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入管法で定められている在留資格は全部で29種類です。日本での活動に制限のない種類もあれば、就ける仕事が細かく決められている種類もあります。外国人を雇用する企業は、それぞれの在留資格について理解しておく必要があるでしょう。
このコラムでは、在留資格の種類を一覧で解説します。内容を参考にして、それぞれの在留資格の特徴や就ける仕事を知りましょう。
目次
日本で働く外国人は、必ず在留資格を取得しなくてはなりません。それぞれできる仕事が決まっているので、外国人を雇用する企業も仕組みを理解しておくのが重要です。ここでは、在留資格の基礎知識を紹介します。
外国人が日本で活動する際に必要なのが、在留資格です。在留資格は、日本に滞在するすべての外国人が取得する必要があります。在留資格の期限が切れたり許可を取り消されたりしたら、日本に在留し続けることはできません。
外国人は自らの身分や就労内容にあわせて、ふさわしい種類を選ぶ必要があります。
外国人は取得する在留資格の種類により、日本で就労できるか否かが決まります。就労できない在留資格を持ちながら日本で働くのは不法就労に該当し、退去強制や刑事処分の対象です。
不法就労で罰せられるのは外国人だけではありません。就労不可の在留資格を持っていたり在留期間が切れていたりする外国人を雇用した事業主は、「不法就労助長罪」で罰せられます。刑罰の内容は3年以下の懲役、または300万以下の罰金もしくはその両方です。故意ではなくても刑罰の内容は変わりません。だからこそ、外国人を雇用する企業は在留資格について正しい知識を身に付ける必要があるのです。
多くの在留資格には期限があり、失効したら日本に滞在できません。そのため、許可されている在留期間後も日本に居続けるには、在留資格を更新または変更する必要があります。
在留資格の種類によって違いはありますが、初めて在留資格を取得した際は1年の在留を許可される場合が多いようです。次の在留資格の更新時に、日本での在留状況に問題がないと判断されれば、長期間の在留が許可されます。
在留資格とよく混同されるビザは、上陸審査の際に必要になる証明書を指す言葉です。正式には査証と呼ばれ、外務省が発給します。在留資格とは違い、外国人が入国した時点もしくは発給の翌日から起算して3ヶ月になった時点で無効となり、そのあとは使えません。
在留資格は、法務省の外局である出入国在留管理庁が管理している、外国人の日本での活動を許可するための資格です。
在留資格とビザは全く別物ですが、日本では便宜上、在留資格をビザと呼ぶ場合が多々あります。「ビザ」という名称がでてきたときは、在留資格のことなのか査証を指しているのか、よく確認しましょう。
ここでは活動内容(仕事の内容)に基づく在留資格のうち、日本で就労できる種類を一覧にして紹介します。自社の業務がどの在留資格に該当するのかを確認してみましょう。
公的な在留資格に分類されるのは「外交」「公用」の2種類です。
外交 |
・外国政府の大使や公使、総領事、代表団構成員 |
公用 |
・大使館や領事館、国際機関から公的な業務で派遣される職員 |
「外交」と「公用」は、区別がつきにくい在留資格といえます。「外交」は国を代表して来日する外国人に、「公用」は職員として来日する外国人に付与されると考えると分かりやすいでしょう。
「外交」では外交活動の期間、「公用」では5年、3年、1年、3ヶ月、30日、15日のいずれかの期間で日本在留が許可されます。
教育や研究に関連する在留資格は「教授」「教育」「研究」の3種類です。
教授 |
日本の大学や大学に準ずる機関、高等専門学校の教授や准教授、大学講師 |
教育 |
小学校や中学校、高等学校、またはそれに準ずる教育機関の教師など |
研究 |
日本の企業や政府機関で研究業務を行う研究者 |
大学で教授として研究活動を行う場合は、「教授」の在留資格です。「教授」の在留資格は、研究のための指導や教育活動を行う外国人にも付与されます。
在留期間は5年、3年、1年、3ヶ月のいずれかです。
専門的な分野の在留資格の種類は、「高度専門職」「技術・人文知識・国際業務」「経営・管理」「宗教」「法律・会計業務」の5つです。「高度専門職」の在留資格には、1号と2号があります。
