技人国(ぎじんこく)ビザは、「技術・人文知識・国際知識」の頭文字を取って短縮した呼び方です。幅広い職種が該当するので、取得する人がとても多いことで知られています。
このコラムでは、技人国ビザの概要や該当する業務を紹介。また、取得や更新の方法も解説します。内容を参考にして、ビザ取得の準備をはじめましょう。
目次
技人国ビザってどのようなもの?
技人国(ぎじんこく)ビザとは、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を短くした呼び方です。一般企業で働く外国人の多くが取得します。
専門性を活かした仕事に就く人が取得するビザ
技人国ビザは専門性の高い仕事に就く人が取得するものです。ビザとは本来入国査証(VISA)のことですが、在留資格を指す言葉としても用いられる場合があります。
技人国ビザは、もともと分かれていた「技術」ビザと「人物知識・国際業務」ビザが合わさってできました。幅広い職種が該当しますが、どれも専門性が求められる仕事ばかりです。
留学生の多くが卒業後に取得する
日本の大学や専門学校を卒業し、そのまま日本で就職する留学生の多くが技人国ビザを取得します。出入国在留管理庁が発表した「令和4年末現在における在留外国人数について」によると、2023年4月末までに日本にいる外国人3,075,213人のうち、311,961人が技人国ビザで働いています。この数は、永住者ビザと技能実習ビザに続き、3番目に多い人数でした。留学生のみならず、いわゆるホワイトカラーといわれる職種に就く外国人のほとんどが取得するビザです。
一般企業への就職を考えている人は、技人国ビザを取得する可能性が高いことを覚えておきましょう。
ビザについては「さまざまな種類の日本の就労ビザを紹介」のコラムで詳しく紹介しています。
参照元 出入国在留管理庁「令和4年末現在における在留外国人数について」
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技人国ビザに該当する職種とは
ここでは、技人国ビザで就ける職種例を分野ごとに分けて解説します。
技術分野に該当する職種
技術分野は、いわゆる理系と呼ばれる以下の職種が当てはまります。
- システムエンジニア
- プログラマー
- 産業機械の設計や開発業務
- CADオペレーター
- 建築や土木分野の設計者
- テクニカルサポート
日本はIT技術者が不足している状況です。そのため、多くの外国人が技人国ビザを取得し、システムエンジニアやプログラマーとして働いています。
人文知識に該当する職種
人文知識は、いわゆる総合職に当たる職種の多くが該当します。
- 営業
- コンサルティング
- 人事
- 総務
- マーケティング
- 経理
- 企画
このほかの事務系職種でも、技人国ビザが許可される場合があります。
国際業務に該当する職種
国際業務は、外国人ならではの思考や感受性を活かす仕事が該当します。
- 翻訳
- 通訳
- 民間語学教室の教師
- 広告業
- 貿易業務
- ファッションデザイナー
- インテリアデザイナー
上記以外でも、母国語を活かして働く職種であれば許可される場合があります。
技人国ビザの要件
技人国ビザを得るには、以下の条件をすべて満たしている必要があります。
学歴や職歴の条件を満たしているか
技人国ビザを得るには、学歴もしくは職歴要件のどちらかを満たさなくてはなりません。
学歴要件
日本の短期大学や大学、大学院を卒業していれば、専攻と関連する分野で技人国ビザの取得が可能です。日本の専門学校を卒業している場合、専門士の資格を取得していれば取得条件を満たせます。日本語学校卒業では、技人国ビザの取得要件を満たしません。
海外の学校の場合、大学や大学院、短期大学を卒業している必要があります。また、大学卒業に該当する学歴も対象です。海外の専門学校卒業では、技人国ビザは取得できないので注意しましょう。
職歴要件
学歴要件を満たせなくても、10年以上(国際業務は3年以上)の実務経験があれば技人国ビザを取得できます。また、実務経験には、学校で関連する科目を勉強していた期間を合算させることも可能です。
業務と経歴が合っているか
