在留資格「介護」を持つ外国人の採用について、最新情報を解説

2020年11月11日
石澤扶有子 (監修)
行政書士事務所リーガルプランニング
申請取次行政書士、特定行政書士。大手IT企業で初の法務専任者として入社後、法務担当課長、グローバルコンプライアンス担当マネージャーを経て独立。20年以上に渡る企業法務の知識と経験を活かし、主に企業やスタートアップを対象に外国人材の受入れ支援、契約書の作成・レビュー、創業支援、事業承継(M&A)などを行っている。 http://www.legalplanning.jp/greeting

日本では少子高齢化と人口減少により、働き手が少なくなっています。特に地方や「介護」などの特定の業種で人手不足が深刻です。2025年以降は現役世代の人口が急減し、2040年には高齢者数がピークを迎えることからも、人手不足は今後も課題である。日本政府は「高齢者の急増と現役世代の人口急減」の状況でも「質の高い医療」を提供できるように、外国人介護職員の受入れを積極的に増やす方針を打ち出し、2017年(平成29年)には在留資格「介護」が新設されました。就労できる介護サービスの制限がなく、長く日本に滞在できる在留資格です。今後一層、介護現場における外国人労働者の活躍が予想されます。

参照:厚生労働省 社会保障審議会「今後の社会保障改革について ー 2040年を見据えて ー」p.3
厚生労働省「介護福祉士資格を取得した留学生に対する在留資格「介護」の創設について」

在留資格「介護」ができた理由

・2025年問題・2040年問題

2025年と2040年、日本の人口構造の大きな変化を迎えます。2025年には団塊の世代が75歳以上となり、2040年には団塊ジュニア世代が全て65歳になります。戦時体制のもと、産めよ増やせよで人口を増や過ぎた日本は、1945年の敗戦後、植民地や戦地からの帰還者とベビーブームで一気に人口過剰になりました。その時生まれたのが「団塊の世代」で、その子ども世代が「団塊ジュニア世代」です。「団塊の世代」と「団塊ジュニア世代」は日本の中で特に人口の多い世代ですので、その世代が介護が必要になる2025年と2040年は大きなターニングポイントになります。働く現役世代の人口が急激に減少する中で、質の高い医療福祉の提供を行うための対策が進められています。

参照:厚生労働省 社会保障審議会「今後の社会保障改革について ー 2040年を見据えて ー」p.3
内閣府「日本の人口推移の実態と少子化の原因」

・深刻な人手不足

以前より、介護現場における人手不足が問題になっていました。2000年以降、75歳以上年齢が急速に増加し、今後さらに75歳以上人口が増加することで、介護現場の人手不足が今以上に深刻化すると予測されています。また、介護現場の人手不足の状況には地域差もあります。地域により高齢化の状況が違うということも介護現場の人手不足の特徴です。日本全国で必要な介護人材は2020年末で約216万人で、さらに2025年には約245万人が必要ですが、日本国内だけでは介護人材を集めることは難しい状況です。日本政府は、介護職員の待遇改善による離職防止や生産性の向上とともに、外国人労働者の受入れ拡大で介護現場の人手不足に対処する方針をとっています。

参照:厚生労働省「福祉・介護人材確保対策について(令和元年9月18日)」

・外国人留学生の就職支援

日本国内の高等教育機関で介護・福祉を学ぶ外国人留学生の就職支援のためという理由もあります。日本国内の大学や専門学校で学び介護福祉士の資格を取得した外国人留学生がいます。その外国人留学生のために、在留資格「介護」が創設されました。

参照:厚生労働省「在留資格『介護』の創設」

在留資格「介護」

・業務範囲

在留資格「介護」は、就労できる介護サービスの種類に制限はありません。なぜなら、在留資格「介護」取得者はすでに、日本国内の介護福祉士資格を取得しており、高い日本語能力基準を持っているからです。在留資格「介護」を持つ外国人労働者はすぐに配置基準に含めることができます。一方で、「介護」以外の在留資格では、訪問介護などのサービスに制限があったり、雇用する事業所に金銭的な負担や労力等、一定以上の水準が求められたりします。そのため、「介護」以外の在留資格取得者も介護福祉士の資格を取得して、業務上の制約が少なく長く働くことができる「介護」に在留資格を変更する方法もとられています。

参照:厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」

・介護のサービスの種類

日本の介護サービスは大きく「居宅サービス」と「施設サービス」に分けられます。

居宅サービス

在宅生活の被介護者に対して訪問介護者などが居宅を訪問して行うサービスです。

①訪問介護(ホームヘルプサービス)

②訪問入浴介護

③訪問看護

④訪問リハビリテーション

⑤居宅療養管理指導

⑥通所介護(デイサービス)

