日本では、慌ただしく動き回っている状況や忙しくて余裕がないときに、よく「バタバタする」という表現をします。忙しいことを柔らかく伝えられるのでよく使われますが、相手によってはほかの表現に言い換えなければ失礼に当たる可能性も。特に、ビジネスシーンではなるべく別の表現にしたほうが良いでしょう。
この記事では、「バタバタする」の言い換え表現として使える言葉を紹介します。適切な表現を知れば、より周囲の人とコミュニケーションが取りやすくなるでしょう。
目次
「バタバタする」の意味とは
バタバタするの意味は、比喩の意味と本来の意味で異なります。日本では日常的によく使う表現なので意味を覚えておきましょう。
本来の意味
本来の意味の「バタバタする」は、手足を激しく動かしたり物体が相次いで倒れたりするときに使います。いわゆる、オノマトペ(擬音語・擬態語)の一種です。日本語は使われる音の種類が少ない分、こういったオノマトペを多用します。
ほぼ同じ意味の「パタパタ」は、バタバタよりも軽いニュアンスのときに使われる表現です。
比喩での意味
「バタバタする」は、忙しく慌ただしい状態を表現するときに比喩的な意味で使われることもあります。むしろ、普段は比喩で使うほうが多いでしょう。実際にバタバタと手足を動かしているわけではなくても、それほど急いでいる状況を表すときに使います。
英語では、「慌ただしい」の意味がある「hectic」や「忙しい」の意味がある「busy」「full」に言い換え可能です。
オノマトペについては「オノマトペとは?意味や使い方を覚えて表現を豊かにしよう」や「日本語のオノマトペクイズ全30問を出題!楽しく学びたい人におすすめ」の記事で多数紹介しているので、興味のある方はぜひご覧ください。
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「バタバタする」の例文
「バタバタする」は忙しい状況を表す比較的カジュアルな言葉です。一般的に、家族や友人など比較的近しい人に使います。ストレートに「忙しい」と伝えるよりも、やんわりと状況を伝えることが可能です。
以下では、シチュエーションとともに「バタバタする」の使い方を紹介します。
・友達へのメールの返信が遅れたとき
「ごめん!移動でバタバタしてて今携帯を見たよ」
・同僚に仕事を依頼されたとき
「ごめん、今日はバタバタしているので難しそう」
・友達から週末遊びに誘われたとき
「残念だけど、週末は家の引っ越しでバタバタしそうで…」
多くの人は「バタバタする」と聞くと状況を理解してくれ、細かく状況を聞いてきません。
誘いや頼まれごとを断る際は、「すみません」「申し訳ありません」などの謝罪の言葉をあわせて言うと角が立ちません。「sumimasen(すみません)の意味や正しい使い方を紹介!」や「「gomen」はどのような場面で使う日本語?意味を知って正しく使おう!」の記事では、さまざまな謝罪の言葉をまとめているのでチェックしてみてください。
「バタバタする」は言い換えたほうが良い場面もある
「バタバタする」はカジュアルな表現なので、目上の人やビジネスの相手に使うのは基本的に避けましょう。特に、取引先の相手とのやり取りや頼まれた仕事が遅れている状況で、「バタバタする」を使うのは適切ではありません。真剣さが足りないと思われて、相手に不快感を与える可能性があります。
ただし、ビジネスシーンでも、同僚や部下、特に親しい相手との会話では使用しても問題ありません。相手との立場の違いや状況を考慮し、適切な場面で使用しましょう。
日本では目上の人には敬語を使います。「日本語の敬語の種類や使い方を外国人に向けて解説!」や「日本語の敬語5種類の一覧!使い分け方もわかりやすく解説」の記事を参考にして、日常的に使う敬語を使えるようになりましょう。
「バタバタする」のビジネスシーンで使える言い換え表現
前述したとおり、「バタバタする」は相手によってビジネスシーンで使えないケースがあります。そのようなときは、以下で紹介する言い換え表現を使ってみましょう。