・高度専門職1号 |
高度人材と判断された外国人 |
---|---|
技術 |
通訳翻訳、営業、マーケティング、デザイナー、IT技術者、機械技術者など |
経営・管理 |
日本で起業をする外国人や管理職に就く外国人 |
宗教 |
外国の宗教団体から派遣された宣教師や僧侶、司教など |
法律・会計業務 |
弁護士や公認会計士、税理士、司法書士など |
「高度専門職」は高度な技術や知識を持つ外国人に付与される在留資格です。1号は5年、高度専門職2号は無期限の在留が許可されます。
「経営・管理」は起業準備に対応するため、5年、3年、1年、6ヶ月、4ヶ月、3ヶ月と短期の在留期間も設定されているのが特徴です。
「技術・人物知識・国際業務」「宗教」「法律・会計業務」は、5年、3年、1年、3ヶ月のいずれかから在留期間が決定されます。
外国人が有する技能に関連する在留資格は「技能」「特定技能」の2種類です。特定技能の在留資格には、1号と2号があります。
技能 |
外国料理の料理人やスポーツの指導者、パイロットなど |
・特定技能1号 |
特定産業分野で、一定の技能や知識を要する業務を行う外国人 |
「技能」の在留資格は、特殊な分野において熟練した技能を活かして働く外国人に付与されます。主にコックとして働く外国人が取得するケースが多い在留資格です。在留期間は、5年、3年、1年、3ヶ月のいずれかから決定されます。
「特定技能」は人手不足の業界のために作られた在留資格で、ほかの在留資格では許可されていない単純労働が可能なのが特徴です。特定技能の在留資格資格には、以下の12種類があります。
介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設業、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業
以上の職種で一定以上の技能と知識を持っていると判断された外国人に、特定技能の在留資格が許可されます。特定技能の在留資格は1号と2号があり、1号の在留期間は1年、6ヶ月、4ヶ月で、更新は最長5年までです。一方、2号の在留期間は3年、1年、6ヶ月で、更新は無期限で行えます。
特定技能2号は、2023年6月から範囲拡大が決定されました。特定技能制度ができた当初は、2号に移行できるのは建設分野及び造船・舶用工業分野の溶接区分のみでした。しかし、2023年6月9日の閣議決定により、介護以外の全ての分野で受け入れが可能となったのです。今後、各分野での実施要綱が整い次第、受け入れが開始されます。
技能実習を行う外国人(技能実習生)に付与される在留資格の種類が、「技能実習」です。技能実習の在留資格は1号・2号・3号に分かれています。
技能実習1年目は、「1号」の在留資格のもと1年間の技能実習が可能です。「1号」の技能実習を終え技能検定試験を受けて合格すると「技能実習2号」が付与され、2年間の在留が認められます。さらに、技能検定試験を受け「技能実習3号」になると2年間在留ができるのです。つまり、「技能実習」の在留資格は最長で5年間の在留が認められます。
日本で医療や介護分野に関わる活動をする際に必要な在留資格は、「医療」「介護」の2種類です。在留期間は、5年、3年、1年、3ヶ月のいずれかから決定されます。
医療 |
医療に関する資格を持つ外国人 |
介護 |
介護福祉士 |
「医療」の在留資格は、以下の資格を有して業務を行う外国人に許可されます。
薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、歯科衛生士、診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、臨床工学技士、義肢装具士
なお、「介護」の在留資格を得るには、介護福祉士の国家資格取得が必要です。
前述した分野に該当しない在留資格には、「芸術」「興行」「報道」「企業内転勤」があります。
芸術 |
作曲家や画家、小説家など |
興行 |
俳優や歌手、プロスポーツ選手など |
報道 |
記者・カメラマンなど |
企業内転勤 |
外国企業からの転勤者 |
「芸術」の在留資格の取得を許可されるのは、外国で芸術分野における実績を積んでおり、生計を立てられると判断された外国人に限られます。受賞歴に匹敵する実績がないと、在留資格の取得は難しいでしょう。なお、芸術分野でも大勢の人に披露して収入を得る活動は、「興行」の在留資格の範囲とされています。在留期間は5年、3年、1年、3ヶ月のいずれかです。