⑦通所リハビリテーション(デイケア)

⑧短期入所生活看護(ショートステイ)

⑨短期入所療養介護(ショートステイ)

⑩特定施設入所者生活介護

⑪福祉用具貸与

⑫特定福祉用具販売

⑬住宅改修(リフォーム)

⑭居宅療養管理指導

⑮居宅介護支援事業(ケアマネージャー)

施設サービス

以下の2つの施設で行われるサービスです。「介護療養型医療施設」は2017年度末に廃止されています。

①介護老人福祉施設

②介護老人保健施設

地域密着型サービス

認知症高齢者を対象とするグループホームなど、日常生活圏を離れずに自立した生活ができるよう支援するサービスです。役割として、居宅サービスと施設サービスの中間に位置しており、居宅・通所・入所のサービスを兼ね備えています。

①小規模多機能型居宅介護

②夜間対応型訪問介護

③定期巡回・随時対応型訪問介護看護

④認知症対応型通所介護

⑤認知症対応型共同生活介護

⑥地域密着型特定施設入居者生活介護

⑦地域密着型介護老人福祉施設入居者生活介護

⑧看護小規模多機能型居宅介護

⑨地域密着型通所介護

・在留資格「介護」の取得要件

日本の介護現場では深刻な人手不足が続いています。しかし、人命に関わるため質の高い介護を維持する必要があります。在留資格「介護」は、従事する介護サービスの種類に制限のない在留資格です。そのため、日本の介護福祉士試験に合格するだけの介護に関する知識や日本語能力が求められます。2020年(令和2年)4月1日からは、在留資格「介護」を取得するための介護福祉士の取得ルートが緩和されていますので以前よりも取得しやすくなりました。

参照:法務省「在留資格 介護」

出入国在留管理庁「在留資格「介護」の上陸基準省令の見直し」

・在留期間

5年,3年,1年 又は3月の在留期間があります。期間が限定されている技能実習や特定技能とは違い、取得要件を満たした外国人労働者が望み、更新の手続きを行えば永続的な就労が可能です。

参照:厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」

その他の介護職の外国人採用

医療や福祉の現場で働く外国人労働者は年々増加しています。介護・福祉の現場で働く外国人労働者は16,678人、外国人労働者を受け入れている事業所も6,510事業所にのぼります。日本政府の政策により、介護・福祉の現場で働く外国人労働者は、様々な在留資格をもち働いています。

・身分に基づく在留資格

「永住者」や「日本人の配偶者や子ども、特別養子」、「永住者の配偶者や子ども、特別養子」、「定住者」などが該当します(※14)。特に業務の制限などがないため、医療福祉の現場で働く外国人労働者の中では一番人数が多い状態です。

・特定活動(EPA)

日本はインドネシア、フィリピン、ベトナムとの経済連携協定により特例として介護士を受け入れています。在留資格「特定活動」で来日する外国人労働者は出身国ですでに介護の資格や実務経験があります。この在留資格は、人手不足解消のためではなく、あくまでも経済連携強化を目的としています。

・技能実習

技能実習制度とは、開発途上国支援のためにできた制度です。2017年(平成29年)から新たに技能実習に介護職種が追加されました。あくまでも出身国へ介護に関する知識や技術を移転することを目的とする在留資格です。

・特定技能1号

人手不足解消のために、在留資格「特定技能」が創設されました。この特定技能の中に介護職種があります。介護に関する知識や技能と、日本語能力の水準を試験などで審査を受けて日本で働きます。

・資格外活動(留学生のアルバイトなど)

資格外活動とは、本来の在留目的とは違うけれどもその在留目的を阻害しない程度で就労できる制度です。留学生や日本で働く外国人の家族のアルバイトが該当します。

参照:厚生労働省「外国人雇用状況(平成30年10月末現在)」[参考-2]
厚生労働省「外国人雇用状況(平成30年10月末現在)」別表4
厚生労働省「外国人雇用状況(平成30年10月末現在)」別表
出入国在留管理庁「在留資格一覧」
厚生労働省「経済連携協定に基づく受入れの枠組」
厚生労働省「外国人介護人材受入れの仕組み
法務省「資格外活動許可について」

まとめ

介護現場は長く人手不足の状態が続いています。さらに、今後一層の高齢者の急増と、現役世代の人口減少が見込まれます。日本政府は在留資格「介護」の新設などの制度を整え、外国人労働者の受入れ拡大政策を進めています。介護現場で活躍している外国人労働者は様々な在留資格を持っていますが、その中でも在留資格「介護」は、就労できる介護サービスの制限なく、長く日本国内で働くことができる在留資格という特徴があります。外国人労働者の採用の際には是非、在留資格「介護」をご検討ください。