません。自治体によっては名称の区別が曖昧なところもあるので、制度の内容で判断をしましょう。

外国人雇用で申請できる助成金6つ

外国人雇用で申請できる助成金6つの画像

ここでは、外国人を雇用する企業が利用できる助成金を紹介します。助成金の多くは、日本人・外国人雇用問わず利用可能です。

1.人材確保等支援助成金

人材確保等支援助成金の「外国人労働者就労環境整備助成コース」は、外国人労働者が働きやすい職場整備を行った事業主に支給されます。外国人労働者は、言葉が理解しきれなかったり職場に馴染めなかったりといった理由で早期退職に至るケースも少なくありません。そのような事態を防ぐために作られたのが、人材確保等支援助成金の「外国人労働者就労環境整備助成コース」です。
就労環境整備計画を提出し認定を受け、「社内マニュアルや規定の多言語化」や「一時帰国のための休暇制度の整備」などの対策をとった企業には、助成金が支給されます。なお、就労環境整備計画期間終了後の一定期間、外国人労働者の離職率が10%を下回っていないと助成金対象にはなりません。

環境整備措置の翌日から1年以内に賃金を5%上げ、賃金要件を満たしている場合は支給対象経費の3分の2(上限72万円)が、満たしていない場合は支給対象経費の半分(上限57万円)の金額の助成金が得られます。支給対象になる経費は弁護士や社会保険労務士への委託料、翻訳費、翻訳機器導入費などです。

2.雇用調整助成金

雇用調整助成金は、景気の悪化や業績不振などで業務を縮小せざるを得なくなった雇用主に支給されます。雇用主が従業員を休業させたり出向をさせたりするのに掛かる費用の一部を支給し、解雇を防止するのが目的です。2023年3月31日までは、「新型コロナ感染症の影響に伴う特例」制度が運用されていました。
助成金は1人当たり8,490円を上限(2023年8月1日時点)として支払われます。助成対象は、休業を実施した場合の休業手当または教育訓練を実施した場合の賃金相当額、出向を行った場合の出向元事業主の負担額に対してです。助成率は中小企業は2分の3、中小企業以外は2分の1とされています。

助成金の交付を受けるには、従業員の休業や出向を行う前に「休業等実施計画(変更)届」もしくは「出向等実施計画(変更)届」を提出しなくてはなりません。なお、雇用調整助成金は景気の状況により特例措置が取られ、内容が変更になる場合があります。実際に利用する際は、あらためて制度の内容を確認しておきましょう。

3.業務改善助成金

業務改善助成金は生産率を上げるために設備投資を行い、事業所内最低賃金を引き上げた雇用主に支給されるものです。人材育成や機械設備の設置、専門家によるコンサルティングなどに掛かった費用の一部が支給されます。

業務改善助成金は、事業内最低賃金の引上げ額が多ければその分支給額も増えるのが特徴です。また、賃金が上がった労働者数でも金額が左右されます。事業所内最低賃金の引き上げ額によって助成上限額が4つのコースに分かれており、最も少額なのは30円コース、高額なのは90円コースです。

4.トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、職歴や技能面で安定した仕事に就くのが難しい求職者を、トライアル雇用した事業主に支給されます。トライアル雇用とは、常用雇用への移行を前提に原則3ヶ月雇用することです。就労に困難を抱える人の早期就職や雇用機会の創出が目的の制度で、ニートやフリーター、短期間で転職を繰り返す人などが対象になります。また、母子・父子家庭の親や生活保護受給者なども対象です。

支給されるのは、原則トライアル雇用を行う3ヶ月の間で月額4万円、対象者が母子・父子家庭の場合は月額5万円と定められています。

5.キャリアップ助成金

キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、有期雇用で働く労働者を無期もしくは正社員として雇用した事業主に支給されます。雇用転換後、6ヶ月分の賃金を支払った時点で申請可能です。有期雇用から正規雇用に転換させた場合は57万円(大企業は42.75万円)、無期雇用から正規雇用に転換させた場合は28.5万円(大企業は21.375万円)支給されます。

キャリアアップ助成金は、各種加算措置も設けられているのも特徴です。たとえば、人材開発支援助成金の訓練修了後に正社員化した場合、有期雇用から正規雇用に転換させた場合は9.5万円、無期雇用から正規雇用に転換されていた場合は4.75万円加算されます。

なお、外国人のうち技能実習生と、各国家試験に合格前のEPA介護福祉候補者および看護師候補者は、キャリアアップ助成金(正社員化コース)の対象外なので注意しましょう。理由は、上記の外国人は日本へ在留できる期間に限りがあり、帰国するのが前提であるためです。