「興行」は、エンターテイメントビザやプロアスリートビザと呼ばれることもある在留資格です。報酬が発生しないイベントやチャリティーコンサートなどへの出演でも、「興行」の在留資格が必要な場合があります。在留期間は3年、1年、6ヶ月、3ヶ月、30日のいずれかです。
「報道」の在留資格は、フリーランスであっても、特定の報道機関と契約し報道に関わる活動を行う場合は在留資格が許可されます。在留期間は5年、3年、1年、3ヶ月のいずれかです。
「企業内転勤」の在留資格は、外国の企業で「技術・人文知識・国際業務」に関する業務を行っていた外国人が、日本の本社や支社に転勤になった際に付与されます。在留資格を得る条件は、転勤直前に「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務を1年以上行っていた実績があることです。「技術・人文知識・国際業務」の在留資格とは異なり、4年制大学または大学院を卒業していなくても、取得できます。在留期間は5年、3年、1年、3ヶ月のいずれかです。
紹介した在留資格については「特定技能とはどのような在留資格?簡単にわかりやすく解説【2号範囲拡大】」で詳しくまとめています。
参照元 出入国在留管理庁「在留資格一覧表」
就労ができない在留資格は、「留学」「研修」「文化活動」「家族滞在」「短期滞在」の5種類です。ただし、「研修」と「短期滞在」以外の在留資格は、資格外活動許可を取得すれば定められた範囲内のアルバイトが行えます。資格外活動許可とは、在留資格の範囲外の活動を認める許可のことです。
留学 |
日本の大学や高等学校、専門学校などに通う外国人 |
文化活動 |
日本で収入を伴わない学術・芸術上の活動をする外国人 |
家族滞在 |
日本に在留する外国人に扶養される配偶者や子ども |
研修 |
日本で技能や知識を取得するための活動をする外国人 |
短期滞在 |
旅行や親族訪問、会議への出席時などで日本に滞在する外国人 |
「留学」の在留期間は、4年3ヶ月を超えない範囲で個別に指定されます。「文化活動」は3年、1年、6ヶ月、「研修」は1年、6ヶ月、3ヶ月のいずれかの期間です。「家族滞在」は5年を超えない範囲で、扶養者の在留期間にあわせて指定されます。
「短期滞在」の在留期間は、15日、30日、90日のいずれかです。90日以上の滞在を希望する場合は、一度帰国してほかの在留資格を取得しなおす必要があります。
「特定活動」は、外国人のさまざまな活動に対応することを目的に作られた在留資格です。該当する活動例として、外交官の家事使用人やインターンシップ、ワーキング・ホリデーなどがあります。在留期間は、活動によって5年、3年、1年、6ヶ月、3ヶ月とさまざまです。法務大臣が5年を超えない期間で個々に指定する場合もあります。
就労の可否も活動の内容によって異なるのが特徴です。たとえば、「インターンシップ」は就労が可能ですが、「イギリス人ボランティア」は就労ができません。
参照元 出入国在留管理庁「在留資格「特定活動」」
身分に基づく在留資格は、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4種類です。身分に基づく在留資格を持つ外国人は職種の制限がなく、日本人と同じように仕事を選べます。
永住者 |
日本への永住を許可された外国人 |
日本人の配偶者等 |
日本人の配偶者や実子、特別養子 |
永住者の配偶者等 |
永住者・特別永住者の配偶者、日本で生まれた子ども |
定住者 |
法務大臣により日本への滞在を認められた外国人 |
永住者には在留期限がありません。在留資格が取り消しにならない限り、日本に半永久的に在留できます。
「日本人の配偶者等」の在留資格は、日本人の配偶者や実子、特別養子に付与されます。「永住者の配偶者等」は永住者・特別永住者の配偶者や日本で生まれた子どもに付与される在留資格です。在留期間は、5年、3年、1年、6ヶ月のいずれかから決定されます。
「定住者」は、法務大臣が特別な理由を考慮して許可する在留資格です。日系人や連れ子などが該当します。在留期間は、5年、3年、1年、6ヶ月のいずれかです。または、法務大臣が5年を超えない範囲で個々に指定する場合もあります。
