外国人雇用で得られる助成金とは?仕組みと利用可能な制度について

2020年06月23日
中田直子 (監修)
日本ビザ国際行政書士事務所
当事務所は20年以上の経験豊富な弁護士と、入国管理法に詳しい行政書士・税理士が、アドバイザーや業務をしており、他社にはない法律に基づいた交渉力がございます。これらを生かし、丁寧なコンサルティングの上、お客様のご要望にあわせて最適なサポートと各種ビザ申請業務をいたします。また、リーズナブルな価格で特定技能ビザの登録支援機関として外国人の日常生活のサポートや外国人採用コンサルティング等もしています。(2019年はボランティアで、無料で登録支援機関の外国人サポートをしました)皆さまのご希望を叶えられるようベストを尽くします。資格:行政書士資格(入国管理取次資格)/税理士資格/TOEIC950点/ニューヨーク大学留学、アメリカでの勤務経験あり。 http://visa-nihon.com/

2019年10月末には過去最高のおよそ166万人の外国人労働者を記録しました。前年比13.6%の増加で、外国人労働者の受入れが益々広がっています。人手不足が様々な業種で広がる中、これから外国人社員の採用を検討される企業も増えて来るでしょう。

この記事では、外国人を雇用しても得られる助成金について、仕組みや利用可能な制度についてわかりやすく解説します。ですが、一部を除き外国人雇用向けに特別に作られた助成金や補助金はありません。また、労働者向けの助成金ですので基本的に雇用する側と労働者の両方が要件を満たしていなければいけません。尚、新型コロナウイルスによる特例措置については省略しております。

参照:厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和元年10月末現在)

助成金の仕組み

ここで扱う助成金とは、国や地方公共団体などが、事業や研究などの目的遂行のために現金給付の形で助成するものです。制度によっては、補助金、給付金などと呼ばれることもあります。女性の社会進出や高齢者の再就職など、その時の社会状況において必要な施策に対して給付されることが多いです。

・助成率とは

基本的には助成対象の事業に対する支出を、後から補填する形で、助成金は給付されます。全額補填されることは少なく、助成金ごとに上限があります。事業支出額に対して上限割合を定めている場合、その割合を助成率と言います。

・助成金と補助金の違い

助成金と補助金に基本的な意味の違いはありません。しかしながら、官庁により使い分けが行われており、厚生労働省は助成金、経済産業省は補助金と表現することが多いです。また補助金は期限や総予算が決まっているものが多いです。また東京都は助成金の呼称で統一されているようです。

厚生労働省による助成金は、労働環境の改善やキャリアアップなど仕事上必要とされる施策が多く、条件に適合する企業や個人に対して給付されます。

一方、経済産業省による補助金は、特定の産業の育成などを目的とし、金額も高く、対象企業は審査の上、決定されます。倍率も高く、補助金の募集期間も1か月程度と短くなっています。但し、多くの補助金は傘下の中小企業庁が扱っています。中小企業で働く人や経営者にとってはこちらのがほうが身近でしょう。これらの補助金は基本的に事後に申請し審査に通過したら補助金がおりる仕組みになっています。

利用可能な助成金制度ー①雇用調整助成金

景気の悪化や産業構造の変化、その他の経済上の理由により、事業の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的な雇用調整(休業、教育訓練または出向)を実施することによって、従業員の雇用を維持した場合に助成されます。

・受給額

上限金額がありますが、助成率は下記のようになっています。休業・教育訓練の場合、その初日から1年の間に最大100日分、3年の間に最大150日分受給できます。出向の場合は最長1年の出向期間中受給できます。

助成内容と受給できる金額 中小企業 中小企業以外

(1)休業手当または教育訓練を実施した場合の賃金相当額、出向を行った場合の出向元事業主の負担額に対する助成率

※対象労働者1人あたり8,330円が上限

2/3 1/2
(2)教育訓練を実施したときの加算額 (1人1日当たり)1,200円 (1人1日当たり)1,200円

・受給要件について

受給するためには、次の要件を全て満たすことが必要です。

①雇用保険の適用事業主であること。

②売上高などが最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて10%以上減少していること。

③最近3か月間の月平均値が前年同期に比べて、中小企業の場合は10%を超えてかつ4人以上、大企業の場合は5%を超えてかつ6人以上、従業員が増加していないこと。

④過去に雇用調整助成金の支給を受けたことがある事業主が新たに対象期間を設定する場合、直前の対象期間の満了の日の翌日から起算して1年を超えていること。

細かい条件は他にもありますが、対象となる労働者に対しても要件があります。「6か月以上の雇用保険の被保険者期間が必要」や「休業又は教育訓練の実施日の延日数が対象労働者に係る所定労働延日数の 1/20(大企業の場合は 1/15 )以上であること」などです。

