外国人雇用・採用の疑問を解消するメディア
近年、人手不足解消やインバウンド対策のため、外国人雇用を検討している企業が増えています。しかし、よく聞くのが「外国人雇用に関する法律が複雑そうで採用に踏み出せない」という悩みです。しかし実際のところ、外国人には労働基準法や最低賃金法など日本人と同じ労働関係の法律が適用されます。
外国人特有の出入国や就労のルールを定めているとして法律としては、入管法があります。入管法に違反すると刑事罰が科せられる場合があり、知識不足からさまざまな問題に発展するケースが少なくありません。知らずに違反してしまう事態が起きないように、外国人雇用に関係する法律の知識を持っておきましょう。
目次
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労働者の雇用と人権を守るための法律は国籍を問わず適用されるため、外国人を採用する場合も法律に則った管理を心掛けましょう。代表的な労働関係の法律は以下のとおりです。
以上のように、数は多いものの、内容は日本人労働者に適用される法律と同様です。このほか、「雇用保険法」「健康保険法」「厚生年金保険法」など、社会保障制度に関わる法律も外国人労働者に適用されます。そのため、外国人雇用の場合も、日本人と同じように入社後に社会保障制度の手続きが必要です。
「労働基準法」とは、労働者の健康で文化的な最低限度の生活を保証するため、就労時間や賃金、休暇などの最低条件を定めた法律です。健康を害する長時間労働や生活もままならない低賃金での労働をなくすために作られました。
労働基準法第3条では以下のように定められています。
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
参照元:e-Gov法令検索「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」
以上のように、労働基準法第3条が労働者の均等待遇について定めているため、外国人も日本人と同じように労働関係の法律が適用されます。したがって、労働時間や賃金、休暇などに関する基本原則は日本人と同様です。
労働基準法では賃金や就労時間、休日などに関する詳細なルールを定めています。
外国人を雇用する企業は、あらためて労働基準法の内容を確認しておきましょう。
参照元: e-Gov法令検索「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」 厚生労働省「労働時間・休日」 厚生労働省「賃金の支払方法に関する法律上の定めについて教えて下さい。」 厚生労働省「法定労働時間と割増賃金について教えてください。」 厚生労働省「年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。」
「出入国管理及び難民認定法(通称:入管法)」は、日本人を含めたすべての人の出入国を管理する法律です。日本に在留する外国人の管理や難民認定制度についても定めています。
入管法は、外国人が日本に入国や就労する際の根拠となる法律です。外国人の在留・就労に関係する基本原則が入管法に記載されています。
外国人を初めて雇用する企業にとって馴染みが薄い法律ですが、とても重要なためしっかり内容を把握しておきましょう。
入管法では、29種類の在留資格を定めています。外国人はいずれかの在留資格を取得しなければ、日本に入国し滞在することができません。在留資格の種類は以下のとおりです。
【就労資格】
外交/公用/教授/芸術/宗教/報道/高度専門職/経営・管理/法律・会計業務/医療/研究/教育/技術・人文知識・国際業務/企業内転勤/介護/興行/技能/特定技能/技能実習
【非就労資格】
文化活動/短期滞在/留学/研修/家族滞在
【法務大臣の許可内容により就労の可否が決まる在留資格】
特定活動
【居住資格】
永住者/日本人の配偶者等/永住者の配偶者等/定住者
外国人が日本で働く際は、就労可能な在留資格が必要です。たとえば、在留資格「留学」で日本に滞在している外国人は就労できません。ただし、留学生は資格外活動許可を得ることでアルバイトができます。資格外活動許可は在留資格が認めている活動以外を行う際に必要となる許可です。取得すると1日8時間、週28時間まで、学校が長期休暇の場合は1日8時間、週40時間までのアルバイトが認められます。ただし、風営法の許可が必要な業種ではアルバイトできません。例えば、パチンコ店、雀荘、スナックなどですね。
