日本語には「麗らか」や「花鳥風月」のように、美しい響きの言葉が数多くあります。日本語を学んでいる人のなかには、美しい日本語とはどんな言葉なのか関心がある人もいるでしょう。このコラムでは、四季・四字熟語・自然・感情と様子・色に分けて、響きが美しい日本語を紹介します。美しい日本語の意味と使い方の解説を参考に、日本語の勉強に役立ててください。
目次
美しい日本語【四季】
日本語には、季節の情景を表す言葉や四字熟語など、美しい響きの言葉が多くあります。ここでは、春・夏・秋・冬に関連する美しい響きの日本語を紹介。読み方が独特なものもあるため、どのような響きなのか声に出して読んでみるのも良いでしょう。
響きが美しい春の言葉
春に関係する美しい響きの日本語と意味は以下のとおりです。
- 麗らか(うららか):晴れて日が照っていて気温は暑くも寒くもない様子。また「楽しそうな様子」「心地良い」などの意味もある
- 春うらら(はるうらら):春のうららかな様子。のどかな様子。季節の雰囲気や気持ち良さを表す言葉
- 陽炎(かげろう):水蒸気が地面から立ち昇る際、暖かい空気によって景色がゆらゆらと歪んで見える現象。春や夏に現れることが多い
- 風光る(かぜひかる):暖かい日の光が差すと風も光っているように見えること。春の季語として俳句にもよく使われる言葉
- 名残り雪(なごりゆき):春に降る雪や春になっても残っている雪のこと。同名のフォークソングがヒットし、親しまれるようになった
- 鶴帰る(つるかえる):冬の間、日本で過ごした鶴が春になると飛び立つ様子。春の季語として俳句に用いられることも
- 山笑う(やまわらう):花が笑っているかのように、山にたくさんの花が咲き誇っている様子を形容した言葉。山笑うという春の表現に対し、山眠るという冬の表現もある
- 朧月(おぼろづき):霧や霞で月がぼんやりかすんで見える様子。春の夜の月のイメージとして使われる言葉
- 花冷え(はなびえ):桜が咲くころに寒さが戻ってくること。肌寒さを表す言葉
- 霞の衣(かすみのころも):立ち込めた霧を衣に見立てた言葉。ほかにも、黒染めの衣やねずみ色の衣、喪服という意味もある
- 落ち椿(おちつばき):庭に落ちている、赤や茶色の椿の花のこと。春の季語として俳句に用いられる
「麗らか」には上記のほか、「楽しそうな様子」「心地良い」などの意味もあります。
響きが美しい夏の言葉
夏に関係する美しい響きの日本語と意味は以下のとおりです。
- 朝凪(あさなぎ):晴れた日の朝、陸と海の風が入れ替わる際に風がやむ様子。夕方に同じ現象が起きたときは夕凪という
- 空蝉(うつせみ):「うつしおみ」「うつそみ」から変化した言葉で、この世に生きている人という意味。ほかにも、セミの抜け殻という意味もある
- 涼風(すずかぜ):真夏に吹く爽やかな風のこと。「りょうふう」という読み方もある
- 油照り(あぶらでり):風がなく曇っていて蒸し暑い様子。動かなくても汗が出てくるような天気を指す
- 打ち水(うちみず):暑い日に道や庭などに水を撒くことで暑さを和らげること。江戸時代からお清めや、客を招く際のおもてなしとして行われてきた
- 薫風(くんぷう):木々の間や水の上を通り過ぎ、その香りを運んでくる初夏の風
- 忘れ水(わすれみず):野中の茂みなど人目につかない場所に忘れられたように流れる水
- 蝉時雨(せみしぐれ):セミがいっせいに鳴く様子が、時雨のように聞こえることを表した言葉
- 風待月(かぜまちづき):陰暦6月の異称。冷房がなかった時代、風が吹くのが待ち遠しいという意味で使われた言葉
ほかにも、「燃えるような暑さ=炎暑(えんしょ)」「初夏の暑さ=薄暑(はくしょ)」などがあります。
響きが美しい秋の言葉
秋に関する美しい響きの日本語と、その意味は以下のとおりです。
- 秋晴れ(あきばれ):秋の晴天を指す言葉、空気が澄んでいて空が高く感じるという意味。同じ意味の言葉に「秋日和(あきびより)」もある
