日本では若者を中心に、アニメ・漫画文化が好きな人々が二次元のキャラクターに対して「萌え」と表現することがあります。比較的最近広まった俗語なので、日本語を勉強していても意味や使い方を知らない方もいるでしょう。そこで、このコラムでは「萌え」の意味を外国人向けに分かりやすく説明します。「萌え」の定義や対象、同義語などもあわせて紹介しているので、日本語を勉強している外国人は参考にしてください。
目次
「萌え」の意味
「萌え」とは、人や物に対して熱意のこもった愛情をそそぐ際に使う日本語です。ほかの言語で当てはまる言葉がないため、海外でも「萌え(MOE)」で通用します。なお、愛情とはいっても必ずしも恋愛感情を伴うわけではありません。かわいらしい・守りたい・胸がドキドキするといったさまざまな感情が、「萌え」に詰まっています。この言葉には確固たる定義がないため、さまざまな好意的な感情を表すことが可能です。たとえば、「ギャップ萌え」「メガネ萌え」というように特定の趣味趣向を表したり「萌え~!」と感動詞のように使ったりすることもできます。
もともと「萌え」は、アニメや漫画が好きな「オタク」と呼ばれる人々が使っていた俗語です。昨今では若年層を中心に広く浸透している言葉ですが、あくまでも若者言葉なので使う場面や相手には注意しましょう。
「萌え」のほかにも海外でそのまま通じる日本語が知りたい方は、「海外でも通じる日本語を分野別に紹介!世界に広まった理由も解説」をチェックしてみましょう。世界各国で通じる日本語から勉強し始めると、日本がどのような国なのか、どのような文化が栄えているのかが見えてきます。ほかの言語への翻訳が難しい日本語がたくさん載っているので、ぜひ勉強の参考にしてください。
ピックアップ記事
「萌え」の対象はキャラクターから食べ物まで幅広い
「萌え」はもともとアニメや漫画に登場する二次元のキャラクターを対象に使われていましたが、近年では実在の人物やロボット、食べ物などにも使われています。「萌え」は「かわいい」と同じくらい汎用性の高い言葉です。場面によって変わる複雑なニュアンスの違いが分かれば、実際の日本語の会話にうまく取り入れられるでしょう。
ストーリーよりもキャラクターの魅力を重視したら「萌えアニメ」、偶像的な二次元の美少女は「萌えキャラ」というように、日本には「萌え●●」というカテゴリが存在します。物を対象とした「萌え」の場合は、パンやケーキの写真映えする美しい断面を表す「萌え断」、手の甲が隠れるほど丈が長い袖を表す「萌え袖」などが有名です。ほかにもさまざまな「萌え」がカテゴライズされているので、興味がある方は調べてみるのも良いでしょう。
「萌え」も「かわいい」も意味が広い日本語です。日本語学習者にとって、習得が難しい言葉といえるでしょう。「外国人が難しいと感じる日本語とは?難しい理由から例文まで徹底解説!」では、日本語が難しい理由を外国人向けに解説しています。難しい日本語の例文やおすすめの勉強方法もまとめているので、日本語学習がうまくいかない方は参考にしてみましょう。
萌えと同じ意味で使われる日本語
ここでは、「萌え」の同義語ともいえる日本語を紹介します。昨今では「萌え」以外の言葉でキャラクターや実在の人物、物などに対する愛情を表現する人々が多いようです。漫画やアニメが好きな人々を中心に若者の間で広く使われている言葉なので、生きた日本語を勉強したい方はチェックしてみましょう。
尊い
崇高さを感じるほど完璧で神聖な存在は、日本語で「尊い」と表します。キャラクター同士の関係性を、「尊い」と表現することもあるようです。なお、「尊い」がなまって「てぇてぇ」ということもあります。
アニメや漫画に対して「この作品は尊い」というときは、クリエイターに対する尊敬と感謝の気持ちが込められています。昨今ではアイドルや俳優、芸人など実在の人物に対して使われることも多いので、日本語の感情表現の一つとして覚えておくと良いでしょう。
しんどい
本来、疲れた・つらいなどの意味で使われる「しんどい」は、「萌え」の同義語でもあります。ネガティブなイメージが強い言葉ですが、「萌え」の同義語として使われる「しんどい」は褒め言葉です。あまりのかわいさに胸がドキドキして苦しい・キャパシティを超えてしまうといったときに、「しんどい」と表現できます。対象となるキャラクターや人物の名前を入れて「●●しんどい」ということもあるようです。
無理
