サービス業とは顧客の要望に対してサービスを提供する仕事です。たとえば、ホテルや旅館などの宿泊業では顧客に宿泊場所やおもてなし、快適な滞在を提供します。「物」だけではなく、専門的な技術や知識、体験を「サービス」として提供するのがサービス業です。
提供するサービスに決まりはありません。取り扱う商品や内容は幅広く、飲食や日常生活、不動産などさまざまな業種があり、仕事内容も多種多様です。
この記事ではサービス業の業種や仕事内容について紹介。また向いている人の特徴ややりがいについてもまとめています。サービス業に興味のある人は参考にしてください。
目次
サービス業とは
サービス業とは、顧客のニーズに応じて、専門的な技術や知識などのサービスを提供する仕事のことです。「ここに行きたい」「勉強したい」「美味しい料理を食べたい」「家を借りたい」などの要望を満たしたり、さまざまな体験や専門的な知識、技術を提供したりすることで対価を得ています。
サービス業と混同されがちな仕事に接客業がありますが、同じ意味ではありません。サービス業はサービスを提供する業種全体を指します。一方、接客業は顧客と直接対話や対応を行う仕事のみを指す言葉です。
サービス業は顧客のニーズを満たす仕事であるため、時代の変化や市場のトレンドに合わせてサービス業の形が変化します。また、顧客に応じて臨機応変に行動したり、柔軟に対応したりすることが求められるのがサービス業の特徴です。
サービス業では多くの外国人が働いています。「日本で働く外国人が多い職業ランキングを紹介!狙い目の業界や職種とは?」では日本で働く外国人が多い職業ランキングと狙い目の業界・職種を紹介しているので、参考にご覧ください。
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サービス業は主に10の業種に分けられる
サービス業にはさまざまな業種があります。業種とは事業の種類・分野のことです。ここでは、サービス業に該当する主な業種を紹介します。
1.生活関連サービス・娯楽業
日常生活に必要なサービスやエンターテインメントを提供する業種です。生活に関連するサービスとしては、美容院や理髪店、クリーニングショップ、葬儀屋、旅行代理店などが挙げられます。ほかにも、事業者が直接顧客のもとに出向いて行う家事サービス業や清掃業なども生活関連サービス業の一部です。
一方、遊園地や映画館、劇場、スケートリンクなどエンターテインメントに関する施設の運営を娯楽業といいます。生活に欠かせないサービスを提供する仕事から娯楽施設の運営まで、さまざまな業種が含まれているのが特徴です。
2.宿泊・飲食サービス業
宿泊業は利用客に対して宿泊施設や食事などを提供します。ホテルや旅館、民宿、キャンプ場などの運営が宿泊業の一例です。飲食サービス業は顧客の注文によって調理した料理の提供を行う業種を指します。その場で注文する業態以外にも、利用客からの注文によって食事を料理し、指定する場所まで料理を配送する宅配ピザやケータリング、仕出しなども飲食サービス業です。
3.医療・福祉
医療や保健衛生に関するサービスの提供を行います。たとえば、病院や歯科診療所、整体院、保健所、歯科技工所などがその一例です。ほかにも、社会保険事業団体や老人福祉・介護事業などを行う業種も該当します。社会保険事業団体とは、公的年金や公的医療保険、公的介護保険などの社会保険事業を行う事業所のことです。老人福祉・介護事業とは、 養護老人ホームやグループホームといった施設で高齢者の介護を担ったり生活を助けたりする仕事のことを指します。
なお、保育園や保育所型認定こども園は医療・福祉サービス業に含まれますが、幼稚園・幼稚園型認定こども園は「教育・学習支援業」に分類される業種です。
4.学術研究・専門・技術サービス業
学術研究・専門・技術サービス業とは、学術研究や試験、開発研究などを行います。主に専門的な知識・技術を提供する業種のことです。学術研究機関としては、自然科学研究所や人文・社会科学研究所が挙げられます。専門的な知識に基づくサービスを提供する業種の例は、法律事務所や司法書士事務所、税理士事務所、デザイン事務所などです。専門的な技術を提供する業種には、獣医業や土木建築サービス業、機械設計業、写真業などがあります。
5.教育・学習支援業
学校教育を行ったり、学習教育の支援活動を行ったりしているのが教育・学習支援業です。教育業には幼稚園や小中学校、高等学校などの教育機関が挙げられます。学習塾やピアノ教室、通信教育業、図書館、博物館などの技術や知識を身につけたり、学力を向上させたりするサービスの提供も学習支援業です。近年では、学習塾による授業配信や英会話スクールによるオンラインレッスンなどインターネットを活用した学習支援サービス業が増えています。
6.運輸・郵便業
