外国人採用には雇用契約書が重要!記載すべき内容とは?

濵川恭一
濵川恭一
外国人採用には雇用契約書が重要!記載すべき内容とは?

 

外国人を採用する際は、日本語だけでなく、外国人の母国語でも雇用契約書を作成しましょう。もし、本人が雇用契約書の内容を理解せず署名した場合、合意がないとして契約が無効になることもあります。作成の際は、厚生労働省が多言語で公開している労働条件通知書のサンプルを参考にすることも可能です。

この記事では、外国人採用時に不可欠な「停止条件」や、雇用契約書の記載内容について解説します。

目次

  1. 外国人採用の際は雇用契約書が重要
  2. 雇用契約書と労働条件通知書の違いとは
  3. 外国人の母国語で雇用契約書を作成する
  4. 雇用契約書に停止条件を付ける
  5. 雇用契約書で外国人向けに記載する内容
  6. 必要に応じて就業規則も改訂する
  7. まとめ

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外国人採用の際は雇用契約書が重要

外国人採用では雇用契約書が重要です。雇用契約書は本人に労働条件を理解してもらうためだけでなく、在留資格申請の書類としても使用されます。

また、条件を記載しておけば在留資格が不許可になった場合に契約を無効にすることも可能です。在留資格のない外国人を雇用すると企業は不法就労助長罪に問われてしまうので、リスク回避のためにも雇用契約書を作成しましょう。

在留資格の申請時に契約内容を確認するため

外国人とは在留資格の申請が許可されるのを前提に雇用契約を締結します。申請する際は、審査のため雇用契約書か労働条件通知書のコピーを地方出入国在留管理局に提出しなければなりません。雇用契約書に不備があると、外国人の在留資格の許可が降りない場合もあります。

在留資格の審査の際は、出入国在留審査官から会社や外国人本人に電話調査を行うことも。仕事内容を理解していなかったり記載の内容と回答に矛盾があったりした場合は、不許可になる可能性があります。

外国人とのトラブルを防止するため

日本では契約書は形式的な書類だと捉えられがちですが、海外では書面の内容を重視する傾向にあります。そのため、明記されていない早出出勤を指示したりサービス残業を行わせたりすると、外国人の不満に繋がる可能性も。双方の捉え方が異なることを考慮して、認識の相違が生じないよう勤務条件を具体的に記載した契約書を作成する必要があります。

また、外国人が契約内容について口頭での説明を理解できなかった場合、雇用契約書がなければ「言った言わない」のトラブルに発展することも。外国人がしっかり理解できるよう、外国人の母国語で雇用契約書を作成すると良いでしょう。

在留資格が不許可になった際に契約を無効にするため

雇用契約後に在留資格を申請するため、「雇用契約を結んだものの、肝心の在留許可が降りなかった」というケースもあるでしょう。在留資格のない人材を雇用すれば外国人は不法就労に、企業は不法就労助長罪に問われます

在留資格が不許可になった際に契約を無効にするため、雇用契約書には「停止条件」を記載しておきましょう。停止条件とは、ある要件が満たされるまで法的効果を発生させない条件のことです。在留資格の取得によって、雇用契約の効力を生じさせることができます。

雇用契約書と労働条件通知書の違いとは

雇用契約書は、従業員と企業が雇用契約に合意した証明書として作られます。労働条件通知書は、企業が従業員に労働条件を示すために作成する書類です。どちらも内容はほとんど同じで、契約期間や賃金などが記載されています。労働条件通知書の発行は法律で定められていますが、雇用契約書は義務付けられていません。

地方出入国在留管理局は、外国人の労働条件を在留資格の審査対象とします。労働条件についてしっかり明記されていれば、雇用契約書と労働条件通知書のどちらを提出しても問題ありません。

ただし、雇用契約書には双方が合意した証として署名がされるため、地方出入国在留管理局が「外国人が雇用条件を理解した」と判断しやすい利点があります。審査に有利になるため、雇用契約書を作成しておくと良いでしょう。

外国人の母国語で雇用契約書を作成する

日本語での会話に支障がない外国人でも、雇用契約書に記載されるような複雑な日本語を完璧に理解するのは困難でしょう。労働基準法により、労働条件は本人の理解できる言語で提示するよう定められています。そのため、日本語能力が不十分な外国人に対して日本語のみの労働契約書を作成してはいけません。

外国人が雇用契約書の内容を理解しきれていないと、在留資格の申請で審査官からの電話調査に適切に回答できず不許可になる可能性も。また、契約内容を理解していない外国人が「話が違う」と退職したり、母国へ帰る費用を企業に請求したりといった雇用後のトラブルに発展することも考えられます。

そのため、雇用契約書は外国人の母国語での作成が望ましいのです。ただし、外国人が理解できるのであれば英語で作成しても問題ありません。

外国人の雇用契約書を作成する際は、厚生労働省の提供するサンプルを活用すると良いでしょう。厚生労働省のWebサイトでは、外国人労働者向けモデル労働条件通知書を公開しています。労働条件通知書と雇用契約書は記載する内容がほとんど同じ書類のため、サンプルを参考にして自社の就業規則の内容を盛り込みながら作成を進めましょう。対応しているのは以下の13言語です。

