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今や、日本で働くベトナム人の数は外国人労働者全体の約3分の1を占めるようになりました。技能実習生や特定技能外国人、留学後にそのまま日本企業に就職した人など、その経緯も多種多様です。
しばしば「ベトナムと日本の国民性は似ている」といわれます。ややステレオタイプ的な表現ではあるものの、共通する文化や社会通念が多々あることは確かです。
一方で、当然ながらベトナムと日本では異なる点の方が多く、個々人の性格や仕事観にも影響を及ぼしています。日本企業がベトナム人を雇用する際は、互いの国の違いをよく把握したうえで、働きやすい環境を考える必要があるでしょう。
本記事では、ベトナムの国民性や道徳的価値観を、弊社のベトナム出身スタッフ監修の元で紹介。それを踏まえて、雇用のポイントやモチベーションを上げる秘訣も解説します。ベトナム人が能力を発揮できる職場づくりにお役立てください。
※WeXpatsは偏見と差別の排除を理念の一つに掲げて活動しています。本稿にも「人種」や「国籍」といった特定の属性に対するイメージを単純化する意図はありません。本稿の内容は、あくまでベトナムの文化や社会通念を紹介するものであり、個々人の性格は多種多様であるという点を踏まえてご覧ください。
目次
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日本で働く外国人のうち、最も多いのはベトナム出身者です。長らく1位だった中国を2020年に抜き、2023年には外国人労働者全体の25.3%を占めるまでになりました。まずはベトナムという国を詳しく知っておきましょう。
【基本情報】
多民族国家であるベトナムは民族によって使用する言葉が異なり、公用語とされるベトナム語は多数派であるキン族の言葉です。北部のハノイと南部のホーチミンでも発音が大きく異なります。
日本と同じく米を中心とした食文化であり、ベトナム料理として有名な「フォー」の麺や「生春巻き」の皮も米粉を原料としています。とはいえ味付けの仕方は大きく異なるため、日本に来たばかりのベトナム人は淡白な日本食が舌に合わないこともしばしば。
ベトナムの平均年齢は31歳であり、25歳~40歳の働き手世代が多い「つぼ型」の人口分布になっており、バイクで溢れる道路の写真からも分かるように、非常に活気のある国です。
参照元 厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」 外務省「ベトナム社会主義共和国」
もちろん人によって性格は異なりますが、日本人が押しなべて「控えめで自己主張しない」「集団主義で和を重んじる」などといわれるように、ベトナムにも対外的な性格の見え方に影響する社会通念や道徳観が存在しています。
一般的にベトナム人は穏やかで温厚な性格だといわれます。これは日本と同様に「感情を強く表に出すのはあまりよくないこと」という考え方が浸透しているからです。同じ理由から我慢強い性格だといわれることもあります。
このように、コミュニケーションにおいて美徳とされる振る舞いに日本と似ている箇所が散見されるのが特徴です。
南国で開放的なイメージのあるベトナムですが、実はシャイで人見知りしやすい人が多いそうです。仲良くなるには少々時間がかかるかもしれません。
しかし、ベトナムでは集団行動が基本で、食事は仲の良い同僚や友人と一緒に取るのが当たり前。自分の席で黙々とコンビニ弁当を食べる日本企業のランチ風景に驚いたという声も耳にします。職場で打ち解けられないことが、日本人が想像する以上にストレスや孤独感につながる恐れがあるのです。
企業がベトナム人を採用する場合は、歓迎会を開いたり、積極的に雑談したりと、コミュニケーションの機会を用意するとよいでしょう。もちろんベトナム人全員に当てはまるわけではなく、「一人でいる方が気楽」という人もいます。ですが、そうした性格であると知るためにも、会話は非常に重要です。
ベトナム人も日本人と同じくジンクス(願掛け)や行事を大切にしています。
特に重要で楽しみにしているのは、旧正月であるtết nguyên đán(テトグエンダン)通称テト。日本のお正月のように、家族や親戚と集まりご馳走を食べたりお寺にお参りに行ったりします。日程は旧暦にそって決まり、新暦では1月下旬~2月中旬ごろです。日本の年末年始休暇とは日程がずれるので、柔軟な休暇取得制度があるとモチベーションアップに繋がります。
また、ベトナムのお盆に当たる「ブラン祭」も同様に大切にされている行事です。旧暦の7月15日、新暦では8月中旬~9月中旬ごろにお寺にお参りに行き、お墓参りをします。
ベトナムは南北に長い地形で、場所によって気候や文化、言葉が変わります。性格にも違いがあるとされており、日本の東京と大阪の違いを想像すると分かりやすいかもしれません(多民族国家であるベトナムと、同一民族が戦国時代に争っていた日本では、その背景が大きく異なる点には注意が必要です)。
