ホテルや旅館での外国人採用に必要なビザ(在留資格)の種類とできる業務

在留資格 2023.03.30
濵川恭一
濵川恭一
ホテルや旅館での外国人採用に必要なビザ(在留資格)の種類とできる業務

人材不足の状態が続いている宿泊業界では、外国人採用が活発化しています。ホテル・旅館で外国人を採用する際は、人柄や能力のほかにビザ(在留資格)についてもチェックしなければなりません。外国人が持つビザによって行える業務も異なるので、採用前に一通り把握しておきましょう。
このコラムでは、ホテルや旅館で外国人を採用する際に必要なビザを紹介します。内容を参考にして、適切に外国人を受け入れましょう。

目次

  1. ホテルで外国人を採用する際に必要なビザ(在留資格)
  2. ビザの種類や任せる業務を誤ると「不法就労助長罪」に問われる
  3. ホテル業でビザの申請が許可・却下されるケースとは
  4. まとめ

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ホテルで外国人を採用する際に必要なビザ(在留資格)

ホテルで外国人を採用する際に必要なビザ(在留資格)の画像

ホテルや旅館で働くスタッフとして外国人を採用する場合は、ビザ(在留資格)の種類や従事する業務に注意しなくてはなりません。
ここでは、ホテル・旅館のスタッフとして採用可能なビザとそれぞれで許可されている活動について解説します。

身分に基づくビザ

身分に基づくビザは、結婚や永住などを目的として日本に在留する外国人に付与されます。

ビザの概要

身分に基づくビザとは、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「永住者」「定住者」を指します。これらは、行う仕事や活動ではなく身分や地位に対して許可されるビザです。

厚生労働省が発表した「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)によると、2022年10月時点で日本で働く外国人のうち、32.7%は身分に基づくビザを持っていました。外国人採用を始めた場合、身分に基づくビザを持っている人材が応募してくる確率は比較的高いといえます。

従事できる業務

身分に基づくビザには、活動の制限が設けられていません。そのため、清掃やベットメイキングなどの単純労働も含め、どのような業務でも従事できます。

技術・人文知識・国際業務ビザ

「技術・人文知識・国際業務」ビザは、理系や文系分野、語学に関連する分野において専門的な技術や知識を要する職に就く外国人に付与されます。

いわゆる単純労働は許可されませんので、任せる業務に十分注意しましょう。

ビザの概要

「技術」「人文知識」「国際業務」の3つのいずれかに該当する分野で、今まで学んできた知識や身に付けた技能を必要とする業務に就く外国人に許可されます。該当する職種は、企画や総務、通訳翻訳、IT技術者などさまざまです。日本の教育機関を卒業し、そのまま国内で就職をする外国人の多くが「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得します。

「技術・人文知識・国際業務」を得るには、海外の大学や大学院もしくは日本の専門学校以上を卒業していなければなりません。ただし、学歴条件を満たさない場合であっても、「技術」「人文知識」分野は10年以上、「国際業務」分野は3年以上の実務経験があれば取得可能です。

従事できる業務

「技術・人文知識・国際業務」のビザを持つ外国人がホテル・旅館で働く場合、以下の業務が考えられます。

  • 外国人利用者の比率の高いホテルでの、外国語を使った案内・通訳業務

  • 日本人従業員への語学指導

  • 海外の旅行会社との交渉やツアーなどの企画業務

  • 総務や経理業務

  • パンフレットやWebサイトのデザイン

上記のように、行えるのは今まで身に付けた専門的な知識や技能を活かす職種に限られます。フロント業務を行う場合でも、外国人利用者がほとんどおらず語学力を活かした業務ができないと判断されれば、ビザの許可が降りないことも十分考えられるでしょう。

特定活動46号ビザ

「特定活動46号」ビザは、日本の大学や大学院で培った高い日本語能力および知識、能力を使った仕事をする外国人に許可されます。これらに付随するかたちであれば、単純労働が許可されるのも特徴です。

ビザの概要

「特定活動」ビザは50種類近くの種類があります。そのうち46号(本邦大学卒業者)は、日本の大学や大学院を卒業したあと、日本語能力を活かした職業に就く外国人に付与されます。また、日本語能力を必要とする業務をメインとしていれば、空き時間などで単純労働を行うことも可能です。先述した「技術・人文知識・国際業務」ビザよりも、より幅広い業務に従事できるといえるでしょう。

外国人が「特定活動46号」ビザを取得する際の条件は、以下のとおりです。

  • 日本の4年生大学もしくは大学院を卒業している

  • 日本語能力に関して、「日本語能力試験N1取得」「BJTビジネス日本語能力テストで480点以上取得」「日本の大学や大学院で日本語を専攻」「海外の大学で日本語専攻したうえで日本の大学や大学院を卒業(専攻問わず)」のいずれかの条件に当てはまる

