ビザを持つ外国人が払う税金とは?滞納した場合の在留資格への影響を解説

濵川恭一
濵川恭一
ビザを持つ外国人が払う税金とは?滞納した場合の在留資格への影響を解説

外国人が日本で納める税金のうち、就労に関係する所得税や住民税は給与から天引きが可能です。ただし、日本人の手続きと違う点は多々あり、所得税の源泉徴収を行う際の方法が居住区分で異なったり、租税条約によって日本での所得税と住民税の支払いが免除になったりする場合もあります。

この記事では、外国人に対する所得税と住民税の手続きや注意点などを紹介。雇用主から外国人に伝えておきたい情報についても解説していますので、ぜひご覧ください。

なお、本記事はあくまで一般的なルールを記載しております。外国人の税金については、個別状況によって異なる場合も多々ありますので、より正確な情報を知りたい場合は、役所や税理士などに相談するようにしてください。

目次

  1. 外国人が日本で納める税金
  2. 外国人が払う就労に関連した税金
  3. 税金の滞納が在留資格の更新に影響する場合も
  4. 帰国時に還付される「脱退一時金」とは
  5. まとめ

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外国人が日本で納める税金

日本で就労する外国人は、日本人と同様に日本で納税する義務があります。外国人が日本で納める税金は複数あり、具体的には下記の種類が一例です。

  • 所得税:個人の所得に課されるもの
  • 住民税:区域内に住所や事務所のある個人・法人に課されるもの
  • 消費税:物品やサービスを対象に課されるもの
  • たばこ税:製造たばこに課されるもの
  • 酒税:酒類に課されるもの
  • 贈与税:個人から贈与された財産に課されるもの
  • 相続税:相続された財産に課されるもの
  • 自動車税・軽自動車税:自動車または軽自動車の保有者に課されるもの
  • 固定資産税:土地や家屋などの固定資産に課されるもの

この記事では、外国人が日本で払う就労に関連した税金として、主に所得税と住民税について詳しく紹介します。

外国人が払う就労に関連した税金

日本国内で働いて外国人が収入を得た場合、日本人と同様に、原則として所得税の納付が必要です。1月1日から12月31日までの1年間で得た所得に課税されます。住民税は、1月1日時点で日本に住所がある外国人が、前年の所得に応じて課される税金です。

なお、租税条約により要件を満たせば、日本での所得税や住民税の支払いが免除になる場合もあります。

所得税

所得税の計算式は原則、以下のとおりです。

課税所得金額(所得金額-所得控除)×税率(超累進課税5%~45%)-控除額(税率により異なる)

外国人の所得税を計算するときも、基本的に上記の計算式を使って納税額を算出します。ただし、日本人とは所得税の算出方法が異なるケースもあるので、外国人雇用を行う企業は注意が必要です。

具体的には、以下の点が日本人とは異なります。

  • 課税対象となる所得の範囲
  • 税率
  • 確定申告が必要なケース
  • 外国と日本で二重課税が生じる可能性がある

また、外国人が退職し日本を離れる場合の所得税の手続きや、扶養控除の条件についても確認しておきましょう。

所得範囲は外国人の居住形態の区分によって異なる

所得税の対象となる所得範囲は外国人の居住形態の区分によって異なります

居住形態

課税対象

居住者

日本に住所があるか現在まで引き続き1年以上居所がある方

非永住者

日本国籍がなく、過去10年以内に日本に住所か居所があった期間が合わせて5年以下の方

例:
・海外から外国人を採用し、日本で就労してもらう場合
・日本に住んでいる期間が5年以下の外国人留学生を新卒採用する場合

・国内源泉所得
・日本で支払われたか日本に送金された国外源泉所得

非永住者以外の居住者

例:
・5年を超えて日本に住んでいる外国人を採用する場合

・国内源泉所得
・国外源泉所得

非居住者

「居住者」以外の方

・国内源泉所得

「居住者」は、日本に住所があるか現在まで引き続き1年以上居所(生活の本拠地とまではいかないが、相当期間継続して居住する場所)がある方です。「非永住者以外の居住者」と「非永住者」に分けられます。

「非永住者」は居住者のうち日本国籍がなく、過去10年以内に日本に住所または居所があった期間が合わせて5年以下の方です。国内源泉所得(日本で発生した所得)と、日本で支払われたか日本に送金された国外源泉所得(外国で発生した所得)を対象に課税されます。海外から外国人を採用して日本で就労してもらう場合や、日本に住んでいる期間が5年以下の留学生を新卒採用する場合などが一例です。

