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2019年に在留資格「特定技能」が創設されたことで、介護施設での外国人雇用のハードルが低くなりました。外国人介護士の採用は人材不足を解消する有効な手段の一つです。
介護業界で働ける主な在留資格は、「EPA介護士福祉士候補者・介護福祉士」「介護」「技能実習」「特定技能」の4つ。それぞれ、受け入れ方法や雇用方法に違いがあるので、特徴を見極めたうえで、どの在留資格を持つ外国人を雇用するか決める必要があります。
この記事では、介護にまつわる4つの在留資格を比較して紹介。参考にして、優秀な外国人材の獲得に向けて準備を始めましょう。
目次
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外国人介護士が増えているのを実感している方も多いのではないでしょうか。厚生労働省の「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」によると、社会保険、社会福祉、介護事業関連の職場で働いている外国人労働者の人数は6万6660人でした。詳しい職種の内訳までは公表されていませんが、多くを介護従事者が占めていると考えられます。
以下は介護業界で就労可能な各在留資格の在留者数です。それぞれ調査年月が異なるため、参考程度にご覧ください。
このほかに、「永住者」や「定住者」といった身分に基づく在留資格や、「留学」の在留資格のもとアルバイトで働いている外国人もいます。
関連記事:「外国人との異文化コミュニケーションに必要なこと|心構えや失敗例も」
参照元 厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」 出入国在留管理庁「外国人技能実習制度について」 出入国在留管理庁「令和5年6月末現在における在留外国人数について」 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表等」 厚生労働省「外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いについて(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)」
外国人が介護士として働くためには、適切な在留資格を取得しなくてはなりません。在留資格とは、外国人が日本で活動するために必要な資格のことです。就労に関する在留資格は、「就労ビザ」とも呼ばれます。
介護職の場合は、基本的に「介護」「特定活動(EPA介護福祉士候補者・介護福祉士)」「技能実習」「特定技能1号」のいずれかの在留資格が必要です。それぞれ業務の範囲や働ける期間、採用方法が異なるので、内容を把握したうえでどの種類の在留資格を持つ外国人を採用するかを決めましょう。
ここでは、各在留資格の概要と企業が雇用する方法を紹介します。
在留資格「介護」は介護福祉士の国家資格を取得した外国人に付与されます。取得するルートは、「介護福祉士養成施設で2年以上学んでから介護福祉士の資格を取得する」「ほかの在留資格で実務経験を3年以上積み、介護福祉士の資格を取得する」の二通りです。
※2017年4月~2027年3月までに養成施設を卒業している場合、経過措置の対象として国家試験に合格していなくても介護福祉士の資格取得者として扱われます。卒業後5年以内に国家試験に合格するか、5年間連続して実務に従事することで、その後も介護福祉士資格を保持でき、在留資格「介護」での在留が可能です。
外国人は基本的に、日本語能力試験(JLPT)N2相当の日本語能力がなければ、介護福祉士養成施設に入学できません。そのため、在留資格「介護」を持つ外国人は高い日本語能力を有しているといえるでしょう。
養成施設での学習や実務経験から高い専門性を身に付けており、夜勤や訪問介護サービスへの従事もできます。雇用してすぐに配置基準の人員の対象となるのも特徴です。
在留資格「介護」は更新回数の制限がありません。長期的に日本で働き続けられ、将来的には永住者となる道もあります。
外国人が介護福祉士の国家資格を取得するのは簡単なことではありません。その難関を突破しているため、優秀な人材が多いのが特徴です。ほかの外国人の教育係をしたりケアマネジャーを取得したりする人もいます。
