日本で就職したい外国人留学生のなかには、「日本にある職種を知りたい」「就労ビザにはどんな種類があるの?」と思う方もいるでしょう。日本には、「営業職」や「事務職」など、業務内容ごとに分けられる職種が数多くあります。このコラムでは、日本にある職種や業界、就労ビザの種類を詳しく解説。日本で就職する際に必要な手続きや、自分に合った職種を選ぶ方法もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
目次
- 職種と業界とはどんなもの?
- 外国人が選べる職種とは?
- 外国人留学生に人気の職種
- 外国人留学生が就職するなら在留資格の切り替えが必要
- 外国人留学生は「特定活動」の在留資格でさまざまな就職先を選べる
- 外国人留学生が自分に合った職種を選ぶには
- まとめ
職種と業界とはどんなもの?
職種とは、業務内容ごとに分けられた職務名のことです。「営業職」や「事務職」などが該当します。一方、業界とは企業における事業の種類によって分類されたものです。「IT業界」や「マスコミ業界」などさまざまな種類があります。
職種の例
日本にある主な職種は、以下のとおりです。
・営業
・事務
・企画
・販売
・総務
・人事
・会計
・広報
・法務
・通訳
・システム開発
・研究開発
・マーケティング
日本で就職したい外国人留学生は、興味のある仕事がどの職種に該当するのかを調べましょう。営業職のなかにも「法人営業」と「個人営業」があったり、事務職のになかにも「一般事務」や「営業事務」があったりなど、職種をさらに細かく分類することもできます。そのため、職種について詳しく調べるのも大切です。
業界の例
日本にある主な業界は、以下のとおりです。
・マスコミ
・アパレル
・飲食
・商社
・製造
・不動産
・金融
・保険
・コンサルタント
・ホテル
・旅行
・化粧品
・自動車
・IT
・建設
業界を大きく分類すると、「商社」「メーカー」「サービス」「金融」「小売」「マスコミ」「ソフトウェア・通信」に分けられます。「メーカー」のなかの食品業界、「サービス」のなかのホテル業界など、それぞれの業界にどのような種類があるのかを把握しましょう。「外国人留学生が従事できる日本の仕事って?職業一覧」のコラムでは、外国人留学生が日本で活躍できる職業を紹介しているので、参考にしてください。
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外国人が選べる職種とは?
外国人が日本で選べる職種は、就労ビザで許可されている範囲内のものです。ここでは、就労ビザで認められている仕事を紹介します。
就労ビザで認められている範囲の職種
外国人は、就労ビザで認められている範囲の活動が可能です。そのため、取得した就労ビザによって就ける職種が異なります。たとえば、「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザを取得した場合は、事務職や営業職、通訳・翻訳などの仕事はできますが、介護や医療などの仕事には従事できません。日本で就職をする外国人留学生は、取得した就労ビザでどのような職種に就けるのかを把握しましょう。
就労ビザの種類
就労ビザの種類は、以下のとおりです。
・外交(外国政府の大使とその家族)
・公用(外国政府等の公務に従事する者とその家族)
・教授(大学教授、助教授、助手など)
・芸術(作曲家、画家、彫刻家、写真家など)
・宗教(僧侶、司教、宣教師など)
・報道(記者、編集者、アナウンサー、報道カメラマンなど)
・高度専門職(大学での教育、自然科学や人文科学に関する知識を使う業務、事業の経営や管理など)
・経営、管理(社長、役員など)
・法律、会計業務(弁護士、司法書士、税理士などで日本の資格を有する者)
・医療(医師、薬剤師、看護師などで日本の資格を有する者)
・教育(教員)
・技術、人文知識、国際業務(IT技術者、外国語教師、通訳、理工系技術者、デザイナーなど)
・企業内転勤(日本支店へ転勤する者)
・介護(介護福祉士)
・興行(俳優、歌手、演奏家、ダンサー、モデル、スポーツ選手など)
・技能(調教師、パイロット、スポーツトレーナー、ソムリエなど)
・特定技能(建設、宿泊、外食業といった人材不足の産業など)
・技能実習(技能実習生)
就労ビザを取得するには、就職先の企業と正式な雇用契約を結ぶ必要があります。就職先で従事する職種以外の就労ビザは取得できないため、注意しましょう。
参照元
出入国在留管理庁「在留資格一覧表」
外国人留学生に人気の職種
ここでは、経済産業省が2015年に発表した「外国人留学生の就職及び定着状況に関する調査」のデータをもとに、外国人留学生に人気の職種を紹介します。
外国人留学生全体
外国人留学生に人気の職種は、以下のとおりです。
・国際業務 50.1%
・研究開発 27.2%
・事務職(総務、人事、広報など) 24.8%
・マーケティング、商品開発 24.3%
・貿易業務 24%
・通訳、翻訳 18.8%
一方、外国人留学生が実際に就職した職種は、「営業・販売」が38.7%、「研究開発」が28.6%、「システム開発・設計」が21.1%、「国際業務」が19.1%でした。希望とは異なる職種に就いた人もいるのが現状です。
文系
文系の外国人留学生に人気の職種は、以下のとおりです。
・国際業務 59.5%
・事務職(総務、人事、広報など) 32.1%
・貿易事務 30.8%
・マーケティング、商品開発 27.9%
・通訳、翻訳 22.9%
文系の外国人留学生の過半数以上が、「国際業務」への配属を希望しています。しかし、企業側は海外との取引を含む「営業・販売」に配属することが多く、外国人留学生の希望と合っていません。また、「事務職(総務、人事、広報など)」の人気も高いですが、実際に採用している企業は少ないのが現状です。
理系
理系の外国人留学生に人気の職種は、以下のとおりです。
・研究開発 60%
・システム開発、設計 51.2%
