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特定技能の分野に「自動車運送業」が追加されたことで、外国人がタクシーやトラックの運転手として働きやすくなりました。こうした社会の変化もあり、外国人はどうすれば日本で運転できるのか疑問に感じる方が増えています。
外国人が日本の運転免許を取得する方法は二通り。通常の手順で試験に合格する方法と、外国の免許を日本の免許に切り替える方法があります。
また、国際運転免許証や「日本と同等の水準にあると認められる国の運転免許」を所持していれば、日本の免許がなくとも運転が可能です。
この記事では、各免許の詳細や取得方法を解説します。外国人従業員の免許取得をサポートしたい企業の方や、特定技能で外国人ドライバーの採用を検討している方は、ぜひご覧ください。
目次
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外国人が日本で運転するためには、以下のいずれかの免許を所持していなければなりません。
海外で取得した運転免許は、後述する「国際免許証」「日本と同等の水準にあると認められる国の運転免許」を除き、日本では使用できません。標識や交通ルールなどが国によって異なるためです。
たとえば、日本では自動車が左側通行ですが、ほとんどの国では右側通行だということをご存じの方は多いでしょう。制限速度や標識の形も各国で異なるため、正しい知識を持たずに運転すれば、重大な事故に発展することも十分に考えられます。
当然ですが、日本の普通免許を取得すれば、日本人と同様に自動車を運転する仕事も可能です。「中型自動車運転免許」や「大型自動車運転免許」を持っていれば車両総重量が4トン以上のトラックを運転できますし、「普通二種免許」を取得すればタクシードライバーとして活躍できます。
そのための在留資格として、2024年3月には特定技能「自動車運送業」の新設が決定されました。詳しくは、後述の「特定技能『自動車運送業』の免許はどのように取得する?」で解説します。
日本の運転免許を取得する場合、2種類の方法があります。新しく免許を取得する方法と、外国の免許を切り替える方法です。
外国にいる間に免許を取ったことがない従業員には、新しく日本で取得してもらいましょう。教習所に通う場合は1~3ヶ月程度かかりますが、合宿では15日前後で卒業できます。ただし、学科教習や技能教習は全て日本語で行われるため、日本語力が十分でない外国人は、より多くの日数が必要になることが多いようです。
ちなみに、合宿制の自動車学校の中には、英語や中国語で教習を実施するところもあります。
普通自動車運転免許を取得することで、原動機付自転車や定員10人以下のワゴン車の運転ができます。また、車両総重量3.5t未満のトラックの運転も可能です。
外国で取得した運転免許がある方は、切替手続きを行いましょう。適性試験や知識・技能確認を受ける必要はありますが、一から免許を取得するよりも内容は簡単です。国によっては知識確認と技能確認が免除される場合もあります。
ジュネーブ条約に基づく国際運転免許証を持っている場合は、日本で運転が可能です。ウィーン条約に基づく国際運転免許証は日本では使えないため注意しましょう。
運転できる期間は日本に入国した日から1年間です。国際運転免許証そのものにも有効期限があるため、そちらが先に切れた場合、日本に来て1年未満であっても運転できなくなります。
日本滞在中に国際運転免許証の期限が切れてしまう場合は、前述した運転免許証の切替手続きを行いましょう。
2024年7月現在では、スイス連邦・ドイツ連邦共和国・フランス共和国・ベルギー王国・モナコ公国・台湾の運転免許を持っている人は、免許証とあわせて日本語翻訳文が添付されていることを条件に日本での運転が可能です。
引用:警察庁「台湾の運転免許証による日本での運転の概要」
なお、日本語翻訳文は政令で定められた機関が作成したものでなければなりません。たとえば、その国の在日大使館や領事館、免許証の発給機関、国家公安委員が指定した法人であるJAFなどです。
国際運転免許証と同様に、日本上陸から1年以内、または外国の運転免許の有効期間のどちらか短い期間内で運転できます。有効期間を超える場合は、日本の運転免許への切替え手続きを行いましょう。
参照元 警察庁「外国の運転免許をお持ちの方」 警視庁「外国で取得した運転免許証を日本の運転免許証に切替えるには」 JAF
外国で取得した運転免許を切り替えるには、有効な運転免許証を所持しており、免許取得国に取得後3ヶ月以上滞在していたという条件が必要です。知識確認や技能確認などを受けますが、国や地域によっては免除される場合もあります。
運転免許の切替ができる条件は、以下のとおりです。
なお、免許を取得してから免許取得国に3ヶ月以上滞在していたことを確認するために、滞在期間をパスポートなどでチェックされます。場合によっては、パスポート以外の書類を求められることもあるため、詳しくは各都道府県警察のWebサイトを確認しましょう。
外国の運転免許の一般的な切替手続き方法を順に沿って解説します。
各都道府県の運転免許センターに申請書類を提出します。