  • 日本の公私の機関で勤務先を指定して働く

  • 日本人と同等以上の報酬を受け取る

  • 就業先の企業に安定性や継続性が認められる

  • フルタイムで働く

「日本語能力試験N1」もしくは「BJTビジネス日本語能力テストで480点以上」の日本語能力とは、日本語でビジネス上の会話をしっかり行えるレベルです。

従事できる業務

「特定活動46号」ビザを取得した外国人は、ホテルや旅館において以下の業務に就けます。

  • 日本語と母国語を用いての接客業務(フロント・ベルスタッフなど)※日本人相手も可

  • 通訳や翻訳業務を兼ねた企画や営業業務

  • ほかの外国人従業員への指導業務

なお、「特定活動46号」ビザを持つ外国人に、客室清掃業務のみを行わせることはできません。

特定活動5号ビザ

「特定活動5号ビザ」は、ワーキングホリデー制度を利用して来日する外国人に付与されます。

ビザの概要

「特定活動5号」ビザは、日本とワーキングホリデーに関する協定を結んでいる国から来日し、休暇を過ごす外国人に付与されます。滞在費用を捻出するための就労も可能です。

在留期間は6ヶ月または1年と決まっており、延長はできません。ワーキングホリデー制度を利用できる年齢も、基本的に30歳以下の青少年に限られます(国によってルールの違いあり)。

従事できる業務

ワーキングホリデーで来日している外国人に、基本的に就労制限はありません。レストランの配膳業務やベットメイキング、フロント業務など多様な業務を任せられます。例外として風俗営業に関わる業務は認められていないため、ホテルのバーでの接客やコンパニオンとしての仕事は不可です。

雇用形態にも制限はなく正社員としても採用できます。ただし、働けるのが最長でも1年のため、基本的にはアルバイト・パートでの雇用になるでしょう。

技能実習ビザ

技能実習実施企業としての手続きをすれば、ホテル・旅館を経営する企業も技能実習生を受け入れられます。

ビザの概要

「技能実習」ビザは、日本で技能実習を行う外国人に付与されます。技能実習とは、開発途上国出身の外国人が報酬のある実務実習を通し、日本の技能を習得する制度です。

技能実習ができる職種は、2023年3月時点で86職種158作業あります。ホテル・旅館での業務が該当するのは、「宿泊(接客・衛生管理)」もしくは「ビルクリーニング」です。

技能実習ビザは1号~3号まであり、3号まで移行した外国人は最長で5年技能実習が行えます。ただし、「宿泊(接客・衛生管理)」における技能実習は3号への移行が認められていないため、期間は最長で3年です。

従事できる業務

「宿泊(接客・衛生管理)」では、以下の業務で技能実習を行えます。

【必須業務】

  • 接客・衛生管理作業(利用客の送迎作業補助、滞在中の接客作業補助、滞在中の接客作業補助、料飲提供作業補助、利用客の安全確保と衛生管理補助)※2号技能実習はチェックイン・チェックアウト作業の補助も可

  • 安全衛生業務(雇入れ時などの安全衛生教育、宿泊職種に必要な整理整頓、宿泊職種の館内および敷地内の安全確認、宿泊職種における事故・疾病予防、異常時の応急措置を習得するための作業、労働衛生上の有害性を防止するための作業)

このほかに、ポーターや客室清掃、食器洗浄業務なども関連業務として実施できます。ただし、関連業務は業務全体の2分の1以下の割合でなければなりません。

客室清掃やベットメイキング作業での技能実習は「ビルクリーニング」の職種に当てはまります。

特定技能ビザ

「特定技能」ビザのうち「宿泊業」の種類を持つ外国人は、単純労働を含んだ幅広い業務への従事が可能です。

ビザの概要

「特定技能」ビザは、人手不足が深刻な業界で外国人労働者を受け入れやすくするため、2019年4月に創設されました。取得の際に学歴は問われず、日本語能力および技能を図る試験に合格すれば取得できます。なお、先述した技能実習からの移行も可能です。

特定技能ビザは1号と2号に分かれており、1号だと最長5年、2号だと事実上無期限での就労が可能です。ただし、2023年3月の時点で宿泊業分野で2号への移行は認められていません。

従事できる業務

特定技能(宿泊業)ビザでは、以下の業務が行えます。

  • フロント業務(チェックインやチェックアウト、ツアーの手配など)

  • 企画や広報業務(プラン作成、チラシ制作、SNS運営など)

  • 接客業務(館内案内や問い合わせ対応など)

  • レストランサービス業務(配膳や片付け、料理の下ごしらえなど)

