日本の伝統工芸について解説!古くから受け継がれる奥深い魅力とは

WeXpats
2023/04/07

日本の伝統工芸は、職人によって 一つずつ丁寧に作り上げられる、とても奥深いものです。このコラムでは、古くから受け継がれてきた伝統工芸の歴史や特徴について詳しく解説しています。日本で身近に親しまれている伝統工芸品についても紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。伝統工芸品の深い魅力を知って、日本への理解を深めましょう。

目次

  1. 日本の伝統工芸とは
  2. 日本の伝統工芸品
  3. 時代のニーズに合わせた「伝統的工芸品」
  4. 伝統的工芸を守り伝える伝統工芸士
  5. まとめ

日本の伝統工芸とは

日本の伝統工芸とはの画像

日本の伝統工芸は、職人の手で一つひとつ丁寧に作られています。伝統的な手法によって作り出される工芸品は、手仕事ならではの温かみがあり、繊細なデザインや色絵の美しさ、高い機能性などさまざまな特徴を持つものです。日本で古くから受け継がれる伝統工芸は、世界からも注目されています。

伝統工芸4つの定義

日本の伝統工芸には、製造法や技術を守りながら発展させていくための定義があります。この定義を満たすものだけが「伝統工芸品」と指定されているのです。なかには、日々の生活に取り入れやすいように改良され、一定の地域のみにおいて生産が行われる「伝統的工芸品」として指定されているものもあります。ここでは、主に伝統工芸品の特徴について紹介します。

1.日常生活で使われるもの

伝統工芸品の第一の定義は、「日常生活で使われるものである」ことです。たとえば、陶磁器やガラス製品などは人々の生活で多く使われています。また、着物や足袋などは古くから親しまれる日本の伝統衣装です。そのほか、雛人形や羽子板は日本の季節行事と深い関わりがあり、その華やかさは日本の暮らしを豊かに彩っています。

2.受け継がれてきた長い歴史がある

伝統工芸品の第二の定義とは、「古くから継承される伝統的な技術や技法によって製造されるものである」ということです。さらに、「伝統的工芸品」として指定されるためには、技術や技法、原材料に100年以上の伝統があることが必要とされています。

参考元
伝統的工芸品産業振興協会「伝統的工芸品のシンボルマークについて

3.主な工程が手作業で行われている

伝統工芸品の第三の定義は、「製造工程の多くが手作業である」ことです。ただし、工芸品本来の持ち味を損なわない範囲で、機械を補助的に用いることは良いとされています。たとえば、ガラス工芸では、模様を彫ったり磨いたりする工程で機械が使われていますし、陶磁器作りでは、ろくろが用いられています。

4.熟練された技術が必要

伝統工芸品の第四の定義とは、「伝統的な技法や熟練の技によって作られたもの」であることです。長い年月をかけ、多くの職人が研鑽を重ねたことによって、さまざまな魅力的な工芸品が生み出されています。一つひとつ手作業で作られる伝統工芸品は、一つとして同じものはありません。

日本の伝統工芸品

日本の伝統工芸品の画像

日本の伝統工芸品は、日本人が一般的に使っている身近な物から歴史的なものまでさまざまです。その中から、代表的なものをいくつかご紹介します。

染物

染物は、主に布を織ったあとに染めた織物を指します。日本には伝統的な染物が数多くあり、染めの技法も型染め、友禅染め、絞り染め、ろうけつ染めなど多種多様です。これらの染めの技術を用いて作られる主な染物には、江戸小紋、加賀友禅、京鹿の子絞などがあります。

江戸小紋

江戸小紋は、江戸時代から伝わる染物です。型紙を使って、白抜きの模様を染めていく型染めによって作られています。一見無地にも見えるほど繊細な模様が描かれているのが特徴です。

加賀友禅

加賀友禅は、職人の手によって一つひとつ描かれる友禅染めです。四季の草花や自然の美しい景色などが描かれています。加賀五彩と言われる藍、臙脂(えんじ)、黄土、草、古代紫を基調した美しい彩りが特徴です。

京鹿の子絞

京鹿の子絞りは、布を糸などでくくり、白く残るようにした部分に模様が表れる絞り染めです。その模様が、鹿の背のまだらに似ていることから鹿の子絞りと呼ばれています。糸でくくられる粒の細かさや、立体的な模様が特徴です。

日本刀

日本刀は、日本固有の製造方法で作られ、一般的に反りがあるものとされています。時代や使用目的によって異なる形状の刀が作られました。日本刀は折れず、曲がらず、よく斬れるのが特徴です。古くは武器として使われていましたが、武士の魂を表すものとしても大切に保存され、近年では美術工芸品として高く評価されています。

陶磁器

陶磁器は焼き物と呼ばれ、材料や加熱方法などによって地域ごとに異なる特色があります。

主に陶器と磁器の2種類に分けられ、陶器は陶土とよばれる粘土で作られます。器の生地は厚く、ザラザラした感触です。また、磁器は、陶石を細かく砕いた石粉が用いられ、生地は薄くて硬く、ツルツルしています。

「日本三大陶磁器」と呼ばれる産地「伊万里」「有田」「美濃」をはじめ、それぞれ地域の名前がつく焼き物が多いのが特徴です。

漆器

木や紙に漆を塗り重ねて作る工芸品です。漆を何度も塗り重ねるため、丈夫で割れにくいことから縁起が良いとされ、結婚式やお祝いの贈り物として選ばれることがあります。さらに漆は耐久性や耐水性、断熱性に優れており、お椀や箸などは日常で多く使われる存在です。産地ごとに異なる模様や光沢の美しさが魅力といえます。

