JLPT(日本語能力試験)は、日本語を母語としない人を対象に国内・海外で実施されている、世界最大規模の日本語の試験です。JLPTはN5レベルが一番易しく、N1レベルが一番難しい級とされています。このコラムでは、JLPTのN2レベルについて詳しく解説。合格のメリットや勉強法、問題例などを参考にして、N2レベル合格を目指しましょう。
目次
JLPTのN2レベルはどんな試験?
JLPTのN2レベルは、日常生活やビジネスシーンなどより幅広い場面で使われる日本語がある程度理解できるレベルです。JLPTのレベルのなかで、N2レベルは2番目に難易度が高いレベルとされています。ここでは、N2の試験科目や認定基準について解説するので参考にしてください。
JLPTのN2レベルの試験科目と合格点
N2レベルの試験は「言語知識(文字・語彙・文法)」「読解」「聴解」の3項目に分けられています。それぞれの項目で測定する能力は、以下の通りです。
- 言語知識(文字・語彙)
漢字読み/表記/語形成/文脈規定/言い換え類義/用法
- 言語知識(文法)
文法形式の判断/文の組み立て/文章の文法
- 読解
短文の内容理解/中文の内容理解/統合理解/長文の主張理解/情報検索
- 聴解
課題理解/ポイント理解/概要理解/即時応答/統合理解
N2レベルは、言語知識と読解を合わせて試験時間が105分となっています。受験時は、時間配分に注意しましょう。また、各科目の基準点19点以上を満たしたうえで、総合得点が90点以上でN2レベル合格となります。
科目 |
試験時間 |
合格点 |
言語知識(文字・語彙・文法) 読解 |
105分 |
19点(言語知識) 19点(読解) |
聴解 |
50分 |
19点 |
JLPTのN2レベルの認定基準と認定率
N2レベルの認定基準は、以下の通りです。受験前に確認しておきましょう。
幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の記事・解説、平易な評論など、論旨が明快な文章を読んで文章の内容を理解することができる。 一般的な話題に関する読み物を読んで、話の流れや表現意図を理解することができる。 |
日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードの、まとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる。 |
N2レベルでは、ニュースや新聞などで使われる時事用語も理解しておく必要があります。N3レベルに比べると会話の場面や単語の幅も広がり難易度も高くなるので、時間をかけて試験対策を行いましょう。
日本語能力試験公式Webサイト「過去の試験データ」によると、2022年第一回の試験におけるN2レベルの認定率(合格率)は、国内・海外合計で37.3%でした。N5~N3レベルの認定率が40%以上という結果から見ても、N2レベルはやや難易度の高い試験といえるでしょう。
参照元 日本語能力試験公式Webサイト「過去の試験データ」
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JLPT(日本語能力試験)N2に合格するメリット
JLPT(日本語能力試験)N2に合格すると、就職活動をしたり在留資格を取得したりする際に役立ちます。ここでは、JLPTを受験するメリットを紹介するので参考にしてください。
中学校卒業程度認定試験で国語の試験が免除される
JLPTのN1もしくはN2を取得している外国人は、中学校卒業程度認定試験を受ける際に、「国語」の科目が免除されます。日本の中学校を卒業していない外国人は、高等学校へ入学する際に「中学校卒業程度認定試験」を受けなくてはなりません。受験科目は、「国語」「社会」「数学」「理科」「外国語」の5科目です。1つでも免除されるとほかの科目の勉強に時間を費やせるため、メリットといえるでしょう。
就職活動の際に日本語能力をアピールできる
JLPTのN1やN2に合格をしていると、高い日本語能力を示せて、就職活動の際に有利に働く可能性があります。日本語をある程度話せても、客観的に日本語能力の高さを示す手段がないと履歴書でアピールできません。その結果、書類選考で落とされてしまうケースもあります。日本語能力の高さを第三者に分かりやすく伝える手段として、JLPTのN1やN2に合格をおくのがおすすめです。
なお、企業によっては、JLPTのN2以上への合格を応募の条件としている場合もあります。JLPTのN2に合格しておくと、就職先の選択肢が広がる可能性があるでしょう。
高度人材ポイント制のポイント付与の対象になる
JLPTのN1もしくはN2に合格すると、高度人材ポイント制でポイントが得られます。高度人材ポイント制は、専門的な知識や技術を持つ高度外国人材の受け入れを進めるためにできた制度です。外国人の活動を「高度学術研究」「高度専門・技術」「高度経営・管理」に分類して、学歴や職歴などに応じてポイントを付与します。ポイントの合計数が70点を超えた外国人は、「高度専門職」の在留資格が認められ、出入国在留管理上の優遇措置を受けることが可能です。
