JLPT(日本語能力試験)を受けたい外国人のなかには、過去問を見て学習の参考にしたい人もいるでしょう。このコラムでは、N1~N5の過去問を「文字・語彙」「文法」の項目ごとに紹介します。また、日本で受験する場合と海外で受験する場合の申し込み方法も解説。JLPTのレベル別の認定基準についてもまとめているので、内容を参考にして勉強に活かしましょう。
目次
- JLPT(日本語能力試験)とはどのような試験?
- JLPT(日本語能力試験)のレベルと認定の目安
- JLPT(日本語能力試験)の過去問をレベル別に紹介
- JLPT(日本語能力試験)の申し込み方法
- JLPT(日本語能力試験)の6つのメリット
- まとめ
JLPT(日本語能力試験)とはどのような試験?
JLPT(日本語能力試験)とは、外国人の日本語能力を測定し認定する試験のことです。国際交流基金および日本国際教育支援協会が実施しています。JLPTの試験項目は、日本語の文法や語彙の知識を測るための「言語知識」と、その知識を会話でどの程度活用できるのかを測る「読解」「聴解」の3つです。マークシート形式で解答するため、実際に会話をしたり文字を書いたりすることはありません。
参照元 日本語能力試験JLPT「4つの特徴」
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JLPT(日本語能力試験)のレベルと認定の目安
JLPT(日本語能力試験)のレベルは、N1からN5までです。「読む」「書く」の項目ごとに必要とされる基準があります。ここでは、JLPTのレベルと各レベルの認定の目安を紹介するので、参考にしてください。
N1
N1は「幅広い場面で使われる日本語を理解できる」レベルで、JLPTのなかで最も難易度が高く、日本人でも満点を取るのが難しいといわれています。
読む
新聞の論説や評論など、幅広い話題について書かれたものや抽象度の高い文章を読んで、構成や内容を理解できる。内容に深みのあるものを読んで、話の流れや細かい表現意図を理解できる。
聞く
自然なスピードの会話や講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係などを理解し要旨を把握できる。
N1は日本語の通訳ができるレベルといわれています。2020年の第二回JLPT(日本語能力試験)のデータによると、国内と国外合わせてN1を受験した人数は80,237人で、そのうち認定された人数は36,270人でした。
N1の難易度や問題例は、「日本語能力試験(JLPT)N1の問題例を紹介!外国人にとってのメリットも解説」のコラムでも紹介しています。また、外国人がJLPTのN1に合格するメリットも解説しているので参考にしてください。
N2
N2は「日常的な場面で使われる日本語の理解に加えて、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解できる」レベルです。
読む
新聞や雑誌の記事、解説などの論旨が明らかな文章を読んで内容を理解できる。一般的な話題に関するものを読んで、話の流れや表現意図を理解できる。
聞く
日常的な場面や幅広い場面で、自然に近いスピードの会話やニュースを聞いて話の流れや内容、登場人文の関係を理解し要旨を把握できる。
N2は日常会話に加えて、ビジネスの場面でもコミュニケーションを取ることができるレベルです。2020年の第二回JLPT(日本語能力試験)のデータによると、受験者数が114,076人とN1~N5のなかで最も多い人数でした。
「JLPT(日本語能力試験)N2のレベルはどのくらい?勉強法を知って合格を掴もう」では、N2の「読む」「聞く」の認定基準や試験問題の出題例を紹介しています。N2の試験で求められる能力もまとめているので、参考にして受験勉強を行いましょう。
N3
N3は「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる」レベルです。ビジネスの場面では、円滑にコミュニケーションを取るのに工夫が必要になります。
読む
日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を読んで理解できる。新聞の見出しから大体の情報を掴める。難易度が少し高い文章は、言い換え表現が与えられれば要旨を把握できる。
聞く
日常的な場面でやや自然に近いスピードの会話を聞いて、具体的な内容や登場人物の関係をほぼ理解できる。
N1とN2がビジネスの場面でも通用するレベルで、N4とN5が基本的な日本語を理解できるレベルです。そのため、中間にあるN3は日常会話を理解できるレベルといえます。