運輸業とは鉄道や自動車、船舶、航空機などを利用して人や貨物を運送する業種です。鉄道会社や航空会社、タクシー業者などが該当します。倉庫で貨物を保管する倉庫業も運輸業の一種です。郵便業は手紙や商品、請求書などの信書を送達する業種を指します。
なお、郵便局は郵便業に含まれません。郵便事業だけでなく、保険や銀行窓口の業務も行っているため、複合サービス業に分類されます。
7.情報通信業
テレビやラジオ、インターネットなど媒体を通じて情報の伝達を行ったり、提供を行ったりするのが情報通信業です。携帯電話会社やテレビ放送局などが該当します。生活に必要な情報を伝えるのはもちろん、エンターテインメント性のあるコンテンツを届けることで多くの人に楽しみを提供する業種です。ゲーム会社や出版社、ウェブコンテンツを作成する会社なども情報通信業に含まれます。
8.不動産・物品賃貸業
不動産の売買や賃貸、管理、仲介などを行うのが不動産業です。不動産会社やマンションなどの管理会社も含まれます。扱う不動産は、住宅やオフィスビル、マンション、駐車場などさまざまです。物品賃貸業は自動車や産業用機械、コピー機などの事務用品などをレンタルする業種を指します。レンタカー業者やレンタルビデオ店などの個人を対象とした賃貸も物品賃貸業です。
9.複合サービス事業
保険事業や信用事業など複数のサービスを提供する業種を指します。郵便局や協同組合などは複合サービスに分類される事業です。事業の内容や種類は法律によって定められています。たとえば、 「農業協同組合」では、組合員の農家に対して農業の指導や直営所の運営のほか、貯金事業や融資、共済など銀行や保険会社と似た業務も行っているため、複合サービス事業に該当するのです。
10.サービス業(他に分類されないもの)
廃棄物処理業や自動車整備業、機械修理、職業紹介・労働者派遣業が該当します。ほかにも、政治団体や神社、大使館など政治・経済・文化・宗教などに関する団体や外国公務もサービス業の一種です。
参照元
e-Stat「日本標準産業分類(令和5年[2023年]7月改定)」
サービス業の主なジャンル
サービス業の主な仕事は以下のとおりです。
1.接客
接客は、サービス業の代表的な仕事といえます。テーマパークや映画館といった娯楽施設でのチケット販売や利用案内、飲食店での注文の聞き取りやホテルのフロントでの受付も接客の仕事の一例です。接客では対応する顧客の満足度を向上することに注力します。
企業の顔となるため、丁寧な言葉遣いやきれいな立ち振る舞いが求められるのが接客です。ニーズを聞き出して利用客に合った提案を行う場合もあるので、ヒアリング能力も必要といえます。
2.販売
販売は接客と並ぶサービス業の代表的な仕事です。スーパーマーケットやコンビニエンスストア、商業施設の店舗などで、食品・日用品・衣料品といったさまざまな物を販売します。住宅やビルといった不動産を売ったり、旅行プランといった目に見えない商品の購入を勧めたりするのも販売の仕事の一つです。
接客と販売の違いは販売に対する姿勢といえます。販売には顧客に対して積極的に商品やサービスを売り込む必要がありますが、接客では販売に対する積極性は求められません。販売は顧客と密接に関わるため、高いコミュニケーション能力が必要です。
3.事務・営業
事務スタッフは、書類の作成や処理、データ入力などの業務全般を行います。かかってきた電話を担当者に繋ぐのも事務スタッフの仕事です。
営業スタッフは、担当する企業や顧客のもとに行って、自社の商品やサービスの紹介・売り込みを行います。たとえば、保険会社の営業スタッフは、保険プランの紹介や説明を行って販売につなげるのが仕事です。
4.技術の提供を行う仕事
身につけた技術を顧客に提供します。たとえば、自動車の整備士やバス・電車の運転手、企業や個人に荷物を届ける配送業者のトラック運転手が一例です。
いずれも、長年の勉強や経験に基づく専門的な技術や体力が求められます。また、顧客と直接関わることもあるため、コミュニケーションを取りながら正確な技術を発揮できる能力も必要です。
5.専門知識に基づいて行う仕事
専門知識に基づいて行うサービスを提供します。具体例は、弁護士や医師、看護師、薬剤師、保育士などです。これらの仕事に就くためには、大学や短大といった各職種に応じた専門の教育課程で学び、国家試験を受けて合格する必要があります。
6.公共サービスの提供を行う仕事
公共サービスの提供を行うのは、主に政府や市町村を管轄する自治体などです。たとえば、市役所職員は出生・死亡・婚姻に関する業務を行ったり、住民票・戸籍謄本・印鑑登録証明書などを発行したりします。ほかにも、警察署や税務署、消防署なども公共サービスの提供を行っている機関です。これらの機関は税金によって運営されており、営利を目的としていません。