- 秋の空(あきのそら):秋、晴れ渡って高く見える空または変わりやすい天気のこと。人の心の変わりやすさをたとえるときに「女心と秋の空」のように使う場合も
- 馬肥ゆる(うまこゆる):もともとは、肥えた馬に乗って敵が攻め込んでくることを警戒する意味で使われていた言葉。現代では秋の過ごしやすい季節を表す言葉として、手紙などでは時候の挨拶に使われることも
- 灯火親しむ(とうかしたしむ):秋は夜が長く、過ごしやすい季節であることから灯火のもとで読書するのに適しているという意味。読書を促す言葉として「灯火親しむべし」ということわざもよく使われている
- 山粧う(やまよそおう):秋が訪れ、山の木々が紅葉した様子を表す言葉。山が化粧したように美しいという意味
- 虫時雨の響き(むししぐれのひびき):あちこちで鳴く虫の声が、まるで雨のようにたくさん聞こえてくる様子を表す言葉
- 野分(のわき):台風や暴風のこと。野の草木を分けて吹き荒れる様子
- 竹の春(たけのはる):陰暦8月の異称。竹が成長し鮮やかな緑色になる様子
- 秋高し(あきたかし):秋になると空気が澄み、空が高くなったように感じること。同じ意味の「天高し」が一般的によく使われている
- 秋入梅(あきついり):梅雨のように降り続く秋の雨のこと。「あきつゆいり」の音が変化したもの
秋の天気は変わりやすいことから、人の心をたとえるときに「女心と秋の空」のように使う場合もあります。
響きが美しい冬の言葉
冬に関係する美しい響きの日本語と、その意味は以下のとおりです。
- 風花(かざばな):「かざはな」とも読む。晴天時に舞うように降る粉雪のこと。雪が風に吹かれて飛んでいく様子を表す言葉
- 木枯らし(こがらし):秋の終わりから冬のはじめにかけて吹き荒れる冷たい風のこと
- 小春日和(こはるびより):晩秋から初冬にかけての気温が暖かい日を指す言葉。春の気候を表す言葉ではないので誤用に注意
- 山眠る(やまねむる):落葉した木々が茂る山が、冬の日差しのなかで眠ったように静まり返っている様子
- 風冴ゆ(かぜさゆ):冷たく身にしみるような風がふくこと
- 三寒四温(さんかんしおん):寒い日が3日、温かい日が4日ほど続くこと。気温が安定しない様子を表す言葉
- 東風(こち):冬の寒さが緩んだころ、東から吹く風を指す。春の訪れを感じさせる言葉。東風は読み方が独特なため注意
- 冬将軍(ふゆしょうぐん):厳しく寒い冬を擬人化した言葉。冬になると天気予報などでも使われる
雪や澄み切った空気に関係する言葉が多いのが特徴です。
日本は春夏秋冬が明確に分かれています。日本の季節や気候の特徴を知りたい方は、「日本の季節や気候を外国人に向けて解説!」のコラムも、あわせてご覧ください。
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花鳥風月
花鳥風月(かちょうふうげつ)とは、自然の美しい景色を表す日本語です。「花鳥は、花を愛し鳥の鳴き声に耳を傾ける」「風月は、自然の風景や風流を楽しむ」という意味があります。使い方は、「春の山は花鳥風月が素晴らしい」「花鳥風月を楽しむためにここに住んでいる」などです。また、花鳥風月は景色だけでなく、自然を題材にした絵画や詩などを指す場合もあります。
雪月風花
雪月風花(せつげつふうか)は、「四季折々の美しい景色」という意味です。雪は冬、月は秋、風は夏、花は春を表しています。「私は毎週、散歩をしながら雪月風花を楽しんでいる」といった使い方ができるでしょう。また、景色を見ながら詩を詠む様子を、雪月風花と呼ぶ場合もあります。
百花繚乱
百花繚乱(ひゃかりょうらん)とは「多種多様な花が美しく咲き乱れている」という意味の四字熟語です。本来の意味から転じて、現在では会社やチームなどに優秀な人が数多くいる様子を「百花繚乱」と呼ぶようになりました。「日本の春は百花繚乱の景色を楽しめる」「今年のチームメンバーは百花繚乱なので、優勝間違いなしだ」などの使い方があります。
暮色蒼然