「高度専門職1号」に与えられる優遇措置は、複数の在留資格にまたがる活動許可や配偶者の就労の許可などです。「高度専門職1号」として日本に3年以上在留し活動を行った場合は、「高度専門職2号」の在留資格を取得できます。「高度専門職2号」に与えられる優遇措置は、就労系の在留資格で認められるほぼすべての活動の許可や、在留期間の無期限化などです。
高度人材ポイント制のポイント付与の対象には、JLPTのN1、N2も含まれます。N1を持っていると15ポイント、N2で10ポイント付与されるため、取得するメリットがあるといえるでしょう。
なお、JLPTのほかに、BJTビジネス日本語能力テストで400点以上取った場合もポイントが付与されます。BJTビジネス日本語能力テストに関しては、「外国人におすすめの就職資格!役立つ検定も紹介」のコラムでも解説しているので、ぜひチェックしてみてください。
参照元 日本語能力試験公式Webサイト「日本語能力試験のメリット」 出入国在留管理庁「高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇制度」
JLPTのN2に合格するための勉強法
JLPTのN2に合格するためには、日常生活を含めたさまざまな場面で使われる日本語への理解が必要です。JLPTのN2合格に必要な勉強時間は個人差はあるものの約600〜800時間といわれています。合格するためには長い学習時間が必要です。早めに試験勉強に取り掛かりましょう。ここでは、N2レベルに合格するための勉強法について解説します。
文字・語彙・文法対策
JLPTのN2レベルの語彙数は約60,000語、漢字は約1,000字覚えておく必要があります。単語は分野やテーマに分けて関連のあるものをまとめて覚えていくのもおすすめです。N2レベルでは、日常生活を含めたさまざまな場面で使われる日本語への理解が必要であるため、日頃から新聞やニュースなどで見聞きする単語をメモして覚えていくと良いでしょう。
読解対策
N2レベルの読解では、N5レベル~N3レベルにはなかった、「統合理解」と「主張理解」が出題されます。「統合理解」は、簡単な文章を読み比べて比較、統合しながら理解できるかが問われる問題です。また「主張理解」では、文章を読み、全体として伝えようとしている主張や意見がつかめるかを問われます。読解問題を解くためには、文章で使われる表現や言葉を理解しておくことや、限られた時間のなかで文章を素早く読み、内容を理解できるように練習しておくことが大切です。文章の内容を理解できるようにするために、試験までにN2レベルの言語知識(文字・語彙・文法)をできるだけ増やしておくと良いでしょう。
聴解対策
聴解問題をスムーズに解けるようになるためには、会話でよく使われる表現を覚えておくことが大切です。そのためにも、日本のテレビやドラマなどで日本人同士の会話を聞くなど日本語を聞く機会を増やすと良いでしょう。
N2レベルの聴解では、長めのテキストを聞いて、複数の情報を比較・統合しながら、内容が理解できるかを問う「統合理解」が出題されます。聴解の「統合理解」の問題はN5レベル~N3レベルにはありませんでした。統合問題の問題用紙には何も印刷されていません。そのため、質問や解答の選択肢もすべて聞き取る必要があります。メモを取ることは可能なので、ポイントをしっかり聞き取れるよう練習しましょう。問題形式に慣れるためにもN2レベルの過去問や例題を確認しておきましょう。
JLPTのN2レベルの問題例
ここでは、JLPT(日本語能力試験)N2の問題例を紹介します。過去問や問題例に挑戦して実力を確認しましょう。各レベルごとの問題例は、日本語能力試験公式Webサイト「問題例に挑戦しよう」で確認できます。
言語知識【文字・語彙】
JLPTのN2レベルでは、画数の多い漢字や言葉の正しい意味に関する知識も問われます。マークシート形式のため実際に漢字を書く問題はありませんが、正しい選択ができるように勉強しておきましょう。
【問題】「 」の言葉の読み方として最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
- 問1 戦後、日本は「貧しい」時代を経験した。
- まずしい
- きびしい
- けわしい
- はげしい
【問題】「 」の言葉を漢字でかくとき、最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
- 問2 今日は、ごみの「しゅうしゅう」日ですか。
- 拾集
- 修集
- 取集
- 収集
【問題】( )に入れるのに最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
- 問3 新しい商品を売るために、彼は毎日忙しく飛び( )いる。
- かかって
- かけて
- まわって
- まわして
