特定技能「宿泊」も2号の対象に!行える業務や試験の内容とは

2023年08月08日
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宿泊施設を運営する企業には、人手不足が深刻なところも多いでしょう。特定技能「宿泊」を持つ外国人は幅広い業務に従事できるため、人材不足解消への貢献が期待されています。
このコラムでは、特定技能「宿泊」の概要や特定技能外国人を雇用するうえでの注意点を紹介。また、外国人が特定技能「宿泊」の在留資格を得る方法も解説します。人手不足に困っている企業は内容を参考にし、外国人雇用を検討してみましょう。

 

目次

  1. 宿泊業界は人材確保が急務!
  2. 特定技能「宿泊」の概要
  3. 特定技能「宿泊」はホテルや旅館で幅広い業務ができる
  4. 宿泊分野で在留資格「特定技能」を得るための試験
  5. 宿泊分野で特定技能外国人を受け入れるための準備
  6. 宿泊分野で特定技能外国人を受け入れる際の注意点
  7. まとめ

宿泊業界は人材確保が急務!

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宿泊業界は、早急に人材を確保していく必要があります。観光地域づくり法人が2022年3月に行った調査によると、加入団体(観光協会・観光局)の63%が人材の確保・育成を課題としていました。また、帝国データバンクが2023年1月に行った「人手不足に対する企業の動向調査」でも、ホテル・旅館を経営する企業の多くが人手不足の状態だと答えています。具体的には、正社員が不足していると答えた企業は77.8%、非正規の場合は81.1%にものぼり、この数字は各業界トップでした。

元々人手不足の状態だったところに、新型コロナウイルスが収束し始めたことによる需要の急増が追い打ちをかけているといえるでしょう。

宿泊業は休日の少なさや不規則な勤務形態などの理由から離職率が高く、なかなか人手不足が解消されない業界です。少子高齢化の影響で労働人口が減少している日本で、安定した労働力を確保するためには、外国人の雇用も積極的に進めていく必要があるでしょう。

参照元
観光庁「アフターコロナ時代における地域活性化と観光産業に関する検討会」
帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2023年1月)

特定技能「宿泊」の概要

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特定技能「宿泊」とは、12種類ある特定産業分野のうちの一つです。ここでは、特定技能「宿泊」の概要や技能実習「宿泊」との違いを紹介します。

12種類ある特定産業分野の一つ

特定技能「宿泊」は、12種類ある特定産業分野のうちの一つです。特定産業分野では、在留資格「特定技能」を持つ外国人の雇用が認められています。特定技能は、特に人手不足が深刻な業界で外国人雇用を促進させるため、2019年に創設されました。
特定産業分野の一覧は以下のとおりです。

  • 介護
  • ビルクリーニング
  • 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
  • 建設
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備
  • 航空
  • 宿泊
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造業
  • 外食業

なお、今後さらに特定産業分野が増える可能性もあります。

技能実習「宿泊」との違い

在留資格「技能実習」と「特定技能」は、名称は似ているものの制度の目的が異なります。
技能実習は、発展途上国出身の外国人に日本の技能を移転し、母国の発展に貢献してもらうのが目的の在留資格です。そのため、外国人技能実習生を労働力の補填に利用してはいけません。

一方、特定技能の在留資格は元々人材不足を解消するためにできたという経緯があります。企業側からすると、特定技能ができたことでより外国人雇用に踏み出しやすくなったといえるでしょう。

特定技能の在留資格は1号と2号がある

特定技能の在留資格は、1号と2号があります。
外国人がまず取得するのは特定技能1号です。特定技能1号は、試験により特定産業分野で働くのに相当する知識、技能を有していると認められた外国人に付与されます。在留期間は最長で5年で、家族を日本に帯同させることは認められていません。

特定技能1号を修了し、該当分野で熟練した技能を持つと認められた外国人には特定技能2号が許可されます。更新の上限はないため、ほぼ無期限で日本在留が可能です。また、家族の帯同も認められます。ただし、受け入れられる分野が限定されており、2023年6月時点では「建設」と「造船・舶用工業」のみです。

宿泊分野でも特定技能2号の受け入れが可能になる

2023年6月9日の閣議決定により、宿泊分野でも今後、特定技能2号の受け入れが可能になりました。今後、「介護」を除いたすべての分野で、準備が整い次第特定技能2号を持つ外国人を受け入れられます。在留資格2号を持つ外国人には在留期限がないため、企業はより受け入れやすくなったといえるでしょう。今まで在留期間の上限がネックで雇用に慎重になっていた企業は、この機会に、特定技能外国人の受け入れを検討してみてください。

「介護」が2号の対象から除外されたのは、在留資格「介護」があるためです。詳しくは「在留資格「介護」を持つ外国人の採用について、最新情報を解説」のコラムを参考にしてください。

参照元
出入国在留管理庁「特定技能外国人の雇用を希望する企業・団体・個人等の方」
出入国在留管理庁「特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定)

特定技能「宿泊」はホテルや旅館で幅広い業務ができる

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特定技能「宿泊」を持つ外国人はホテルや旅館で幅広い業務を行えるため、雇用しやすいのがメリットです。

特定技能「宿泊」の在留資格を持つ外国人は、フロント業務や客室清掃やドアマンなどの宿泊サービスに関わる業務のほか、ホテル内のレストランスタッフとしても働けます。また、企画や広報などの業務も可能です。上記の業務を中心としていれば、付随的に館内販売や備品の点検などの業務も許可されます。