暮色蒼然(ぼしょくそうぜん)とは、夕暮れの時間に徐々に空が薄暗くなっていく様子を表す日本語です。暮色は「夕暮れ時の薄暗い景色」、蒼然は「日暮れ時の薄暗さ」という意味があります。「私は電車から見える暮色蒼然の景色が好きだ」のように使えるでしょう。
桜梅桃李
桜梅桃李(おうばいとうり)は、桜・梅・桃・李(すもも)のそれぞれが、特性のある美しい花を咲かせることを表す言葉です。この言葉は人間にもたとえられ、「他人と比べず、自分を磨くことが大事」という教訓も含んでいます。座右の銘にも使える言葉です。
流星光底
流星光底(りゅうせいこうてい)は、流星のように一瞬だけ光輝く様子を表す言葉です。もとは、振り下ろされた刀が一瞬輝くことを流星にたとえた四字熟語でした。「流星光底に敵をなぎ倒す」などの使い方ができるでしょう。また「流星光底長蛇を逸す」ということわざもあり、大敵を取り逃がしてしまうという意味から、またとない機会を逃してしまうという意味で使われます。
山紫水明
山紫水明(さんしすいめい)は、自然の風景が清らかで美しいことを表す言葉です。太陽の光で山は紫にかすみ、川は澄み切って美しい様子を表します。「山の頂上からは山紫水明と呼べる絶景が見渡せる」といった使い方ができるでしょう。
鏡花水月
鏡花水月(きょうかすいげつ)は、目で見れても手には取れないという意味で、奥深い趣があることを表した言葉です。「鏡花」は鏡に映った花、「水月」は水に映った月を意味しており、どちらも実体のない物体のたとえとして用いられています。「この作品には鏡花水月のような奥深い趣がある」といった使い方が可能です。
迦陵頻伽
迦陵頻伽(かりょうびんが)は、美しい声や声の美しいものをたとえた言葉です。迦陵頻伽は、仏教で極楽にいるとされる鳥のことを指します。「迦陵頻伽のような歌声」といった使い方ができるでしょう。
天真爛漫
天真爛漫(てんしんらんまん)とは、明るく無邪気な様子をたとえた言葉です。飾り気がなく素直な振る舞いや性格を表し「子どもの天真爛漫な様子を見ていると元気が出る」など、多くは良い意味や誉め言葉として使われます。一方、無神経や配慮に欠ける様子を皮肉に表す意味で天真爛漫が使われることも。相手や状況に合わせ、正しい使い方をする必要があります。
華麗奔放
「華麗」はとても華やかな様子、「奔放」は自由に振る舞う様子を表すことから、華やかに思いのままに振る舞う様子を華麗奔放(かれいほんぽう)といいます。「彼女は華麗奔放な生き方をしている」といった使い方が可能です。
疾風勁草
疾風勁草(しっぷうけいそう)は、暴風が吹いたときに強い草かどうか分かるという由来から、苦境や困難な時に人の意志の強さが分かるという意味を表す言葉です。もともとは「疾風に勁草を知る」という中国から伝わった人間性を表すためのことわざだといわれています。
行雲流水
行雲流水(こううんりゅうすい)とは、空を行く雲や流れる水のように自然の流れや成り行きに任せて行動するという意味を表した言葉です。物事に執着することなくありのままに生きる人や、行動する人の様子を表現しています。「どうしたらいいのか分からないときは行雲流水のごとく見守ろう」といった使い方ができるでしょう。
夢幻泡影
夢幻泡影(むげんほうよう)は、仏教用語から由来する言葉で人生の儚さを意味する四字熟語です。夢や幻、泡、影は実体がなく気がついたら無くなっているものであることから、人生の悲哀や儚さを表しています。夢幻泡影の「影」は「よう」と読むため、「影」の一般的な音読みである「えい」と読まないように気を付けましょう。
美しい日本語【自然】
日本語には、自然を由来として生まれた言葉が数多くあります。ここでは、自然に関連する美しい日本語を紹介。読み方が独特な言葉も多いため、声に出し言葉の響きを確かめながら読んでみるのも良いでしょう。
初明り
初明かり(はつあかり)は、新年の始まりである元旦(1月1日)の夜明けを表す美しい言葉です。俳句では新年の季語として使われています。
星合の空
星合いの空(ほしあいのそら)とは、七夕(たなばた/7月7日)の空のことです。七夕は1年のなかでも天の川が綺麗に見える日とされており、夜空一面に多くの星が輝いている様子を表しています。