2020年4月30日現在、新型コロナウイルスによる影響で上記の要件が大幅に緩和されています。詳しくは厚生労働省のホームページをご覧ください。

利用可能な助成金制度ー②トライアル雇用助成金

安定的な就職が困難な求職者について、ハローワークや職業紹介事業者などの紹介により、トライアル雇用した場合に助成します。求職者の適性や業務遂行可能性を見極め、マッチングを高めることを通じて、雇用機会の創出を図ることを目的としています。

・受給額

最長3か月の間受け取ることができます。支給額は、支給対象者1人につき月額4万円ですが、対象者がシングルマザーの場合は月額5万円となります。また優良な事業主と認定され、35歳未満の対象者をトライアルする場合も同額支給されます。

・受給要件

受給するためには、基本的にの①~⑤までの要件全てを満たすことが必要です。細かくは他にも条件があります。

①対象労働者が次のイ~ニのいずれにも該当しない者であること。

  イ 安定した職業に就いている者

  ロ 自営業者や会社役員で、1週間当たりの実働時間が30時間以上の者

  ハ 学校に在籍している者

  ニ トライアル雇用期間中の者

②次のイ~ホのいずれかに該当する者

  イ 紹介日前2年以内に、2回以上離職又は転職を繰り返している者

  ロ 紹介日前において離職している期間が1年を超えている者

  ハ 妊娠、出産又は育児を理由として1年を超えて離職した者

  ニ ニートやフリーターで45歳未満である者

  ホ 就職支援に当たって特別の配慮を有する者(生活保護受給者など)

③ハローワーク・紹介事業者などの紹介により雇い入れること

④原則3か月のトライアル雇用をすること

⑤1週間の所定労働時間が原則として通常の労働者と同程度(30時間以上)であること

利用可能な助成金制度ー③キャリアアップ助成金「正社員化コース」

非正規雇用の労働者のキャリアアップを促進するため、これらの取組を実施した事業主に対して助成をするものです。全部で7つのコースがあり、「正社員化コース」では、有期契約労働者等を正規雇用労働者に転換や直接雇用した場合に助成します。

・受給額

1年度1事業所当たりの支給申請の上限人数は20人までです。但し、生産性の向上が認められる場合には増額されます。

変更種別 中小企業 大企業
有期契約労働者→ 正規雇用労働者 57万円 42万7,500円
有期契約労働者→ 無期雇用労働者 28万5,000円 21万3,750円
無期雇用労働者→ 正規雇用労働者 28万5,000円 21万3,750円

・受給要件

下記の全てに該当しなければなりません。7つのコースすべてに共通しています。

①雇用保険適用事業所の事業主であること

②事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いていること

③対象労働者に対し、キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けていること

④対象労働者に対する賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主であること

⑤キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること

また、性風俗関連営業や暴力団と関わりのある事業主などは支給要件から外れる場合があるので注意が必要です。

ここでは7つすべてのコースの紹介は省略しますが、外国人労働者を対象とした場合、「短時間労働者労働時間延長コース」も使えます。短時間労働者の週所定労働時間を延長し、新たに被保険者とした場合に助成されるもので、週所定労働時間を5時間以上延長し新たに社会保険に適用した場合 1人当たり22万5,000円が支給されます。

利用可能な助成金制度ー④特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)

令和2年2月14日から特定求職者雇用開発助成金(安定雇用実現コース)の要件を見直し、就職氷河期世代安定雇用実現コースが施行されました。十分なキャリア形成がなされず正規雇用に就くことが困難な方を、ハローワークなどの紹介により、正規雇用労働者として雇い入れる事業主に対して助成する制度です。外国人を雇用する際にも使うことが可能です。

・受給額

半年ごとに支給総額の半額が支給されます。

企業規模 支給対象期間 支給総額
中小企業 1年 60万円
大企業 1年 50万円

・受給要件

①から④のいずれにも当てはまる方を、ハローワークや職業紹介事業者などの紹介により、新たに正規雇用労働者として雇用する必要があります。

①雇入れ日時点の満年齢が35歳以上55歳未満の方

②雇入れの日の前日から起算して過去5年間に正規雇用労働者として雇用された期間を通算した期間が1年以下であり、雇入れの日の前日から起算して過去1年間に正規雇用労働者として雇用されたことがない方