N3レベルについては、「日本語能力試験(JLPT)N3のレベルとは?過去問に挑戦してみよう」でも詳しくまとめています。中間であるN3レベルを中心に、試験の難易度や合格率も解説しているので、ぜひチェックしておきましょう。
N4
N4は「基本的な日本語を理解できる」レベルです。
読む
基本的な語彙や漢字が使われた、日常生活のなかでも身近な話題の文章を読んで理解できる。
聞く
日常的な場面でややゆっくりと話される会話を聞いて、内容をほぼ理解できる。
JLPTのN4は、外国人が特定技能の在留資格を得るための条件の一つです。日本語検定のN4以上、もしくは国際交流基金日本語基礎テストのB2以上の認定を受けている外国人は、基本的な日本語を理解して「介護」や「建設業」分野で円滑に業務を行えるとみなされます。
「JLPT(日本語能力試験)N4の認定基準や問題例を外国人に向けて紹介」では、N4の試験問題の例も紹介。Nレベルによって時間配分や出題される問題が異なるため、試験対策を行いN4の取得を目指しましょう。
N5
N5は「基本的な日本語をある程度理解できる」レベルです。N1~N5のなかで最も易しいレベルで、日本語でスムーズにコミュニケーションを取るのは少し難しいでしょう。
読む
ひらがなやカタカナ、日常生活で使われる基本的な漢字で書かれた語句や文章を理解できる。
聞く
日常生活のなかでもよく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば必要な情報を聞き取れる。
2020年第2回の試験では、国内と国外を合わせたN5の受験者数が24,514人で、認定者数は13,731人でした。N5の認定率は56%と、ほかのレベルよりも合格率が高いことが分かります。
「JLPTのN5レベルは難しい?問題例や受験の流れを外国人向けに解説」のコラムでは、N5合格の目安や問題例を紹介。また、JLPTの受験方法も詳しく解説しています。日本語能力試験(JLPT)の受験を検討している方は、ぜひ参考にしてみましょう。
参照元 日本語能力試験JLPT「N1~N5:認定の目安」
JLPT(日本語能力試験)の過去問をレベル別に紹介
ここでは、JLPT(日本語能力試験)の過去問を紹介します。レベルによって、試験問題の構成や難易度が異なるため、受験するレベルの過去問を参考にしてください。
N1
N1の「文字・語彙」「文法」の過去問は、以下のとおりです。
・彼は今、新薬の研究開発に挑んでいる。
下線の読み方として正しいものを選びなさい。
1はげんで 2のぞんで 3からんで 4いどんで
・事故の原因は、機械の()作動にあると考えられている。
()に入る正しい言葉を選びなさい。
1偽 2誤 3被 4乱
・このマニュアルの説明はややこしい。
下線の言葉に意味が近いものを選びなさい。
1明確だ 2奇妙だ 3複雑だ 4簡潔だ
・キャリア
この言葉の使い方として正しいものを選びなさい。
1その分野のキャリアになるには、長い間の努力が必要だ。
2先月賞を取ったあの歌手のキャリアは苦労続きだったそうだ。
3昨日、異動の発表があって、兄のキャリアは部長になった。
4彼のキャリアはそれほど長くないが、この仕事をよく理解している。
・いまさら後悔してみた()、してしまったことは取返しがつかない。
()に入る正しい言葉を選びなさい。
1ところで 2といえども 3にせよ 4ばかりに
JLPTには、「文字・語彙」「文法」のほかにも「読解」と「聴解」の問題があります。「読解」とは、話の流れや内容を理解しているかどうかを測る項目です。短文や長文を読み、内容に関する質問に答えます。「聴解」とは、会話を聞いてどの程度内容を理解できるかを測る項目です。問題用紙の絵を見ながら会話と質問を聞き解答する形式と、問題用紙に書いてある選択肢を読んでから、会話と質問を聞き解答する形式があります。
N2
N2の「文字・語彙」「文法」の過去問は、以下のとおりです。
・この黒い種からどんな花がさくのだろうか。
下線の読み方として正しいものを選びなさい。
1だね 2たね 3じゅ 4しゅ
・このカメラはデザイン性能もすぐれている。
下線の言葉を漢字で書くとき、最も良いものを選びなさい。
1超れて 2恵れて 3秀れて 4優れて
・あの映画の最後は()場面として知られている。
()内に入れるのに良いものを選びなさい。
1名 2高 3良 4真
・田中さんは単なる友人です。
下線の言葉の意味に近いものを選びなさい。
1大切な 2一生の 3ただの 4唯一の
・余計
この言葉の使い方として正しいものを選びなさい。