時雨
時雨(しぐれ)とは、秋から冬にかけて降る少量の雨を指す日本語です。空は曇り冷たい風が吹いて、雨がぱらぱらと降ってくる様子を表しています。
青嵐
青嵐(せいらん・あおあらし)は、夏に風が木々を大きく揺らして吹き抜ける様子を表す言葉です。ほかにも、青嵐には若葉が茂る山の様子を表す「青々とした山気」という意味もあります。青嵐の類義語は「夏嵐」「風青し」です。夏の季語として俳句にもよく使われる言葉です。季語として俳句に使われているときは「あおあらし」と訓読みで読みましょう。
雨催い
雨催い(あまもよい)は、今にも雨が振りだしそうな空の様子を表す言葉です。「雨模様」の元のかたちともされています。
月光
月光(げっこう)は月の光を意味する言葉です。月光のほか、月影(げつえい)や月明り(つきあかり)、ムーンライトと言い換えて表現することができます。
黄昏
黄昏(たそがれ)は、夕方の薄暗くなったころを表す言葉です。暗くなり人の顔が見分けにくくなった際に「誰そかれ(誰だあれは)」と言ったことから生まれた言葉だとされています。盛りが過ぎ、勢いが衰えていくころを比喩的に表現するときにも使う言葉です。
露華
露華(ろか)は、雨露に濡れた花を表す言葉です。明治時代に活躍した小説家・評論家である夏目漱石が書いた小説「吾輩は猫である」では、「天に星辰あり。地に露華あり」という表現が用いられています。
天泣
天泣(てんきゅう)は、晴れているのに雨が降る現象を指す言葉です。「狐の嫁入り」ともいいます。雨が落ちる間に雲が移動したり、雨が風で運ばれたりして起こる現象です。
暁
暁(あかつき)は、夜明け前の仄暗いころを指す言葉です。また、「目的や望みが実現する際」という意味もあります。「当選の暁には」といった使い方が一般的です。
遣らずの雨
遣らずの雨(やらずのあめ)は、訪れてきた人が帰るのを引き止めるように降り出した雨のことです。大切な人や愛する人に帰ってほしくないという思いを雨に重ねて表現しています。
朧月夜
朧月夜(おぼろづきよ)とは、春の夜に霧(きり)や靄(もや)などでかすんで見える月のことです。また朧(おぼろ)には、あいまいではっきりしない、不確かな様子という意味があり「おぼろげな記憶」という表現でも使われています。
五月雨
五月雨(さみだれ)とは、梅雨(つゆ)のことです。梅雨は、晩春から夏にかけて雨が降り続く時期を指します。五月雨には「五月」という言葉が含まれているものの、5月に限らず6月に降る雨も五月雨と呼ぶため注意しましょう。
蜃気楼
蜃気楼(しんきろう)とは、空気中の密度の差により光が屈折し、離れた景色が実際とは異なるものに見える現象のことです。蜃気楼には、春の蜃気楼と冬の蜃気楼の2種類があります。
雪月花
雪月花(せつげつか)とは、季節の美しさを表す言葉です。四季を表す冬の雪や、秋の月、春の花を合わせ自然の美しさを表現しています。三字の組み合わせから季節や風情が感じられる日本語です。
花あかり
花あかり(はなあかり)とは、暗い夜でも満開の桜によって明るく見える様子を表した言葉です。「花あかり」言葉の響きも美しく、ホテルや旅館の名前にも多く使われています。
美しい日本語は俳句でもよく使われています。「外国人にも人気のある俳句とは?英語で詠むHAIKUのルールも解説」では、俳句のルールや季語について詳しく解説しているのでご覧ください。
美しい日本語【感情と様子】
人間の感情にまつわる日本語には、間接的な表現や抽象的な表現が多いためすぐに意味を理解するのは難しいでしょう。ここでは、感情と様子を表す美しい日本語を紹介します。漢字から意味を推測しながら少しずつ覚えてみてください。
面映ゆい
面映ゆい(おもはゆい)は、顔を合わせるのが照れくさい、きまりが悪いという気持ちを表す言葉です。顔を表す「面」と、まばゆいという意味の「映ゆし」が合わさった言葉で、「顔を合わせるのがまぶしく感じられる」という状況を表しています。「照れくさい」や「恥ずかしい」と似たような使い方ができるでしょう。
