日本の伝統色は季節・動植物にルーツがある!意味や歴史について

WeXpats
2023/02/06

日本には、「伝統色」と呼ばれる古来から伝わる日本特有の色が数多く存在します。季節ごとに自然の変化が大きい日本では、季節や風景、動植物などを表すためそれぞれの色に名前をつけてきました。海外でも国特有の名称がついている色はありますが、日本は特に伝統色が多いとされています。そこで、このコラムでは日本の伝統色の歴史や名称に込められた意味を解説。日本の伝統色への理解を深め、日々の生活に取り入れてみましょう。

目次

  1. 日本の伝統色とは
  2. 抗菌・防虫効果が高い染料が用いられた日本の伝統色
  3. 日本の伝統色の名前と意味
  4. 日本の季節を感じられる伝統色
  5. 初めは4色のみだったとされる日本の伝統色
  6. 日本の伝統色をおしゃれに取り入れるコツ
  7. まとめ

日本の伝統色とは

日本の伝統色とはの画像

日本の伝統色とは、古くから伝わる日本特有の色のことです。日本人は色彩を重んじる傾向にあり、色によって身分を表したり四季を楽しんだりしていました。たとえば、日本の伝統的な衣装である着物には伝統色がふんだんに使われています。日本の伝統色に対する知識が深まれば、よりいっそう日本文化を楽しめるでしょう。

季節の色を表現する襲色目(かさねいろめ)

季節の色を表現する襲色目(かさねいろめ)の画像

日本独自の配色方法に、衣服の表地と裏地を重ねて季節の変化を色彩で表す「襲色目(かさねいろめ)」と呼ばれる取り合わせがあります。襲色目は、平安時代以降に高い身分を持つ人々の間で行われていました。男性の場合は直衣(のうし)や狩衣(かりぎぬ)、女性は袿(うちき)や唐衣(からぎぬ)の表地と裏地の色を使って襲色目を楽しんでいたようです。なお、襲色目は「公家女房」と呼ばれる高い身分を持つ女性の正装である「十二単(じゅうにひとえ)」にも用いられていました。

襲色目に使用できる色は、年齢や季節によって決まっています。昔の人々にとっての襲色目は、現代におけるファッションコーディネートの一環だったといえるでしょう。

身分によっては着れない禁色と絶対禁色

身分によっては着れない禁色と絶対禁色の画像

日本の伝統色には、禁色(きんじき)と絶対禁色という身分が高くなければ着られない色があります。禁色は、平安時代以降に天皇の許しを得なければ着用できないとされた色です。主に深紫(ふかむらさき)や深緋(ふかひ)、深蘇芳(ふかすおう)といった染料が大量に使われる濃い色が指定されています。一方、絶対禁色は黄櫨染(こうろぜん)と黄丹(おうに)の2色です。現代にいたるまで、絶対禁色を身に着けられるのは天皇や皇太子に限られます。なお、禁色は現代では誰でも着られる色です。

禁色に対して、身分が低い者でも着用を認められるゆるし色もあります。ゆるし色は淡い紅色や紫色です。ほかにも薄黒(うすぐろ)といった淡い色は身分が低い者でも着られる色でした。

季節ごとの日本の伝統色とは?襲の色目についても解説!」でも、季節ごとの日本の伝統色を紹介しています。また、「襲の色目(かさねのいろめ)」という日本の伝統的な配色方法についても解説します。季節ごとの襲の色目もまとめているので、参考にして日本の伝統色に関する知識を深めましょう。

抗菌・防虫効果が高い染料が用いられた日本の伝統色

抗菌・防虫効果が高い染料が用いられた日本の伝統色の画像

日本の伝統色の多くは草木染めで生まれた色です。草木染めに使われる植物のなかには漢方薬の材料も多く、染料によって様々な薬効を発揮するとされています。実際に植物の染料は防虫効果や抗菌効果が高く、日本人の生活に身近に用いられてきました。たとえば、「藍」は解毒薬や解熱剤など多くの効能を持つ薬草です。染料としては、防虫効果や防腐効果があります。また、「紅花(べにばな)」を使った染料は、血行促進や婦人病改善に効果があるとされているようです。「鬱金(うこん)」には抗菌や防虫効果があり、衣類や風呂敷などに広く用いられました。

日本の伝統色の名前と意味

日本の伝統色の名前と意味の画像

400色以上あるとされている日本の伝統色の名前は動物や植物、風景などが由来です。ここでは、一部の日本の伝統色の名前とその意味を紹介します。日本の伝統色ついて理解を深めたい方は、チェックしてみましょう。

相思鼠(そうしねず)

相思鼠(そうしねず)の画像

「相思鼠」は、相思鳥(そうしちょう)という背中が紫がかったねずみ色の美しい小鳥に由来する伝統色です。この小鳥は江戸時代に中国から伝わり、仲の良い姿から「相思鳥」と呼ばれていました。「相思鼠」の色名は、その相思鳥の身を寄せ合う様子から名づけられたといわれています。

小鹿色(こじかいろ)