和紙

和紙は古くから障子や団扇などに使用され、身近に親しまれてきました。強度や耐久性が高いのが特徴で、原料の多くは楮や雁皮、三椏などの植物です。手漉きの和紙の高度な技術は、長い間受け継がれ日本各地で生産されてきました。原料や水質の違いによって特徴が異なり、はがきや包装紙、壁紙、照明器具のほか、衣類など和紙のぬくもりや風合いを活かした作品が作られています。

伝統工芸品については「日本の伝統産業を外国人に向けて解説!お土産におすすめの品も紹介!」や「日本の伝統工芸品を作る職人の種類や有名なアート職人を紹介!」のコラムを参考にしてください。

時代のニーズに合わせた「伝統的工芸品」

時代のニーズに合わせた「伝統的工芸品」の画像

伝統的工芸品は、伝統工芸品の特長や主要な部分は継承し、持ち味を維持しながら、時代のニーズに合わせて作られた工芸品のことです。日本の伝統工芸を守り、技術を受け継いでいくために、「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」が制定され、伝統工芸の代表的なものが「伝統的工芸品」として指定されました。

伝統的工芸品に指定されている主な工芸品

伝統的工芸品は、伝統工芸の4つの定義のほかに、一定規模の製造者で製造を行い、一定地域で産業が成り立っていること、受け継がれる技術や技法、原材料に100年以上の伝統があることを条件としています。伝統的工芸品に指定されている主な工芸品は以下のとおりです。

南部鉄器

南部鉄器は、岩手県の盛岡市と奥州市水沢で作られています。とても丈夫で、正しく手入れをすれば長く使えるのが特徴です。また、鉄器を調理に使うと鉄の成分が溶け出して、鉄分が補給でき健康に良いとされています。さらに、熱伝導率が良いため加熱から沸騰までが早く、保温性も優れているので料理をじっくり温めることができます。近年では、形や色が変化し、可愛らしさが人気となっているようです。

宮城伝統こけし

宮城伝統こけしは、技術を受け継ぐ職人によってすべて手作業で作られています。こけしの発祥の地の一つ、鳴子で作られる「鳴子系こけし」やカラフルさが印象的な「弥治郎系こけし」、赤い髪飾りと華やかさが特徴の「遠刈田系こけし」、かに菊と呼ばれる絵柄と細い胴が特徴の「作並系こけし」が代表的なこけしです。一つひとつが手作りだからこそ、それぞれ違った表情を見せてくれるのがこけしの魅力といえます。

大館曲げわっぱ

大館曲げわっぱは、天然の秋田杉が使われ、薄く加工した木材を曲げて作られています。さらに、材料や技法などに細かい決まりがあり、基本的に全て手作業で作られているのが特徴です。杉には殺菌効果があるといわれており、お弁当箱やおひつなどに使われています。木がお米の余分な水分を吸い取り、逆に乾燥を防いでくれるので、ご飯を美味しく保つことができるのです。温かい木のぬくもりが大きな魅力といえるでしょう。

京扇子

京扇子は、平安時代から受け継がれてきた長い歴史があります。京都扇子団扇商工協同組合の組合員だけが作ることができる扇子です。制作における87の工程を分業し、それぞれ異なる職人が担当します。京扇子には主に竹や紙、絹などが使われていますが、京都の丹波地方で取れる真竹で作られた扇子が、特に良いものとされているようです。京扇子は、夏に涼をとるために使われる身近なものから、結婚式などに使われる儀式的なものまで種類が豊富なうえ、上品な趣と品質の良さが魅力といえるでしょう。

参考元
京都扇子団扇商工協同組合「京扇子・京うちわとは

三線

三線は、沖縄県が琉球王国として栄えていた時代に、中国から伝わってきた楽器「三絃」を元に発展した弦楽器です。古くから沖縄では、高価な蛇皮張りの三線を持つことが家庭の裕福さの象徴とされており、床の間に飾ることで家の地位を示せるとされていました。三線作りは、職人の繊細な技術が求められ、仕上がるまでに年数を要することも珍しくありません。沖縄の民謡には、三線は欠かすことのできない楽器であり、素朴な音色は多くの人々を魅了しています。

三味線以外の日本の伝統的な工芸楽器についても「日本の伝統楽器にはどのような種類があるの?詳しく解説!」のコラムでまとめていますので併せてご覧ください。

伝統的工芸を守り伝える伝統工芸士

伝統的工芸を守り伝える伝統工芸士の画像

伝統工芸士になるには、12年以上の実務経験を積み、実技や知識、面接試験をクリアすることが条件です。産地技術者の中心的な存在として、後継者の育成や産地振興に向けた活躍が期待されています。しかし、近年は職人の高齢化によって、伝統的工芸の数が減少傾向にあり、技術を継承する後継者不足が深刻です。問題の解消に向けた取り組みが国をあげて進められています。一方で、女性工芸士の割合は増加傾向にあり、伝統的工芸品産業において女性の活躍が進んでいるようです。

参考元
文化庁「伝統文化を活かした地域おこしに向けて 」
伝統的工芸品産業振興協会「全国の伝統的工芸品を支える作り手「伝統工芸士」を認定

まとめ

まとめの画像

日本の伝統工芸品は、職人により一つずつ丁寧に作られ、奥深い魅力があります。機械で大量生産されたものにはない、一つひとつの違いが手作りならではの良さといえるでしょう。日本には魅力的な伝統工芸品がまだまだたくさんあります。このコラムを、伝統工芸への興味を深めるきっかけにしてください。

ライター

WeXpats
生活・仕事・留学に関するお役立ち情報から、日本のディープな魅力を紹介するコラムまで、バラエティ豊かな記事をお届けします。

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