日本への留学を考えている人のなかには、在留資格について深く知りたいと思っている方もいるでしょう。外国人留学生が有する在留資格は、「留学」です。「留学」は外国人が日本の学校で教育を受けるための在留資格なので、就職や退学をした場合は変更しなくてはなりません。
このコラムでは、在留資格「留学」の概要や取得の流れを解説します。内容を参考にして、日本留学への第一歩を踏み出しましょう。
目次
- 外国人留学生のための在留資格「留学」とは
- 外国人が在留資格を得て留学生になる流れ
- 外国人留学生がアルバイトをする際の在留資格は?
- 外国人留学生が就職したら在留資格の変更が必要
- 外国人留学生の在留資格に関するQ&A
- まとめ
外国人留学生のための在留資格「留学」とは
日本の大学や専門学校に通うには、「留学」の在留資格を取得しなくてはなりません。ここでは、在留資格「留学」の概要を紹介します。
日本の学校で教育を受ける外国人に付与される
「留学」は、日本の教育機関で学ぶ外国人に付与される在留資格です。具体的には、日本の大学や専門学校、日本語学校に通うために来日する外国人に付与されます。在留資格「留学」で入国したのにも関わらず、仕事に就いたり学校に通わずに観光だけしたりすることはできません。
在留資格「留学」の期間
「留学」の在留期間は、4年3ヶ月を超えない範囲で個別に指定されます。基本的には大学に通う予定なら4年、専門学校なら2年と、教育機関に通う年数に合わせて期間が指定されるでしょう。なお、日本語学校から大学に進学したり大学から大学院に進学したりした場合は、「在留期間更新許可申請」をすれば、在留期間を延ばせます。
在留資格「留学」は取り消されることもある
在留資格「留学」は途中で取り消されることもあるので、日本での生活態度には十分気を付けましょう。たとえば、出席率が著しく悪かったり留年を繰り返したりすると、日本に在留し続けるのは難しくなります。また、定められた時間を超えてアルバイトをする「資格外活動許可違反」をした場合も同様です。来日の目的が勉強であることを忘れずに生活し、卒業まで日本に在留し続けられるようにしましょう。
参照元
日本に留学中ぼ在留資格について「日本に留学中の在留資格について」
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外国人が在留資格を得て留学生になる流れ
ここでは、外国人留学生が「留学」の在留資格を取得し、来日するまでの流れを紹介します。留学する学校が決まらなければ、在留資格を手にすることはできません。まずは学校を決め、入学資格を得てから在留資格取得の手続きを進めましょう。
1.留学する学校を決める
外国人が「留学」の在留資格を得るには、先に通いたい学校の入学資格を得る必要があります。自分が「どのような分野について学びたいのか」「どのような学校に通いたいのか」を明確にし、学校を選びましょう。自分に合った学校を探すには、日本の学校に関する情報をできるだけ多く手に入れることが重要です。来日して説明会やオープンキャンパスに参加するとスムーズですが、お金や手間が多く掛かります。来日が難しい外国人には、学校のWebサイトを閲覧したり資料を取り寄せたりする方法がおすすめです。また、学校によってはオンライン説明会を行っている場合もあるので、上手に活用してみましょう。
2.入学試験を受けて合格する
通いたい学校が決まったら、入学試験を受けましょう。多くの学校には外国人留学生専用の入試が用意されています。留学生入試は面接や小論文、学力試験の結果のほか、大学入学共通テストの成績で判断される場合もあるようです。どのような試験が実施されるかは学校によって異なるので、よく確認しましょう。
また、上記とは別に日本留学試験(EJU)の受験を入学資格としている学校も多くあります。日本留学試験を受けて一定の点数を得ることで入学できる学校の選択肢が広がるので、日本留学を考えている人はなるべく受験しましょう。
3.入学の手続きをする
入学試験に合格したら入学手続きを行いましょう。入学手続きで特に大切なのは入学金・学費の納付です。納入期限までに納められなければ、入学が取り消しになります。余裕を持って納付できるよう準備を整えておくのがおすすめです。
4.在留資格認定証明書を得る
通う学校が決まったら、日本に滞在するために必要な在留資格「留学」を得る手続きを行います。新たに在留資格を得るための手続きの名称は「在留資格認定証明書交付申請」です。在留資格認定証明書交付申請は海外から行えません。そのため、日本にいる代理申請が可能な立場の人に依頼します。多くの場合、代理申請は学校が行うのが一般的です。学校に代理申請を依頼できないときは、日本にいる親族もしくは行政書士・弁護士などの法的に認められている申請取次者に依頼します。
5.在外公館で入国査証(ビザ)を取得する
