上司に「たたき台作っておいてね!」と言われ、どうしたらいいのかと悩んだ経験がある社会人は多くいます。たたき台とは、企画書を作る前段階で用意するアイデアノートのようなもの。企画のコンセプトや目的、全体像などをまとめるために作成します。このコラムでは、たたき台の意味やつくり方のコツをまとめて解説。社会人なら知っておいて損はない知識を紹介するので目を通してみましょう。
目次
たたき台とは
たたき台は漢字で書くと「敲き台」となり、アイデアとまではいかない思いつきやひらめきを昇華するために作る原案のことを指します。会議のために企画出しをするうえで作成を求められることが多く、たたき台をもとにしっかりとした構想を考えて発表するのが一般的です。
たたき台という文字から、なかには「何かを叩くための台」「バッシングの案」と誤解する人もしばしば。たたき台は新しく何かを作るためには必要不可欠な工程で、指示を即座に理解できるように言葉の意味をきちんと覚えておきましょう。
たたき台の語源
たたき台の語源は、熱した鉄を成形する際に使用する台です。刀をはじめとする鉄製品を作る際、たたき台のうえで金槌を使って溶けた鉄を目的の形に整えます。つまり、作り手次第でどのような形にもなる鉄の塊を、少しずつ手を加えて一つの製品になる手助けをするのがたたき台の役割です。
同じようにビジネスシーンでは自らの発想に手を加え、人からアドバイスを受けたり構想を肉付けして完成に近づけたりするため、たたき台という言葉が使われています。
たたき台を使った例文
ここではたたき台の例文を紹介します。正しい使い方や意味をしっかり覚えて、仕事に活かしましょう。
「たたき台レベルで良いから会議資料を作成して」
上司や先輩からこのように言われたら、「大まかな会議資料を作ってほしい」という意味になります。会議までに日数があり、事前に資料の方向性を確認したいときにたたき台を求められるでしょう。資料の目的や会議に必要な情報・項目がそろっていれば、たたき台としては十分です。
「このたたき台をもとに企画を考えよう」
たたき台は企画案を作る前段階の草案です。そのため、たたき台を作成したあとにきちんとした企画書へのブラッシュアップを求められるでしょう。ビジネスの場ではよく耳にする言葉です。作成したたたき台と周りの人からもらったアドバイスをもとに、企画案を作成しましょう。
「日本語のビジネス用語を紹介!今さら聞けない言葉の意味も解説」では、会社で耳にする機会が多いビジネス用語を紹介しています。聞きなれなかったり意味が分からなかったりする言葉がある方は、あわせてチェックしてみましょう。
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たたき台の言い換え・類語
たたき台と同じ意味を持つ言葉は「原案」「草案」「試案」など。同じ言葉を繰り返し使っているとしつこい印象になってしまうため、類語や言い換えに使える単語を覚えておきましょう。場面に応じて適切な言葉選びができると、周りの人に好印象を与えられます。
原案
原案とは、議論や検討のために最初に出される案のことです。単純にアイデアとの意味もあります。たたき台の言い換えに適切な言葉といえるでしょう。
草案
草案とは、文章の下書きを意味する言葉です。かしこまった表現なので日常会話で耳にすることはあまりありませんが、ビジネスシーンではたびたび使われています。草稿と呼ぶこともあり、どちらも「木になる前の段階=草」が転じて前段階を意味する言葉です。
試案
試案は仮案ともいい、試しに組み立てた仮の案を指します。条件を変えたり内容を整えたりと、何度も試行錯誤するためたたき台の言い換えとしてふさわしいでしょう。
下書き
たたき台は企画案や資料のもとになる文章のため、単純に下書きと言い換えることもできます。ビジネス用語に詳しくない人を相手に話すときは、「下書き」「原案」といった分かりやすい言葉を使うのが無難です。
draft
「draft」は下書きや草案を意味する英単語です。外国人にたたき台の作成を求める際は、draftと伝えたほうが分かりやすいでしょう。
ビジネスの場でたたき台を求められる理由
