「いろいろな仕事を経験できる」「時給が高い」などさまざまな理由から、派遣で働くことを選択する人もいるでしょう。外国人は、派遣雇用でも条件を満たせば就労ビザを取得できます。
このコラムでは、派遣雇用で就労ビザを得る際にチェックされるポイントや注意点を解説。就労ビザを無事取得し、日本での生活をスタートさせましょう。
目次
- 外国人は派遣社員でも就労ビザは取れるの?
- 日本の働き方の種類
- 外国人が派遣雇用で就労ビザを得る際の審査条件
- 就労ビザを得て働く派遣社員の外国人が気を付けること
- 派遣で働く外国人は5年ルールについて知っておこう
- まとめ
外国人は派遣社員でも就労ビザは取れるの?
就労ビザの取得条件に雇用形態は含まれていないため、派遣社員として働く外国人でも条件を満たせば取得できます。審査で重要視されるのは、勤務先でどのような業務を行うかです。希望するビザと行う業務内容が合っており、審査要件を満たしていれば派遣社員でも就労ビザを得られます。ただし、審査では外国人が日本で行う活動の「安定性・継続性」も重要な観点です。派遣契約期間が極端に短い場合、正社員と比べるとビザ取得の難易度は上がります。
派遣契約の形態も、外国人の就労ビザの審査に関係します。派遣契約の形態は、大きく分けると「登録型派遣」「常用型派遣」「紹介予定派遣」の3種類です。人材派遣会社と雇用契約を結ぶ点は一緒で、登録型派遣は派遣先での業務終了と同時に雇用契約も終了します。一方、常用型派遣は派遣先で就業する期間が終わっても、人材派遣会社との雇用契約は続く形態です。紹介予定派遣は、後々派遣先の企業に直接雇用されることを前提にした派遣を指します。登録型派遣と比べ、常用型派遣や紹介予定派遣のほうが安定した雇用が見込めるため、就労ビザを取得しやすいといえるでしょう。
就労ビザに関しては「外国人留学生が就労ビザへ変更するには?申請の流れや必要書類を紹介」のコラムで詳しく解説しています。
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日本の働き方の種類
ここでは、先述した派遣雇用も含めた日本の働き方の種類を解説します。日本にはさまざまな働き方があり、もちろん外国人も自分に合った種類を選ぶことが可能です。就労ビザを取得して、日本で働こうと思っている方は参考にしてください。
正社員雇用
正社員とは、企業に直接雇用されている雇用契約の期間に制限のない労働者を指します。また、労働時間が全時間帯(フルタイム)であることも正社員の条件の一つです。なお、近年では勤務時間や勤務地、職務を限定した「限定正社員」という働き方も生まれました。
正社員雇用には、雇用や収入が安定しており昇進や昇給が見込めるメリットがあります。また、社会的信用度も高く福利厚生が充実しているので、多くの人が目指す雇用形態です。一方、仕事の責任が重く勤務時間も長くなりがちなことから、負担を感じやすいといえます。そのため、あえて正社員にならない働き方を選ぶ人も増えているようです。
就労ビザを確実に取得し、なおかつ長い在留期間を得たい外国人は、まず正社員を目指してみましょう。
契約社員雇用
契約社員とは、期間を定めて企業と直接雇用を結ぶ労働者を指します。契約期間が満了しても、企業により更新されれば継続して働くことが可能です。一方、契約更新がなされければ、同じ職場で働き続けることはできません。このように、契約更新のタイミングで仕事を失う可能性があり、雇用が不安定な部分があります。しかし、「転職がしやすくさまざまな仕事を体験できる」「仕事の責任が重くなりにくい」などのメリットもある働き方です。
派遣社員雇用
派遣社員は、派遣会社と雇用契約を結びます。そのうえで、派遣された企業で業務を行い賃金を得る雇用形態です。働く条件や時間などの融通が効きやすく、直接雇用より責任を負いにくいことから、自由度の高い働き方といえます。
パート・アルバイト雇用
パートとアルバイトはどちらも同じ企業に雇用される正社員と比べ、1週間の勤務時間が少ない時給制の労働者を指します。法律上は両方とも「パートタイム労働者」の区分です。しかし、日本では一般的に学生や若者をアルバイト、主婦や主夫などをパートと呼んでいます。
パート・アルバイト雇用は安定性や継続性が見込めるとはいえないため、就労ビザを取得することはできません。日本でアルバイト・パートをしている外国人は、「留学」「家族滞在」などほかのビザを得たうえで資格外活動許可を得ているか、「永住者」「日本人の配偶者等」など身分に基づくビザを持っている人です。
業務委託
業務委託は、労働者が企業と雇用契約ではなく業務委託契約を結びます。労働者は個人事業主となり、行った仕事に対して報酬が支払われる仕組みです。自由な働き方を選択できるものの、収入が不安定になりやすい側面もあります。
業務委託の形態で報酬を得る外国人も、条件を満たせば就労ビザを取得できます。ただし、審査時に業務委託契約で得る仕事が安定しており、先々も継続して報酬を得られることを証明しなくてはなりません。
日本では上記のようなさまざまな形態で働く外国人労働者がいます。「日本で働く外国人労働者の人数は?就労可能な在留資格も紹介」のコラムでは、日本で働く外国人労働者のデータをまとめているので、参考にご覧ください。
