外国人のなかには、「日本の職人の種類を知りたい」「どのような職人技があるの?」と思う方もいるでしょう。日本には、こけしや漆器などの伝統工芸品を作る職人が多く存在します。また、鉛筆彫刻や2.5Dペインティングを生み出したアート職人も有名です。このコラムでは、日本の伝統工芸品を作る職人の種類や有名なアート職人を詳しく紹介します。日本の職人技もまとめているので、参考にして職人に関する知識を深めましょう。
目次
日本の伝統工芸品を作る職人の種類を紹介!
日本には、漆器や和紙などの伝統工芸品を作る職人が多くいます。ここでは、日本の伝統工芸品を作る職人の種類を詳しく紹介しているので、興味のある外国人はチェックしてみましょう。
ガラスペン職人
ガラスペンとは、ペン先から軸まですべてガラスで作られているペンのことです。ペン先をインクに浸すと溝に入り込み、ハガキ一枚分程度の文字が書けます。ガラスペンは風鈴を作っていたガラス職人が考案した筆記用具で、見た目の美しさやインク持ちの良さが魅力です。ガラスペンの形や柄、色には職人のこだわりが反映されています。ガラスペン職人は、高温バーナーでガラスを溶かして形を整え、時間を掛けて実用性と美しさを兼ね揃えたガラスペンを作り出しているのです。
こけし工人
こけしは江戸時代から続く日本の伝統工芸作品で、丸い頭と円柱の形をした銅が特徴の木製人形です。古くから受け継がれている伝統的なこけしは「伝統こけし」、職人独自のアイデアにより作られるこけしは「創作こけし」と呼ばれています。伝統こけしは、産地ごとに系統が異なるのが特徴です。伝統こけしを作る職人は、こけしの系統や特徴を大きく変えてはいけません。数ある制約のなかで個性を表現し、新しさを感じさせるこけしを作ることが重要です。一方、創作こけしには、鮮やかな色彩が特徴のポップなこけしやキャラクターをモチーフに作られた作品などがあります。
こけしの種類に関係なく、どの職人も自分の個性や想いを作品に反映させているといえるでしょう。
漆器職人
漆器とは、漆の木から取れる樹液を塗り重ねて作られた工芸品のことです。漆器職人は、木工品を製造する木地師が作った皿や器に漆を塗って完成させます。三回に分けて塗り、一番最後の「上塗り」の工程ではごみやほこりがつかないよう丁寧に塗り上げなければなりません。産地によって塗り方の技法が異なり、絵や模様を描く「蒔絵(まきえ)」や鮮やかな漆を塗る「溜塗(ためぬり)」などさまざまです。
漆に関わる職人は、漆を塗る職人「塗師(ぬし)」と漆液を採取する職人「掻子(かきこ)」、装飾を施す「蒔絵師」などに分けられます。漆器を作る各工程で、その業務を専門とする職人が存在するのです。
和紙職人
和紙とは、雁皮(がんぴ)や麻などの植物を原料として手漉きで作られる日本の伝統的な紙のことです。和紙は障子や和傘、書道の半紙などに使用されています。和紙職人は、製品によって原料や道具を使い分けなければなりません。和紙を作る際は、原料を煮て柔らかくしたあとに叩いて繊維をほぐします。紙漉きを行い乾燥させたら、加工を施して完成です。和紙職人は、原料の良さを活かして丁寧に一枚ずつ仕上げます。
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有名な日本のアート職人と活動内容
ここでは、有名な日本のアート職人と活動内容を紹介します。アート職人が創り出す作品は、日本だけでなく海外でも人気です。
山崎利幸(やまざきとしゆき)【鉛筆彫刻】
鉛筆の芯に文字や記号を彫刻してアートを創り出す「鉛筆彫刻家」として、山梨県甲府市を拠点に活動しているアート職人です。簡単な文字や記号だけでなくチェーンやはさみ、長い文章などさまざまな形状のものを彫刻しています。彼は日本で唯一の鉛筆彫刻家として知られており、多くのメディアで特集が組まれるほど人気です。「HAPPYBIRTHDAY」や「祝入学」などの文字を彫刻した作品の常時販売やそのほかの文字のオーダー製作も行っているため、プレゼントとして購入する人も多くいます。