就労可能な在留資格を取得している場合でも就ける職業や従事できる業務が決まっており、それ以外の活動は原則許可されていません。したがって、外国人を雇用する際は、自社で採用できる在留資格を持つ人材か、任せる業務が認められている範囲内かに注意する必要があります。
なお、居住資格に分類される在留資格は日本では行う活動に制限がないため、どのような業種の企業でも雇用可能です。
入管法に違反した場合、外国人と雇用主の双方に刑事罰や民事罰、もしくはその両方が課せられます。たとえば、就労不可の在留資格で働くのは法律違反であり不法就労です。不法就労とみなされた外国人は在留資格の取り消しや出国命令、悪質な場合は退去強制を命じられます。
また、不法就労に当たる外国人を雇用していた企業は、「不法就労助長罪(入管法73条の2)」に問われます。不法就労助長罪の罰則の内容は、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方です。たとえば、「オーバーステイの外国人を雇用する」「保有している在留資格外の業務をさせる」といった状況はすべて不法就労助長罪に該当するので、十分に注意しましょう。
在留資格外の業務の具体例は以下です。
不法就労助長罪のほかにも、入管法には以下のような刑事罰が定められています。
入管法の理解不足は罪に問われ企業の信頼を失う問題に繋がるので、外国人雇用を始める前に内容を理解しておきましょう。
参照元: e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)」 出入国在留管理庁「在留資格」 出入国在留管理庁「資格外活動許可について」 出入国在留管理庁「「留学」の在留資格に係る資格外活動許可について」 出入国在留管理庁「不法就労に当たる外国人を雇い入れないようにお願いします。」
入管法は必要に応じて改正されます。改正内容を把握しておらず法律を犯した場合も、「知らなかった」では済まされません。外国人雇用をする際は常に入管法の最新情報を確認し、法律に違反しないよう注意しましょう。
2019年、在留資格「特定技能」の創設を定める改正入管法が成立しました。「特定技能」は人手不足が深刻な特定の業界において、外国人の単純作業も認めている在留資格です。従来、日本では就労目的で来日した外国人による単純労働は基本的に認められていませんでしたが、2019年の改正入管法により一定の条件下で認められるようになりました。
特定技能外国人を雇用できる業界は2025年2月時点で16分野です。今後も新しい業種の追加や統合が起きる可能性があります。特定技能外国人の雇用を検討している企業は、常に最新情報を確認しましょう。
入管法は2023・2024年度にも改正されています。2023年には、難民認定制度の運用見直しや収容問題に関する改正が行われました。
2024年には、マイナンバーカードと在留カードの一体化や育成就労制度の創設が閣議決定されています。育成就労制度は、技能実習に代わる制度です。2024年6月21日から起算して3年以内に始まる予定ですが、2024年12月時点では開始日未定です(出入国在留管理庁「育成就労制度・特定技能制度Q&A」Q2参照)。技能実習生の採用を検討していた企業は、今後、育成就労制度による外国人の受け入れを検討することになるでしょう。
参照元: 出入国在留管理庁「最近の入管法改正」 出入国在留管理庁「令和5年入管法等改正について」 出入国在留管理庁「令和6年入管法等改正について」 出入国在留管理庁「育成就労制度・特定技能制度Q&A」
ここでは、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(通称:労働施策総合推進法)」について解説します。労働施策総合推進法は、多様な働き方を認めて労働者の就業を安定させるための法律です。「雇用対策法」を前身としており、働き方改革関連の規定を盛り込んで2018年6月に施行されました。2020年6月に、パワーハラスメント防止対策を事業主に義務付ける改正法が施行されたため、「パワハラ防止法」とも呼ばれています。
「外国人雇用状況の届出」は、外国人の入社後に氏名や在留資格などをハローワークに届け出る手続きです。労働施策総合推進法第28条では、外国人を雇用した事業主に対し「外国人雇用状況の届出」を提出するように定めています。厚生労働省が日本で働く外国人の数や状況を把握し、雇用状況の改善や再就職支援に繋げるのが目的です。アルバイトや正社員といった雇用形態に関わらず、外国人を雇用した場合は必ず届け出る必要があります。