「非永住者以外の居住者」は、居住者のうち非永住者以外の方を指します。所得が生じた場所が日本でも外国でも、すべての所得が課税対象です。5年を超えて日本に住んでいる外国人を採用する場合に該当します。

「非居住者」は「居住者」以外の方を指し、国内源泉所得のみに対して課税されます。非居住者の場合、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出や年末調整の対象にはならないので注意しましょう。

税率は「居住者」「非居住者」で異なる

給与支払い時の源泉所得税の徴収方法は、居住者(非永住者も含む)と非居住者で異なります。居住者の場合、日本人と同様に「給与所得の源泉徴収税額表」によって計算が可能です。社会保険料控除後の給与額や扶養親族数に応じて額が変わります。

非居住者の源泉徴収時の税率は、原則として20.42%です。これにより所得税の課税関係が完結する源泉分離課税方式のため、確定申告や年末調整は必要ありません。

日本と租税条約を結んでいる国の居住者が日本で短期労働を行う場合、要件を満たせば日本での所得税の課税が免除されることがあります。租税条約によって要件が異なるため、詳しくは国に合わせて確認が必要です。

確定申告が必要なケース

以下に該当する外国人の方は、確定申告が必要です。

  • 事業所得や不動産所得などが合わせて一定額以上ある
  • その年に支払われる給与などの額が2000万円を超える
  • 1ヶ所から給与支払いを受けている場合、給与所得および退職所得以外の所得が合わせて20万円を超える
  • 2ヶ所以上から給与などの支払いを受けている場合、年末調整を受けない従たる給与収入額と、給与所得および退職所得以外の所得額が合わせて20万円を超える
  • 在日の外国公館に勤務する方や家事使用人の方などで、給与が支払われる際に所得税および復興特別所得税を源泉徴収されないことになっている
  • 外国において支払われる公的年金などといった源泉徴収の対象とならない公的年金などの支給を受ける

外国と日本で二重課税が生じる可能性

外国人が2ヶ国以上に滞在地がある場合、日本と外国のどちらの国でも「居住者」と判定されると双方で課税される可能性があります。日本での判定は住所または居所の有無によって行われますが、外国での判定は外国の法令によるためです。

その外国との間に租税条約がある場合はその規定により居住国を判定します。

外国人が国外の親族に対する扶養控除を受ける場合

居住者の外国人従業員が国外居住親族に対しての扶養控除を希望する場合、「親族関係書類」と「送金関係書類」または「38万円送金書類」を給与支払者に提出または提示する必要があります。16歳から29歳、または70歳以上の親族の場合、「親族関係書類」と「送金関係書類」が必要です。

「親族関係書類」は、次の2つの書類のうちどちらかと日本語翻訳文を指します。1つ目は、日本か地方公共団体が発行した戸籍の附票の写しなどの書類と非居住者である親族のパスポートの写し。2つ目は、外国政府または外国の地方公共団体が発行した戸籍謄本や出生証明書などです。

「送金関係書類」は、非居住者である親族の生活費または教育費のための支払いを行ったことを示すものと日本語翻訳文を指します。具体的には、金融機関やクレジットカード発行会社が発行した書類や写し、電子決済手段等取引業者の書類や写しなどです。

「38万円送金書類」は、30歳から69歳の扶養親族にその年の生活費または教育費のための支払いを38万円以上行っている場合に必要とされます。送金関係書類のうち親族それぞれへのその年の支払い合計が38万円以上であると示す書類です。

外国人が日本を出国する場合の所得税の手続き

外国人が日本を出国する場合、源泉徴収後の所得税および復興特別所得税の額を年末調整と同じ方法で勤務先が精算します。

この場合、国外転出後に日本で課税される所得が発生しないこと、予定納税額の納付義務が確定していないこと、収入は1ヶ所からの主たる給与のみですべて源泉徴収の対象であり、国外転出までの収入が2000万円以下であることなどが条件です。

給与以外の所得がある場合、出国までに外国人本人が確定申告を行います。なお、「所得税の納税管理人の届出書」を前もって提出しておけば、納税管理人によって申告期限までの確定申告が可能です。

住民税

日本で働く外国人も、多くの場合住民税を支払わなくてはなりません。所得に応じて負担額が変わる所得割と、定額での負担となる均等割があります。

外国人を雇用する企業は、住民税が適用されるケースと税率の計算方法を把握しておきましょう。

外国人に住民税が適用されるケース

住民税を支払う必要があるのは1年以上の在留資格を持つ居住者の外国人です。非居住者の外国人は住所を持たないため、住民税を納付する必要はありません。ただし、自分が居住する目的の不動産を日本に有している場合は、住民税のうちの均等割のみ負担する必要があります。