  • 英語

  • 中国語

  • 韓国語

  • ポルトガル語

  • スペイン語

  • タガログ語

  • インドネシア語

  • ベトナム語

  • カンボジア語

  • モンゴル語

  • ミャンマー語

  • ネパール語

  • タイ語

参照元
厚生労働省「労働基準関係リーフレット

雇用契約書に停止条件を付ける

在留資格を得る前提で雇用契約を締結するものの、在留資格の申請が不許可になれば外国人は日本で就労できません。外国人は不法就労に該当し、雇用した企業は不法就労助長罪に問われてしまいます。

停止条件を記載すれば、「在留資格を取得できなかった」「在留資格を失効した」といった場合に契約を無効にできるのです。

そのため、「就労可能な在留資格の取得(変更)申請が許可されたら本契約を有効とする」という内容を必ず記載するようにしましょう。また、「在留資格の失効により、雇用契約を終了する」などと書いておくのも重要です。

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関連記事:「外国人を雇用するには?入社前・入社後の手続きと必要書類

雇用契約書で外国人向けに記載する内容

外国人との雇用契約書では、停止条件以外にも重要な記載内容があります。ここでは、人材が外国人だからこそ特に気をつけるべき点について見ていきましょう。

業務内容

行う業務内容は、外国人の在留資格の審査で最も厳しく見られるポイントです。技術・人文知識・国際業務の在留資格を申請する場合、本人が大学や専門学校で学んできた専門分野と関連していないと、在留資格を取得するのは難しいでしょう。特に専門学校卒業者の場合、専攻内容と行う業務との間に密接な関連性が必要となります。

また、記載する業務内容が、在留資格で許可されている活動と適合していなければ、申請が不許可になるため注意が必要です。

記載内容が不明瞭だったり誤解の余地があったりした場合、審査結果に影響が出ることも考えられます。審査官が理解しやすいように「社内文書翻訳業務」「システム開発業務」といった詳しい業務内容を記載すると良いでしょう。

研修の内容と期間

就労に関する在留資格では単純労働が禁止されていることがほとんどです。しかし、入社当初の現場研修や実習に単純労働が含まれるケースもあります。この場合、「業務上必要かつ合理的である」「日本人も入社当初に同様の研修を行う」「入社直後に実施される研修である」といった条件を満たさなければなりません。客観的に証明できれば許可される可能性が高いので、雇用契約書には研修・実習の有無を記載し、別紙で期間や詳しい内容を説明すると良いでしょう。

雇用契約期間

無期雇用・有期雇用のどちらでも外国人を雇用できます。しかし、在留資格の申請時、雇用契約期間を超えた在留期間は認められにくいので、外国人の長期的な就労を希望する場合は無期雇用として採用するのが一般的です。

外国人を長く雇用する場合、契約期間中に在留資格を更新することもあるでしょう。更新許可が下りず、在留期限が切れたのに働き続けてしまうと外国人は不法就労になり、企業も罪に問われます。「在留資格が更新できず失効した場合、契約を終了する」という停止条件を記載しておきましょう。

就業場所

就業場所も在留資格申請の際に厳しく審査されます。技術・人文知識・国際業務の在留資格を申請する場合、原則として現場作業は認められていませんので、雇用契約書の就業場所欄に、「施工現場」などと記載すると、誤解を招く場合があります。

「契約内容を十分に理解している」という一文

外国人が契約内容を理解していないと、合意がなかったものとして契約が無効になる可能性があります。本人が理解しているか事前に確認をしっかりと行ったうえで、「契約内容を十分に理解している」という一文を雇用契約書に明記するか、外国人に一筆書いてもらうと良いでしょう。

外国人が日本語を理解できるか少しでも不安がある場合は、雇用契約書を母国語で作成することが大切です。

賃金

外国人の報酬は、同じ仕事をする日本人と同等か、それ以上に設定しましょう。就労可能な在留資格のほとんどは、取得の要件に「同じ業務をする日本人と同等以上の報酬を受け取る」との項目があります。自社で同じ業務を行う日本人だけでなく、他社で同種の仕事をする日本人の賃金も基準です。そのため、外国人の報酬を日本人より低く設定すると、外国人の在留資格の申請が不許可になる可能性が高いでしょう。

これに加えて、労働基準法第3条では「使用者は労働者の国籍を理由に賃金や労働条件に差を設けてはならない」と定められています。日本人ではないという理由で、ほかの従業員と比べて低い給与で雇うことは労働基準法違反となるため、均等待遇を遵守しましょう。

参照元
e-Gov法令検索「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)

必要に応じて就業規則も改訂する

外国人の雇用契約書を作成する場合、就業規則と矛盾しないか忘れずに確認しましょう。もしも矛盾が生じる場合、必要に応じて就業規則の改訂が必要です。

たとえば、外国人社員の中には母国に一時帰国するため休職を希望する人もいることでしょう。

外国人社員だけに特別な休職を認めてしまうと、日本人社員から不満が出るかもしれません。休職に関しては、周囲の理解も必要ですから、就業規則でしっかりと取り決めておきましょう。

まとめ

外国人の雇用時に在留資格の取得や変更が伴う場合、雇用契約書の内容が非常に重要です。地方出入国在留管理局は提出された雇用契約書を見て、外国人がこれから行う業務と希望する在留資格の適合性を判断します。そのため、できる限り詳しく業務内容を記載し、審査がスムーズに進むようにしましょう。

外国人を雇用する際、雇用契約書の内容を十分に理解していないことで、後にトラブルに発展するケースも少なくありません。企業は外国人の理解できる言語で雇用契約書を作成し、思い違いがないか確認しながら契約を進めましょう。

濵川恭一

監修:濵川恭一

外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net