日本語の中には、日本人でも誤った使い方をしている言葉がたくさんあります。間違った日本語の使い方は「誤用」といい、知らずにいると恥をかくこともあるでしょう。そこで、このコラムでは日本語を勉強している外国人向けに、誤用されやすい言葉をクイズ形式で紹介します。誤用されている日本語の正しい使い方・意味を把握して、円滑なコミュニケーションを実現しましょう。
目次
誤用されやすい日本語クイズ~使い方編~
ここでは、誤用されやすい日本語の正しい使い方が身につくよう、クイズ形式で出題します。正しい日本語の使い方を身につけたい方は、ぜひ挑戦してみてください。
問1
「敷居が高い」という日本語は、どちらの使い方が正しい?
- 「あの寿司屋は高級店なので敷居が高い」
- 「先日、酒の席で迷惑を掛けたので敷居が高い」
敷居が高いという日本語は、精神的な理由から訪問をためらう様子を表す言葉です。敷居とは、日本家屋にある和室の障子やふすまをはめ込むために溝が彫られた水平材を指します。そのため、室内に入るには必ず敷居をまたがなければなりません。本来、敷居と床の高さは同じです。そんな敷居が高く感じるのはどうしてなのか、考えて回答してみましょう。
問1の正解は、2.「先日、酒の席で迷惑を掛けたので敷居が高い」です。敷居が高いの正しい用法は、「相手に悪いことをしてしまったので、近寄りがたい」なのですが、多くの日本人は「ハードルが高い」「高級すぎる」という意味で使っています。世間一般で使われているのは誤用なので、間違えて覚えないように注意しましょう。なお、昨今では誤用を誤用を正しい用法として認める動きもあります。今後用法が変わる可能性もあるので、動向をチェックしておきましょう。
問2
「募金」という日本語は、どちらの使い方が正しい?
- 「被災地支援のために募金した」
- 「募金の結果、100万円以上集まった」
ハンディキャップのある人々や災害に遭った人などを支援するために行う行為が、募金です。選択肢の1ではお金を出すことを「募金」といっている一方、2ではお金を集めることを「募金」としています。どちらの用法が正しいのか見極めるには、漢字が持つ意味に注目するのが大切です。
問2の正解は、2.「募金の結果、100万円以上集まった」です。支援のためにお金を払うことを募金という方は多いですが、誤用なので注意しましょう。募金とは、お金を集める・寄付を募る行為です。そのため、お金を払う側が募金するということはありません。支援のためにお金を払うのは、日本語で「寄付する」といいます。募金と寄付は対になる言葉なので、覚えておくと良いでしょう。
問3
「なし崩しに」を正しく使っている例文は次のうちどれ?
- 休んだ間にたまった仕事を、なし崩しに片づけていく
- 面倒なことはなし崩しに済ませる
- あの人は都合が悪いことはなし崩しにして逃げる
なし崩しは、誤用されやすい日本語の一つです。世代に関わらず多くの日本人が誤用しており、ビジネスシーンでも誤った使い方をしている人は珍しくありません。
本来のなし崩しという日本語は、「一気に」「すぐに」といった言葉と正反対の意味を持っています。この内容を参考に解答を考えてみましょう。
問3の正解は、「休んだ間にたまった仕事を、なし崩しに片づけていく」です。日本語を勉強している方は覚えておきましょう。なし崩しの本来の意味は、物事を少しずつ進める・借金を少しずつ返すことです。しかし、世間一般では、物事を適当に済ませたりなかったことにしたりする言葉として誤用されています。誤用されやすい日本語を使う際は、正しい用法を理解するのはもちろん、誤解を招くような使い方をしないのが大切です。相手が言葉の正しい用法を知らない可能性を考慮して、できるだけ分かりやすい日本語で話すよう、心掛けましょう。
問4
「役不足」を正しく使っている例文は次のうちどれ?
- 大役を任されてしまい、役不足ではないか心配している
- あの人は優秀だから、課長程度では役不足だろう
- 役不足ですが、精一杯頑張ります
役不足はビジネスシーンでよく使われる日本語ですが、ほとんどの人が誤用しています。役不足に似た言葉に「力不足」があるのも、誤用が多い原因の一つでしょう。力不足は、役目を果たすには能力・実力が足りないという意味です。役不足と力不足は漢字は似ていますが意味は異なるので、この情報をもとに解答を考えてみましょう。
問4の正解は、「あの人は優秀だから、課長程度では役不足だろう」です。役不足とは、能力に対して役目が不足していることを表します。ほかの選択肢の例文の場合は、役不足ではなく力不足というのが適切です。謙遜のつもりで「役不足ですが頑張ります」というと失礼になります。
日本人でも誤った使い方をするほど、日本語は難しい言語です。「日本語が難しい理由って?ほかの言語と比較してみよう」では、外国人向けに日本語が難しい理由をまとめています。日本語学習が難しく感じたりモチベーションが下がったりしている方は、気分転換にチェックしてみましょう。
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誤用されやすい日本語クイズ~意味編~
誤用されやすい日本語を正しく使うには、言葉の意味を知ることが大切です。ここでは、誤用されやすい日本語の意味を楽しく覚えられるよう、クイズ形式で出題するのでチャレンジしてみてください。
問1
「すべからく」の正しい意味は?