1一人暮らしだと野菜がすぐ余計になってしまう。
2話が複雑になるから、余計なことは言わないで。
3余計があったら、ひとつ貸してもらえませんか。
4このごろ仕事が忙しくて、遊びに行く余計がない。
・ふだん感情を表に出さない彼があんなに△△☆△よほど良いことがあったのだろう。
☆に入る言葉を選びなさい。
1みると 2ところを 3いる 4喜んで
N2の試験時間は「文字・語彙・文法」「読解」で105分、「聴解」で50分です。
「文字・語彙」の問題のなかに、ほかのレベルにはない「語形成」の項目があります。「語形成」とは、派生語や複合語の知識を問う項目です。
N3
N3の「文字・語彙」「文法」の過去問を紹介します。
・山本さんはクラスの代表に選ばれた。
下線の読み方として正しいものを選びなさい。
1たいひょう 2だいひょ 3だいひょう 4たいひょ
・困っているときに、先生にたすけていただきました。
下線の言葉を漢字で書くとき、最も良いものを選びなさい。
1助けて 2守けて 3支けて 4協けて
・ここのパソコンは誰でも使えますが、コピーは()です。
()内に入れるのに良いものを選びなさい。
1会費 2費用 3有料 4料金
・次々に新しいゲームが作られる。
下線の言葉の意味に近いものを選びなさい。
1だんだん 2これから 3いつでも 4どんどん
・父が短気なの()、母の方は気が長い。
()内に入れるのに良いものを選びなさい。
1において 2に対して 3について 4によって
N3~N5は、「文字・語彙」と「文法・読解」、「聴解」の3つの項目ごとに試験時間が決められています。N3は、「文字・語彙」で30分「文法・読解」で70分、「聴解」で40分です。
N4
N4の「文字・語彙」「文法」の過去問は、以下のとおりです。
・あにはバスで会社に通っています。
下線の読み方として正しいものを選びなさい。
1むかって 2かよって 3わたって 4もどって
・ふねでにもつをおくります。
下線の言葉を漢字で書くとき、最も良いものを選びなさい。
1近ります 2逆ります 3辺ります 4送ります
・スーパーでもらった()を見ると、何を買ったかわかります。
()に入る正しい言葉を選びなさい。
1レジ 2レシート 3おつり 4さいふ
・パスポートばんごうをしらせてください。
この文章の意味に近いものを選びなさい。
1パスポートばんごうをうつしてください。
2パスポートばんごうをなおしてください。
3パスポートばんごうをきめてください。
4パスポートばんごうをおしえてください。
・けんぶつ
この言葉の使い方として正しいものを選びなさい。
1きのう、いもうとと大きな花をけんぶつしました。
2きのう、テレビでにほんのニュースをけんぶつしました。
3きのう、ともだちときょうとのまちをけんぶつしました。
4きのう、しごとで車のこうじょうをけんぶつしました。
N4はN1~N3の問題と比べて、問題文にひらがなが多いのが特徴です。読解の項目で出題される文章にも、難しい漢字や語彙は含まれません。
N5
N5の「文字・語彙」「文法」の過去問を紹介します。
・新しいくるまですね。
下線の読み方として正しいものを選びなさい。
1あたらしい 2あだらしい 3あらたしい 4あらだしい
・あのほてるはゆうめいです。
下線の言葉を書くとき、最も良いものを選びなさい。
1ホラル 2ホテル 3ホラハ 4ホテハ
・ここは()です。べんきょうできません。
()内に入れるのに良いものを選びなさい。
1くらい 2さむい 3うるさい 4あぶない
・ゆうべパーティーへいきました。
この文章の意味に近いものを選びなさい。
1きのうのひるパーティーへいきました。
2きのうのよるパーティーへいきました。
3おとといのひるパーティーへいきました。
4おとといのよるパーティーへいきました。
・きのうはうちに()何をしましたか。
()に入る正しい言葉を選びなさい。
1かえる 2かえるから 3かえって 4かえったり
過去問から分かるとおり、N5は日本語の基礎の理解ができていれば合格できるレベルです。漢字の読み方に関する問題の選択肢には、実際には存在しない読み方が含まれています。単語の読み方や大体の意味を理解していれば、ほとんどの問題に迷うことなく解答できるでしょう。
参照元 日本語能力試験JLPT「新しい日本語能力試験問題例集」
JLPT(日本語能力試験)の申し込み方法
JLPT(日本語能力試験)は、海外で受験する場合と日本で受験する場合で、申し込み方法が異なります。海外で受験する場合は、JLPTを受ける地域の実施都市と機関を確認しましょう。自分が受験する実施機関で詳細を確認して、願書を受け取ります。その後、実施機関の指示どおりに申し込みを済ませて受験料を支払い、受験票が届くのを待ちましょう。