なお、「外国人雇用状況の届出」は、外国人の離職時にも提出しなければなりません。離職後に提出し忘れてしまう企業が多いため、注意しましょう。届出を怠ると30万円以下の罰金が科されます。
「外国人雇用状況の届出」は事業所の所在地を管轄するハローワークで行えるので、忘れずに提出しましょう。様式はハローワークの窓口や厚生労働省のWebサイトで入手可能で、オンラインから電子申請も行えます。提出期限は、雇用・離職の場合ともに入社日の翌月末日までです。
なお、雇用保険に加入する外国人の場合は、「雇用保険被保険者資格取得届」「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出することで、外国人雇用状況の届出を行ったとみなされます。つまり、雇用保険に加入する場合は、本届出が不要です。
労働施策総合推進法第7条は、日本の習慣や日本語に慣れていないことを理由に、外国人が能力を発揮できない事態を防ぐために作られました。外国人が職場に適用できるように雇用主に対してさまざまな措置を講じることを定めています。雇用主が行うべき具体的な措置が記載されているのが、厚生労働省が発表した「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」です。以下の各項目ごとに、行うべき措置を示しています。
【1.外国人労働者の募集及び採用の適正化】
【2.適正な労働条件の確保】
【3.安全衛生の確保】
【4.雇用保険、労災保険、健康保険及び厚生年金保険の適用】
【5.適切な人事管理、教育訓練、福利厚生等】
【6.解雇の予防及び再就職の援助】
措置は努力義務なので、すべて守れなくても罰則はありません。しかし、外国人を雇用する企業の責任として、可能な範囲で対策を講じましょう。
以上のように、外国人雇用には日本人と同様の労働関連の法律が適用されますが、在留資格や就労に関連する手続きなど、特有の事項も存在します。外国人雇用に不慣れな企業が、意図せず法律違反してしまう可能性があるので注意が必要です。
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参照元:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)」 厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」 厚生労働省「外国人雇用状況届出システム」 厚生労働省「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」
最低賃金法は、労働者の生活を守るため雇用者が支払う賃金の最低額を定めている法律です。しかし、外国人雇用の現場では、最低賃金を下回る時給しか支払わない事例が後を絶ちません。中には、技能実習生を時給300~400円といった低賃金で働かせている企業もあり、問題になっています。技能実習生であっても、最低賃金以下で働かせるのは違法です。企業には、業績や利益がどのような状態であっても、労働者の国籍にかかわらず最低賃金以上の金額を支払う義務があります。
最低賃金法では、地域別最低賃金と特定最低賃金の2種類を定めています。
地域別最低賃金とは、各都道府県の経済状況や物価などを考慮して、地域ごとに定められる最低賃金のことです。都道府県の労働局長が地方最低賃金審議会に意見を聞き、毎年10月ごろに改定が行われます。雇用主は最低賃金の変更にあわせて、従業員の賃金を改定しなければなりません。
直近10年をみるとは、物価の上昇により最低賃金が連続して上がっており、今後も上昇が見込まれています。また、近年は上げ幅も大きくなっています。
特定最低賃金は、地域別最低賃金よりも高い最低賃金が適切と判断された、特定の産業(製造業や小売業など)に対して設定されます。特定最低賃金は必ず地域別最低賃金を上回っていなければなりません。2024年12月時点で224件の特定最低賃金が定められていますが、各都道府県によってどの産業が該当するかは異なります。
参照元: 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」 厚生労働省「特定最低賃金について」
労働基準法や最低賃金法などの労働関係の法律は、外国人にも適用されます。労働関連法規に加えて入管法の内容も理解し、法律を厳守した雇用管理を心掛けましょう。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net