聞いたことのあるビジネス用語でも、実は本来の意味が分かっていないという方は多くいます。
意味が分からないまま使うと、コミュニケーションがスムーズにいかず、業務上のトラブルのもとになるので十分注意しましょう。
このコラムでは仕事に役立つ日本語のビジネス用語を解説。仕事上のやり取りで活かせるように、日本語の細かい違いや和製英語を使ったビジネス用語の意味も紹介します。
目次
日本語のビジネス用語
日本のビジネスの現場ではさまざまなビジネス用語が使われています。しかし、ビジネス用語を人から教わる機会はほとんどないため、自分から積極的に勉強しなければなりません。円滑に業務を進めるために日本語のビジネス用語を覚えましょう。
ヒヤリハット
ヒヤリハットは、「ヒヤリとした」「ハッとした」という言葉が語源のビジネス用語です。大きな事故や問題にはならなかったものの、一歩間違えば取り返しのつかない自体になっていたかもしれない事象を指します。製造業や建設業、医療・福祉の仕事など危険を伴う現場で使われることが多いです。実際のビジネスの場面では、「最近あったヒヤリハットをまとめよう」「ヒヤリハット報告のおかげで対策を考えられる」というように使います。
なるはや
「なるはや」は「なるべく早く」を省略した日本語のビジネス用語です。依頼した内容を早めに仕上げてほしいときや、自分が急いで仕事に取り組むときに使います。なるはやはビジネスの場に限らず、日常的に使われるビジネス用語です。ただし、丁寧な言い方ではないため目上の人や取引先に使ってはいけません。部下や同僚に対して「なるはやでお願いします」「締め切りが近いからなるはやで」というように使いましょう。
費用対効果
「費用対効果」はコストに対する利益を表す日本語のビジネス用語で、コストパフォーマンスやB/Cと同じ意味です。コストを掛けずに大きな利益を得た場合に「費用対効果が高い」といいます。マーケティングに関わる仕事をしている方は、特に耳にする機会の多いビジネス用語でしょう。
落とし込む
ビジネス用語のなかに、「落とし込む」という言葉があります。「反映する」「まとめる」という意味のビジネス用語で、会議や資料作成において使われることが多いです。たとえば、「今の内容議事録に落とし込んでほしい」と言われたら「まとめる」の意味になります。「納品スケジュールが出たから共有カレンダーに落とし込んで」といわれた場合は「反映させる」という意味です。
落とし込むに似た言葉に「落としどころ」という日本語のビジネス用語がありますが、こちらは妥協点という意味なので間違えないように注意してください。
各位
関わっている人数が多く人名を記載するのが難しいときに、「各位」というビジネス用語を使います。各位は複数の人物に対して経緯を払った表現で、ビジネスメールの冒頭に書くことが多いです。尊敬表現のビジネス用語なので敬称をつける必要はありません。しかし、人によっては「各位を目上の人に使うのは失礼」と感じることがあります。不安な場合は「~課長 各位」というように目上の人を分けて記載しましょう。
ご査収
「ご査収」は文面上のやり取りでよく使われる日本語のビジネス用語です。似たような言葉に「ご確認」というビジネス用語があり、受け取るものがあるかどうかで使い分けられています。契約書や見積書、プロジェクトの計画表など相手に内容をしっかり確認して受け取ってほしい場合は、ご査収を使うのが正しいです。一方、ご確認は添付書類の有無に関わらず使える万能なビジネス用語といえます。日本のビジネスの場では、状況に応じて正しい言葉を選択できる社会言語能力が重要です。ご査収という言葉を使うときは、相手に渡す添付書類があることを確認しましょう。
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ご了承・ご理解・ご容赦の違い
日本語のビジネス用語には、微妙にニュアンスの異なる似たような言葉が存在します。特に「ご了承」「ご理解」「ご容赦」は使い分けが難しく、違いが分からずに混乱する方もいるでしょう。まず、ご了承はまだ始まっていないことに対して、事前に相手の理解や許しを求めるビジネス用語です。「購入後のキャンセルは承っておりませんので、あらかじめご了承ください」というように使います。
「ご理解」はすでに起きている物事に対して、自分の事情を汲んでほしいときに使うビジネス用語です。たとえば、「△日より弊社の営業時間が午前9~午後5時に変更されます。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんが、なにとぞご理解ください」といった使い方をします。
