日本語を学ぶ外国人のなかには、「敬語の種類や使い方を知りたい」「どのような場面で使うの?」と思う方もいるでしょう。日本語の敬語には「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」があり、敬意を表す対象によって使い分けます。このコラムでは、日本語の敬語の種類とその概要を詳しく解説。日常的に使われる敬語や間違えやすい表現についてもまとめているので、参考にして正しい敬語を使いましょう。
目次
- 日本語の敬語とはどのようなもの?
- 日本語の敬語の3つの種類
- 日常的に使われる日本語の敬語
- 「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」を使い分ける方法
- 日本語の二重敬語に注意しよう
- 日本語の敬語の良いところ
- まとめ
日本語の敬語とはどのようなもの?
日本語の敬語とは、相手に対して尊敬する気持ちを表すための言葉です。主に、目上の人や初対面の人と会話をするときに使います。とくに、ビジネスの場では社会人として敬語で会話をするのがマナーです。ときには、尊敬する気持ちよりも、相手の立場を認めることが求められる場面もあります。相手をどれだけ尊敬しているかではなく、礼儀として敬語で会話をすることが大切です。
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日本語の敬語の3つの種類
日本語の敬語の種類は、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3つです。ここでは、それぞれの敬語の意味や使い方を紹介します。
1.尊敬語
尊敬語とは、相手に対して敬意を示す敬語です。具体的には、動詞に「れる」「られる」「お~になる」が付くものや、「先生」「~様」など名詞自体が尊敬の意味を持つものを指します。また、形容詞が変化する場合もあり、「お元気」「ご親切」などがその一例です。形容詞に「お」や「ご」が付くことで、相手に対して敬う気持ちを表現できます。
2.謙譲語
謙譲語とは、相手を立てるためにあえて自分自身の立場を下げる表現方法です。「お持ちする」「ご紹介する」など、動詞が「お~する」「ご~する」に変化するものがあります。また、尊敬語とは反対に、「わたくし」「家内」などの表現で名詞自体を低めることも可能です。
3.丁寧語
丁寧語とは、丁寧な表現で相手への敬意を表す敬語です。文末に「です」「ます」「ございます」などを付けます。丁寧語のなかには「美化語」と呼ばれるものもあり、「お花」や「ご飯」などがその一例です。名詞に「お」や「ご」を付けて、ものごとに対して上品な表現をします。
丁寧語は、相手を選ばずに日常的に使えるのが特徴です。
日本の敬語の種類については、「日本の敬語の種類って?外国人に向けて使い分けを解説」でも詳しく紹介しています。ぜひチェックして、敬語への理解を深めましょう。
日常的に使われる日本語の敬語
ここでは、日常的に使われる日本語の敬語を「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」で表します。尊敬語や謙譲語は、もとの形と異なる言い方をする場合が多いので注意しましょう。
行く・来る
尊敬語にすると「いらっしゃる」「おいでになる」、謙譲語にすると「参る」「伺う」です。なお、丁寧語の場合は動詞自体の形は変わらず「行きます」「来ます」と表現します。
「いらっしゃる」「おいでになる」の例文
授業参観には多くの親御さんがいらっしゃいます。
お客様がおいでになります。
「参る」「伺う」の例文
書類を受け取りに参ります。
明日、取引先の会社へ伺います。
「いらっしゃる」「おいでになる」は、どちらも「行く・来る」の尊敬語です。また、「居る」の意味で使うこともできます。なお、「参る」は聞き手に対して敬意を表す表現で、「伺う」は自分が行く先の場所にいる相手に対して敬意を示す表現です。
見る
見るの尊敬語は「ご覧になる」、謙譲語は「拝見する」、丁寧語は「見ます」です。
「ご覧になる」の例文
こちらの資料をご覧になりますか。
「拝見する」の例文
いただいたお手紙を拝見しました。
「ご覧になる」は相手が見る場合に使い、「拝見する」は自分が見る場合に使います。そのため、相手に対して「拝見しましたか」と言ったり、自分が見たことに対して「ご覧になりました」と言ったりするのは誤った表現です。
食べる
尊敬語では「召し上がる」、謙譲語では「いただく」、丁寧語では「食べます」と表現します。
「召し上がる」の例文
よろしければご家族で召し上がってください。
「いただく」の例文
お菓子をいただきます。
「召し上がる」は尊敬語のため、目上の人やお客様に対して使います。「召し上がってください」「召し上がりましたか」が正しい表現です。「どうぞいただいてください」「お昼ご飯はいただきましたか」などと、誤った表現をしないように注意しましょう。
言う
言うの尊敬語は「おっしゃる」、謙譲語は「申す」です。丁寧語で話すときは「言います」を使いましょう。
「おっしゃる」の例文
お客様がおっしゃることはよく分かります。
「申す」の例文
弊社の社長が明日の会議に出席すると申していました。
取引先の相手と会話をするときは、「社長が申しています」「部下の△△と申します」などと自社を下げて相手を立てる表現をします。なお、会話をしている相手に敬意を示すときは「△△さんのおっしゃる通り」と相手を敬う表現をしましょう。
