日本の若者が会話のなかでよく使う「やばい」の意味を、詳しく知りたい方もいるでしょう。「やばい」は本来、良くない意味で使われていた表現です。しかし、現代ではポジティブな意味合いで使われることも多くなりました。
このコラムでは、「やばい」の意味を紹介。また、実際の会話での「やばい」の使い方が分かる例文も10個紹介しています。内容を参考にして、適切な場面で使えるようになりましょう。
目次
やばいの意味は時代によって変化している
現代の日本人、特に若者はさまざまなシチュエーションで「やばい」を使います。しかし、もともとは多様な意味がある言葉ではありませんでした。年月の経過によって、本来の意味からあらゆる状況を表現できる言葉へ変化していったのです。ここでは、「やばい」の意味を紹介します。
本来のやばいの意味
本体、「やばい」は「危険」「不都合」など、良くないことが予想される状況を表す言葉でした。由来は諸説あり、そのなかでも有力なのは、犯罪者の間で隠語として使われ始めたという説です。江戸時代、犯罪者が投獄される牢屋は「厄場(やくば)」と呼ばれてました。犯罪を犯した人にとっては、牢屋や看守は関わりたくない存在です。犯罪者の間では「捕まりそう」「悪いことがばれそう」など、自分達にとって良くない状況を隠語で「やば」と言うようになりました。そこから、好ましくない状況全般で「やば」が使われるようになり、「~い」のイ形容詞のかたちになったのが現在の「やばい」との説が有力です。
上記のほかに、射的場を表す「矢場(やば)」から派生したとの説もあります。
江戸時代、矢場は治安の悪い場所でした。矢場に近づくと犯罪に巻き込まれたり犯罪者と間違えられたりする可能性があったことから、「矢場=良くないものや出来事」との意味になったといわれています。そこから、よくないものや出来事を指す際に「やばい」と言うようになったと考える言語学者もいるようです。
現代のやばいの意味
前述したように、本体「やばい」は危険なことや不都合な出来事などを表す、否定的な意味を持つ言葉です。しかし現代では、もともとの意味に加え、肯定的な意味合いで使われることも非常に多くなりました。それにより、現代ではさまざまな感情や状況を「やばい」の一言で表せます。
現在、「やばい」で表現できる感情や状況の一例は以下のとおりです。
- 美味しい
- 可愛い
- 強い
- 楽しい
- かっこいい
- 綺麗
- 素敵
- 感動する
- 凄い
- 似合う
- 上手くいった
- びっくりした
- 意外
- 好き
- まずい
- 嫌い
- 体調が悪い
- 追い詰められる
- 怖い
- 危険
- 気味が悪い
- かわいくない
- かっこわるい
- 似合わない
- 不快
このほかにも、「やばい」で表現できる感情・状況はあります。良い意味・悪い意味のどちらなのかは、前後の会話や相手の声のトーン、表情などで見分けなければなりません。たとえば、会話の相手が、笑顔で嬉しそうに「新しい先生、やばい!」と言ってきたら、新しくきた教師に好感を持っているとの意味です。一方、沈んだ様子で「新しい先生…やばい…」と言われたら、嫌悪感を持っていると判断できます。
日本の若者は、「やばい」のほかに本来の言葉を省略した「略語」もよく使います。「日本語の略語クイズ!正式名称や若者言葉を答えられるか試してみよう!」では日本語の略語をクイズ形式で紹介しているので、ぜひご覧ください。
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やばいを使った例文と意味
ここでは、「やばい」を使った日本語の例文と意味を解説します。実際に良く使われている会話表現ばかりなので、参考にしてください。
例文1
「あの監督が撮った映画はやばいからすべて見ているよ」
(あのかんとくがとったえいがはやばいからすべてみているよ)
ただ「あの監督が撮った映画はやばい」だと、「つまらない」「こわい」「過激」などネガティブな意味の可能性もあります。しかし、あとに「すべて見ている」と続くため、この場合の「やばい」は「面白い」「クオリティが高い」「感動する」など、ポジティブな意味です。
例文2
「最近食べ過ぎてしまってやばい」
(さいきんたべすぎてしまってやばい)
「食べ過ぎて体重が増えてしまうかもしれない、どうしよう」のニュアンスで「やばい」が使われています。
例文3
「やばい!寝坊した」
(やばい!ねぼうした)
「大変だ」「やってしまった」「どうしよう」などの意味で「やばい」が使われています。また、「やばい」は感嘆詞としても使われるため「うわ!」「わあ!」「きゃあ!」などの意味とも捉えられるでしょう。
例文4
