熊本県は日本列島の南部にある九州地方の県です。県庁所在地である熊本市は九州地方でも有数の都市であり、遊びや買い物におすすめのスポットがたくさんあります。
熊本県は、隣り合う福岡県や長崎県、鹿児島県から文化や言葉などの影響を受けてきました。「ばい」「たい」「ばってん」などは、福岡県や長崎県でも使われる方言です。このコラムでは、よく使われる熊本県の方言とその意味、例文をまとめています。
目次
熊本はどのような県?
熊本県の面積は約7,409㎢で、およそ171万人の人が住んでいます(2023年6月時点)。県庁所在地である熊本市は、九州地方で3番目に大きな都市で交通の便が発達している便利な都市です。百貨店やおしゃれな店舗があり、遊びや買い物に多くの人が訪れます。
一方で、山や海に囲まれており自然も豊かです。大きなカルデラを持つ阿蘇山や離島の天草では、雄大な景色を望めます。
熊本県といえば、忘れてはいけないのがかわいいマスコットキャラクターの「くまモン」です。熊本県の自然や美味しい食べ物をPRするのが仕事で、「~モン」と熊本県の方言で話します。
熊本県は人気漫画『ONE PIECE』の作者である尾田栄一郎氏の出身地でもあります。熊本県内には尾田栄一郎氏の熊本県への支援を称えて設置された『ONE PIECE』のキャラクターの銅像があり、人気の観光スポットです。
南阿蘇鉄道では、『ONE PIECE』をモチーフにした列車「サニー号トレイン」が運行しています。始発・終点駅である立野駅と高森駅には、サニー号トレインと写真を撮れるスポットもありおすすめです。『ONE PIECE』のファンの方はぜひ訪れてみてください。
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熊本弁の特徴とは?
引用元:熊本県公式観光サイト もっと、もーっと!くまもっと
熊本県の方言はあまりアクセントがついていません。促音や異なる発音に変わる音が多く、隣接している県の方言の影響を受けているのも特徴です。
あまりアクセントがつかない
熊本県の方言は基本的にアクセントがないのが特徴で、ほとんどの言葉を高低をつけずに発音します。アクセントがつくのは、自分の名前の最後の音ぐらいです。たとえば、「すずき」の「き」や「たなか」の「か」の音を高く発音します。相手や物の名前、地名を言うときは、アクセントをつけません。
ただし、熊本県南部の地域では、言葉の終わりの音を少し上げて発音します。
尊敬語が多い
熊本弁は、尊敬語や丁寧語の種類が多い方言です。「居る」の尊敬語一つをとっても、「おらす」や「おいづる」「おんなさる」「おいでなはる」など、さまざまな言葉があります。
ほかにも、「~しよらす(~される)」「~やりよらす(〜やられる)」「言いよらす(言われる)」など、敬語の表現が豊富です。
「~しなはってください(~してください)」や「〜しとんなはる(〜していらっしゃる)」などの方言もあります。目上や年上の相手でなくても、「どうぞ行きなはってください(どうぞ行ってください)」のように、とても丁寧な言葉が使われるのです。
「て」の発音が「ち」に変わりさらに詰まる
熊本県の方言は、「て」の発音が「ち」に変わり、そのうえ促音の「っ」になり詰まるのが特徴です。たとえば、「お菓子を入れてあるっとばい」は「て」が「ち」に変わって、「お菓子を入れちあるっとばい」になります。さらに、「ち」が促音になり「お菓子を入れっあるっとばい」となるのです。
ほかにも、促音に変わる音が多くあり、「ある」を「あっ」と発音するのも熊本県の方言特有といえるでしょう。「皿がここにある」と熊本県の方言で言うと「皿なこけあっ」となります。
母音の「お」を「う」と「え」を「い」と発音する
熊本弁は母音が異なる音に変わる傾向があり、「お」を「う」、「え」を「い」と発音します。
たとえば、「遅い」は「そ」が「す」に変わり「おすい」となるのです。さらに熊本弁の語尾「~か」がついて、「おすか」になります。「~のこと」の「と」は「つ」になり、「~こつ」と言うのです。
「これ」「あれ」は、「れ」が「り」に変わり「こり」「あり」と発音します。
隣接する県の方言の影響を受けている
熊本弁は、隣り合っている福岡県や長崎県、鹿児島県などの方言が使われるのも特徴です。以下では、熊本弁とその意味、同じ言葉が使われているほかの県をまとめています。
- 「よか(良い)」…九州地方全域
- 「たい(だよ)」…福岡県や長崎県
- 「ばい(だよ)」…福岡県や長崎県
- 「ばってん(だけど)」…福岡県や長崎県
- 「どん(だけど)」…鹿児島県
「どん」は、鹿児島県に接している熊本県南部でよく使われる方言です。
熊本県に隣接する福岡県の方言についてさらに知りたい方には、「博多弁の方言一覧!かわいいセリフや日常会話に使われる言葉も紹介」のコラムもおすすめです。また、「日本の方言の種類とは?いろいろな方言がある理由も解説」のコラムでは、九州地方以外の方言についてまとめています。
熊本県民がよく使う方言一覧
ここでは、熊本県民がよく使う方言を一覧にしてまとめています。
あとぜき