ホテルや旅館での外国人採用に必要なビザ(在留資格)の種類とできる業務」では、ホテル・旅館業で雇用できる外国人の在留資格の種類を解説しています。外国人雇用におけるメリットや注意点もまとめているので、参考にしてみましょう。

宿泊分野で在留資格「特定技能」を得るための試験

宿泊分野で在留資格「特定技能」を得るための試験の画像

外国人が特定技能「宿泊」の在留資格を得るには、日本語能力を測る試験で合格基準を満たし、宿泊業技能測定試験に合格する必要があります。

日本語能力を測る試験

特定技能の在留資格を得るには、「日本語能力試験(JLPT)」もしくは「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」に合格しなくてはなりません。

日本語能力試験(JLPT)では、N4以上のレベルに合格する必要があります。N4は「基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活のなかでも身近な話題を読んで理解する」「日常的な場面でややゆっくりと話される会話であれば、内容が理解できる」といったレベルです。なお、日本語能力試験(JLPT)はマークシート方式で行われます。

「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」の場合は、テストに合格しCEFR、JFスタンダードのA2レベルに該当する日本語能力を証明する必要があります。A2は、簡単で日常的な範囲の事柄について情報交換ができ、基本的でよく使われる文や表現が理解できるレベルです。テストはCBT方式を用いてパソコンで行われます。

技能に関する試験

特定技能の在留資格を得るには、各業種の技能試験に合格する必要があります。宿泊業で特定技能の在留資格を取得する外国人が受けるのは、「宿泊業技能測定試験」です。この試験では、宿泊施設全般の業務に関する筆記試験と実技試験が行われます。フロントや接客業務だけではなく、安全衛生の知識も身に付けなくてはなりません。筆記試験と実技試験の正答率が65%以上であれば合格です。

試験は学科および実技があり、日本語で出題されます。国内外で定期的に試験が開催されますが、新型コロナウイルスの影響によりスケジュールが流動的になっているようです。
試験問題の公的なテキストはありません。一般社団法人宿泊業技能試験センターのWebサイトに問題サンプルや過去問題が掲載されています。

参照元
一般社団法人宿泊業技能試験センター「特定技能測定試験について

宿泊分野で特定技能外国人を受け入れるための準備

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特定技能外国人を受け入れる企業は特定技能協議会に加入したうえで、支援計画を作成する必要があります。

特定技能協議会へ加入する

特定技能「宿泊」の在留資格を持つ外国人を雇用する企業は、「宿泊分野特定技能協議会」へ加入します。特定技能協議会は、特定技能の在留資格を持つ外国人の適正な受け入れや保護が目的の組織です。特定技能外国人を受け入れてから4ヶ月以内に加入しなくてはなりません。加入方法は、観光庁のWebサイトから必要書類をダウンロードして記入後、観光庁の観光人材政策室に郵送します。

支援計画を策定する

受け入れ企業は、特定技能外国人が安心して就業できるよう、支援計画を策定し適切に実行する義務があります。そのため、特定技能外国人の在留資格申請時には、あわせて支援計画の提出も必要です。
支援計画のもと特定技能外国人に行う支援とは、事前ガイダンスの生活オリエンテーションの実施、相談・苦情対応などが当てはまります。なお、自社で行うことが難しい場合は、登録支援機関に一部またはすべての支援業務を委託可能です。

参照元
国土交通省「宿泊分野における外国人材受入れ(在留資格「特定技能」)

宿泊分野で特定技能外国人を受け入れる際の注意点

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特定技能外国人を受け入れられるのは、旅館業法で旅館もしくはホテル営業の許可を受けている宿泊施設のみです。また、行う業務や支払う報酬にも注意すべき点があります。

旅館やホテル以外では受け入れできない

特定技能外国人は、旅館業法で旅館もしくはホテル営業の許可を受けている施設でなければ就労できません。民泊やペンション、ゲストハウス、カプセルホテルなどの宿泊施設で「簡易宿泊所営業」で許可を受けている場合、特定技能の在留資格を持つ外国人は就労不可です。また、風営法で風俗営業に分類される施設でも外国人は働けないので注意しましょう。

風営法における「接待」業務は禁止されている

特定技能「宿泊」の在留資格を持っていても、風営法における接待業務は禁止です。たとえば、宿泊施設のレストランで給仕業務を行うのは問題ありません。しかし、利用客の隣に座ってお酌をしたり会話をしたりするのは、接待業務に該当します。当該外国人がどの行為が接待業務になるのかを理解していない場合があるため、企業側はあらかじめ教育を行っておきましょう。

報酬は日本人と同等以上を支払う

外国人を雇用する際は、同じ仕事をする日本人と同等かそれ以上の報酬を支払う必要があります。この決まりは、特定技能の在留資格を持つ外国人に限ったことではありません。企業が「外国人だから」という理由で、不当に日本人より低い報酬を設定するのは禁止されています。なお、特定技能外国人の雇用形態は正社員のみです。特定技能外国人を雇用する際は、同じ仕事をする正社員の日本人に合わせて報酬を設定しましょう。

特定技能外国人を宿泊業界で雇用する際の注意は「ホテル・旅館業で外国人雇用する方法とは?従事できる業務や注意点を解説」のコラムでも詳しくまとめています。

まとめ

まとめの画像

特定技能「宿泊」の在留資格を持つ外国人は幅広い業務に従事できるため、人材が不足している宿泊業界にとって貴重な存在です。宿泊施設を運営する企業は、特定技能制度について正しく理解したうえで、特定技能外国人の受け入れを検討しましょう。