ここでは、北部出身者・南部出身者それぞれの特徴を紹介します。
北部には首都のハノイがあり、国の中心機能が集まっています。日本ほどハッキリはしていないものの、四季があり冬は寒く夏は暑い場所です。
北部出身のベトナム人は堅実で勤勉、また、辛抱強い人が多いといわれています。元々、ベトナム北部は南部に比べて資源が乏しいという事情がありました。そのため、少ない資源でどのように暮らしていくかをしっかりと考える習慣が付き、真面目に仕事する傾向が生まれたと考えられています。
南部にはベトナム最大の経済都市であるホーチミンがあります。気温はいわゆる常夏で、人々が想像するベトナムの気温のイメージに近いでしょう。安定して農作物や資源が採れるので、古くから商いの町として栄えてきました。
南部出身のベトナム人は、大らかで外交的な人が多いといわれています。商売をしている人が多いので、人と人との繋がりを大切にし、細かいことはあまり気にしません。貯蓄よりも消費に重きを置き、今を楽しみたいと考えている人が多い傾向にあります。
上記のように、北部と南部では多くの違いがあります。ベトナム人雇用に慣れている企業の中には、「ベトナム人従業員同士のトラブルに適切に対処するために北部出身者か南部出身者を把握しておく」という企業もあります。
一緒に働くうえで、その人の仕事観を理解しておくことは重要です。行動や言動に疑問を持ったとしても、根本となる考え方を知れば、解消しやすくなるでしょう。
ここでは、弊社のベトナム出身スタッフに聞いた、ベトナム人の仕事観を紹介します。
ベトナム人は基本的に勤勉で仕事熱心な人が多いといわれています。また、スキルアップにも積極的で、そのための勉強や努力を惜しみません。
特に日本にやってくるような人たちは、数年間も故郷を離れて暮らす選択ができるほどの強い目的意識を持っています。
しかし、その分、自身のキャリアの得にならないとわかると不満を感じてしまう可能性も。真面目さや勉強熱心なところを活かせるよう、キャリアアップ制度や資格取得制度などを整えられると良いでしょう。新規プロジェクトや大きな仕事にも意欲的です。
ベトナム人の多くは家族のために働いているといっても過言ではありません。家族を第一にという考えは、東南アジアの各国でよく見られます。特に、ベトナム人が大切にしているのが親です。「成人したら苦労して育ててもらった恩返しをすべき」と考えられています。
上記のような考え方から、家族より仕事を優先しなければならない状況では、モチベーションが低下してしまう可能性も。ベトナム人にとって、何より大切にしたいのは家族の絆です。そのため、家族の重要な行事や急病などがあったら、できる限り休暇の調整を検討してみてください。
一般的に、外国人はプライベートと仕事の時間をしっかり分けたいと感じているため、日本人ほど積極的に残業をしないといわれています。
しかし、ベトナム人の中には「短期的にたくさん稼ぎたい」「将来の活動資金を貯めたい」というモチベーションから日本に来る人が多く、給料が増える残業や夜勤に対しても比較的ポジティブです。
正当な残業代をしっかりと支払えば、より多くの賃金を得られる機会と解釈し、意欲的に取り組んでくれるでしょう。
なお、だからといって長時間残業をさせても良いというわけではありません。業務上必要な場合のみ依頼しましょう。
自分の能力や成果を正当に評価されて嬉しくない人はいないでしょうが、ベトナム人はその傾向が強いといわれています。
ベトナムでは褒めて相手を称える文化が根付いており、企業でも社内コンテストや表彰制度が活発です。モチベーションを高く保つためにも、ふさわしいタイミングでしっかり言葉や行動で評価をしましょう。
新しくて効率的な方法を選ぶ人が多いというのも、ベトナム人の特徴の一つです。より良い道があるのなら、やったことのない方法でも積極的にチャレンジします。
また、以前から慣習的に行われている非効率な方法に対して、「無駄ではないのか?」「方法を変えるべきでは?」と疑問を持ちやすい傾向も。
ベトナム人の新しい視点からの疑問は、企業の効率化を促進するきっかけになります。積極的に耳を傾けて意見を取り入れてみましょう。
関連記事:「ベトナム人労働者の特徴とは?日本で急増する理由やメリットを紹介」
ベトナム人の仕事観はポジティブなものが多く、日本企業に馴染みやすい性質を持っている人が多いといえます。しかし、理解しておかなければならない注意点も。日本とは異なる文化や規範で行動していることを頭に留め、上手なマネジメントの方法を模索しましょう。
弊社のベトナム人スタッフに聞いた、理解しておくべき特徴は以下のとおりです。
多くのベトナム人の時間感覚は、日本人からするとルーズに感じられます。時間を守ることに価値を見出しておらず、待たせた相手の時間を奪っているという感覚もそこまで強くありません。
時間を守らなければならないとの考えがあまりないため、ただやみくもに遅刻を注意しても改善は難しいでしょう。「時間を守らなければ日本人はどう思うのか」「遅刻することでどのようなデメリットがあるのか」といった点を説明する必要があります。
