JLPT(日本語能力試験)のN4を受験したい外国人のなかには、具体的な認定基準やどのような問題が出題されるのかを知りたい人もいるでしょう。N4の認定基準は、「基本的な日本語を理解できる」レベルです。このコラムでは、N1~N5の認定基準を「読む」「聞く」の項目ごとにまとめています。N4の試験問題の例も紹介しているので、参考にしてJLPTに合格するための勉強を行いましょう。
目次
- JLPT(日本語能力試験)とは
- JLPT(日本語能力試験)の各レベルの日本語能力の目安って?
- JLPT(日本語能力試験)N4を取得するメリット
- JLPT(日本語能力試験)N4の合格点と合格率
- JLPT(日本語能力試験)N4の問題例
- JLPT(日本語能力試験)の日程と申し込み方法
- まとめ
JLPT(日本語能力試験)とは
JLPT(日本語能力試験)は、日本語を母語としない人を対象にした、日本語レベルを測る検定試験です。最上級のN1から最下級のN5まで、5段階のレベルで日本語能力を認定しています。試験は年に2回実施され、海外からでも受験が可能です。2019年には国内外で全レベル合わせて約117万人が受験し、そのうち約35%が合格しました。
JLPTの試験は、すべてマークシート方式です。「言語知識」「読解」「聴解」の3パートで構成されており、日本語を書く能力と話す能力を測るパートは含まれていません。
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JLPT(日本語能力試験)の各レベルの日本語能力の目安って?
JLPT(日本語能力試験)には、N1~N5までのレベルがあり、それぞれに認定基準が設けられています。JLPTに合格するには、「読む」「聞く」の項目ごとに、下記の認定基準を満たさなくてはなりません。ここでは、JLPTのN1~N5までの認定基準を紹介します。
N1
N1の認定基準は、「幅広い場面で使われる日本語を理解できる」レベルです。
・読む |
・聞く |
JLPTのN1は、ビジネスの場面でも日本人と問題なく会話ができるレベルです。自然なスピードの会話から、話の内容を詳細に理解することができます。政治や経済について書かれた抽象度の高い文章を読むことも可能です。
N2
N2の認定基準は、「日常的な場面で使われる日本語に加えて、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解できる」レベルです。
・読む |
・聞く |
JLPTのN2は、日常的な会話で困ることはほとんどないレベルです。幅広い場面で使われる日本語もある程度理解できるため、ビジネスの場面でも話の流れや内容を把握できるでしょう。
N3
N3の認定基準は、「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できる」レベルです。
・読む |
・聞く |
JLPTのN3は、日常的な場面であればある程度スムーズにコミュニケーションが取れるレベルです。N1とN2がビジネスでも通用するレベルで、N4とN5が基本的な日本語が分かるレベルのため、N3はその中間の「日常会話を理解できる」レベルとされています。
N4
N4の認定基準は、「基本的な日本語を理解できる」レベルです。
・読む |
・聞く |
JLPTのN4は、分かりやすい言葉や短い文章であれば理解できるレベルです。難しい表現や細かい表現意図を理解するのは難しいこともあります。
N5
N5の認定基準は、「基本的な日本語をある程度理解できる」レベルです。
・読む |
・聞く |
JLPTのN5は、基本的な言葉で書かれた文章であれば理解できるレベルです。定型的な語句や文章以外のものは理解するのが難しい段階といえます。
参照元 日本語能力試験JLPT「N1~N5:認定の目安」
JLPT(日本語能力試験)N4を取得するメリット
JLPT(日本語能力試験)のN4は、「基本的な日本語を理解できるレベル」なので、就職で有利になることはあまりありません。就職や留学に活かすには、概ねN2以上のレベルが必要とされます。
ただし、JLPTのN4以上の取得は、「特定技能」の在留資格の取得条件に含まれています。「特定技能」の在留資格を取得すれば、宿泊施設や介護の現場などで働くことが可能です。そのため、日本での就職においてJLPTのN4を取得するメリットはあります。
JLPTは「読む」「聞く」の項目で認定基準が定められているため、「書く」「話す」の能力は測れません。日本で就職したい外国人は、面接時にコミュニケーション能力をアピールすると良いでしょう。
JLPT(日本語能力試験)N4の合格点と合格率
JLPT(日本語能力試験)N4の合格点・合格率を紹介します。
180点満点で合格点は90点
N4は180点満点の試験で、合格点は90点です。ただし、合格点のほかに、各パートの得点が基準点を超えている必要があるので注意しましょう。基準点は、「言語知識・読解」で38点、「聴解」で19点です。
得点区分 |
得点の範囲 |
言語知識(文字・語彙・文法)・読解 |
120点(基準点38点) |
聴解 |
60点(基準点19点) |
総合得点 |
180点(合格点90点) |
参照元
日本語能力試験JLPT「新しい日本語能力試験(N4、N5レベル)の合格点と基準点を発表します」
合格率は30~43%が目安
N4の合格率は、2019年まではおよそ30~35%でした。ただし、2020年以降はコロナウイルス流行によって受験者数が減少し、合格率が43~50%ほどに上がっています。
【JLPT(日本語能力試験)N4の受験者数・認定者数・認定率】
年 |
受験者数 |
認定者数 |
認定率 |
2021年12月 |
48,511 |
21,073 |
43.4% |
2021年7月 |
41,074 |
20,552 |
50.0% |
2020年12月※ |
52,993 |
23,109 |
43.6% |
2019年12月 |
103,503 |
31,317 |
30.3% |
2019年7月 |