小鹿色(こじかいろ)の画像

「小鹿色」は淡い茶色の伝統色です。鹿は日本人にとって身近な動物であり、神の使いともいわれています。小鹿は大人の鹿に比べて体毛が淡く、優しい色合いをしているのが特徴です。そのため、淡い茶色を小鹿色といいます。

桔梗色(ききょういろ)

桔梗色(ききょういろ)の画像

「桔梗色」は、青みを帯びた紫色の日本の伝統色です。夏から秋にかけて花を咲かせる桔梗という植物が、名前の由来になっています。平安時代には襲色目に使われた色で、江戸時代以降は着物や帯にも使われるようになりました。

群青色(ぐんじょういろ)

群青色(ぐんじょういろ)の画像

「群青色」は、紫がかった青色をしている日本の伝統色です。藍銅鉱(アズライト)という鉱石を使って染められています。日本画にも使われる色で、海や水流を描くために重宝されているようです。昔は藍銅鉱の入手が難しかったため、日本の権力者は群青色を用いることで財力を示したとされています。

朱色(しゅいろ)

朱色(しゅいろ)の画像

「朱色」は、黄みがかった赤色の日本の伝統色です。水銀と硫黄という鉱物を加工した顔料を使った色で、魔よけの色として知られています。日本では火や太陽は神聖なものと考えられており、それらを連想させる朱色は神社の鳥居にも使われているので、来日した際はぜひチェックしてみましょう。

山吹色(やまぶきいろ)

山吹色(やまぶきいろ)の画像

「山吹色」は赤みがかった鮮やかな黄色です。日本の伝統色の一つで、春の終わりごろに咲く山吹の花が名前の由来とされています。山吹色は平安時代の襲色目にも使われていました。昔は黄色を表す言葉として、山吹色が用いられていたようです。江戸時代まで使われていた日本の通貨である大判・小判を山吹色と表すこともあります。

茜色(あかねいろ)

茜色(あかねいろ)の画像

「茜色」は、やや黄みがかった暗い赤色の日本の伝統色です。名前のとおりアカネという植物の根が染料に使われています。茜色は夕暮れの空模様を指す言葉のため、秋の季語として和歌に使われることもあるようです。実際に、奈良時代の万葉集という日本最古の和歌集には「あかねさす」という言葉があり、日の光で赤く色づく様子を表しています。

日本の季節を感じられる伝統色

日本の季節を感じられる伝統色の画像

日本は四季がはっきりしており、それぞれの季節を代表するような伝統色が存在します。日本の伝統色は濃淡でも季節を表現しているため、違いを理解すればより四季を楽しめるようになるでしょう。ここでは、春夏秋冬に応じた日本の伝統色を紹介します。

春の日本の伝統色

春の日本の伝統色の画像

日本の春は暖かく、さまざまな草木が芽吹く季節です。春を代表する日本の伝統色の多くは、植物の名前が付けられています。たとえば、淡い紅色の「桜色」や鮮やかな黄色が特徴的な「菜の花色」、新緑をイメージさせるやわらかい黄緑の「若葉色」などです。春の空のような淡い青色の「空色」や優雅な印象を持つ紅がかった紫の「京紫」も、春を感じさせる日本の伝統色として親しまれています。

夏の日本の伝統色

夏の日本の伝統色の画像

日本の夏は湿度が高く、日差しが強い季節です。夏を代表する日本の伝統色の多くは、海や山を連想させるような青や緑といった系統の色が多くなっています。たとえば、海から日が昇る様子を表すような「金碧珠」や鮮やかな緑がかった青の「活色」、松の葉を連想させる濃い青緑の「松葉色」などです。ほかにも、春から夏への移り変わりを感じさせるような淡く明るい黄色の「どんこう色」や「とうもろこし色」も、夏らしい日本の伝統色として知られています。

秋の日本の伝統色

秋の日本の伝統色の画像

日本の秋は植物が色づき、さまざまな食物が収穫される実りの季節です。秋を代表する日本の伝統色は、ほかの季節に比べて深みのある濃い色が多くなっています。たとえば、濃い赤紫の「えび色」や稲穂のような華やかな黄色の「黄金色」、色あせて枯れゆく木の葉を連想させる「朽葉」などです。ほかにも、深いこげ茶の「どんぐり色」や食べごろを迎えた柿のように紅がかった「照柿色」も、秋の日本の伝統色として親しまれています。

冬の日本の伝統色

冬の日本の伝統色の画像

日本の冬は乾燥しており、地域によっては雪が積もるほど寒さが厳しい季節です。冬を代表する日本の伝統色は、視覚的に寒さを感じさせる寒色が多くなっています。たとえば、淡く暗い色の「銀灰色」や墨より深い黒さを持つ「涅色」、夕暮れどきの雲のように紅を帯びた灰色の「紅碧」などです。ほかにも、淡い青色に白を混ぜたような「白群」や日本の国鳥であるトキのような淡い紅色の「鴇色鼠」が冬の日本の伝統色として知られています。

日本の四季と伝統色の関わりは「日本の季節や気候を外国人に向けて解説!」でも触れています。日本の伝統色と季節の深い結びつきに興味がある方は、あわせてチェックしてみましょう。