「あとぜき」は「ドアや障子などを開けたあとに閉めること」を意味する熊本県の方言です。「ドアを閉めて」という内容が一言で伝わる便利な言葉といえるでしょう。熊本県には、あとぜきが日本全国で通じると思っている人が多くいます。
- 「あとぜきおねがいします(ドアを閉めてください)」
あとぜきと書いた紙をドアに貼り、閉める動作を促す場合があります。
がまだす
熊本県の方言「がまだす」は、「よく働く」「がんばる」「精を出す」などの意味がある言葉です。
- 「あん人はようがまだしなはるな(あの人はよく働かれますね)」
- 「明日から仕事が始まるだけんがまだすばい(明日から仕事が始まるからがんばろう)」
ほかにも、「がまだしもん(働き者)」や「がまだせ(がんばれ)」といった使われ方をします。
ぎゃん
「ぎゃん」は、「~のように」の意味がある熊本県の方言です。ぎゃんの前に「こ」「そ」「あ」の指示語が文字がつき、物事を指し示す言葉になります。
- 「こぎゃん(このように)」
- 「そぎゃん(そのように)」
- 「あぎゃん(あのように)」
- 「あぎゃんすっとたい(あのようにするんだよ)」
熊本県の方言には、「どのように」や「どのような」を意味する「どぎゃん」もあります。地域によっては、「どがん」や「どげん」と発音される方言です。
まうごつ
熊本県の方言「まうごつ」は「とても」「大変」「非常に」を意味する言葉で、「まご」と言う場合もあります。
- 「まうごつよか(とても良いね)」
- 「今日はまご忙しか(今日は非常に忙しいなあ)」
同じような意味の言葉に「はうごつ」「なばんごつ」「だごんごつ」「だご」もあります。なお、「だご」は「団子」の意味もある熊本弁です。
むしゃんよか
熊本県の方言「むしゃんよか」は「かっこいい」「見栄えがいい」を意味する言葉です。「武士の振る舞いや姿が良いこと」を意味する「武者振りが良い」から生まれた言葉と考えられています。
- 「あん人むしゃんよかなあ(あの人はかっこいいなあ)」
- 「熊本城はほんなむしゃんよか!(熊本城は本当にかっこいい!)」
「むしゃんええ」「むしゃのよか」も同じ意味がある熊本県の方言です。
むぞらしか
「むぞらしか」は「かわいい」を意味する熊本県の方言です。「かわいい」を意味する熊本県の方言には、「むぞか」「みぞか」「みじょか」「もぞか」「もぞらしか」などもあります。
- 「こん子はむぞらしかね(この子はかわいいね)」
- 「あん人はだごむぞらしかなあ(あの人はとてもかわいいなあ)」
なお、「むぞがる」は「かわいがる」の意味がある熊本弁の動詞です。
やおいかん
熊本県の方言「やおいかん」は、「大変だ」「きつい」「手ごわい」を意味する言葉です。
- 「こりゃやおいかんばい(これは大変だ)」
- 「今日の仕事はやおいかん(今日の仕事はきつい)」
「やおいかん」の語源は、「柔らかくいかない」だといわれています。もともと、物事がうまくいく状態を表す言葉として「柔らかい」が使われていました。そこから、物事がうまくいかない状態を「柔らかくいかない」と表すようになり、さらに「やおいかん」に転じたとされています。
熊本県と同じ西日本に属する広島県には「やおい」という方言があります。詳しくは「広島弁はかわいい?怖い?広島県で話される方言を標準語と比較!」のコラムで解説しているので、ご覧ください。
他県出身者が「かわいい」と感じる熊本の方言
引用元:熊本県公式観光サイト もっと、もーっと!くまもっと
ここでは、他県出身者が「かわいい」と感じる熊本弁を紹介します。
いっちょん
「いっちょん」は「少しも」「全く」「一つも」「全然」などを意味する熊本県の方言です。否定的なニュアンスで使われます。
- 「いっちょん楽しくなか(全然楽しくない)」
- 「いっちょん分からん(少しも分からない)」
「いっちょん」は促音や「ん」が含まれており、標準語にはあまりない響きがかわいらしく感じられます。
おひめさん
熊本弁で「おひめさん」や「おひめさま」は、目の病気の一種である「ものもらい」を意味します。一般的に「おひめさん」「おひめさま」は、英語で「princess」の意味がある日本語です。
- 「おひめさんがでけた(ものもらいができた)」
ものもらいを「おひめさん」「おひめさま」と表現するのは、かわいらしく面白いといえるでしょう。
にゃー
「にゃー」は、「ない」「〜なあ」との意味でよく語尾に使われる熊本県の方言です。猫の鳴き声を表す「にゃー」と音が似ているので、他県出身者が聞くとかわいいと感じるのでしょう。
- 「なんでもにゃー(なんでもない)」
- 「これだけしかにゃー(これだけしかない)」
- 「〜じゃにゃー?(〜じゃない?)」
にゃーが付く熊本県の方言には「とつけむにゃー」があります。意味は「とんでもない」です。「あん人はとつけむにゃーこつばっかすばい(あの人はとんでもないことばかりするよ)」のように使われます。
まとめ
熊本県の方言は、アクセントがあまりつかないのが特徴です。また、「て」が「ち」に変わってさらに詰まる、母音の「お」を「う」、「え」を「い」と発音するのも特徴といえるでしょう。
熊本県民がよく使う方言には、「あとぜき」「がまだす」「ぎゃん」などがあります。他県出身者から見てかわいいと感じる「いっちょん」「にゃー」などもよく使われる方言です。熊本弁を知って、熊本県民との会話に役立てましょう。