議論や発表を盛んにするには、綿密に練った成案が必要です。粗が目立つ案が多かったりそもそも提案が少なかったりすると、良い成果は出ません。仕事でたたき台を作る機会がある方は、「なぜたたき台が必要なのか」を理解し、案をまとめる際の参考にしてください。
企画や資料を形にするため
資料や企画をきれいにまとめるには、たたき台が必要不可欠です。たたき台なしで企画案や資料の作成を行うと、「情報がまとまっていない」「テーマに一貫性がない」「主張やターゲットが分かりにくい」といったデメリットがあります。下書きなしで作られた案はクオリティが低くなる傾向になるので、できればたたき台の作成から始めましょう。
アイデアのもとになる情報をまとめるため
情報を書き溜めたたたき台は新たなアイデアの創出に役立ちます。具体的にどうすれば実現できるか分からないこと、実例を参考にやってみたいことなどをまとめ、成案を作りやすくするのもたたき台を作成する理由の一つです。たたき台の段階では思いついたことを自由に書き出し、周りの人にアドバイスをもらったりデータを参考にしたりしながら、修正を加えていきます。問題点を一つひとつ解消していくうちに、会議や議論で発表できる案の原型が生まれるでしょう。
ひらめきをアイデアに昇華しやすい
0から1を生み出すのは簡単ではありません。案を練るときはたたき台を使って情報を整理したほうが、思考がまとまりやすく良いアイデアが浮かびます。頭のなかだけで情報を整理して成案を作成することも不可能ではありませんが、参考にするデータや資料が多いと立案に時間が掛かる場合も。ミスも起きやすくなるので、パソコンに打ち込む・紙に書くといった方法をとるのが無難です。考えを書き起こしておけば、あとからの修正も簡単にできます。
良いたたき台を作成するコツ
「たたき台を作るのが苦手…」「初めてでどうすればいいのか分からない」という方は、以下で紹介するたたき台作りのコツを参考にしてみましょう。
完璧を目指さない
たたき台はあくまでも情報をまとめ、成案の完成を手助けする下書きです。そのため、内容を完璧に仕上げる必要はありません。たたき台を作る際は、作った内容はアドバイスや指摘をもらえることを念頭に置きましょう。「十分な検証ができていない」「ロジックを詰め切れていない」と焦ることもありますが、心配は無用です。現時点で用意できている情報だけで作成できる範囲を埋め、「※未検証部分あり」というように注釈を添えておけば問題ありません。
コンセプトをしっかり固める
たたき台で完璧を目指す必要はありませんが、コンセプトやテーマに一貫性を持たせることは大切です。「なんのために案を出すのか」という軸が明確になっていれば、コンセプトやテーマがぶれる恐れはありません。提案する理由や相手、目的に応じたコンセプトはたたき台の段階ではっきりさせておきましょう。
少しでも早く提出する
たたき台の提出はスピードが命です。きちんとした成案と違ってアイデアや枠組みをまとめるだけなので、作成指示を受けたらできるだけ早めに提出しましょう。たたき台に長い時間が掛かっている場合、内容を確認する相手は「よほど大作なのだろう」「ほとんど成案の状態のはずだ」と考えるため、提出のハードルが上がります。まずは粗があることを前提に提出し、相手の反応から手ごたえを確かめるのがおすすめです。たたき台を確認してもらうときはできるだけ意見を引き出し、ブラッシュアップのための改善点を洗い出しましょう。
何度もブラッシュアップを重ねて完成を目指す
たたき台は納得がいくまで何度も手を加えてOKです。たたき台を見せた相手からもらった指摘・アドバイスをもとに改良を重ねましょう。「たたき台は1回でOKをもらえるのがベストなのでは?」と思う人もいますが、何度も手直しするということは、それだけ議論が煮詰まっているという証拠です。また、上司や先輩と幾度となくやり取りをするので状況を把握してもらいやすくなります。成案が出来上がったときに質問されるであろうポイントや懸念点も浮かび上がるので、たたき台は何度も手を加えて完成を目指すのがおすすめです。
まとめ
たたき台は、良い企画書や提案書を作るうえで欠かせない下書きです。たたき台を作る際は今ある情報をもとに手早く内容をまとめ、上司や先輩に確認してもらい改善に向けたアドバイスを受けましょう。はじめは粗が目立つたたき台も、何度も提出・確認を繰り返して改良していくうちに、素晴らしい企画や発表になります。