「このお菓子やばいからおすすめ!あなたも食べてみて」
(このおかしやばいからおすすめ!あなたもたべてみて)
食べ物に対しての「やばい」は、「美味しい」「まずい」両方の意味で使われます。この例文では、お菓子を食べるよう相手に勧めているので、「美味しい」の意味で「やばい」が使われていると想像できるでしょう。
例文5
「今日は暑くてやばいね、倒れてしまいそう」
(きょうはあつくてやばいね、たおれてしまいそう)
この例文の「やばい」は、暑すぎて体が「辛い」「しんどい」という意味です。
例文6
「昨日、楽しみにしていた▲▲のコンサートに行ったよ!本当にやばかった!」
(きのう、たのしみにしていた▲▲のコンサートにいったよ!ほんとうにやばかった」
「やばい」は過去形だと「やばかった」に変わります。この文章の「やばい」は前に「楽しみにしていた」とあるので、「とても良かった」「最高だった」という意味です。
例文7
「あの人は怒らせたらやばいよ」
(あのひとはおこらせたらやばいよ)
怒らせたら「大変なことになる」「恐ろしい目に遭う」「面倒なことになる」などの意味で、「やばい」が使われています。
例文8
「いくら高級ブランドとはいえ、このねだんはいくら何でもやば過ぎる」
(いくらこうきゅうぶらんどとはいえ、このねだんはいくらなんでもやばすぎる)
「やばい」をさらに強調するため、一定の数量を超えるという意味合いの「~過ぎる」をつけることもあります。値段に対しての「やばい」は、安いときにも高いときにも使う表現です。この例文では、文の始めに「いくら高級ブランドとはいえ」とあるので、「高すぎる」という意味になります。
例文9
「彼のスタイルはマジでやばい、モデルみたいだよ」
(かれのすたいるはまじでやばい、もでるみたいだよ)
「マジ」は、「やばい」と一緒に使われることが多い言葉です。「本当に」「真面目に」「真剣に」などの意味があります。「スタイルがマジでやばい」のみだと、スタイルが悪いと言うときにも使う表現です。しかし、この例文では「モデルみたい」と続くので「スタイルが良い」の意味で「やばい」が使われています。
例文10
「あの2人は雰囲気がやばいから、喧嘩しないよう見張っておいて」
(あのふたりはふんいきがやばいから、けんかしないようみはっておいて)
「雰囲気が悪い」との意味で「やばい」が使われている例文です。「雰囲気が良い」と言うときに「やばい」を使う場合もありますが、「喧嘩しないよう」と続くためネガティブな意味で使われていることが分かります。
やばいは使い過ぎに注意しよう
「やばい」は、さまざまな状況・シーンを表現できる便利な言葉です。しかし、使い過ぎには注意しなくてはなりません。
相手に「語彙力」がないと思われる可能性がある
会話で「やばい」を連発すると、「語彙力」がないと思われる可能性があるので注意しましょう。
「やばい」はどのような状況や感情も表現できる言葉です。しかし、ほかに表現できる言葉があるのにも関わらず「やばい」だけで済ませてしまうと、言葉の種類が少なく話していてもつまらない人だと思われる可能性があるでしょう。また、「やばい」を使うとそこで会話が終わりやすくなります。積極的にコミュニケーションで用いるのは避け、周囲の雰囲気に合わせて適度に使うようにしましょう。
「やばい」はあくまで親しい人同士で使う言葉であり、目上の人やビジネスシーンで関わる人には使えません。普段「やばい」を連発していると、いざというときに相応しい表現が出てこなくなります。恥をかかないためにも、語彙力を養うことは忘れないようにしましょう。
なお、ビジネスシーンに使える言葉は「ビジネスで使う基本的な日本語の例文を場面ごとに紹介!」や「日本語のビジネス用語を外国人向けに紹介!今さら聞けない言葉の意味を解説」のコラムで取り上げています。目上の人との会話に役立つ言葉もご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
ほかの表現とバランスを見て使う
「やばい」は、ほかの表現とバランスを見ながら使いましょう。たとえば、素晴らしい芸術や演劇を観たときに、自分の興奮具合を伝えるために「やばい!」を使うのは問題ありません。しかし、観た芸術の素晴らしさや内容を伝えるときに、「とにかくやばかった」「やば過ぎる」などと言っても何も伝わらないでしょう。ほかの表現とのバランスを意識しながら、要所要所で使うのが大切です。
まとめ
「やばい」は日本の若者の間で盛んに使われる表現です。良い内容も悪い内容も表現できて便利ですが、使い過ぎるのは良くありません。相手との関係性や会話の内容を考慮し、適切に使えるようになりましょう。