知る
尊敬語にすると「ご存じ」、謙譲語にすると「存じる」「承知する」です。丁寧語では、「知っています」と表します。
「ご存じ」の例文
あの方の名前をご存じですか。
「存じる」「承知する」の例文
お教えいただいた内容はすでに存じております。
ご迷惑をおかけしていることは承知しております。
謙譲語の「存じる」「承知する」にも、細かな違いがあります。「存じる」は物事を知っているときに使い、「承知する」は状況を知っているときに使うのが一般的です。たとえば、ニュースを知っていると伝えるときは「存じています」、自分の事情や相手の事情を理解しているときは「承知しています」を使います。
会う
会うの尊敬語は「お会いになる」、謙譲語は「お目にかかる」、丁寧語は「会います」です。
「お会いになる」の例文
△△さんにはお会いになりましたか。
「お目にかかる」の例文
△△様にお目にかかることができて光栄です。
「お目にかかる」とは、「目に留まる」「目につく」と同様の意味です。相手の目に映ることを謙遜した表現として使われるため、目上の相手に会うときに使います。
する
するの尊敬語は「なさる」、謙譲語は「いたす」、丁寧語は「します」です。
「なさる」の例文
今週末は何をなさるのですか。
「いたす」の例文
詳細が分かり次第連絡いたします。
日常的によく使われる「いかがなさいますか」と「いかがいたしますか」は、主語が異なります。「いかがなさいますか」は、目上の人に対してどうしたいかを聞くときに使う表現です。一方、「いかがいたしますか」は、自分が相手に何をしたら良いかを聞くときに使います。尊敬語と謙譲語の違いを理解して、正しく使い分けましょう。
「面接前に正しい敬語を知りたい!外国人に向けてNG例や注意点を解説」では、敬語のマナーや間違えやすいNG例を紹介しています。正しい敬語を使用すると、好印象を与えやすく日本語スキルのアピールにも繋がるので、ぜひ参考にしてください。
「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」を使い分ける方法
日本語の敬語の種類を正しく使い分けるには、「誰に」敬意を表すのかを考えることが重要です。動作を行う人に敬意を表す場合は「尊敬語」を使い、動作を受ける人に敬意を表す場合は「謙譲語」を使います。なお、「丁寧語」は「尊敬語」や「謙譲語」ほどかしこまった敬語ではなく、場面や人を問わずに使える敬語表現です。ビジネスの場で目上の人と会話をするときは、「尊敬語」もしくは「謙譲語」を使いましょう。
日本語の二重敬語に注意しよう
目上の人に対して丁寧な敬語を使おうとして、二重敬語を使用してしまうケースがあります。二重敬語は相手に失礼な印象を与えるため、使わないように注意しましょう。
二重敬語とは
二重敬語とは、同じ種類の敬語が重なる言葉のことです。たとえば、「お帰りになられます」は「お帰り」と「られる」が尊敬の意味を持つため、二重敬語に該当します。「られる」は受け身や可能、自発に加えて尊敬の意味もあるので、ほかの尊敬語と一緒に使えません。「られる」に加えて、「させていただく」も二重敬語の代表格といえます。「させていただく」は、自分を下げて相手を立てる謙譲語です。そのため、「させていただく」とほかの謙譲語を組み合わせることはできません。具体的には、「拝見させていただく」や「伺わせていただく」などです。これらは、「拝見」と「伺う」の謙譲語に「させていただく」が付いているので、正しい敬語表現ではありません。
二重敬語は丁寧な表現にも思えますが、日本語の文法として誤ったものです。
二重敬語の例
二重敬語のなかでも、接客時に使用してしまいがちな表現を紹介します。
・「こちらのメニューはご覧になられましたか。」
・「お客様がお越しになられました。」
・「お客様のおっしゃられる通りでございます。」
・「お決まりの頃にお伺いさせていただきます。」
・「お客様の履歴を拝見させていただきました。」
「ご覧になられましたか」は「ご覧になる」と「なられる」がどちらも尊敬語のため、二重敬語に該当します。この場合、「ご覧になりましたか」が正しい表現です。
なお、前述したとおり「拝見」と「伺う」は謙譲語なので、「させていただきます」と組み合わせることはできません。正しくは、「お伺いいたします」「拝見いたします」です。
日本語の敬語の良いところ
敬語は、相手に対して敬意を表すことができる言葉です。正しい敬語を使うことで、相手の立場を理解していることや一般的な常識を持っていることをアピールできます。また、日本語の敬語は、話しづらい内容を伝えるときにも便利です。たとえば、誘いを断るときや何かを依頼するときでも、丁寧な敬語を使えば相手を不快な気持ちにさせずにすみます。日本語の敬語とは、相手を気遣いながら自分の意見や願望を伝えられる表現方法です。
まとめ
日本語の敬語とは、相手に対して尊敬する気持ちを表すための言葉です。「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類があり、相手の立場や場面によって正しく使い分ける必要があります。ビジネスの場や初対面の人と会話をするときは、正しい敬語を使い相手に良い印象を与えましょう。
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