近年では公共サービスにおいてもデジタル化が進み、正確で公平なサービスを迅速に提供できるよう効率化を求められている傾向にあります。
7.クリエイティブな感性に基づく仕事
クリエイティブな感性に基づく仕事を行う人の例は、デザイナーやテレビ番組のプロデュ ーサー、出版社の編集者、俳優などが挙げられます。マニュアル通りに仕事を行うのではなく、個人の感性や発想力を活かして行う仕事です。
サービス業のやりがい
サービス業にはさまざまなやりがいがあります。直接顧客から感謝の言葉を耳にすることができたり、自分のスキルが評価につながったりするのも魅力といえるでしょう。ここでは、サービス業のやりがいを紹介します。
直接感謝の気持ちを受け取れる
サービス業は基本的に、直接顧客と接することが多い仕事です。顧客のニーズに応えた際、感謝の言葉を聞けることも少なくありません。また、提供したサービスによって、顧客に喜んでもらえたり、笑顔になったりするのを見れるのはサービス業のやりがいといえます。
ダイレクトな評価を知れる
顧客からの評価がわかりやすいこともサービス業の魅力です。会社の姿勢や経営方針などに左右されることが少なく、自身のスキルや知識が顧客の評価や成績に直結します。また、評価がわかりやすいため、スキルの向上や成長を感じやすくモチベーションの維持がしやすいのもサービス業の魅力です。
毎日違った仕事ができる
サービス業は日々異なる顧客と接する機会が多く、求められる対応も異なります。仕事の内容に変化があるため、毎日新鮮な気持ちで仕事に取り組めるのもやりがいの一つです。
サービス業は外国人留学生に人気の業種です。「外国人留学生が選べる職種とは?人気の仕事を紹介」では外国人留学生に人気の仕事や日本で就職する際に必要な手続きなどを紹介します。
サービス業に向いている人
サービス業では、顧客のニーズを汲み取り、丁寧な対応やサポートが求められます。ここでは、サービス業に向いている人の特徴について紹介するので、サービス業の仕事に興味がある人は参考にしてください。
日本語能力に自信がある
外国人がサービス業で働くには日本語能力が欠かせません。顧客の要望を汲み取ったり、電話での対応を行ったりなど日本語で顧客とコミュニケーションを取る機会が多くあります。また、サービス業ではチームで連携して仕事を行うこともあり、同僚と信頼関係を構築するためにも、日本語をある程度理解できる力が必要です。
接客や販売がおもなサービス業では、語学力は非常に重要なスキルといえます。一般的に日本語能力試験N2以上だと応募できる求人も増えるでしょう。ただし、日本語に自信がなくても取り扱うサービスや商品によって働ける業種もあるので必ずしも諦める必要はありません。
人とのコミュニケーションが得意
コミュニケーション能力が高い人はサービス業に向いている人の特徴です。顧客の要望を適切に把握するためには相手と会話して求めているものを聞き出す必要があります。失礼のないようにニーズを聞き出すには会話力が欠かせません。また、初対面の人とも、緊張することなくコミュニケーションを取れる人もサービス業に向いています。
柔軟な対応ができる
柔軟な対応ができる人は、サービス業で求められる適性です。サービス業では顧客と関わる機会が多くあります。さまざまな顧客に適切なサービスを提供するためには臨機応変な対応が必要不可欠です。また、クレームなど想定外の事が起きたときに、落ち着いて状況を判断したり対応できたりする人はサービス業に向いています。
体力がある
デスクワークとは異なり、サービス業では体を動かしたり、長時間立ちっぱなしで仕事をすることが多く、体力が必要です。業種や職種によってどれだけ体力が必要となるのか異なりますが、体力に自信がある人はサービス業に向いているでしょう。
気配り上手で細かいところに気づける
サービス業では、顧客はもちろん周りの人への気配りができることも大切です。日頃から相手の要望を察することができる気配り上手な人は、サービス業に向いています。また、「何を求めているのか」「どのサービスや商品が顧客にとって適切か」など相手に寄り添った対応ができることはサービス業で働く際の大きな強みになるでしょう。
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まとめ
サービス業とは、顧客の要望に応じたサービスを提供する仕事のことです。「生活関連サービス・娯楽業」「宿泊・飲食サービス業」「医療・福祉」などのさまざまな業種があり、人々の生活に欠かせません。また、サービス業で働くと自分の仕事に対する評価をダイレクトに感じることができたり、顧客から直接感謝されたりするので、やりがいが多い仕事といえます。
取り扱う商品やサービスによっては高い日本語能力やコミュニケーション能力などが必要です。サービス業に興味のある方は自分にあった業種・職種を探してみて応募してみましょう。