住民税を納付するのは、1月1日時点で住居地がある自治体です。1月2日以降に出国した場合も納税しなければならないため、注意しましょう。

住民税の計算

住民税の計算は、以下のとおりです。 

所得割額+均等割額(4000円)=個人住民税の税額
所得割額=課税所得金額(所得金額-所得控除額)×自治体が定めた税率-税額控除額

2024年度からは森林環境税(国税)1000円が均等割とあわせて課税されます。所得控除は所得税と住民税で内容が違うので、計算の際は注意が必要です。税率や算出方法は基本的にどの市町村でも同じですが、自治体によって異なる場合があるため、詳しくは対象の自治体の情報をご確認ください。

雇用主が外国人に伝えておきたい手続き

特別徴収で給与から住民税を天引きしていた場合、外国人が退職する際は、支払っていない分の住民税を本人が普通徴収で納税する必要があります。しかし、残りの支払い額を会社がまとめて給与や退職金から差し引いて納付する方法(一括徴収)もあるため、どちらの徴収方法を希望するか外国人に尋ねておくと良いでしょう。なお、1から5月に退職する場合は、一括徴収しか選べません。

また、外国人が日本を離れる場合、出国までに納付できない場合は、代わりに手続きを行ってもらえるよう、日本に住んでいる人のなかで納税管理人を決める必要があります。住んでいる市区町村に届け出なければならないので、あわせて伝えておきましょう。

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参照元
国税庁「No.2010 納税義務者となる個人」
国税庁「令和6年分 源泉徴収税額表」
財務省「我が国の租税条約等の一覧」
埼玉県庁「第8章 税金(外国人の生活ガイド)」
国税庁「非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ

税金の滞納が在留資格の更新に影響する場合も

税金を滞納した場合、在留資格更新の審査が厳しくなります。特に永住者の在留資格を申請する際には、原則として直近5年間の納税状況が厳しく審査されます。滞納はもちろんですが、数日だけ納付が遅れた場合であっても、永住審査にマイナスの影響があります。

さらに、2024年6月には改正法が成立・公布され、すでに「永住者」の在留資格を持つ外国人が税金や社会保険料などの公的負担金を故意に納付しない場合、在留資格を取り消しできるという規定が設けられました。このように、税金の滞納が外国人の在留に大きく関わるおそれがあるため、働き続けてもらうためには企業側でも外国人への情報提供などのサポートが必要です。

多くの企業では、外国人社員の所得税や住民税を給料から天引き(特別徴収)していると思いますが、もしそうでない場合は注意が必要です。在留資格の更新時や永住申請時に、特別徴収になっていない理由を説明する必要がある場合があり、手続きが煩雑になってしまいます。

また、税金の滞納で延滞税も発生します。さらに滞納が続くと財産が差し押さえられる可能性もあるため、あわせて外国人に伝えておきましょう。

参照元
出入国在留管理庁「令和6年入管法等改正法について

経営管理ビザを持つ外国人は法人に関する納税義務にも注意

経営管理ビザの審査では、経営する企業が納税義務を果たしているかどうかも厳しく審査されます。具体的には、法人税、法人住民税、事業税、消費税などです。これらの税金を滞納していると、経営管理ビザの更新に大きく影響しますので、十分に注意しましょう。

帰国時に還付される「脱退一時金」とは

雇用者が外国人に伝えておきたい情報の一つに「脱退一時金」があります。外国人も20歳から59歳までであれば、公的年金制度への加入が必要です。日本国籍を持たない方が国民年金や厚生年金保険の被保険者資格を喪失し出国した場合、日本に住所がなくなってから2年までであれば脱退一時金を請求できます。厚生年金保険の脱退一時金は、保険に加入していた期間が合計6ヶ月以上といった支給要件があるため、該当するか確認のうえ外国人従業員に教えてあげると良いでしょう。

なお、外国人が一時帰国する際、再雇用を前提として一旦退社し、脱退一時金を受け取るケースが散見されていますが、本来の脱退一時金の趣旨とは異なります。現時点で罰則などはありませんが、同じ会社でこうしたケースが多くなると審査が厳しくなると思われます。

まとめ

外国人が支払う必要のある税金はさまざまな種類があり、就労に関連するものには所得税や住民税があります。どちらも企業で給与から天引きしますが、場合によっては外国人本人が確定申告を行うケースも。税金を滞納してしまった場合、在留資格の更新に影響が出て国内で働けなくなる可能性もあるため、会社側からも情報提供などのサポートをするようにしましょう。

濵川恭一

監修:濵川恭一

外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net