日本で受験する場合は、「日本国際教育支援協会」のWebサイトからMyJLPTの登録をします。登録完了後、申し込み手続きをして受験料の支払いを行いましょう。クレジットカード支払いもしくは銀行振込、コンビニエンスストア支払いのなかから選択できます。支払いが完了したら、「日本国際教育支援協会」から受験票が届くので、受験日までしっかりと保管しておきましょう。
参照元 日本語能力試験JLPT「海外で受験する」 日本語能力試験JLPT「日本で受験する」
JLPT(日本語能力試験)の6つのメリット
ここでは、JLPT(日本語能力試験)を受験する6つのメリットを紹介します。なかには、N1やN2を取得していないと受けられないメリットもあるので、注意しましょう。
1.高度人材ポイント制でボーナスポイントを得られる
JLPTのN1もしくはN2の認定を受けている人は、高度人材ポイント制でボーナスポイントを得られます。高度人材ポイント制とは、専門的な知識や技術を持つ高度外国人材を受け入れるために、ポイント制を用いた出入国在留管理上の優遇措置です。具体的には、高度外国人材の活動を「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」に分類して、「学歴」「職歴」「年収」ごとにポイントを付与します。出入国在留管理上の優遇措置を受けるには、合計70ポイントが必要です。JLPTのN1の認定を受けている人は15ポイント、N2の認定を受けている人は10ポイントを取得できます。
2.国家試験が受験できる
医師や看護師などの日本の国家試験を受験するには、JLPTのN1の認定を受けなくてはなりません。外国の大学に通い医学部を卒業した人や、外国で医師免許を取得した人も、日本で医師として働くには国家試験を受ける必要があります。国家試験の受験資格にJLPTのN1の取得が含まれるため、取得していないと受験自体認められません。医師や看護師のほかに、歯科医師や薬剤師、保健師、助産師などの国家試験の受験資格にも、JLPTのN1の取得が含まれています。
3.EPA看護師・介護福祉士の候補者になれる
EPA看護師・介護福祉候補者の候補者選定要件には、JLPTの認定があります。EPA看護師・介護福祉候補者とは、EPA(経済連携協定)に基づき、インドネシア、フィリピン、ベトナムから来日して、就労しながら各国家試験の資格取得を目指す外国人のことです。インドネシアもしくはフィリピンで候補者になるにはJLPTのN5程度、ベトナムで候補者になるにはN3以上の認定が必要です。
4.日本の准看護師試験の受験資格を得られる
JLPTのN1の認定を受けると、日本の准看護師試験の受験資格を得られます。日本で准看護師として働く方法は、准看護師養成所を卒業し准看護師試験に合格する方法と、外国で看護師免許を取得し、日本の准看護師試験に合格する方法の2種類です。なお、日本の准看護師養成所を卒業していればJLPTの認定は必要ありません。
5.中学校卒業程度認定試験で国語の試験が免除される
JLPTのN1もしくはN2を取得している人は、中学校卒業程度認定試験で国語の試験が免除されます。本来、中学校卒業程度認定試験の試験科目は、「国語」「社会」「数学」「理科」「外国語」の5教科です。しかし、JLPTのN1もしくはN2の認定を受けている外国人は、中学校卒業程度の日本語能力が身に付いていると判断されるため、国語の試験を受ける必要がありません。JLPTの合格証明書を提出することで免除されます。
6.就職活動の際に日本語能力を証明できる
JLPTを取得していると、就職活動の際に日本語能力をアピールできます。外国人の日本語能力をJLPTのレベルで判断する企業が多くあるため、N1やN2を取得しておくのがおすすめです。ただし、面接官とスムーズにコミュニケーションが取れないと、JLPTのN1やN2を取得していても不採用となる可能性があります。そのため、JLPTの取得とあわせて日本語でのコミュニケーション能力も身に付けましょう。
まとめ
JLPT(日本語能力試験)とは、外国人の日本語能力を測定し認定する試験のことです。N1~N5のレベルがあり、レベルによって認定の目安や問題の内容が異なります。JLPTのなかでも取得することで多くのメリットが得られるのは、N1もしくはN2です。JLPTを受験する場合は、目的を明確にして勉強しましょう。
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