【問題】「 」の言葉に意味が最も近いものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
- 問4 あの人のお母さんはいつも「ほがらか」です。
- おとなしい
- まじめ
- りっぱ
- あかるい
各問題の解答は以下の通りです。何問正解できたか確認してみましょう。
・問1(1)・問2(4)・問3(3)・問4(4)
言語知識【文法】
JLPTのN2の文法の項目では、文中に当てはまる言葉を選んだり、言葉を適切に並び替えたりする問題が出題されます。文中の主語と述語の関係を理解し、文を正しく組み立てる能力が問われることを覚えておきましょう。以下の問題例で文法の問題形式を確認してください。
【問題】次の文の( )に入れるのに最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
- 問1 最終のバスに間に合わなくて困っていた( )、運よくタクシーが通りかかり、無事帰宅できた。
- あげくに
- ために
- とたんに
- ところに
【問題】次の文の(★)に入れるのに最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
- 問2 ふだん感情を出さない彼があんなに( )( )(★)( )よほど良いことがあったのだろう。
- みると
- ところを
- いる
- 喜んで
- 問3 田中選手が今シーズン( )(★)( )( )のニュースを見て驚いた。
- 彼の怪我(けが)
- 活躍(かつやく)するのを
- 楽しみに待っていた
- だけに
各問題の解答は以下の通りです。正解できたか確認してみましょう。
- 問1(4)
- 問2(2)ふだん感情を出さない彼があんなに(4.喜んで3.いる2.ところを1.みると)よほど良いことがあったのだろう。
- 問3(3)田中選手が今シーズン(2.活躍するのを3.楽しみに待っていた4.だけに1.彼の怪我)のニュースを見て驚いた。
読解
【問題】次の文章を読んで、後の問に対する答えとして最もよいものを、1・2・3・4から一つ選びなさい。
【主張理解・長文】 |
【質問】筆者がこの文章で一番いいたいことはどんなことか?
- まわりの評価を基準にしたとき自分の生き方が成功だったとしても、自分が本当に満足していなければ成功とは言えない。
- まわりの基準による勝ち負けの発想を捨て、自分で決めた成功基準を自分の行動に当てはめて生活することが大切である。
- 人生で勝ち組に入るにはまわりの評価や基準を気にせず、世界共通の基準を意識して自分の中に取り入れるべきである。
- 一日の生き方で大切なことは、朝早く起き、適度な運動をし、気持ちよく仕事をし、夜仲間と楽しくつきあうことである。
読解問題の解答は以下の通りです。
解答(2)
間違えた人は、解答を確認したうえでもう一度文章を読んでみましょう。日本語の文章は、起承転結の構成で書かれたものが多くあります。起承転結の構成の場合は、筆者の主張(結論)は、文章の後半から最後にかけてに書かれています。「主張理解」の問題を解く際は後半部分に注意して読みましょう。
聴解
N2レベルの聴解問題には「ポイント聴解」が出題されます。ポイント聴解を解く流れは以下の通りです。
- 説明と質問を聞く
- ポーズの間に解答の選択肢1・2・3・4を読み、ポイントをつかむ。
- 話(会話文)を聞く
- もう一度説明を聞く
- 答えを選ぶ
まずは、質問と選択肢の内容のポイントを押さえたうえで、会話文を聞き取るようにしましょう。
【説明】この問題では、まず質問を聞いてください。そのあと、問題用紙の選択肢を読んでください。読む時間があります。それから話を聞いて、問題用紙の1から4の中から、最もよいものを一つ選んでください。
【問題】大学で女の学生と男の先生が話しています。
(以下の会話文は問題用紙にはありません。試験時にはすべて聞き取り、内容を理解します。)
【ポイント聴解・会話文】 |
【質問】先生はどうして来週のパーティーに行けないと言っていますか?
- 出張があるから
- 結婚式があるから
- 研究が忙しいから
- しゅっぱん記念パーティーがあるから
解答(2)「その日は昔の学生の結婚式なんだよ。」
ポイントを掴んで聞き取りができるよう、必ず解答の選択肢を確認したうえで会話文を聞くようにしましょう。
N3レベルの問題に挑戦したい人は「【JLPT N3】日本語能力試験N3レベルとは?問題例に挑戦してみよう」のコラムを参考にしてください。
参照元 日本語能力試験公式Webサイト「問題例に挑戦しよう」
まとめ
JLPT(日本語能力試験)のN2は、日常生活やビジネスシーンといった幅広い場面で使われる日本語のある程度の理解ができる上級レベルです。試験は「言語知識」「読解」「聴解」の項目に分かれ、新聞や論説などの文章を読んだり日常会話を聞き取ったりする能力が試されます。N2のレベルの内容をしっかりと把握し、必要な知識を身に付けましょう。申し込みや受験の流れについては、「日本語能力試験公式Webサイト」の「受験手続きの流れ」を参考にしてください。