恋衣
恋衣(こいごろも)は、常に相手を思う強い恋心を表す言葉です。恋心を身につける衣にたとえ、心から離れない強い気持ちを表現しています。『万葉集』や詩歌にもよく用いられた言葉です。
忍涙
忍涙(しのびなみだ)は、人に知られないようにひっそりと泣く様子を表す言葉です。また、忍(しのぶ)には人目を避け、目立たないようにするという意味があります。
逆鱗
逆鱗(げきりん)は、一般的に「逆鱗に触れる」と表現され、目上の人を怒らせる、あるいは相手を怒らせることを意味します。竜のあごの下にある一枚だけ逆さに生えた鱗に触れると普段はおとなしい竜が怒り狂うことから「逆鱗」という言葉が生まれました。逆鱗は触れてはいけない部位とされ、帝や主君の怒りを買う行為と表現する言葉として使われています。
心化粧
心化粧(こころげそう)は、相手によく思われようと改まった気持ちになることです。言葉や行動に気を配っている様子を指します。
涙雲
涙雲(なみだぐも)とは、涙ぐんで視界がぼやける状態を表す言葉です。「彼女は映画を見て感動し、目に涙雲を浮かべていた」と表現することができます。
愛嬌
愛嬌(あいきょう)とは、にこやかで可愛らしい雰囲気を持ち、相手に対して好意的な振る舞いができる様子を表す言葉です。子どもの笑顔に対し「この子はとても愛嬌がある」と表現することもあります。
美しい日本語のほかにも、風情が感じられるものについて知りたい方は「風情の意味や読み方を解説!例文を参考に使い方を理解し会話で使ってみよう」のコラムを参考にしてください。
美しい日本語【色】
日本の色名には西洋から伝わったものや、日本で生まれたものがあります。古来より日本で使われてきた大和言葉の色名は、繊細で優しい雰囲気の名前のものが多く、日本語の美しさも表れているといえるでしょう。ここでは、日本で親しまれてきた美しい響きの色名を紹介します。
紅色
紅色(べにいろ)は、「くれない色」や「こうしょく」とも読みます。紅色の原料となったのは、紅花(べにばな)という花から抽出された色素です。紅色は人気のある色であったものの、高貴な身分の人しか身に付けられない色だったといわれています。
撫子色
撫子色(なでしこいろ)は、少し紫みのある薄い赤色のことです。撫子というピンク色の花が語源となり付けられた色名といわれています。日本人女性の美称に「大和撫子(やまとなでしこ)」という言葉もあり、日本人には馴染み深い言葉です。
桃色
桃色(ももいろ)は、桃の花のような淡いピンクの色合いのことです。『万葉集』にも「桃花褐(つきそめ)」という記述もあるため、古くから日本人に親しまれてきた色といえます。
亜麻色
亜麻色(あまいろ)とは、黄色がかった薄い茶色のことです。亜麻色の語源となった亜麻という植物は人類最古の繊維とも呼ばれ、糸やリネン、織物が作られてきました。日本で亜麻色という色名が使われるようになったのは、明治時代以降といわれています。
瑠璃色
瑠璃色(るりいろ)とは、紫みの強い鮮やかな青色のことです。一般的には濃い青色(紺色)として表現されています。瑠璃は仏教の七宝のひとつであり、珍しい宝石として古来より重宝されてきたことから、瑠璃色も至上の色として平安時代より貴族に愛されてきました。
翡翠色
翡翠色(ひすいいろ)とは、青緑から黄緑に渡って幅広く表される緑色のことです。日本の伝統色の一つであり、室町時代から使われてきました。語源となった翡翠は宝石の名前であり、半透明の緑色が美しく不老長寿のシンボルとして東洋人から愛されています。
黄金色
黄金色(こがねいろ)とは、赤みを帯びた黄色のことで、金色や山吹色に近い色です。黄金色は「おうごんいろ」とも読みます。「黄金色の絨毯(じゅうたん)」とは、朝日や夕日を浴びて輝く稲穂の田んぼを指す言葉です。
まとめ
日本語には自然や四季、人の心を表す美しい言葉が数多くあります。また、響きが美しく、短い言葉で情景を想像できる日本語は、古くから俳句の季語としても使われてきました。美しい日本語の意味を理解し、ぜひ声に出して言ってみましょう。