長いスパンで考えた将来的な利益よりも、目の前の利益を優先しがちなところがあるといわれています。国が長らくの不況に苦しんだ経験から、今このときの生活を良くしたいと考える人が多いのです。
ベトナム人には将来を見据えて仕事を選択する傾向はあまりありません。直近でどのくらいの給与が支払われるかという点を重視します。昇給したら高い年収が見込めても採用時の収入が低い仕事は、一般的なベトナム人にとっては魅力的ではないといえるでしょう。
多くのベトナム人には報告・連絡・相談が重要という感覚はなく、それらの概念をイメージするのが難しいようです。このため、ただ「報告してください」と言われても、何をいつ報告すれば良いのかがピンときません。面倒でしないのではなく、方法が分からないといった感覚が正しいでしょう。
ベトナム人に報連相を徹底してもらうためには、その目的や重要性を説明していく必要があります。また、どのようなシチュエーションになったら報告や連絡、相談をすべきなのか、ケーススタディを作成するのも良いでしょう。
ベトナム人は人懐っこく話し好きな人が多い一方で、仕事においては個人主義な一面があるといわれています。先述したように、何か問題があっても報告や相談をせず、自分だけで解決しようと動くことも。よほど大きな問題でなければ、ほかの人に共有する必要はないと考えています。また、自分のスキルを高めて生活や待遇を良くすること以外にはそこまで興味がないともいえるでしょう。
日本企業にうまく適応して能力を発揮してもらうためには、チームワークの意味やチームでの動き方をしっかり教育する必要があります。
日本の就職活動において自己分析や企業研究は必須とされていますが、海外ではそうではありません。例に漏れずベトナムでも自分との相性や企業の詳細をよく調べるという文化がなく、入社後にギャップを感じてしまうケースがよくあります。
ベトナム人には、自分に合わないと思ったりほかの良い条件の企業があったりしたら転職すれば良いと考えている人が多くいます。採用選考のプロセスが日本よりシンプルで、書類選考と面接1回で終わるパターンが大半です。そのため、転職への心的ハードルが低いのでしょう。
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関連記事:「異文化コミュニケーションへの理解を深めよう。グローバル企業に求められる心構えとは?」
前の項目で述べたとおり、ベトナム人は転職のハードルが低く離職率が高くなりがちです。長く働いてもらうために、モチベーションを高く保てる環境作りをしましょう。
ベトナム人の出したアイデアや意見を尊重する姿勢を示すと、前向きに意欲を持って働いてもらえるでしょう。
「ベトナム人の仕事に関する考え方」の項目でも解説したとおり、ベトナム人は能力を評価されたいという思いが人一倍強い傾向にあります。そのため、頭ごなしに低い評価をされると、モチベーションが下がってしまう可能性があるのです。また、ベトナムでは人前で注意されることはあまりないため、同僚や部下の目の前で否定や批判をされると非常にストレスを感じます。
以上を踏まえ、ベトナム人のアイデアや意見を一度しっかり受け止めたうえで、さらに良い方法を一緒に考えていくようにすると良いでしょう。
休み時間は机で昼寝してもOKな雰囲気をつくると、午後もモチベーション高く働いてくれるでしょう。
高温多湿のベトナムでは、体力を回復させるために昼寝をする文化があります。学生のころから、休み時間は机に突っ伏して睡眠を取る習慣が根付いているのです。
昼休みに15分~30分程度の昼寝をすることは「パワーナップ」と呼ばれ、午後の集中力アップや疲労回復に繋がります。ベトナム人の雇用とあわせて、社内で積極的に昼寝の習慣を取り入れるのも良いでしょう。
ベトナム人の多くは一度打ち解ければ人懐っこく、密なコミュニケーションを好みます。一緒に食事や会話をする時間が多いアットホームな職場だと、モチベーション高く働いてもらえるでしょう。業務でも、一人で孤立してしまう状況よりは、人との繋がりを感じられたほうが能力を発揮できます。
対等なコミュニケーションの基本は相互理解です。ベトナム人従業員に日本の文化を押し付けるのではなく、日本人従業員がベトナムの文化や言葉を勉強する姿勢は、互いの距離をぐっと近くしてくれます。
たとえば以下の3語を覚えるだけでも、日常のちょっとしたやり取りで仲良くなるきっかけが生まれるでしょう。
日本企業にとって、今やベトナム人は切っても切り放せない存在になりました。能力を最大限発揮してもらうためには、性格や仕事観の特徴を知ったうえでマネジメントをする必要があります。
特に、報連相に関しては概念が理解できず戸惑う人も多くいるようです。どういった事案をどのようなタイミングで上司に伝えるべきなのかを、繰り返しトレーニングしていきましょう。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net