即戦力を求める施設の場合は、在留資格「介護」を持つ外国人の雇用を検討すると良いでしょう。
在留資格「介護」を持つ外国人を雇用する場合、サポートする関係機関が少ないので企業から求職者へ働きかけなくてはなりません。また、高い専門性を有することから競争率が高い傾向にあります。
スムーズなのは、専門学校や大学などの介護福祉士養成施設と連携し、アルバイト先や実習先として外国人を受け入れたり新卒の求人を出したりする方法です。卒業前から連携が取れていれば、資格取得後にそのまま働いてもらえる可能性が高くなるでしょう。外国人留学生向けに奨学金を支給して、雇用につなげる介護施設もあります。
また、人材紹介会社や外国人専用の求人サイトを利用し、中途で採用するのも一つの方法です。
外国人介護士の働きやすい職場作りや研修制度を整備し、適切な報酬や福利厚生を用意することで、経験豊富な人材を雇用できる可能性が高まるでしょう。
外国人特化の人材紹介サービス「WeXpats Agent」では、外国人一人ひとりと面談を行い、適性を見極めて企業さまへのご紹介を行っています。各在留資格の違いについても、知識が豊富な担当者が親身にご説明いたしますので、ご安心ください。
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在留資格「特定活動」は行う活動によって種類が異なり、そのうち「EPA介護福祉士候補者・介護福祉士」の2種類は介護士としての業務が許可されています。EPA介護福祉士候補者とは、経済連携協定のもと日本の介護施設で働きながら介護福祉士を目指す外国人のことを指します。EPA介護福祉士候補者は、協定を結んでいるフィリピン、インドネシア、ベトナムからのみ受け入れ可能です。
母国で学歴や資格の条件を満たしたあと、各国ごとに定められた日本語能力の基準に合格した外国人がEPA介護福祉士候補者として入国できます。その後、日本での研修を終えたあとに介護事業所での就労が可能です。
4年間(条件を満たせば1年延長)のうちに、介護福祉士の国家資格に合格できれば「介護」に在留資格が変更でき、日本で引き続き働けます。なお、不合格の場合は「一度帰国して再度介護福祉士を目指す」か「在留資格「特定技能」に移行する」といった対応が必要です。
介護福祉士の資格を取得するまでは、介護保険3施設、認知症グループホーム、特定施設、通所介護、通所リハ、認知症デイ、ショートステイで勤務します。資格取得後は、条件を満たした事業所の訪問系サービスへの従事も可能です。
2024年度の介護報酬改定により、EPA介護福祉士候補者も施設側が能力的に問題ないと判断すれば、雇用直後から人員配置に含められるようになりました。これまでの制度では日本語能力試験N2以上に合格していない場合、雇用後6ヶ月間は人員配置に含められなかったため、より受け入れやすくなったといえるでしょう。
経済連携協定のもと、しっかりとした制度運用がされているため、外国人の雇用が初めての事業所でも安心です。
EPA介護福祉候補者を雇用する際には、必ず調整機関である「公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)」を通す必要があります。大まかな流れは以下のとおりです。
引用:公益社団法人国際厚生事業団JICWELS「EPAに基づく介護福祉候補者受入れの手引き」
また、受け入れる施設は以下の要件を満たしている必要があります。
このほかに「寮や住宅の準備」や「日本人と同様の報酬を受けること」などの条件もあります。年度ごとにオンライン説明会が開催されているので、受け入れを検討している場合は参加してみるのも良いでしょう。
開発途上地域の人材育成を目的とした「技能実習制度」でも、外国人介護士の雇用が可能です。在留資格「技能実習」を取得した技能実習生は、施設と雇用契約を締結し働きながら介護技術を学びます。
技能実習生が従事できるのは、訪問系サービス以外です。夜勤は「技能実習生以外の職員も配置する」「2年目以降から始める(努力義務)」などの条件を満たせば行えます。
EPA介護福祉士候補者同様、技能実習生も2024年度の介護報酬改定で能力的に問題がなければ、雇用直後から人員配置に含められるようになりました。