視力テストや色彩識別能力テストなどを受けます。普通第一種免許であれば、視力は両眼で0.7以上、片眼でそれぞれ0.3以上必要です。色彩識別能力テストでは、赤色や青色、黄色の識別ができるかをチェックします。
基本的な交通規則に関する選択式の筆記試験です。10問中7問正解すれば合格できます。日本語以外でも受験可能ですが、免許センターによって対応言語が異なるため、事前に確認しておきましょう。
運転免許センターにあるコースを実際に走行します。ただし、確認されるのは実際に運転可能かというポイントだけではありません。交通ルールの理解や、安全運転ができているかについてもチェックされます。
筆記試験や運転技能に問題がなければ、日本の運転免許への切替が行われます。
以下の国や地域の運転免許を持っている場合、知識確認・技能確認が免除されます。
アイスランド、アイルランド、アメリカ合衆国(オハイオ州、オレゴン州、コロラド州、バージニア州、ハワイ州、メリーランド州及びワシントン州に限る)、イギリス、イタリア、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カナダ、韓国、ギリシャ、スイス、スウェ-デン、スペイン、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ニュージーランド、ノルウェ-、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、モナコ、ルクセンブルク、台湾
また、アメリカ合衆国インディアナ州の運転免許を持っている場合、技能確認のみ免除されます。
ここでは、東京都に居住している場合の受験場所や日程を例として紹介します。
【受験場所】
【日程】
江東運転免許試験場では、「知識確認・技能確認が免除される国や地域」の運転免許を持っている人のみ受験できます。また、当日混雑した場合は受付できない可能性もあるため注意しましょう。
東京都に居住している場合の手数料と必要な書類について紹介します。普通免許証の場合、申請料は2550円です。交付手数料に2050円、併記手数料に200円かかります。
必要書類は以下のとおりです。
【必要書類】
※免許取得日の記載がなければ、証明する書類が必要
※技能確認が免除されない場合、技能確認実施日まで有効でないと切替え不可
※日本自動車連盟(JAF)や当該国の駐日大使館などが作成したもの
※古いパスポートがあれば全て持参する。
※取得状況や取得国によって異なる
※運転経歴および滞在期間が分かるものを持っている場合は持参する
<現在および過去に所持していた方>
<外国での免許取得時からの出入国記録を持っていない方>
<住民基本台帳法の適用を受ける方>
<住民基本台帳法の適用を受けない方>
参照元 警視庁「外国で取得した運転免許証を日本の運転免許証に切替えるには」
外国で運転免許を取得したことがない従業員には、教習所に通って新しく運転免許を取得してもらいましょう。
全ての教習所が対応可能ではないものの、中には外国語に対応している教習所も。東京では、対応している外国語教習は英語が多く、中国語やタガログ語の教習が受けられる場所もあります。
第一種・第二種・仮免許学科試験では、東京の場合、英語・中国語・韓国語・ベトナム語・インドネシア語・ポルトガル語などの20言語で受験が可能です。ただし、受験会場によって実施日や対応可能な言語が異なるため、事前に確認しておく必要があります。
普通免許を取得できる条件は、以下のとおりです。
日本の運転免許を取得する一般的な方法を、順を追って解説します。
まずは、公安委員会が公認した指定自動車教習所に通って運転技術や交通ルールを学びます。学科教習と技能教習のカリキュラムを終え、卒業検定(技能試験)に合格したら卒業です。
なお、最初の講習を受けた日から9ヶ月以内に、すべての課程を終わらせなければなりません。
合宿タイプの自動車教習所では、短期間で免許を取得できるようにカリキュラムが設定されています。
卒業検定(技能試験)に合格して自動車教習所を卒業したら、運転免許試験場で本免許取得試験を受けます。
試験を受けるために必要書類を確認しておきましょう。初めて運転免許を取得する場合、本籍(国籍)記載の住民票の写しと本人確認書類、申請用写真、卒業証明書、予約完了時のQRコードか受付番号、手数料が必要です。
卒業証明書の有効期限は1年間なので、卒業してから1年以内に運転免許取得試験を受けなければなりません。
運転免許試験に合格したら、運転免許証が交付されます。
教習所に通う場合、マニュアル車であれば30万円、オートマ車限定であれば29万円程度かかります。教習所に通う場合、期間の目安は1~3ヶ月程度です。
合宿ではマニュアル車が約26万円、オートマ車限定では約25万円かかります。期間の目安は2~3週間です。
運転免許証には、本名の横に通称名である日本名の名称が記載できます。広島県の場合、国籍や地域・通称名が記載された住民票の写しが必要です。運転免許試験手続や更新手続、再交付手続、忘れ失効手続、記載事項変更手続の際に希望することで表記できます。
参照元 警視庁「外国語により受験できる学科試験について」 大阪府警察「免許の種類と視力等の基準」 警視庁「普通免許試験(指定教習所を卒業又は検査合格証明書をお持ちの方)」 広島県警察「外国人の方で通称名を運転免許証へ記載することを希望される方」