「無理」は「しんどい」と同じく、自分のキャパシティを超えるかわいさやときめきを感じたときに使います。本来は実現が難しい・受け入れがたい状況を表す言葉ですが、「萌え」の同義語としても使われるので覚えておきましょう。「萌え」の対象への愛情があふれたときに、適切な言葉で感情を表現するのが難しくなり「無理」という人が多いようです。本来の「無理」とは異なるニュアンスで使われていますが、意味と使い方を覚えておけば日常会話で耳にしたときスムーズに理解できます。
萌え文化が浸透している日本以外の国
日本独特の萌え文化は、中国や台湾、韓国といった近隣諸国にも広く浸透しています。特に、愛らしさを強調した女性キャラクターがメインの「萌え絵」が人気です。近年では萌え絵を使ったゲーム開発やアニメーション制作も行われており、萌え文化が浸透していることが分かります。なお、「萌え」の対象は二次元のキャラクターだけではないので、実在の人物に対して萌えるケースもあるようです。
中国
中国は、特に日本のサブカルチャーが広まっている国です。日本の隣に位置しており来日しやすいためか、漫画・アニメなどに親しんでいる人が多く、萌え文化が浸透しています。オタク系コンテンツの市場規模が大きいため、萌え絵の書き方を勉強するアニメーターやイラストレーターも多いようです。近年では萌え絵を使ったゲームの開発やアニメーション制作も行っており、日本のサブカルチャーコンテンツと同じくらいのクオリティで作品が販売されています。
中国はイラストであっても性的描写の規制が強い国です。場合によっては、公序良俗に反するイラストを描いたとして逮捕されることもあります。一方、日本はイラストの表現規制が厳しくありません。そのため、中国のイラストレーターは憧れから萌え絵を勉強したり日本人が多いイラスト投稿サイトを利用したりする人が多い傾向にあるようです。
台湾
台湾は、日本よりも積極的に萌え絵を公共事業や企業の公式宣伝キャラクターとして活用している国です。献血のポスターや交通系ICカードにも、萌え絵のキャラクターを起用しています。2022年時点で中華民国総統を務める蔡英文も自身を萌えキャラ化していることからも、台湾が萌え文化に寛容な姿勢がうかがえるでしょう。
日本は萌え文化発祥の地ですが、すべての人が萌え絵に寛容なわけではありません。そのため、公的事業や企業の公式キャラクターへの萌え絵起用は問題になることが多いのです。萌え絵の受け入れ度合いだけで考えた場合、台湾は日本よりも萌え文化が浸透している国といえるでしょう。
韓国
韓国は、中国や台湾ほどではないものの、萌え文化が広まっている国です。日本のライトノベルや漫画のイラストを担当している韓国出身のイラストレーターもいます。しかし、韓国は中国と同じくイラストの表現規制が厳しいため、萌え絵を描くイラストレーターよりもシンプル、もしくは写実的なイラストを描く人が多いようです。近年人気を集めている韓国発祥の漫画「ウェブトゥーン」を読むと、萌え絵との違いがよく分かるでしょう。
韓国では、二次元のキャラクターに対する萌え文化はあまり浸透していません。しかし、アイドルに対しては多くの人々が「萌え」を感じる傾向にあります。日本と韓国では国風や国民性が異なるため、主な「萌え」の対象も異なるようです。
文化の違いから萌えが浸透しにくい国もある
写実的で西洋画のような画風を重視する欧米諸国では、萌え文化が浸透しにくい傾向にあります。アメリカの漫画であるアメコミでも顔がはっきりと書かれていることが多く、日本の萌え文化とは全くの正反対です。そもそも、欧米諸国には「萌え」の基盤となる「かわいい」の概念がありません。実際は大人でも幼い印象のある萌えキャラは、欧米諸国の国民性にマッチしにくいのです。ディープなファンのなかには萌えキャラの良さを理解している人もいますが、数は多くありません。そのため、欧米諸国では萌え要素の少ないバトルアクション中心の漫画・アニメのほうが好まれています。
まとめ
「萌え」は日本独特の感情表現です。主に二次元のキャラクターに対する熱意のこもった愛情を表現するために使われる言葉ですが、現実の人物や無機物に対しても使えます。昨今では、「尊い」「しんどい」などの同じ意味を持つ言葉に置き換えられることもあるので、あわせて覚えておきましょう。「萌え」の概念が分からない人は、萌え文化についても勉強するのがおすすめです。どのような感情を「萌え」というのか、どのようなキャラクター・人・物が対象となるのか、調べてみると良いでしょう。「萌え」の意味と使い方を理解できたら、ぜひ実際の会話で使ってみてください。