在留資格「技能実習」は、1号から3号の種類があります。入国時は「技能実習1号」で、1年から2年ごとに試験を受けて合格すれば2号、3号へと移行することが可能です。3号まで移行できれば、最長5年間日本で働けます。
技能実習の期間修了後も、介護福祉士の試験に合格し在留資格「介護」に移行するか、次に紹介する在留資格「特定技能」に移行するといった方法で、同じ施設で働き続けることが可能です。
なお、技能実習制度は2027年までに廃止が決定しており、新たに「育成制度」の創設が決定しています。
技能実習生を受け入れる方法は、海外の現地法人や取引先の外国人社員を受け入れる「企業単独型」と、中小企業団体や商工会議所からなる監理団体を通して外国人を受け入れる「団体監理型」の2種類です。現状、9割以上の企業は団体監理型を利用して技能実習生を受け入れています。
団体監理型での大まかな受け入れ方法は以下のとおりです。
受け入れ後は定期的に監理団体による監査や訪問指導が行われます。
「特定技能」とは、人手不足が特に深刻な業界(特定産業分野)で、外国人を雇用しやすくするために作られた在留資格です。介護分野も特定産業分野の一つに定められています。
単純労働を含めた幅広い業務を任せられるうえ、雇用後すぐに夜勤や配置基準への算入も可能です。現時点では、訪問系サービスへの従事は認められていませんが、2025年以降を目途に可能となるよう、厚生労働省が準備を進めています。
「特定技能1号」の在留資格を持つ外国人は、日常生活で使う日本語能力を測る試験(JLPTのN4相当)および介護の現場で働くうえで必要な日本語能力を測る試験(介護日本語評価試験)の両方に合格している人材です。また、学科と実技からなる介護技能評価試験にも合格しているため、即戦力として期待できるでしょう。
特定技能1号の在留資格で日本に在留できるのは最長5年です。5年以内に介護福祉士の国家試験に合格し、在留資格「介護」に移行すれば、引き続き働き続けられます。
はじめて特定技能外国人を雇用する際は、人材紹介会社のサポートを受けるとスムーズです。紹介を受けて応募者の選定をし雇用契約を結んだら、支援計画を策定します。
支援計画とは、外国人が安定して働けるよう、企業が具体的にどのような支援を行うかを記したものです。支援計画の策定や実施を施設だけで行うのが困難な場合は、一部を登録支援機関に委託できます。
登録支援機関になるのは、出入国在留管理庁長官の登録を受けた業界団体や法人、行政書士などです。特定技能外国人の紹介を行っている人材紹介会社が登録支援機関を兼ねているケースも珍しくありません。
「WeXpats Agent」を運営するレバレジーズ株式会社も、登録支援機関として認定されています。人材紹介だけでなく雇用後の登録支援業務もサポートできますので、ぜひご利用ください。
関連記事:「特定技能「介護」の雇用方法とメリット|ほかの在留資格との違いを比較」
参照元 厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」 厚生労働省「インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて」 外務省「我が国の経済連携協定(EPA/FTA)等の取組」 公益社団法人国際厚生事業団JICWELS「EPAに基づく介護福祉候補者受入れの手引き」
ここまでは、介護に関する4つの在留資格の特徴を解説しました。それを踏まえたうえで、各在留資格を比較してみましょう。
EPA介護福祉士候補者・介護福祉士 |
介護 |
技能実習 |
特定技能 |
|
制度の目的 |
国際連携の強化 |
専門的な介護技術を持った外国人材の受け入れ |
開発途上地域出身の外国人への技能移転 |
人材不足への対応 |
国籍 |
・インドネシア |
制限なし |
制限なし |
制限なし |
配偶者・子どもの帯同 |
介護福祉士の国家資格取得後から可能 |
可能 |
不可 |
不可 |
在留期間 |
・原則4年(条件を満たせば5年) |
制限なく更新可能 |
最長5年 |
最長5年 |
目安となる日本語能力 |
・インドネシア、フィリピン:JLPTのN5相当 |
JLPTのN2相当 |
・入国時:JLPTのN4相当 |
・JLPTのN4相当 |
関係機関 |
公益社団法人 国際厚生事業団(JICWELS) |
なし |
・監理団体 |
登録支援機関 |
従事できる業務 |
