外国人留学生のなかには、介護や福祉を学ぶために日本に来ている方もいると思われます。
また、専攻が介護や福祉ではなくても、日本の介護システムに興味がある…という方もいるかもしれません。
介護の現状を知るには実際に働くのが一番ですが、外国人留学生は介護の現場でアルバイトできるのでしょうか。
当コラムでは、介護のアルバイトの探し方や働くメリットのほか、正社員として就職するコツもまとめています。
日本で介護に関する知識を深めたい、介護職員として働いていきたいと考えている方は参考にしてください。
目次
外国人留学生が介護のアルバイトをするにはどうすればいい?
日本の介護業界を知りたい、介護技術を身に着けたいという思いから、介護のアルバイトを望む外国人留学生もいるでしょう。
留学生のなかでも、介護福祉養成校に留学している学生が介護のアルバイトを選ぶケースが多め。
これは、学校で学んだことが活かせたり、実務を通してスキルを向上させたりできることが要因と考えられます。
ただし、介護のアルバイトは介護福祉士養成校の生徒だけを対象としているわけではありません。
日本語学校や大学など、専攻が異なる留学生でも、介護に対する興味や学ぶ姿勢があれば働くことは可能。
どんな学校に留学していても、出入国在留管理局に資格外活動の申請を行って許可を得れば、週28時間(長期休暇中は週40時間)までアルバイトができます。
では、介護福祉士養成校の留学生がアルバイト先を探すにはどうしたらいいのでしょうか。
留学中に介護施設でのアルバイトを希望するなら、学校に問い合わせてみるのがおすすめ。
学校にはアルバイトを含めた求人が多く集まっており、外国人留学生が応募できるものもあるようです。
さらに、学校が提携している介護施設やNPO団体等があるかもしれません。
提携先であれば施設の特徴などを把握しやすく、施設側も学生の受け入れ体制を整えているためアルバイトをしやすいと考えられます。
自分でアルバイト先を探しても問題ありませんが、留学生の場合は勤務時間に制限があるので注意が必要。
学校を通せば、留学生が働ける範囲でできるアルバイト先を紹介してもらえるため、安心して働くことができるでしょう。
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介護福祉士養成校の外国人留学生が介護のアルバイトをするメリット
介護福祉士養成校の外国人留学生でも、介護業務以外のアルバイトをすることは可能です。
ですが、介護のアルバイトをすることで以下のメリットが期待できます。
日本の介護の現場を体験できる
日本で介護福祉士養成校に通っているということは、少なからず日本の介護について興味を持っているということでしょう。
アルバイトをすることで、学校の勉強だけではなく実際の介護現場を体験できるのがメリット。
学んだことを実践したり、現場に出ないと分からないことを知れたりと、知見を広めるチャンスになります。
日本語や日本の文化を学べる
介護施設の職員、利用者ともにほとんどが日本人のため、介護施設で使用するのは日本語。
日本語を使う機会が増えるため、語学力の向上につながることもあるでしょう。また、介護現場で使われる業界用語が実際の現場ではどのように使われているのか、どのような略語が使われているのかなども知ることができます。
また、介護施設では季節行事も積極的に行われるため、日本の文化を学ぶこともできます。例えば、多くの介護施設では、お正月や節分の日にはイベントがあります。入居者と一緒に、お正月の料理を食べたり、節分の行事である豆まきをすることで日本文化を実際に体験することができます。
就職につながるケースがある
近年、日本では介護職員のなり手が減っており、人材不足に悩む介護施設も少なくありません。
中には、養成校の学生をアルバイトとして採用し、卒業後にはそのまま社員として雇用する…という方法を取る施設も。
卒業後も介護福祉士の資格を活用して日本で働き続けたいと考えているなら、在学中からアルバイトをして就職につなげるのがおすすめです。
日本で外国人介護職員になるための4つの道
最後に、外国人が日本で介護職員として就職するための4つの方法を紹介します。
以下に挙げたものは、在留期間や対象となる人が異なるので、それぞれの違いや特徴を確認しておきましょう。
EPA(経済連携協定)の外国人介護福祉士候補者になる
EPAとは、日本と相手国の間で経済活動の連携と強化を図るために設けられた制度のこと。
介護分野においては、日本の介護施設で働いたり研修を受けたりしながら、最終的に介護福祉士の資格を取得します。
EPAの特徴として挙げられるのは、以下の3点です。
・母国で介護や看護の知識・経験のある人が対象
・日本入国後、4年以内にに介護福祉士の国家試験を受験する
・合格すれば在留期間を更新して永続的に働ける
ただし、介護分野でEPAを結んでいるのはフィリピンとベトナム、インドネシアの3国のみ。
さらに、国家試験が不合格だった場合は帰国しなければなりません。
実施できる介護サービスにも制限があるのも特徴に挙げられます。
在留資格「介護」を取得する
介護福祉士養成校など、社会福祉系の専門学校を卒業した外国人留学生が介護福祉士の資格を取得することで適用される制度。
前項で紹介した、「アルバイトから就職につなげる」ケースが当てはまります。
国家資格である介護福祉士を取得すると、在留資格が「留学」から「介護」に切り替わるのが特徴。
「介護」の場合は専門人材となり、本人が希望する限り在留期間を繰り返し更新することが可能です。
さらに、EPAでは行える業務に制限がありましたが、在留資格「介護」の場合は訪問やサービス付き高齢者住宅など、業務制限がないので幅広い仕事を経験できます。
外国人の国籍も問われず、介護福祉士養成校で専門知識を学ぶため、事前知識が求められない点から、挑戦する方が増加傾向にある制度です。
就労可能な在留資格については「外国人留学生が就労できる在留資格に変更するには?手続き方法を解説」のコラムでも確認できます。
技能実習制度を利用する
日本から外国に対する技能移転を目的に、外国人を一定期間日本の現場で受け入れる制度。
外国人は技術や技能を学び、母国の産業・経済発展に活用するのが最大の目的です。
その特性上、最大でも5年しか在留できず、入国1年後には日本語能力検定N3の取得が義務付けられています。
また、行えるサービスも制限があり、訪問系のサービスに従事することはできません。
ただし、技能実習の期間中に介護福祉士の国家資格に合格すれば、在留資格を「介護」に切り替えて永続的に日本で働くことや、制限なく介護サービスを提供することが可能です。
在留資格「特定技能1号」を取得する
「特定技能1号」とは、就労を目的として外国人を受け入れる制度のこと。
技能・日本語の両方の試験に合格した場合、最大で5年間介護施設で働くことができます。
技能実習制度と同様に訪問系のサービスを行うことはできませんが、期間内に介護福祉士の資格を取得すれば在留資格を「介護」に切り替えることが可能。
技能実習制度で3年目まで修了した方は「特定技能1号」に必要な試験が免除されるため、技能実習制度の期間を過ぎたら特定技能1号に切り替え、通算で8年間在留することができます。
日本の介護業界でアルバイトをするなら、社会福祉系の学校に留学をし、資格外活動許可を得て行うのが一般的です。
その後、介護福祉士の資格を取得できれば永続的に介護職員として働いていくことが可能。
国家資格を取得するのは容易ではありませんが、今後の成長が見込まれる介護業界で活躍したい方は挑戦してみましょう。
監修:濵川恭一
外国人専門の人材ビジネス会社勤務を経て、外国人のビザ専門行政書士事務所を設立。専門分野は、就労ビザ申請、外国人採用コンサルティング。著書に、「これ1冊でまるわかり!必ず成功する外国人雇用」、「実務家のための100の実践事例でわかる入管手続き」等がある。 http://svisa.net