立て込んでいる
「立て込んでいる」は「多くの用事が一時的に重なっている様子」を表し、「バタバタする」の丁寧な言い換え表現として使われます。ビジネスシーンでは、複数の仕事が舞い込んできて忙しい状況を表す際によく用いられる言葉です。
【例】
「その日は立て込んでおりますので、△日に変更は可能でしょうか」
「申し訳ありませんが、立て込んでおりましてお受けするのが難しそうです」
バタバタするを「立て込む」に言い換えると、「要望には応えたいけれども、忙しくて相手の希望に添えない」というニュアンスを表現できます。そのため、直接的に「忙しい」と断るよりも角が立たないでしょう。
追われている
「追われている」は、やるべきことの対処や締め切りに間に合わせることに必死で、非常に忙しい様子を表す言葉です。
【例】
「△△さんは、新しく任された仕事に追われているので代わりに私が引き受けます」
「現在は問い合わせ対応に追われている状況なので、人員の増員をお願いできないでしょうか」
大して忙しくない状況で「追われている」を頻繁に使うと、仕事の処理能力が低いと判断される可能性があります。本当に余裕がないときに使うようにしましょう。
余裕がない
「余裕がない」は余りや余計な部分がない状況を表します。時間や人員、資金などさまざまな事柄に対して使える言葉です。
【例】
「皆余裕がなさそうですね。一度本当にやるべきことを整理したほうがいいと思います」
「今日はミーティングを組む余裕がないので、来週にしましょう」
「余裕がない」は、ほかの言葉よりも話し手の心情が強く出ている言葉といえるでしょう。
手一杯
「手一杯」は、やることがたくさんある状況を「手がふさがっている」という比喩で表現した言葉です。
【例】
「新入社員を受け入れたいですが、先月入社した新人の教育で手一杯です」
「手一杯なときは言ってください。自分も手伝いますよ」
余裕がないことを直観的に伝えられる言葉です。
手が回らない
「手が回らない」は、手一杯とほとんど同じ意味です。「手が回る」は、やるべきことに注意が行き届いている状況を表します。その「手が回る」を「ない」で打ち消しているので、「やるべきことができていない」という意味になるのです。
【例】
「今はその案件にまで手が回らないから、メールで詳細を送ってほしい」
「手が回らなくなる前に準備を整えておこう」
似たようなシチュエーションで、「手が離せない」を使うこともあります。
忙殺されている
「忙殺(ぼうさつ)されている」は激しく忙しい状況を表す言葉です。バタバタするの言い換え表現のなかでも、特に忙しさの度合いが強いといえるでしょう。
【例】
「雑務に忙殺されていて一番大切な資料作成が進まない」
「あの部署は業務に忙殺されて、体を壊す人が多いらしい」
強い表現の言葉なので、相手が目上の場合は使用を避けるのが無難です。
多忙
「多忙」も、バタバタするの言い換えとして使えます。自分の忙しさを表す以外に、相手の状況を表すときも使用可能です。
【例】
「本日はご多忙の中、わざわざ足を運んでいただき申し訳ございません」
「現在多忙を極めておりまして、問い合わせ対応を中止しています」
少し固い印象なので、日常会話ではあまり出てこない表現です。
取り込み中
「取り込み中」は、ビジネスシーンでよく使われる表現です。忙しくて手が離せない状況を、失礼のないニュアンスで伝えられます。先に紹介した「立て込んでいる」とほとんど同じ使い方が可能です。
【例】
「佐藤部長は今取り込み中でして、後ほど折り返すように伝えます」
「今、取り込み中です。出直していただけますか」
「バタバタしています」よりもかっちりとしている表現なので、ビジネスの場ではなるべく意識して使いましょう。
まとめ
「バタバタする」は「慌ただしかったり忙しかったりする様子」を表している言葉です。カジュアルな表現のため、目上の人や取引先の相手には使いません。
ビジネスシーンでは、「立て込んでいる」「取り込み中」「余裕がない」などの言葉に言い換えると良いでしょう。