・事業所の形態に制限あり(訪問系サービスは不可) |
制限なし |
訪問系サービス以外 |
訪問系サービス以外(2025年度を目途に、制度改定予定) |
配置基準への算入 |
JLPTのN2以上に合格している、もしくは受け入れ企業が問題ないと判断すれば雇用後すぐに含められる |
雇用してすぐに含められる |
JLPTのN2以上に合格している、もしくは受け入れ企業が問題ないと判断すれば雇用後すぐに含められる |
雇用してすぐに含められる(6ヶ月間、安全性を確保するための取り組みを実施することが条件) |
夜勤 |
・国家試験合格前:JLPTのN2以上取得、もしくは雇用後6ヶ月経過すれば可能 |
可能 |
条件付きで可能 |
可能 |
異動 |
・国家試験合格前:原則不可 |
可能 |
必要だと認められた場合のみ可能 |
可能 |
転職 |
・国家試験合格前:原則不可 ・国家資格取得後:在留資格を「介護」に変更すれば可能 |
可能 |
原則不可 |
可能 |
このように、それぞれの在留資格ごとに特色があります。採用のしやすさや働ける期間、できる業務も異なるので、どのような人材を求めているのかを明確にしてから、どの種類の在留資格を持つ外国人を雇用するか決めましょう。
参照元 厚生労働省「外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック」
在留資格ごとに雇用のフローが異なり、大変そうだと感じた方もいるのではないでしょうか。確かに、日本人の雇用と比べるとはじめは手間がかかります。しかしそれを差し引いても、外国人介護士の雇用にはそれ以上のメリットがあるのです。
海外、特に東南アジアの国々では日本の介護職への注目度が高いため、外国人雇用をスタートすれば人手不足を解消しやすくなるでしょう。
東南アジアの国にはお年寄りを大切に敬う文化があります。また、これらの国で多く信仰されている仏教やイスラム教では、困っている人のお世話をして徳を積むことが人生において重要視されているのです。そのため、介護先進国である日本の介護技術を学びたいという人が多くいます。
また、長期的に在留しやすいのも人気のポイントです。「特定技能」や「技能実習」の在留資格で来日した場合は在留期間に限りがありますが、介護福祉士の国家資格を取得し「介護」に変更すれば、更新の制限なく日本で働き続けることができます。ほかの職種よりも、長期就労への道を目指しやすくなっているのです。
以上のことから介護士として日本で働きたいと考えている外国人は増加傾向にあります。外国人雇用を開始することで、日本人だけにターゲットを絞っていたときよりも優秀な人材を採用しやすくなるでしょう。
外国人の場合、職場が都市部かどうかはそこまで気にしません。用意されている住まいや賃金、研修制度などが自分の求める条件と一致していれば、地方の施設でも優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。
若年層を採用しやすいのも外国人採用のメリットです。介護の仕事をしに来日する外国人は20代~30代が多くを占めています。
日本の少子高齢化は進む一方で、今後若年層を採用するのはさらに難しくなるでしょう。今のうちから外国人採用をスムーズにできる体制を整えておけば、今後も安定して若い人材を確保できます。
関連記事:「外国人人材のマネジメントについて解説!起こりやすい問題や注意点とは?」
自治体によっては、介護施設向けに外国人介護人材を雇用するために必要な経費を補助しています(関連記事)。
自治体ごとに予算や条件が異なり、毎年実施しているわけではありませんが、もし条件に該当すれば外国人を雇用しやすくなります。
たとえば、東京都では「令和6年度 外国人介護従事者の受入れに係る受入れ調整機関活用経費補助金」という補助金に申込可能で、対象者1人あたり最大30万円の支援を受けられます。
外国人介護士の存在は、介護業界で安定的に人材を確保していくうえで欠かせないものになりました。需要が急増しているため、今後競争率が高くなっていくことも予想されています。
外国人が介護業界で働ける在留資格の種類は4種類です。それぞれの特徴や注意点を見極めて、自社とマッチする人材を採用しましょう。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net