在留資格認定証明書が無事発行されたら、代理申請を行ってくれた人に原本を送ってもらいましょう。受け取ったら、母国にある日本国大使館や総領事館でビザ(査証)を申請します。ビザの発給に必要な書類は以下のとおりです。
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旅券(パスポート)
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ビザ申請書:1通
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証明写真:1枚
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在留資格認定証明書:原本とコピー1枚ずつ
なお、国籍によっては追加の書類が必要になる場合もあるので、自国の日本大使館や総領事館に確認しておきましょう。在留資格認定証明書を提示すると、ビザの発給が通常よりスムーズに行われます。申請に問題がなければ、標準処理期間内である5営業日での発給が可能です。
6.住まいの準備を整え来日する
入学が決まったら、できるだけ早く住まい探しを進めましょう。進学先や就職先が決まり始める2月・3月ごろから、条件の良いアパートやマンションから借り主が決まります。「学校から近い」「家賃がリーズナブル」など、人気のある物件を希望するのであれば、なるべく早く動き出さなくてはなりません。なお、外国人留学生向けの寮や宿舎を用意している学校もあるので、費用を抑えたい方は一度確認してみてください。
ビザが発給されたら、入学式や授業開始などの日程にあわせて来日します。新千歳空港・成田空港・羽田空港・中部空港・関西空港・広島空港・福岡空港から入国する場合は、上陸許可とともに在留カードが交付される仕組みです。そのほかの空港および港から入国した場合は、市町村に届け出た住所あてにあとから在留カードが送られてきます。余裕を持って入国し、万全の体制で学校生活を始められるように努めましょう。
日本で部屋を探す際は「部屋探しのコツ!不動産会社を利用して予算に合った物件を見つけよう」のコラムも参考にしてください。
外国人留学生がアルバイトをする際の在留資格は?
日本にいる外国人留学生の多くが、学費や生活費、交際費を工面するためにアルバイトをしています。ただし、外国人留学生がアルバイトをするには、資格外活動許可を得なくてはなりません。
在留資格は「留学」のまま資格外活動許可を得る
本来、在留資格「留学」を持つ外国人留学生は働いてはいけません。しかし、資格外活動許可を得れば、勉強に支障のない範囲でアルバイトを行えます。資格外活動許可とは、在留資格外の活動をするための許可です。
資格外活動許可を取らないでアルバイトをすると、厳しく罰せられるので絶対にやめましょう。資格外活動許可を得ずにアルバイトした場合の罰則は、刑事罰1~3年以下の懲役か200万~300万円以下の罰金、もしくはその両方が課せられることもあります。
また、在留資格を更新できなくなる可能性が高いうえ、最悪の場合、退去強制になる可能性もあるのです。「バレないだろう」と思っていても、勤務先が行政機関にしている届け出により、必ず分かってしまいます。申請自体は複雑ではないので、必ずルールに従って許可を得ましょう。
資格外活動許可の申請先は、住んでいる場所を管轄する地方出入国在留管理官局です。出入国在留管理庁のWebサイトからダウンロードした資格外活動許可申請書に必要事項を記入し提出するほか、パスポートと在留カードの提示が必要です。
資格外活動許可でのアルバイトには制限がある
資格外活動許可で行えるアルバイトには時間の制限があり、原則週28時間(長期休暇時は週40時間)以内です。また、パチンコ店やゲームセンターなどの風俗営業に分類される場所でのアルバイトは禁止されているので、十分注意しましょう。定められている時間を超えて働いたり禁止されている場所で働いたりすると、資格外活動許可違反となり罰せられます。
資格外活動許可については「外国人留学生のアルバイトには資格外活動許可が必要!働く際の注意点まとめ」や「資格外活動許可とは?アルバイトを始めたい外国人留学生に向けて解説」のコラムでさらに詳しく説明しています。
参照元
出入国在留管理庁「資格外活動許可について」
外国人留学生が就職したら在留資格の変更が必要
外国人留学生が学校を卒業し就職したら、在留資格を変更しなくてはなりません。変更する在留資格の種類は、どのような職業に就くのかによって変わってきます。
行う業務に相応しい在留資格に変更する