外国人が派遣雇用で就労ビザを得る際の審査条件
外国人は派遣雇用でも、就労ビザを得られます。しかし、以下の審査条件を満たさないと取得は難しいでしょう。
行う業務の内容と就労ビザが合っているか
就労ビザの審査では、「該当性」がチェックされます。行う業務が希望する就労ビザと合っていなければ、申請は却下されるでしょう。たとえば、いわゆるホワイトカラー系の職種が該当する「技術・人文知識・国際業務」のビザを希望しながら、実際に行う業務が料理人や職人などの技術職の場合は許可はおりません。派遣形態で働く場合は、希望するビザと派遣先で行う業務が一致しているかよく確認しましょう。
派遣元の企業に違法性がないか
就労ビザの審査では、雇用契約を結ぶ派遣元(人材派遣会社)に違法性がないかも見られます。人材を企業に派遣する労働者派遣事業を行うには、都道府県労働局の許可が必要です。無許可で派遣事業を行った場合、派遣元はもちろん、人材を受け入れた派遣先も、労働派遣法違反で罰せられます。そのような違法な派遣元と雇用契約を結んでも、就労ビザの許可は得られないでしょう。派遣元の労働者派遣事業許可の有無は、派遣契約書で確認できます。「派▲▲ー▲▲▲▲▲▲」といった許可番号の明記があれば、違法性のない派遣元といえるでしょう。
派遣元の経営状況が安定しているか
雇用契約を結ぶ派遣元の経営状況も、就労ビザの取得条件に含まれます。具体的に審査されるのは、企業の実績や売上などです。企業の経営状況が良くないと、就労ビザが不許可となる場合があります。企業の規模によっては、安定性や継続性を証明するための書類を複数用意しなければならないので、時間に余裕を持って依頼しましょう。
日本人と同等以上の報酬が約束されているか
多くの就労ビザの取得条件には「外国人が同じ仕事をする日本人と同等以上の報酬が受け取れるか」との項目があります。不当に低い報酬で働く外国人をなくすための設けられた条件といえるでしょう。派遣形態の場合は、同じ派遣先で同等の業務に従事する日本人が基準になります。
就労ビザの審査については「就労ビザの審査にはどのくらいの期間が必要?外国人留学生に向けて解説」のコラムも参考にしてください。
就労ビザを得て働く派遣社員の外国人が気を付けること
就労ビザを得て派遣形態で働く外国人は、派遣先が変わった際に在留資格外の業務が含まれていないかをよく確認しましょう。また、地方出入国在留管理官署に就業先変更の届出を出すのも忘れてはいけません。
就労ビザの範囲外の仕事をしない
就労ビザを得て働く外国人は、定められている範囲外の仕事をしてはいけません。就労ビザにはそれぞれ許可されている活動があり、その範囲外の業務を行うと不法就労で罰せられます。たとえば、医療ビザのもと看護師として働く外国人が、転職して語学教室で母国語を教える仕事を行うことは許可されていません。民間の語学教室の教師として母国語を教えるのは、「技術・人文知識・国際業務」のビザで行うべき活動です。派遣形態で働く外国人は職場が定期的に変わるので、次の派遣先で行う業務が自分の持つビザで許可されているのか、よく確認してからにしましょう。
就業先が変わったら届出を忘れない
外国人は就業する場所が変わったら、住居地を管轄する地方出入国在留管理官局に届け出なければなりません。派遣形態で働く外国人の場合は、派遣先が変わるたびに届出が必要です。この届出を怠るとビザの更新や変更に悪影響がでる可能性があります。申請の名称は「所属機関(活動)機関に関する届出です。なお、有しているビザの種類によっては届出が不要な場合もあるので、一度確認してみることをおすすめします。
所属(活動)機関に関する届出は地方出入国在留管理官局の窓口のほか、郵送やオンラインでも可能です。
オンラインでのビザに関する申請の方法は「在留資格のオンライン申請が利用可能に!外国人向けに詳しい手続きを紹介」で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
派遣で働く外国人は5年ルールについて知っておこう
派遣形態で働く外国人は、5年ルールについて知っておきましょう。5年ルールとは、有期雇用の無期転換ルールを指す俗称です。期限付きの労働契約が5年を超えた労働者は、企業に対して無期雇用への転換を申し込めます。この制度は企業からの打診ではなく労働者からの申し出が必要なので、覚えておきましょう。派遣形態の場合は、派遣会社との契約期間が通算5年を超えた際に無期転換を申し込めます。
派遣形態での働き方には、5年ルールのほかに3年ルールと呼ばれる制度があります。3年ルールとは、期限がある契約で派遣されている労働者が、同じ派遣先で働けるのは3年までとするルールです。この3年ルールは、派遣元と5年ルールによる無期契約を行えば対象外になります。5年ルールについて知識を付けておくことにより、安定した雇用を得られる可能性が広がるでしょう。
参照元 厚生労働省「無期転換ルールについて」
まとめ
派遣形態で働く外国人も、条件を満たせば就労ビザを取得できます。ただし、派遣契約を結ぶ期間が極端に短いと審査が厳しくなる可能性もあるでしょう。極力派遣会社と1年以上の雇用契約を結んでから、就労ビザの申請を行うのが懸命です。