「ご容赦」は終わったことに対して理解や許しを求めるビジネス用語で、謝罪の気持ちを含んだ表現です。「行き違いでご連絡をいただいておりましたらご容赦ください」というように使うことが多いでしょう。タイミングによってどのビジネス用語を使うのが適切かを把握しておくと、普段の仕事に役立ちます。
英語を取り入れた日本語のビジネス用語
日本語のビジネス用語のなかには、英語を取り入れたものもあります。
エビデンス
「エビデンス」は英語の「evidence」と同じく、証拠・物証という意味で使われるビジネス用語です。日本のビジネスの場では、「この資料のエビデンスは何?」「エビデンスがある提案です」という使い方をします。主張の正当性を証明するために利用する公的書類や科学的根拠、権威性のあるサイトのデータをエビデンスということが多いです。業界や会社によって細かいニュアンスが異なるため、使う際は注意しましょう。
コンセンサス
「コンセンサス」は英語の「consensus」が語源の日本語のビジネス用語です。複数人の意見が一致し、合意が取れている様子を表します。日本のビジネスの現場では、トラブルにならないように事前にコンセンサスを取ることが大切です。言葉を聞いてすぐに対応できるように、覚えておくと良いでしょう。「先ほどの会議でコンセンサスが取れた」「先方からのコンセンサスがほしい」など、あらゆる場面で使われています。
PDCA
「Plan」「Do」「Check」「Action」の頭文字を取って省略した日本語のビジネス用語です。「PDCA」は海外ではあまり使われません。初めて聞いたときに「どういう意味?」と疑問に思う方も多いでしょう。PDCAとは計画を立てて実行し、内容を評価して悪いところを改善するという意味を持つビジネス用語です。繰り返し行うことで業務の品質を高めるとされており、日本のビジネスの現場では「PDCAサイクルを回す」というように使われています。
AIDMA
「AIDMA」はアメリカ発祥のビジネス用語で、日本のマーケティング業界でも使われています。「Attention」「Interest」「Desire」「Memory」「Action」の頭文字を省略したビジネス用語で、消費者の購買行動の過程を説明する代表的な言葉です。「AIDMAに沿って広告を作成する」「商品の売り上げを伸ばすにはAIDMAを重視する必要がある」というように使われることが多いでしょう。
コンプライアンス
英語の「compliance」と似た意味を持つ日本語のビジネス用語が「コンプライアンス」です。英語の場合は法令遵守という意味ですが、日本語では企業活動における法令や倫理観、公序良俗など社会的ルール全般に対して公正・公平さを保つことを表します。「コンプライアンス教育を徹底する」「コンプライアンス違反」という使い方をすることが多いです。言葉を省略して「コンプラ」という人もいるので、あわせて覚えておきましょう。
サマリー
要約や概要という意味の日本語のビジネス用語には「サマリー」があります。日本では会議の議事録や報告書、提案内容をまとめた資料をサマリーということが多いです。「会議のサマリーを共有して」「取引先に提案する内容のサマリーをください」というように使います。
BtoB(BtoC)
日本語のビジネス用語で、企業間取引を「BtoB」企業と消費者の取引を「BtoC」といいます。BtoB とBtoCの相違点はマーケティング手法やブランド意識、取り扱い商品などです。似たようなビジネス用語でも意味が大きく異なるため、間違えて使わないように注意しましょう。日本のビジネスの現場では、「BtoB企業向けのマーケティング戦略を考える」「自社のBtoC販売に力を入れる」というように使われます。
ビジネス用語の多用には注意
業務を円滑に進めるのに役立つビジネス用語も、多用しすぎるとかえって意図が伝わりにくくなることがあります。たとえば、「バジェット不足でコンセンサスが取れなかったから、あの案件はペンディングになった」と言われても、すぐに意味を理解するのは難しいでしょう。
ビジネス用語は正しく使えばコミュニケーションを円滑にする優れた言葉です。しかし、専門用語よりも一般的な日本語を使ったほうが分かりやすい場面もあります。ビジネス用語を覚えたからといって多用せず、誰にでも分かる表現を心掛けましょう。
まとめ
日本語のビジネス用語は複雑なニュアンスを含む言葉が多く、覚えておくと仕事上のコミュニケーションに役立ちます。しかし、ビジネス用語の多用は意図が伝わりにくくなったり、人を不快にさせたりするデメリットがあるので、使う際はほどほどにしたほうが良いでしょう。このコラムを参考に、日本語のビジネス用語の意味や使い方のコツを学んでください。