技人国ビザを取得するには、行う業務と経歴に関連がなくてはなりません。たとえば、専門学校でアニメーションを学んだ人が、営業の仕事をするために技人国ビザを申請しても許可されないでしょう。専門学校卒業の場合、業務と学んだ内容の関連性が特に厳しく審査されます。
なお、「国際業務」カテゴリーに関しては短期大学や大学、大学院を卒業していれば、専攻分野は問われません。
就職する企業の経営状況に問題はないか
就職する企業の経営状況が不安定な場合は、技人国ビザの申請が不許可になる場合があります。就職してすぐに企業が倒産し、申請者が生活に困ることを防ぐためです。
技人国ビザの申請時は、決算書や事業計画書などを提出する必要があるので、企業の担当者に頼んで発行してもらいましょう。
日本人と同じ雇用条件か
出入国在留管理庁は、技人国ビザをはじめとしたビザの取得条件の一つに「日本人と同等以上の報酬を受け取れるか」といった内容を定めています。これは、不当な条件で外国人を雇用する企業を無くすための取り組みです。
本人の素行は悪くないか
ビザを取得する際は、本人の素行も確認されます。たとえば、留学中に決められた時間を超えてアルバイトをしていた場合、技人国ビザが不許可になる確率は高くなるでしょう。また、懲役や禁固、罰金刑に処せられた経験がある場合も同様です。ただし、道路交通法違反などの軽犯罪や刑の執行から長い月日が経っている場合は、許可されるケースもあります。
技人国ビザを申請する流れ
技人国ビザは、以下の流れで申請するのが一般的です。
1.働く企業を見つける
技人国ビザは、企業と雇用契約を結んでから申請します。そのため、まず企業の内定を得なくてはなりません。また、先述したように、経歴と業務内容が適合していなければ、申請は不許可になるでしょう。自分の学歴や経歴、行う業務内容を照らし合わせて、応募する企業を決める必要があります。
2.必要な書類を用意する
企業と雇用契約を結んだら、申請に必要な書類を用意します。自分で用意するのは、履歴書や成績証明書、日本語能力を証明する書類などです。企業側に用意してもらう書類も多いので、担当者とコミュニケーションを取りながら準備を進めましょう。
3.ビザに関する手続きをする
書類が揃ったら、住んでいるところを管轄している出入国在留管理官署で手続きをします。すでにほかの在留資格を持って日本で暮らしている人は、「在留資格変更許可申請」を行いましょう。原則として、本人が申請する必要があります。
海外で暮らしている人は「在留資格認定証明書交付申請」が必要です。日本からでしか申請できないので、一般的には企業の担当者が代理申請してくれます。
4.ビザが許可されたら就労を開始する
就労ビザが許可されたら、就労を開始できます。審査には在留資格変更許可申請で平均41日、在留資格認定証明書交付申請では50日程度掛かっているようです(2023年4月~6月分)。入社予定に間に合うように、余裕を持って申請を行いましょう。
在留資格の申請については「在留資格の申請方法や必要書類は?外国人の疑問を解決!」で詳しくまとめています。
参照元 出入国在留管理庁「在留審査処理期間」
技人国ビザの有効期限と更新手続き
ここでは、技人国ビザの有効期限および更新手続きを解説します。あらかじめ理解しておき、いざ手続きをするときにあわてないようにしましょう。
技人国ビザの有効期限
技人国ビザの有効期限は、5年・3年・1年・3ヶ月のいずれかです。一般的に、1回目の申請では短い有効期限が許可されます。有効期限が切れる前に更新手続きを行い、許可されれば引き続き日本在留が可能です。在留状況に問題がないと判断されれば、長めの有効期限が許可されます。
技人国ビザの更新方法
ビザを更新する際は「在留期間更新許可申請」を行います。申請場所は、在留資格更新許可申請や在留資格認定証明書交付申請と同様、住んでいるところを管轄する地方出入国在留管理官署です。在留期間更新許可申請は、あらたに在留資格を取得するよりも手続きがスムーズに進みます。とはいえ、時間に余裕を持って申請するに越したことはないでしょう。
参照元 出入国在留管理庁「在留資格一覧表」
まとめ
技人国ビザは多くの外国人が取得するビザです。さまざまな職種が該当しますが、学歴や経歴条件が適合しないと申請は許可されません。自分が取得要件を満たしているか確認してから、申請を行いましょう。