初めは4色のみだったとされる日本の伝統色

初めは4色のみだったとされる日本の伝統色の画像

現代では400色以上あるといわれる日本の伝統色ですが、もともと日本語で表せるのは赤・青・黒・白の4色のみだったとされています。日本の伝統色のほとんどは、染色技術が発達したことで生まれました。ここでは、染色技術が発達する前の日本における色の種類が、赤・青・黒・白とされている理由を紹介します。

形容詞として使える色は赤・青・黒・白のみ

「色の名前+い」の形容詞として通じる日本語になるのは、赤・青・黒・白の4色のみです。それぞれ、赤い・青い・黒い・白いというように自然な日本語になります。しかし、ほかの色の場合は茶色い・緑っぽいなど別の言葉を足さなければ不自然です。漢字一文字で表せる色も赤・青・黒・白の4色のみなので、これらは特別な色であり日本最古の伝統色なのではないかとされています。

赤・青・黒・白はそれぞれ対となる色

赤と青、黒と白は対になる日本語の表現を持つ色です。たとえば、物事をはっきりさせたいときに「白黒をつける」といいます。また、日本では赤と青は正反対のイメージを持つ色です。赤は情熱・怒り・ポジティブなどのイメージがある一方、青は冷静・悲しみ・ネガティブといった印象を与えます。

赤と白にも対となる表現があり、日本では2組に分かれて競技を行う際「紅組(赤組)」と「白組」に分かれるのが一般的です。赤と白の組み合わせはお祝いごとにも使われる色で、紅白まんじゅうや紅白なますといった食べ物がふるまわれることもあります。対となる表現やイメージを持つのはこの4色のみなので、日本最古の伝統色は赤・青・黒・白ではないかとされているようです。

赤・青・黒・白に関する日本独特の表現

色を表す言葉が少なかったかつての日本では、赤・青・黒・白で明暗や濃淡も判別していたとされています。日本語に文字がなかった時代の日本では、明るい→赤い、暗い→黒いというように表現していたようです。また、昔は緑色のことを青と呼んでいました。現代でも高齢者を中心に、緑色を指して青といったり未成熟なりんごを青りんごと呼んだりします。

赤・青・黒・白に関する日本独特の表現はほかにもあり、たとえば、「腹黒い」は悪いことを企んでいる人や意地悪な人を表す言葉です。ほかにも「白ける」「赤らむ」といった赤・青・黒・白を含んだ表現が、日本には数多く存在します。

日本の伝統色をおしゃれに取り入れるコツ

日本の伝統色をおしゃれに取り入れるコツの画像

日本の伝統色はバリエーション豊富なため、うまく取り入れればファッションやイラスト、デザインなどをおしゃれにできます。日本の伝統色を取り入れる際は、テーマの統一を意識すると良いでしょう。たとえば、春をテーマに日本の伝統色を取り入れるなら淡いカラーの桜色や薄緑、空色などの組み合わせがおすすめです。指し色として、鮮やかなたんぽぽ色や花萌葱を使うのも良いでしょう。

江戸時代をテーマに日本の伝統色を選ぶ際は、やや暗めで彩度が低い藍色や梅鼠、利休茶などをおすすめします。江戸時代の庶民は倹約が推奨されており、華やかな色合いの着物を身に着けてはいけない決まりがありました。そこで、当時の人々は豪華にならない範囲で「四十八茶百鼠」と呼ばれる灰色や茶色、藍色を基調とした色の種類を作り、おしゃれを楽しむようになったのです。江戸らしい色遣いを取り入れる際は、四十八茶百鼠を意識してみましょう。

まとめ

まとめの画像

日本の伝統色は四季や動植物、風景を表す色として古くから日本人に親しまれてきました。日本語や染色技術の発達とともに日本の伝統色は数を増やしていき、現代では400色以上あるとされています。日本の伝統色の多くは日本の景色や動植物が由来のため、日本文化や日本人との結びつきが強いのです。日本に興味がある方は伝統色への理解も深めておくと、来日した際によりいっそう日本文化や四季を楽しめるでしょう。

ライター

WeXpats
生活・仕事・留学に関するお役立ち情報から、日本のディープな魅力を紹介するコラムまで、バラエティ豊かな記事をお届けします。

Special Features 特集

Top Articles 人気記事

Our Social Media ソーシャルメディア

日本の最新情報を9言語で定期更新しています。

  • English
  • 한국어
  • Tiếng Việt
  • မြန်မာဘာသာစကား
  • Bahasa Indonesia
  • 中文 (繁體)
  • Español
  • Português
  • ภาษาไทย
TOP/ 日本文化を知る/ 伝統文化/ 日本の伝統色は季節・動植物にルーツがある!意味や歴史について

当社のウェブサイトは、利便性及び品質の維持・向上を目的に、Cookieを使用しております。Cookieの使用に同意頂ける場合は、「同意する」ボタンを押して下さい。
なお、当社のCookie使用について詳しくはこちらをご参照下さい。

Cookie利用ポリシー