③ハローワークなどの紹介の時点で失業しているまたは非正規雇用労働者である方でかつ、ハローワークなどにおいて、個別支援等の就労に向けた支援を受けている方

④正規雇用労働者として雇用されることを希望している方

この助成金を管轄している厚生労働省は新制度により条件が拡充したとしていますが、実際には年齢幅が縮小する等しているため、より条件が厳しくなったと考えられます。

利用可能な助成金制度ー⑤人材開発支援助成金「特定訓練コース」

労働者のキャリア形成を効果的に促進するため、職務に関連した職業訓練に対して助成する制度です。あらかじめ訓練計画を、実施する1か月前までに管轄の労働局かハローワークに提出しなければなりません。

人材開発支援助成金には特定訓練コース、一般訓練コース、教育訓練休暇付与コース、特別育成訓練コース、建設労働者認定訓練コース、建設労働者技能実習コース、障害者職業能力開発コースの合計7つのコースがありますが、ここでは他より高い助成金が支給される「特定訓練コース」を紹介します。

・受給額

賃金助成、経費助成、実施助成の3種類の助成があります。経費助成は実施した時間ごとに上限額が区切られており、最大で50万円です。1事業所で1年度に受給できる助成金は最大で1000万円までとなっています。

支給対象となる訓練

賃金助成

(1人1時間当たり)

と上限

経費助成

実施助成

(1人1時間当たり)

と上限

特定訓練コースOff-JT 760円・1200時間 45%  
特定訓練コースOJT     665円・680時間

OFF-JTとは、実際の企業活動と区別して実施する座学・実技訓練で、OJTとは、先輩などの指導者による企業活動内で実施する訓練をいいます。また、生産性向上が認められる場合は助成額が割り増しになります。

・受給要件

特定訓練コースの中には7つの訓練カテゴリーがあり、それぞれ要件が異なります。外国人を雇用した際には「労働生産性向上訓練」「グローバル人材育成訓練」あるいは「若年人材育成訓練」などが使いやすいでしょう。これらに共通する要件は2つあります。

①Off-JTにより実施される訓練であること

②実訓練時間が10時間以上であること

また「若年人材育成訓練」は雇用契約締結後5年経過せず35歳未満の者を対象とする訓練でなければいけません。

利用可能な助成金制度ー⑥人材確保等支援助成金「外国人労働者就労環境整備助成コース」

最後に紹介する助成金は外国人労働者向けに特化した助成金です。外国人労働者にとって日本は言葉の違いだけでなく、様々な雇用慣行や労働条件の違いなどに直面します。雇用主とのトラブルも発生しやすい状況にあることから、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して支援するのがこの助成金の目的です。

・受給額

  支給額 (上限額)
生産性要件を満たしていない場合 支給対象経費の1/2(上限額57万円)
生産性要件を満たす場合 支給対象経費の2/3(上限額72万円)

表にある、「生産性要件」とは、細かい説明は省きますが、労働生産性が高いと認められる企業については助成額や助成率が割り増しになるということです。この助成金だけでなく様々な助成金に対してもこの基準が使われています。

また支給対象となる経費としては以下の5つがあります。

(1)通訳費(外部機関等に委託をするものに限る)

(2)翻訳機器導入費(事業主が購入した雇用労務責任者と外国人労働者の面談に必要な翻訳機器の導入に限り、10万円を上限とする)

(3)翻訳料(外部機関等に委託をするものに限り、社内マニュアル・標識類等を多言語で整備するのに要する経費を含む)

(4)弁護士、社会保険労務士等への委託料(外国人労働者の就労環境整備措置に要する委託料に限る)

(5)社内標識類の設置・改修費(外部機関等に委託をする多言語の標識類に限る)

・受給要件

助成金を受け取ることができる企業の要件については主に以下の3つが挙げられます。全てを満たしていないといけません。

(1)外国人労働者を雇用する事業主であること 

(2)外国人労働者に対する就労環境整備措置(1及び2に加え、3~5のいずれかを新たに導入し、外国人労働者全員に対して実施)

   1 雇用労務責任者の選任

   2 就業規則等の社内規程の多言語化

   3 苦情・相談体制の整備

   4 一時帰国のための休暇制度

   5 社内マニュアル・標識類等の多言語化 

(3)就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が10%以下であること

この他にも細かい要件があるのですが、他の助成金と共通しているものなので省きます。

参照:人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

まとめ

外国人を雇用することで得られる助成金について、仕組みや利用可能な制度について解説しました。受給要件に当てはまりそうな助成金制度があれば、厚生労働省のサイトで詳細な内容について確認してください。

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