運転免許の更新方法は基本的に日本人と同様です。免許の更新年になると通知が届くため、誕生日の1ヶ月後までに所定の施設で更新を行います。
ただし、外国人の免許更新には在留資格を確認できる書類が必要である点には注意しましょう。
更新に必要なものは以下のとおりです。
場合によって追加の持ち物があったり、必要なものが各都道府県で異なっていたりするため、事前に各都道府県警察のWebサイトを参照しましょう。
参照元 警視庁「更新手続一覧」 警視庁「運転免許試験場での更新手続」
特定技能「自動車運送業」で働くためには、業種によって一種免許または二種免許が必要です。在留資格の取得要件に含まれるため、雇用を開始する前に(在留資格の申請を行う時点で)免許を取得していなければなりません。
すでに日本で暮らしており、免許も取得済みの人材を雇用できれば問題はありません。しかし、海外にいる人材を採用して呼び寄せたい企業もあるでしょう。後者の場合、どのように免許を取得してもらえばよいのでしょうか。
まず、一種免許が必要な特定技能の自動車運送業について解説します。持っている外国の免許を日本の免許に切り替える場合、代理申請はできないため、外国人本人が日本で申請しなければなりません。
方法は2つあり、1つ目は、入社前に「短期滞在」の在留資格で日本に招致して取得してもらう方法です。短期滞在では90日以内の滞在が認められます。教習所での通学期間は早ければ1ヶ月程度ですが、教習の予約状況や試験の進行状況にも影響されるため、多めに期間を見ておいたほうが良いでしょう。合宿や短期集中コースのある教習所を利用することで、早く卒業できます。
2つ目の方法は、「特定活動」の在留資格で入社してもらい、期間中に免許を取得してもらう方法です。「特定技能1号」への移行を希望する場合は、就労を予定する企業で就労しながら特定技能への移行準備ができます。免許を必要とする業務以外を担当してもらうと良いでしょう。上限が6ヶ月のため、余裕をもって準備できます。ただし、すでに日本に滞在中の方向けの制度であることに注意しましょう。
次に、二種免許の取得について説明します。現行制度では、二種免許を海外にいる外国人が取得するのは難しいのが現状です。
二種免許の受験資格として、普通免許などを取得してから3年以上の運転経験が必要とされています。29時限以上の受験資格特例教習を受ければ、最短で1年の運転経験があることを条件に受験資格を得られます。また、外国の免許を日本の二種免許に切り替えることはできません。
また、日本語能力に関する懸念もあります。特定技能「自動車運送業」の日本語要件は「JLPT N3」程度です。たしかにN3レベルであれば一般的な接客業が可能とされていますが、それは周囲のサポートを前提とした話であり、車内でお客さんと一対一のコミュニケーションを行うのは難易度が高いと言わざるをえません。そのため、数ヶ月かけて根気よくロールプレイ研修を行う必要があります。
また、二種免許を取得するためには、学科試験があります。こうした試験に合格するためには、N3レベルでは少し難しいのが現状です。
事実として、弊社の外国人材紹介サービス「WeXpats Agent」をご利用いただいているタクシー会社もありますが、すでに日本の運転免許を取得している方を採用条件としたうえで、それでもなお通常より長めの研修期間を設けていただいております。
「免許取得」「日本語能力」という2つのハードルにより、制度が施行されてすぐタクシーやバスのドライバーを海外から招致することは難しいかもしれません。
しかし、日本語でしか受験できなかった二種免許の学科試験が多言語に対応するなど、少しずつ外国人の受け入れはしやすくなってきているという見方もあります。制度に関してはまだ具体的に発表されていないため、一種免許も含めて免許取得に関して何らかの緩和が行われる可能性もあるでしょう。
また、上記はあくまで海外在住の外国人を受け入れたい場合の話であり、すでに日本の運転免許を持っている留学生や、在留期間が終了間近の技能実習生を特定技能「自動車運送業」で採用する手もあります。
弊社が運営するWeXpats Agentでは、求人作成の際に在留資格の条件のご指定が可能です。ご希望に合わせた外国人人材のご紹介ができるため、外国人雇用を進めていきたいと考えている企業様は、ぜひ一度お問い合わせください。
関連記事:「外国人を雇用する企業に関係する法律とは?内容を知って適切に受け入れよう」
参照元 外務省「ビザ」 出入国在留管理庁「在留資格「特定活動」」 出入国在留管理庁「特定技能関係の特定活動(「特定技能1号」への移行を希望する場合)」 警察庁「第二種免許等の受験資格の見直しについて(令和4年5月13日)」
外国人が日本で自動車を運転するには「日本の運転免許」「国際運転免許証」「日本と同等の水準にあると認められる国の免許」のいずれかが必要です。いずれも所持していない場合は、日本の運転免許を取得するか外国の運転免許の切替手続きを行う必要があります。
自動車の運転を伴う業務がある企業の方は、雇用する外国人が日本の運転免許を取得したり外国の運転免許の切替手続きを行ったりする際のサポートが行えるようにしておきましょう。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net