この項目で解説した在留資格は、「配偶者ビザを外国人が申請するメリットとは?雇用企業が確認すべき点も解説」のコラムでさらに詳しくまとめています。
在留資格は取得する種類や外国人の状況によって手続きが異なります。ここでは、それぞれの手続きについて解説するので、外国人を雇用する際の参考にしてください。
外国人が初めて在留資格を取得する際は、「在留資格認定証明書交付申請」が必要です。手続きは日本からしかできません。そのため、海外から外国人を呼び寄せて雇用する場合、企業が手続きを代わりに行うのが一般的です。在留資格認定証明書が発行されると、外国人が日本に入国するために必要なビザ(査証)の発給がスムーズに行われます。
外国人が在留資格を変更する際は「在留資格変更許可申請」が必要です。外国人雇用に関係があるケースとしては「留学生の新卒採用」や「異業種で働いていた外国人の中途採用」が該当するでしょう。手続き自体は外国人本人が行います。しかし、企業が発行しなくてはならない書類も多数あるので、本人任せにせずサポートすることが重要です。
在留資格を更新する場合は「在留期間更新許可申請」が必要です。同じ業種での転職の場合、在留資格を変更しなくても就労できます。しかし、在留期間が迫っている場合は期限切れにならないよう更新をしなくてはなりません。在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請と比べると、手続きはスムーズに進みます。ただし、外国人の在留状況や提出書類の内容によっては、不許可になる可能性も十分あるので注意が必要です。
外国人を雇用する企業は、以下の点に注意しましょう。
海外から外国人を呼び寄せる際は、在留資格を得て日本に入国できる人物なのかをよく確認しましょう。上陸拒否事由に該当している外国人の場合、日本に入国自体ができません。出入国管理及び難民認定法(入管法)第5条によると、上陸拒否に当てはまる外国人の例は以下のとおりです。
保健や衛生上の問題がある者
反社会性が強いと認められることにより上陸を認めることが好ましくない者
日本から退去強制を受けたことなどにより上陸を認めることが好ましくない者
日本の利益や安全に害を与える恐れがある外国人
日本の利益または公安を害するおそれがあるため上陸を認めることが好ましくない者
相互主義に基づき上陸を認めない者
日本国外にいる外国人を雇用する場合は、入国可能であるかをよく確かめましょう。
外国人を雇用する場合は、各在留資格における可能な業務を把握しておくことが重要です。外国人は在留資格で許可されていない活動はできず、認められていない業務を行った場合は不法就労になります。
たとえば、「技術・人文知識・国際業務」は、大学や大学院などで学んだ内容と業務が関係している場合に取得できる在留資格です。そのため、掃除や接客などの単純労働に従事することは認められていません。「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人が単純労働を行った場合、本人が罰せられるだけでなく、雇用主も不法就労助長罪に問われます。
すでに日本国内にいる外国人を雇用する場合は、雇用契約前に必ず在留カードを確認しましょう。在留カードを見れば、「自社に就労可能な種類の在留資格を持っているか」「在留期間は過ぎてないか」など、さまざまな事項が確認できます。在留資格や在留期間が記載されているのは、在留カードの表面です。
外国人のなかには、在留カードを偽造して不正に日本で働こうとする人もいます。
雇用前に、念のため在留カードが本物であるのかを確認しておくと安心でしょう。法務省では「在留カード等読取アプリケーション」を無償提供しています。このアプリを利用して在留カードのICチップを読み取ると、偽装の有無の確認が可能です。在留カードをしっかりと確認し、トラブルを防ぎましょう。
参照元 出入国在留管理庁「在留カードとは?」 出入国在留管理庁「在留カード等読取アプリケーション サポートページ」
在留資格には多くの種類があります。企業は、自社で就労可能な在留資格を持つ外国人や自社で働ける在留資格を得られる外国人を雇用しなくてはなりません。各在留資格の種類や特徴を把握し、外国人雇用をスムーズに進めましょう。