以上の業務をメインとして、付随するかたちであれば「館内売店での販売業務」「備品の点検・交換」などの関連業務も行えます。

外国人がベットメイキングや清掃などを中心業務として行う場合は、特定技能の「宿泊業」ではなく「ビルクリーニング」での受け入れが必要です。

留学ビザ(資格外活動許可でのアルバイト)

資格外活動許可を得ている留学生をアルバイトで採用する際は、時間や働く場所の制限に十分注意しましょう。

ビザの概要

外国人留学生の持つ「留学」ビザは、本来就労が認められていません。しかし、出入国在留管理庁から資格外活動許可を得ていれば、週28時間以内でのアルバイト(長期休みは週40時間)ができます。

従事できる業務

資格外活動許可を得たうえでのアルバイトでは、風俗営業に関わる場所での業務は認められていません。それ以外に職種に制限はなく、レストランやフロント、ベットメイキングなどあらゆる業務を行えます。

この項目で解説した内容については「特定技能外国人を宿泊業界で雇うには?注意点を企業に向けて解説」のコラムもご参考ください。

参照元
厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)」
出入国在留管理庁 特定技能総合支援サイト「特定技能制度とは

ビザの種類や任せる業務を誤ると「不法就労助長罪」に問われる

ビザの種類や任せる業務を誤ると「不法就労助長罪」に問われるの画像

外国人採用では、採用する外国人のビザの種類や任せる業務に注意しないと、企業が「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。不法就労助長罪は、外国人を不法就労をさせる、もしくは手助けした組織や個人に科せられる刑罰です。

罰則の内容は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方と定められています。「知らずに許可されていない業務をさせてしまった」「悪気はなかった」という場合でも罰則は軽くなりません。将来的に外国人採用を行うことも難しくなるので、入管法の知識をしっかり付けて、法律を犯さないようにしましょう。

不法就労助長罪については「不法就労助長罪とは?防止する方法を外国人を雇用する企業に向けて解説」のコラムでさらに詳しくまとめています。

ホテル業でビザの申請が許可・却下されるケースとは

ホテル業でビザの申請が許可・却下されるケースとは

ホテル・旅館業で外国人が働く場合、「技術・人文知識・国際業務」ビザの取得が一般的です。ここでは、「技術・人文知識・国際業務」ビザの申請が許可になるケース・不許可になるケースを紹介します。

ビザの申請が許可されるケース

出入国在留管理庁が宿泊業界において「技術・人文知識・国際業務」ビザを許可した例は、以下のとおりです。

  • 母国の大学を卒業し、母国からの観光客が多い日本の旅館で報酬を月額約20万円受け取り働く(業務内容:外国の旅行会社との交渉や通訳・翻訳、従業員への外国語指導)

  • 日本の大学で経営学を専攻し、卒業後に日本の空港に隣接するホテルで報酬を月額約25万円受け取り働く(業務内容:マーケティングリサーチやWebサイト作成など)

  • 日本の専門学校でホテルサービスやビジネス実務を専攻し、卒業後に多くの外国人が利用するホテルで働く(業務内容:フロント業務やプランの立案など)

外国人利用客が多い施設であればその場所で外国人が働く必然性が認められ、審査の許可を得やすくなります。

ビザの申請が不許可になるケース

以下は、「技術・人文知識・国際業務」ビザの申請が不許可になったケースです。

  • 母国の日本語学科を卒業し、日本の旅館で外国人利用客の通訳業務を行う(不許可になった理由:旅館の利用客の大半が本人の母国語とは異なる言語を使うため、十分な業務量が認められない)

  • 日本の専門学校で服飾デザインを専攻し、卒業後にフロントでの受付業務を行う(不許可になった理由:専門学校の専攻科目と実際に行う業務に関連性が認められない)

  • 日本の大学を法学を専攻し、卒業後に報酬を月額約15万円受け取り外国語も用いたフロント業務を行う(不許可になった理由:同時期に入社する日本人の報酬が月額約20万で、日本人と同等以上の報酬を受け取るという許可の条件を満たしていない)
     

「技術・人文知識・国際業務」ビザは幅広い業務が該当する分、申請の可否の予想が難しいといえます。不安な場合は行政書士にアドバイスを求めるのも一つの方法でしょう。

参照元
出入国在留管理庁「「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について

まとめ

ホテルや旅館での外国人採用に必要なビザ(在留資格)の種類とできる業務のまとめの画像

インバウンド需要の多いホテル・旅館にとって、外国人従業員は重要な戦力になります。いくつかのビザがあるので、自社に合った種類を選んで採用活動を始めましょう。

濵川恭一

監修:濵川恭一

外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net