福田理代(ふくだまさよ)【切り絵】
一枚の紙で繊細な切り絵作品を創り出す「切り絵アーティスト」として活躍しています。植物や動物、魚などの切り絵作品が特徴で、代表作は「海蛸子(うみだこ)」です。海蛸子の神秘的な美しさを細かい柄で表現しています。彼女の作品は海外でも繊細さを評価され、フランスで開催されているアートフェアや日本文化を紹介するイベントにも出展するほど人気です。
クラゲやイグアナ、蘭などの切り絵作品を販売しており、オーダーメイド作品も手掛けています。オーダーできるのは、似顔絵や愛犬の肖像画などの切り絵です。部屋に飾るだけでなく、大切な方へのプレゼントとして購入する人が多くいます。
深堀隆介(ふかほりりゅうすけ)【2.5Dペインティング】
器の中に樹脂を流し込み、リアルな金魚を絵具で描く「2.5Dペインティング」を生み出したアート職人です。金魚をモチーフとした作品が特徴で、マスのなかに本物の金魚が泳いでいるように見える「金魚酒」は唯一無二の作品といえます。金魚酒は作品によって色合いや金魚の品種が異なり、一般的な工芸品とは異なる独特な存在感が魅力です。海外でも個展を開いており、日本だけでなく世界で注目されています。
大竹亮峯(おおたけりょうほう)【木彫刻】
木で作ったとは思えないほど細かく繊細な彫刻を施す「木彫刻家」として活動しています。動物や植物をモチーフとした木彫刻が特徴です。すべて手彫りで作り上げる作品は、動物の関節の動きや植物の花びら一枚一枚がリアルで、人が作ったものとは思えないと多くのメディアで称賛されています。
太い幹に熊や龍が彫刻された従来の木彫り作品とは異なり、繊細でリアルな作品は現代アートとして注目を集めているのです。
外国人に伝えたい日本の職人技3選
花火師や刀匠、宮大工は日本の伝統的な職人技です。ここでは、それぞれの職人技について解説します。
花火師
花火師とは、花火の製造や打ち上げを行う職人のことです。花火は日本の夏の風物詩で、花火師が花火の製造から花火大会の運営まで行っています。花火師の仕事は、冬に花火を製造して夏に打ち上げるのが一般的です。何度も試し打ちをすることはできないため、長年の修行で培った知識や技術を駆使して作っています。日本の花火は、色彩の美しさや文字や絵が浮かび上がる演出などが特徴です。華麗な芸術美として称賛されている花火は、花火師の職人技に支えられているといえるでしょう。
刀匠
刀匠とは日本刀や包丁、伝統芸能で使用する道具を作る職人のことです。刀匠は日本刀作りの技術や伝統を受け継ぐ職人で、高度な技術が求められます。刀匠になるには「美術刀剣刀匠技術保存研修会」の試験に合格し、文化庁から認定を受けなければなりません。
日本刀や包丁を作る際は、窯に金属を入れて焼き入れを行い成形し、水に入れて冷却する工程を繰り返します。焼き入れの工程で鉄を高温に熱するため、危険が伴う作業といえるでしょう。刀匠は製作工程に関する技術や知識を身につけ、世界に誇る刀を作っています。
宮大工
宮大工とは、神社や仏閣などの建築や修復を行う職人のことです。また、日本にある重要な文化財の保護や解体も行っています。神社や仏閣は、木に切り込みを入れて木同士をはめ合わせて建てる「木組み」で作られているのが特徴です。この木組みには、木材を正確に削り組み合わせる宮大工の高度な職人技が活かされています。
文化財の修繕を行う際は、建築物の構造・工法を理解して正確に再現しなくてはなりません。世界に誇る日本の建築物は、宮大工が持つ技術に支えられています。
まとめ
日本には、ガラスペンや漆器などの日本の伝統工芸品を作る職人が多くいます。また、鉛筆彫刻家や切り絵アーティストといった現代アートを創り出す職人も有名です。日本の職人に興味がある外国人は、どのような職人が存在するのか、日本の伝統的な職人技には何があるのかを調べてみると良いでしょう。
日本の伝統工芸品についてさらに詳しく知りたい方は「日本の伝統工芸について外国人へ解説!古くから受け継がれる奥深い魅力とは」のコラムもおすすめです。