- すべて
- 当然
- 統一する
すべからくは誤用されやすい日本語の一つです。漢文調の古い言い回しであるすべからくは、ビジネスシーンを中心に使われています。誤用してしまうと恥をかくので、正しい意味と使い方を覚えましょう。すべからくのあとには、「〜べき」「〜べし」といった言葉が続きます。このヒントをもとに、どれが正しい意味か考えてみましょう。
すべからくの正しい意味は、「当然」です。ほとんどの人は発音の印象から「すべて」「ことごとく」という意味だと思っていますが、誤用なので注意しましょう。なお、すべからくは漢字で「須く」と書きます。正しい使い方と意味だけでなく、漢字での書き方も覚えておくと、いざというときに役立つでしょう。
問2
「煮詰まる」の正しい意味は?
- どうしようもない状態になる
- 議論が十分に交わされて結論が出る
- アイデアが出ず議論が進まない
煮詰まるは、煮物料理を作る様子を議論の進捗にあてはめて使う日本語です。主にビジネスシーンで使われる言葉ですが、多くの人は煮詰まるを誤用しています。世間一般では、煮詰まるはネガティブなイメージがある言葉です。このヒントをもとに、正解がどれか考えてみましょう。
煮詰まるの正しい意味は、「議論が十分に交わされて結論が出る」です。一般的には「議論が進まない」という意味で使われていますが、本来の意味とは異なります。なお、煮詰まるが誤用されやすいのは、物事が進まないという意味の「行き詰まる」と混同されたり料理が煮詰まって失敗したりするイメージがあるからです。
問3
「小春日和」の正しい意味は?
- 穏やかで暖かい春の天気
- 穏やかで暖かい冬の天気
- 穏やかで暖かい秋の天気
小春日和の正しい意味を読み解くには、漢字にとらわれない考えが大切です。春という漢字が入っているため、小春日和は春の穏やかで温かい天気を表す言葉だと思われがちですが、実際の意味は異なります。以上のヒントをもとに、正解がどれか考えてみましょう。
小春日和の正しい意味は、「穏やかで暖かい冬の天気」です。「小春」は太陰暦の10月の異名でもあり、太陽暦では11〜12月ごろにあたります。そのため、小春日和が表すのは、穏やかで暖かい冬の天気なのです。なお、春の穏やかで温かい天気は「春暖(しゅんだん)」といいます。春に「今日は小春日和ですね」というのは誤用なので、恥をかかないように覚えておきましょう。
問4
「憮然」の正しい意味は?
- 腹立たしくてムスッとしている
- 失望してぼんやりしている
- 悲しくて泣いている
憮然の正しい意味が知りたい方は、漢字に着目してみましょう。「憮」には、いつくしむ・がっかりするといった意味があります。「然」は状態を表す際に使われる漢字なので、単純に考えると憮然の意味は「いつくしんでいる」「がっかりしている」のどちらかです。以上のヒントを参考に、どの選択肢が正解か考えてみましょう。
憮然の正しい意味は、「失望してぼんやりしている」です。腹立たしくてムスッとしている様子を「憮然とした態度」「憮然とした面持ち」というように表現する人もいますが、誤用なので使ってはいけません。なお、腹だしくてムスッとしている様子は日本語で「憤慨(ふんがい)」「立腹(りっぷく)」といいます。
外国人向けの日本語クイズは、「外国人向け日本語クイズ!何問答えられるかチャレンジしてみよう」でも出題しています。初級・中級・上級に分けて出題しているので、日本語力アップを目指している方はチャレンジしてみてください。
誤用が正しい使い方として定着した日本語もある
長く使われるうちに、誤用が正しい用法として定着した日本語は少なくありません。日本語には、似たような発音・書き方をする言葉が数多く存在します。そのため、間違った言葉遣いが広まることが多いのです。たとえば、「姑息」の本来の意味は「その場しのぎ」「間に合わせ」です。しかし、本来の意味での「姑息なやり方」が「卑怯」「ずるい」と非難されるうちに、「姑息=卑怯」と考えられるようになったといわれています。
日本語の誤用を勉強しておくと雑学的な知識が身につくうえ、相手が正しい用法で日本語を使っていないときもスムーズに意図を読み取れるでしょう。日本語を勉強するうえで正しい言葉遣いを心掛けるのは大切です。しかし、相手にも正しい言葉遣いを強要し、誤用を逐一指摘するのは良いコミュニケーションとはいえません。日本語の誤用を指摘し続けると、相手が嫌な気分になったりコミュニケーションが取りにくくなったりする可能性があります。辞書に載ってないからといって、相手の発言を否定するのはやめましょう。
まとめ
日本語は発音や漢字が似た言葉が多く、誤用が起きやすい言語です。そのため、日本語を勉強している方は正しい用法をきちんと把握する必要があります。クイズを通して日本語の誤用について学び、正しい言葉遣いを身につけましょう。なお、日本語の中には誤用が正しい用法として認められた言葉もあります。世間一般で広まった誤用が正しい用法に転じるケースがあるので、柔軟に対応しつつ日本語能力の向上を目指しましょう。