就職したら、自分が行う業務に合った在留資格に変更しなくてはなりません。たとえば、ITプログラマーとして働く場合は「技術・人文知識・国際業務」、料理人として働く場合は「技術」です。行う業務と持っている在留資格が合っていないまま働くと不法就労になってしまいます。相応しい在留資格を得られなければせっかく内定を得ても働けないので、申請時には十分注意しましょう。
在留資格変更許可申請でチェックされる点
「留学」からの在留資格変更許可申請では、主に「今までの経歴」「報酬」「仕事内容」がチェックされます。
就労に関する在留資格を得るには、相応しい学歴(専攻)や経験が必要です。その判断材料として、大学や専門学校の卒業証明書を申請時に提出します。
また、ほとんどの在留資格では、「日本人と同等以上の報酬を受け取ること」が審査基準です。申請時には企業と交わした「雇用契約書」の提出が義務付けられており、書かれている報酬金額が同じ仕事をする日本人より低かった場合、在留資格を得られません。また、実際に行う仕事内容も雇用契約書でチェックされます。行う予定の仕事が在留資格の範囲から外れていたり許可されていない単純労働だったりした場合は、申請が却下されるでしょう。
「留学」からほかの在留資格に変更する方法
「留学」からほかの在留資格に変更する際は、「在留資格変更許可申請」を行います。申請先は、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署です。基本的には自分で申請を行いますが、用意しなくてはならない書類も多く手続きも複雑なので、就職先の人事担当者や行政書士の力を上手く借りましょう。手続きはどの在留資格に変更するかによって変わるので、出入国在留管理庁のWebサイトを見ながら進めるのをおすすめします。
申請の詳しい流れは「外国人留学生必見!在留資格の変更に必要な書類を解説」のコラムをぜひ参考にしてください。
参照元
出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請」
外国人留学生の在留資格に関するQ&A
ここでは、外国人留学生の在留資格に関するよくある質問をまとめています。現在は以下のケースに該当しない方も、今後のために内容を知っておきましょう。
卒業後も就職先が決まらなかったら?
卒業までに就職先が決まらなければ、在留資格を「留学」から「特定活動」に切り替えます。在留資格「特定活動」の在留期間は6ヶ月で、1回のみ更新が可能です。そのため、卒業後も最長で1年間就職活動を継続できます。就職活動中にアルバイトを行いたい場合は、資格外活動許可を得れば、学生時代と同じ条件で働けるので必要な人は申請しましょう。
就職活動のために在留資格を「特定活動」に変更するには、通っていた大学や専門学校の推薦状が必要です。成績が振るわなかったり出席率が悪かったりすれば、推薦状を得られない場合もあります。そのような事態を防ぐためにも、留学中はしっかり学校に通い、勉強に取り組みましょう。
留学中に結婚をしたら在留資格はどうなる?
留学中に結婚をしてそのあとも学生を続ける場合、在留資格は「留学」のままで問題ありません。卒業後に、ふさわしい在留資格に変更しましょう。
外国人留学生が日本人と結婚した場合は「日本人の配偶者等」、永住者と結婚した場合は「永住者の配偶者等」の在留資格に変更するケースが多いようです。もちろん、卒業後の自分の職業に合った就労に関する在留資格を取得しても良いでしょう。ただし、身分にまつわる在留資格は就労の制限がないため、職業の選択肢が広がり日本で生活しやすくなります。なお、留学生同士で結婚した場合、夫婦のどちらかは配偶者に扶養される「家族滞在」の在留資格へ変更できる場合もあります。
教育機関を退学後に配偶者と出会い結婚した場合、日本滞在延長を目的とした偽装結婚を疑われて在留資格の審査が厳しくなります。そのため、計画的に手続きを行わないと、申請が不許可になる場合もあるでしょう。
母国の家族を呼び寄せることはできる?
配偶者(妻もしくは夫)か子どもであれば、「家族滞在」の在留資格で家族を呼び寄せられる可能性があります。「家族滞在」は、特定の在留資格を持つ外国人に扶養される配偶者や子どもに付与される在留資格のため、親や親族などは対象外です。なお、留学先が日本語学校の場合は、家族の呼び寄せができません。
大学や専門学校などに通う外国人留学生が家族を呼び寄せるには、扶養できる経済力を証明する必要があります。預金の残高証明書や支援者(両親など)の経済力を証明する書類を提出しましょう。目安としては、自分もしくは支援者の預貯金が200万~300万円以上あると許可が出やすいといわれています。
まとめ
外国人留学生の在留資格は「留学」です。日本での活動内容が変わる場合はその都度ふさわしい種類に変更しなくてはなりません。学校の成績が著しく悪かったりたくさん欠席していたりすると、希望する在留資格に変更できない場合もあります。留学中はできる限り学業を優先し、日本での生活に支障がでないように気を付けましょう。