6.人材開発支援助成金

人材開発支援助成金は、労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、職務に関連した職業訓練を受けさせた事業主に支給されます。複数あるコースのうち「人材育成支援コース」は、外国人雇用の場合も申請しやすいでしょう。人材育成支援コースでは、従業員に対して人材育成訓練や認定実習併用職業訓練、有期実習型訓練を行った場合に助成されます。
一人1時間当たりの賃金助成や一人1コース当たりのOJT実施助成のほか、講師への謝礼や施設・設備の借上費、教科書の購入費などといった経費も助成対象です。また、eラーニングや通信制訓練を受けさせた場合も、助成金が支給されます。

参照元
厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」
厚生労働省「雇用調整助成金」
厚生労働省「業務改善助成金」
厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)」
厚生労働省「人材開発支援助成金

企業が助成金を申請する際に気を付けること

企業が助成金を申請する際に気を付けることの画像

助成金の申請を検討する企業は、支給を受けるための条件を満たしているか確認したうえで、綿密な活用計画を立てるようにしましょう。

自社が助成金申請の要件を満たしているか確認する

助成金の支給を受けるには助成金ごとの要件のほか、共通要件も満たす必要があります。以下で各助成金に共通している受給要件をまとめましたので参考にしてください。

  • 雇用保険被保険者が存在する事業所の事業主であること
  • 雇用関係助成金支給のための審査に協力すること
  • 申請期間内に申請を行うこと
  • 2019年4月1日以降に雇用関係助成金の不正受給による不支給決定または支給決定の取り消しを受けている場合、5年以上が経過していること(2019年3月31日以前の場合は3年経過していること)
  • 2019年4月以降に申請した雇用関係助成金の不正受給に関与した人物が役員などにいないこと
  • 支給申請日の属する年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を納入していること
  • 支給申請日の前日から起算して1年前の日から支給申請日の前日までの間に、労働関係法令の違反をしていないこと
  • 性風俗関連営業や接待をともなう飲食などの営業をしていないこと
  • 事業主や役員に暴力団との関わりがないこと
  • 事業主や役員が、破壊活動防止法第4条に規定する暴力主義的破壊活動を行う恐れのある団体の所属していないこと
  • 支給申請日または支給決定日の時点で倒産していないこと
  • 不正受給が発覚した際に、都道府県労働局等が実施する事業主名および役員名などの公表について承諾すること
  • 支給申請書などに事実と異なる記載または証明を行うこと

以上が雇用関係の助成金に共通する受給要件です。項目が多く感じますが、実際には不正をせずルールを守って事業を行っていれば簡単に満たせる内容といえるでしょう。いざというときに助成金をスムーズに受け取るためにも、普段から正しく事業管理を行うのが大切です。

助成金の使い方を明確にする

助成金申請をする際は、活用計画をしっかり立ててからにしましょう。助成金の財源が公的負担である以上、適正に使用しなくてはなりません。実際に多くの助成金の審査では、計画書の提出が求められます。雇用関係の助成金は従業員の雇用を確保したり労働環境を整えたりするのに使うものです。企業の経営を安定させるための資金として使用するのは避けましょう。

参照元
厚生労働省「雇用関係助成金に共通の要件等

外国人雇用では支援制度や機関を頼るのもおすすめ

外国人雇用では支援制度や機関を頼るのもおすすめの画像

外国人雇用を成功させたい企業は、助成金以外の支援制度や機関を頼ることも検討してみましょう。たとえば、製造業の企業は経済産業省が運営する「製造業外国従業員受入事業」制度を利用できる可能性があります。当該制度を利用すると、海外の事業で製造業に携わる外国人従業員に在留資格「特定活動」が付与され、国内の事業所での従事が可能です。

外国人雇用における悩みは、厚生労働省の運営する「外国人雇用アドバイザー制度」を利用してみましょう。事業所を管轄するハローワークで申し込みをするとアドバイザーが派遣され、外国人雇用の注意点や教育方法、改善点などのアドバイスを無料で受けられます。

このほかにもさまざまな制度や支援機関が存在するので、自社に合った種類を探してみましょう。

参照元
経済産業省「製造業外国従業員受入事業」
厚生労働省「外国人雇用管理アドバイザー

まとめ

まとめの画像

雇用関係の助成金は対象者の国籍に制限がないため、外国人を雇用する企業も受給できます。ただし、複数の助成金が用意されているので、自社に適しているものを選ばなくてはなりません。受給の要件をよく確認し、企業の活性化のために助成金を活用しましょう。