・国際業務 27.7%
・生産、製造 20.4%
理系の外国人留学生には「研究開発」や「システム開発、設計」など、専攻分野を活かせる職種が人気です。実際にそうした職種に配属する企業も多いため、文系と比べて外国人留学生の希望する職種と、実際に就職する職種の差が少ないことが分かります。
外国人留学生に人気のある上記職種の詳しい仕事内容は、「外国人留学生に人気の職種とは?仕事の種類や内容を解説」のコラムで紹介しています。
参照元
経済産業省「外国人留学生の就職及び定着状況に関する調査(平成26年度)」
外国人留学生が就職するなら在留資格の切り替えが必要
日本での就職を希望する外国人留学生は、「留学」の在留資格から就労可能な在留資格へ切り替えなくてはなりません。ここでは、在留資格の切り替えに必要な書類や審査基準を解説します。
在留資格の切り替え方法と必要書類
在留資格の変更申請を行う場所は、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署です。外国人留学生が4月から就職できるように、卒業年の1月から変更申請を受け付けています。変更申請をしてから許可が降りるまでには、2週間から1ヶ月程度掛かるため、余裕をもって申請しましょう。在留資格の切り替えに必要な書類は、以下のとおりです。
・在留資格変更許可申請
・写真(縦4cm、横3cm)
・在留カード
・日本での活動に応じた資料
・旅券または在留資格証明書
・資格外活動許可書(交付を受けている場合)
日本での活動に応じた資料は、取得する在留資格の種類によって異なるため、出入国在留管理庁のWebサイトで必要な書類を確認しましょう。留学ビザから就労ビザへの変更タイミングや方法については、「外国人留学生はいつ就労ビザへ変更する?手続きの流れや必要書類を解説!」のコラムをご覧ください。
出入国在留管理局の審査基準
外国人留学生が就労可能な在留資格に切り替えるには、以下の審査基準を満たす必要があります。
・大学や専門学校を卒業していること
・大学や専門学校で専攻した内容と業務内容が一致していること
・就職先で行う業務が専門的な内容であること
・就職先が外国人に対して日本人と同等以上の報酬を支払うこと
・就職先の事業の安定性や継続性があること
外国人留学生本人の素行不良も、在留資格を変更する際の審査に関係します。不法就労をしていたり刑事処罰を受けていたりすると、在留資格の変更許可が下りない可能性があるため、注意しましょう。
参照元
出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請」
外国人留学生は「特定活動」の在留資格でさまざまな就職先を選べる
外国人留学生は大学や専門学校を卒業後、「特定活動」の在留資格を取得して就職することが可能です。ここでは、「特定活動」の概要や従事できる仕事の例を紹介します。
外国人留学生の就職先の拡大を目的とした制度
「特定活動」とは、外国人留学生が幅広い業務に従事することを目的とした制度のことです。2019年の5月に導入され、導入前には認められていなかったサービス業務や製造業務などの単純作業にも従事できるようになりました。日本の大学または大学院を卒業・修了した外国人留学生で、日本語能力試験N1またはBJTビジネス日本語能力テスト480点以上を持っている人が対象です。
特定活動で認められる仕事の例
「特定活動」で認められる仕事内容は、以下のとおりです。
・製造業の現場業務全般
・飲食店の接客業務
・小売店での接客販売業務
・ホテルや旅館での接客業務や翻訳業務を兼ねたホームページ作成など
・タクシードライバーとしての業務全般
・介護施設における介護業務
いずれも、外国人留学生が留学先で学んだ内容を活かせる仕事です。また、フルタイムの職員であることや日本人と同等以上の報酬で雇用されること、日本語でのコミュニケーションを必要とする業務であることなどの条件も満たさなくてはなりません。「特定活動」の制度の利用を検討する前に、条件をクリアしているかどうかを確認しましょう。
参照元
出入国在留管理庁「留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン」
外国人留学生が自分に合った職種を選ぶには
外国人留学生は自分が従事できる職種を把握したり、外国人向けの就職支援サービスを利用したりすることで、希望の職種を見つけられるでしょう。ここでは、外国人留学生が自分に合った職種を選ぶための方法を詳しく紹介します。
教育機関で学んだ内容に関する職種を把握する
外国人留学生は、教育機関で学んだ内容と関連性のある職種に就く必要があります。そのため、具体的に自分がどのような職種を選べるのかを把握しておきましょう。たとえば、教育機関で「情報学」や「経済学」を学んだ人は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を取得して、「IT技術者」や「営業」などの職種に就けます。勉強してきた内容と職種の関連性を意識して、自分に合った仕事を探しましょう。
外国人向けの就職支援サービスを利用する
外国人留学生が日本で就職活動を行う際は、外国人向けの就職支援サービスを活用するのがおすすめです。外国人向けの就職支援サービスを利用すると、外国人採用を積極的に行っている企業を紹介してもらえたり、英語や母国語で就職に関する相談に乗ってもらえたりするメリットがあります。また、外国人留学生の強みである語学力を活かした職種も多く紹介してもらえるため、自分に合った仕事を見つけやすいでしょう。
日本のどのような職業で活躍できるかイメージが湧かないという方は、「外国人留学生のための職種や業界の選び方ガイド」のコラムも参考にしてみてください。
まとめ
外国人留学生が働ける職種は、就労ビザの種類によって異なります。また、教育機関で学んだ内容と関連性のある職種を選ばなくてはなりません。日本で就職する際の条件を把握して、自分に合った職種を選択しましょう。