日本語能力試験(JLPT)は、日本語を母語としない外国人が受ける試験です。受験を考えている人のなかには、「どのレベルを受験したら良いのか分からない…」「どのような試験内容かを知りたい」という方もいるでしょう。このコラムでは、JLPTのなかでも中間レベルであるN3の特徴を紹介。また、難易度や認定率も解説します。これからJLPTを受験する方はチェックしておきましょう。
目次
日本語能力試験(JLPT)の概要
日本語能力試験は、日本語を母語としない人の日本語能力を測定し認定する試験です。「JLPT」や「日能試」とも呼ばれます。ここでは、日本語能力試験(JLPT)の概要を解説するので、受験を検討している方は参考にしてください。
JLPTは世界最大規模の日本語の試験
JLPTは世界最大規模の日本語の試験で、日本と海外の86の国と地域で行われています。2019年には、国内外の受験者数の合計が約117万人にも登りました。2020年の受験者数は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で試験が1回になったこともあり、約37万人と減ります。しかし、2021年の受験者数は約68万人と再び増加しており、情勢が落ち着けばまた受験者は増えていくでしょう。
JLPTを受験する人の目的は、日本での就学や就職、国家資格の取得などです。また、自分の日本語の実力を把握するために受ける日本語学習者も多くいます。日本語能力を測りたい方は、ぜひJLPTにチャレンジしてみましょう。
JLPTは4つの特徴を持つ
JLPTには4つの特徴があります。受験を検討している方はあらかじめ確認しておきましょう。
-
課題遂行に必要な言語コミュニケーション能力の測定
-
日本語能力を測るための5段階のレベル分け
-
尺度得点による正確な日本語能力の測定
-
合格レベルに応じたCan-doリストの提供
JLPTでは、日本語の文字や語彙、文法についての知識を測ります。加えて知識を実際のコミュニケーションでも活かせるかも測定されるため、総合的な日本語能力が分かるのが特徴です。JLPTは5段階にレベル分けされており、きめ細かく日本語能力を測定できます。実施年ごとに試験の難易度にばらつきがあっても公平に得点を出せるように、尺度得点を用いているのもポイントです。
「日本語能力試験 合格者と専門家の評価によるレベル別Can-doリスト」とテストの結果を照らし合わせると、自分の日本語能力を活かしてできることが明確になります。「自分の日本語能力を正確に確かめたい」「合格後どのように日本語を活かせるのか知りたい」という方は、JLPTの受験がおすすめです。
JLPTについては、「JLPT(日本語能力試験)の申し込み方法や期間を外国人に向けて解説」のコラムでも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
参照元 日本語能力試験公式ウェブサイト「過去の試験データ」 日本語能力試験公式ウェブサイト「4つの特徴」
ピックアップ記事
日本語能力試験(JLPT)N3について
日本語能力試験には難易度によって5つのレベルがあり、N3は中間に位置します。ここでは、JLPTのN3のレベルや試験科目、認定率を解説します。受験する方はチェックしておきましょう。
JLPTのN3は日常会話が理解できるレベル
JLPTのN3は、日常生活で使われる日本語が理解できるレベルです。身近な話題について書かれた、具体的な文章を読んで理解したり新聞の見出しから情報の概要を掴めたりします。また、ほぼ自然に近いスピードでの日常会話を聞いて、話の具体的な内容や登場人物の関係性をほとんど理解することが可能です。
JLPTのレベルはN1~N5まであり、数字が小さくなるほど高度な日本語能力を求められます。ネイティブ並みに日本語を読んだり聞いたりできるのがN1レベルです。ある程度日本語能力に自信がある方はN3試験から挑戦し、徐々にレベルを上げていくことをおすすめします。
試験科目は言語知識・読解・聴解の3つ
JLPTのN3レベルの試験科目は、「言語知識(文字・語彙)」「言語知識(文法)・読解」「聴解」の3科目です。言語知識(文字・語彙)に30分、言語知識(文法)・読解に70分、聴解に40分の試験時間が設けられています。
漢字の読み方や長文の読解、リスニングにおける理解力などがチェックされるので、試験内容をしっかり学習しておきましょう。日本語能力試験公式ウェブサイトでは問題例集が公開されているうえ、それぞれのレベルに応じた参考書も販売されています。
JLPTのN3の基準点と認定率
JLPTのN3試験の認定率は試験の実施年度によって大きく異なり、約33~54%と幅があります。過去のN3レベルの国内外の認定率は、2019年第1回で39.4%、第2回で33.6%でした。前述のとおり試験が1回になった2020年のN3認定率は54.1%、2021年第1回は48.1%、第2回は45.2%を記録しています。
N3レベルに認定されるには、試験範囲ごとに設けられている基準点を満たしたうえで、総合得点を95点以上取る必要があります。試験範囲ごとの基準点は19点です。一つでも基準点に達していない試験範囲があると、総合得点が95点以上あっても不合格になるので注意しましょう。
JLPT(日本語能力試験)を受けたい方には、「JLPT(日本語能力試験)の過去問や認定の目安をレベル別に紹介」や「JLPTの合格点は何点?合否の判定方法や各レベルの難易度を解説!」のコラムもおすすめです。レベル別の認定基準や求められる日本語能力についてまとめているので、内容を参考にして勉強に活かしましょう。