79,731 |
26,065 |
32.7% |
2018年12月 |
76,490 |
26,763 |
35.0% |
2018年7月 |
59,205 |
19,538 |
33.0% |
※コロナウイルス感染症の影響で2022年第一回(7月)の検定は中止
参照元 日本語能力試験JLPT「過去の試験のデータ」
JLPT(日本語能力試験)N4の問題例
ここでは、JLPT(日本語能力試験)のN4の問題例を紹介します。JLPTの試験科目は、言語知識(文字・語彙・文法)と読解、聴解です。それぞれの試験科目の時間配分は、言語知識(文字・語彙)が25分、言語知識(文法)と読解が55分、聴解が35分と決められています。
文字・語彙
N4の文字・語彙の問題例は、以下のとおりです。
問題例1
わたしのせんもんは医学です。
1~4のなかからいちばんいいよみかたをひとつえらんでください。
1.かがく 2.いがく 3.すうがく 4.ぶんがく
問題例2
()しないで、どうぞたくさんたべてください。
()になにをいれますか。1~4のなかからひとつえらんでください。
1.しつれい 2.しっぱい 3.えんりょ 4.はんたい
問題例3
だいどころにりょうりがのこっています。
だいたいおなじいみのぶんを1~4のなかからひとつえらんでください。
1.りょうりはだいどころにまだあります。
2.りょうりはだいどころにもうありません。
3.だいどころでりょうりをつくっています。
4.だいどころでりょうりをよういしています。
問題例4
じゅうしょ
ことばのつかいかたでただしいものを1~4のなかからひとつえらんでください。
1.としょかんのとなりのじゅうしょはゆうびんきょくです。
2.あしたのかいぎのじゅうしょは5かいです。
3.ここにあなたのうちのじゅうしょをかいてください。
4.わたしにEメールのじゅうしょをおしえてください。
文字・語彙の項目では、漢字の読み書きや言葉の使い方に関する問題が出題されます。
文法
N4の文法の問題例は、以下のとおりです。
問題例1
A「わたしのけしゴム見ませんでしたか。」
B「あ、つくえの下に()よ。」
()に何を入れますか。1~4から一つえらんでください。
1.おちています 2.おちていません 3.おちます 4.おちません
問題例2
山田さんは△★△△です。
★に入るものはどれですか。1~4のなかから一つえらんでください。
1.上手 2.ギターも 3.ひけるし 4.歌も
N4の文法の項目では、言葉の並び替えや正しい文法の使い方に関する問題が出題されます。
読解
N4の読解の項目の問題例は、以下のとおりです。
「中野コーヒー」では、インターネットでコーヒーを買うことができます。コーヒーを送ってもらうには、普通200円かかりますが、500グラム以上頼むと、ただになります。そして500グラム以上買うと、200円安くなります。
インターネットで、「中野コーヒー」から100グラム400円のコーヒーを500グラム買いたいです。いくらになりますか。A~Dのなかから一つ選んでください。
A.1,700円 B.1,800円 C.2,000円 D.2,200円
N4の読解の項目では、記載されている短文や中分の内容に関する質問をされます。文章の内容と質問の意味を理解して、正しいものを選びましょう。
聴解
N4の聴解の問題には、録音で質問を聞いてから本文を聞き、問題用紙に書いてある文章のなかから正しいものを選択する形式と、問題用紙に書いてある絵をみながら答えを選ぶ形式があります。本文も質問も録音で聞いて答えるため、短い発話を聞いてポイントを理解し、適切な答えを選ぶ能力が必要です。
「JLPT(日本語能力試験)の過去問や認定の目安をレベル別に紹介」では、N1~N5の過去問を「文字・語彙」「文法」の項目ごとに紹介しています。申し込み方法や、JLPTのレベル別認定基準についても知ることができるので、ぜひ参考にしてみてください。
参照元
日本語能力試験JLPT「新しい「日本語能力試験」問題例集」
JLPT(日本語能力試験)の日程と申し込み方法
JLPT(日本語能力試験)は、例年7月と12月の年2回開催されており、申し込みはインターネットから可能です。ここでは、JLPTの日程と申し込み方法の詳細を紹介します。
試験日程
JLPTは例年第1回が7月、第2回が12月に開催されます。試験日程は、日本国際教育支援協会のWebサイトに記載されているため、事前に確認しましょう。
申し込み方法
JLPTの申し込み方法は、海外で受験する場合と日本で受験する場合で異なります。
海外で受験する場合
JLPTを海外で受験する場合は、試験を受けたい国や地域の実施都市を調べて、実施機関に申し込み方法を確認します。第1回の試験を実施している都市でも、第2回は実施していない可能性もあるため注意しましょう。受験案内を受け取ったら、実施機関の指示に従って申し込み手続きを行います。受験料の支払い後、実施機関から受験票が届くので試験当日まで大切に保管しましょう。
日本で受験する場合
JLPTを日本で受験する場合は、日本国際教育支援協会のWebサイトから申し込みを行います。日本国際教育支援協会のWebサイトから「MyJLPT」の登録を行い、受験申込情報を入力して受験料の支払いを済ませたら、申し込み完了です。なお、2020年から郵送での申し込みを廃止しているため、注意しましょう。
受験票が届いたら、試験当日まで保管しておきます。
「JLPT(日本語能力試験)の申し込み方法や期間を外国人に向けて解説」では、JLPTの申し込み方の詳細や時期、N1からN5までの認定基準を解説しています。参考にして申し込み手続きを行いましょう。
参照元 日本語能力試験JLPT「海外で受験する」 日本語能力試験JLPT「日本で受験する」
まとめ
JLPT(日本語能力試験)のN4の認定基準は、「基本的な日本語を理解できる」レベルです。JLPTの試験科目には、言語知識(文字・語彙・文法)と読解、聴解があります。レベルによって時間配分や出題される問題が異なるため、試験対策を行いN4の取得を目指しましょう。