参照元 日本語能力試験公式ウェブサイト「試験科目と問題の構成」 日本語能力試験公式ウェブサイト「過去の試験データ」 日本語能力試験公式ウェブサイト「得点区分・合否判定・結果通知」
日本語能力試験(JLPT)N3の問題例
日本語能力試験(JLPT)の解答にはマークシート方式が採用されており、3つもしくは4つの選択肢から正しいと思う答えを選びます。漢字によっては振り仮名があることが、N3試験の問題文の特徴です。JLPTの公式Webサイトに掲載されているN3の問題例を以下にまとめているので、挑戦してみましょう。
漢字の読み方や正しい表記を答える問題
【問題】
「●●●」のことばの読み方として最もよいものを、1・2・3・4から一つえらびなさい。
・山本さんはクラスの「代表」に選(えら)ばれた。
1.たいひょう 2.だいひょ 3.だいひょう 4.たいひょ
・3日前から雨が続いている。
1.ういて 2.うごいて 3.ついて 4.つづいて
【問題】
「●●●」のことばを漢字で書くとき、最もよいものを、1・2・3・4から一つえらびなさい。
・アルバイトの「めんせつ」は来週の土曜日だ。
1.面接 2.面投 3.両接 4.両投
・困(こま)っているときに、先生に「たすけて」いただきました。
1.助けて 2.守けて 3.支けて 4.協けて
JLPTのN3レベルに認定されるには、上記のような漢字の読み方や正しい表記の知識が必要です。
文中に入る適切な言葉を選択する問題
【問題】
「」に入れるのに最もよいものを、1・2・3・4から一つえらびなさい。
・「」寝(ね)たので、気持ちがいい。
1.すっかり 2.ぐっすり 3.はっきり 4.ぴったり
・ここのパソコンは誰(だれ)でも使えますが、コピーは「」です。
1.会費 2.費用 3.有料 4.料金
・父が短気(たんき)なの「」、母の方は気が長(なが)い。
1.において 2.に対して 3.について 4.によって
JLPTのN3試験では、文脈から推測される語彙や文法的に正しい表現を選ぶ問題が出題されます。
言葉の正しい使い方をしている文を選ぶ問題
【問題】
つぎのことばの使い方として最もよいものを、一つえらびなさい。
・今ごろ
1.それでは、今ごろテストを始めます。
2.今ごろ東京では桜(さくら)が咲(さ)いているでしょう。
3.今ごろ現金(げんきん)で支払(しはら)うことが少なくなった。
4.今ごろ雨が降(ふ)りそうな天気だ。
・かわいがる
1.山田さんは子どもをとてもかわいがっています。
2.あの人は親をとてもかわいがっています。
3.田中さんは、いただいた時計をとてもかわいがっています。
4.あの人は自分の家をとてもかわいがっています。
JLPTのN3試験に出題される言葉の問題では、意味だけではなく、使う場面や対象に対する理解も試されます。
日本語能力試験(JLPT)N3の受験手続き
JLPTは日本だけでなく世界各国で受験可能です。都市によって異なりますが、基本的に年2回試験が実施されるので、申し込みの流れを確認して受験手続きを行いましょう。ここでは、受験手続きの流れを日本と海外で分けて紹介するので、申し込む際の参考にしてください。
日本でJLPTを受験する場合
日本では、7月と12月にJLPTが実施されます。詳細な日程は、日本国際教育支援協会のWebサイトで確認しましょう。インターネット上で受験申し込みができるので、事前にMyJLPTの登録を行っておくと手続きがスムーズです。
7月の試験の申し込みは3月中旬から4月中旬にかけて行えます。日本国際教育支援協会のWebサイトから申し込んで、受験料6,500円を支払いましょう。受験票が届くのは、6月中旬です。試験日まで大切に保管しましょう。受験後、9月上旬に試験結果が郵送されます。また、MyJLPTでも合否の確認が可能です。
12月に試験を受ける場合は、8月下旬から9月中旬の間に申し込みを行います。受験票は11月中旬ごろに届くので保管しておきましょう。試験の結果は2月上旬に確認できます。
海外でJLPTを受験する場合
JLPTは海外でも基本的に7月と12月に実施されますが、1回のみ試験が行われる都市もあります。海外で受験する場合は、日本語能力試験公式Webサイトで試験が受けられる都市と実施機関を確認しておきましょう。受験案内(願書)は実施機関に問い合わせて、早めに入手するのがおすすめです。
7月に試験を受ける場合は、3〜4月の間に受験案内をよく読んで、実施機関の指示に従って申込みと受験料の支払いを済ませます。申し込み受付期間は受験地によって異なるので、必ず実施機関に確認しましょう。実施機関から受験票が届いたら、試験日まで保管します。9月ごろに試験結果が送られてくるので、届くまで待ちましょう。
12月に試験を受ける場合は、8月から9月ごろに申し込みと受験料の支払いを行います。試験の結果が郵送されるのは3月ごろです。
参照元 日本語能力試験公式ウェブサイト「日本で受験する」 日本語能力試験公式ウェブサイト「海外で受験する」
まとめ
日本語能力試験(JLPT)は、日本での就職や進学、資格取得などの目的のために受験する人が多い、世界最大規模の日本語の試験です。JLPTのN3レベルは、日常会話ができる程度の日本語能力が求められます。認定されるには、各試験範囲の基準点を越えたうえで、95点以上の総合得点が必要です。まんべんなく点数を取れるように、問題集を使って勉強しましょう。
受験手続きの流れは日本と海外で異なります。スムーズに手続きできるように、自分が受験する都市の申し込み方法を事前に確認しておくと良いでしょう。